『風と刃の聖痕』






 第2話





夕食前の時間、高町家の電話が鳴り響く…前に、たまたま近くにいた恭也が受話器を上げる。
それを見ていたなのはは、ただ驚いた顔をして自分の兄を見詰める。

(今、電話鳴った?)

そんななのはの頭を撫でると、恭也は電話の相手と話し出す。
それを見て、恭也相手に掛かって来たと分かり、なのははリビングへと向う。

「本当に久しぶりだな。お前から連絡が来るとは」

そんな声を聞きながら、なのははリビングに入って行った。
それから暫らくして、恭也が電話を終えた頃、丁度夕食となった。
その席で、八割方食べ終えた頃、恭也はふと思い出したように、皆に告げる。

「そうそう。明日、客が来るから、頼む」

「お客さんって、誰?もしかして、女の子!ああ、恭也がついに女の子を家に……」

一人盛り上がる桃子を余所に、美由希、晶、レンからは殺気のようなものが滲み出す。
恭也はそんな桃子に一瞥くれると、

「盛り上がっている所悪いが、来るのは男だ」

見るからにがっかりする桃子と安堵の吐息を吐く美由希たち。
桃子はどうでも良さそうに続ける。

「で、来るのは赤星君?」

「いや、違う。昔からの知り合いで、まあ親友と言ってもいいような奴だな」

『……………………』

突然、物音一つしなくなったリビングで、恭也は一人首を傾げると、

「どうしたんだ、皆して突然固まるなんて」

恭也の言葉に、のろのろと動き始める一同。
真っ先に口を開いたのは、桃子だった。

「だ、だってね」

「う、うん。恭ちゃんの口から親友なんて言葉が」

「なのはもビックリしちゃった」

「俺なんか、一瞬、師匠が変な物でも食べたのかと」

「うちもお師匠が正気か不安になりました」

「お、お前ら、何が言いたいんだ?」

口々に好き勝手言う面々に、恭也は渋い顔をして尋ねる。
それに対して、美由希たちは声を揃える。

『恭也(恭ちゃん、師匠、お師匠、お兄ちゃん)、友達いたんだね』

「……………………」

はっきりと言われ、二の句が告げなくなる恭也。

(とりあえず、美由希は今夜の鍛練メニューを強化)

一番仕返しし易い所から、仕返しをする事を決意する恭也。
それに対し、美由希は一瞬悪寒を感じ、体を振るわせる。

「どうしたの、美由希」

「う、ううん。何か嫌な予感がしたような気がしたんだけど、多分気のせいだと思う」

そんな二人のやり取りを余所に、なのはたちは恭也に話し掛ける。

「お兄ちゃん、拗ねないで」

「別に拗ねてなどいないぞ」

「師匠、明日のいつ頃来られるんですか?」

「ああ、夕方頃だ」

「じゃあ、明日の夕飯は精一杯腕を振るいますんで」

「ああ、頼む。と、来るのは全部で三人だから」

それを聞き、再び動きを止める美由希たち。
それを見て、溜め息を一つ吐くと、

「何となく言いたいことは予想がつくんだが、一応聞いておこう。どうしたんだ」

『友達が三人もいるなんて』

「もう、良い。お前らがどう思っているのか、よく分かった」

「や、やーねー、冗談よ恭也。怒っちゃいやよ」

「そ、そうだよ恭ちゃん。ちょっと驚いただけで」

「驚く事なのか?」

「あ、あはははは」

(鍛練メニューの強化一週間決定だな)

本人の気づかない所で、墓穴を掘りまくっている美由希だった。

「はー、もう良い。それに、明日来るのは、さっきも言った俺の友達とその弟と再従兄妹だ。
 そう言う訳で、男が二人と女性が一人来るから、宜しく頼む」

『じょ、女性!?』

「ああ、そう言っていた。まあ、同じ女性同士、俺よりも早く打ち解けるられるとは思うが。
 そう言う訳だ」

恭也はそこまで言うと、食べ終えた食器を片付け、驚く美由希たちを放っておいてリビングを出て行った。







つづく








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