『月姫/stay night』
1.マスター:遠野 志貴 サーヴァント:遠野 秋葉
「兄さん。まさかとは思いますが、遠野家の当主であるこの私に命令なんて考えてませんよね」
笑みを浮かべて秋葉は志貴を見る。
その笑みを眺めつつ、志貴は無意識に数歩後ろへと下がると、その口を恐々と開くのだった。
「か、考えないです。だ、だから、その目だけが笑っていない笑顔は……」
2.マスター:琥珀 サーヴァント:翡翠
「姉さん。さあ、他のマスターたちを倒しましょう」
無表情で告げる翡翠に対し、琥珀は俯き肩を振るわせる。
暫らくそうしていたが、急に顔を上げて箒を手に取ると、
「いやーん。翡翠ちゃんを闘わせるなんてできないわ。
こうなったら、私が翡翠ちゃんの代わりに闘うわ!」
3.マスター:アルクェイド サーヴァント:レン
「確かにレンは使い魔なんだけどさ、これって私が戦った方が勝ち残れるよねー」
そう問い掛けてくるアルクェイドに、レンはただ無言でコクコクと頷くのだった。
4.マスター:セブン サーヴァント:シエル
「セ〜ブ〜ン。貴女、まさかとは思いますけれど…」
恐ろしい顔で迫るシエルに対し、セブンは普段とは違って余裕の笑みを見せる。
「ふっふっふ。マスター、いえ、今はシエルですね」
自分の名前を呼び捨てにされた事により、シエルのこめかみがひくひくと引き攣るが、それが見えていないのかセブンは続ける。
「私がマスターなんですから、私の言う事を聞きなさい。
そうですね、まずはシエルはカレーを食べる事を禁止。
そして、次に私の食事に必ず人参を出す事。勿論、セール品は却下です!」
「……いい度胸ですね。因みに、今ので令呪を二つ消費しましたよ。
後、一つですね。うふふふふふふふ。楽しみにです。その最後の令呪を使い切った時が。ふっふっふっふ」
「……さ、最後の一つは絶対に使いませんから!」
シエルから醸し出される雰囲気に呑まれつつ、セブンは必死で虚勢を張る。
「ふっふっふ。嫌でも使うことになりますよ。ええ、きっと」
(そう、他のサーヴァントが襲って来た時にね。私は決して闘いませんから。フッフッフ)
5.マスター:三澤 羽居 サーヴァント:月姫 蒼香
「何で、こんな組み合わせなんだ…」
「蒼ちゃん、それってどういう意味よ」
「いや、別に深い意味はないんだが」
頬を膨らませ、全身で怒っていますと表現する羽居に対し、
怖さを感じさせる所か、かえって可愛らしく見えるその仕草に苦笑をしつつ蒼香は返す。
「まあ、良いや。それよりも、先生に頼み事されてたんだ」
「またか」
「えへへ〜。そうだ、蒼ちゃんも手伝って」
「断わる」
「え〜。意地悪〜」
「知るか。自分で引き受けたんだろう。自分でやれ」
「分かったよ。……!
そうか、これで命令すれば…」
「ばっ、ちょっと待て!そんなくだらない事に令呪を使う……って、あー遅かったか……」
がっくりと肩を落とす蒼香と、何も分かっていない羽居だった。
6.マスター:シオン・エルトナム・アトラシア サーヴァント:弓塚 さつき
「さつき、貴女の能力データなんですが…」
「うん。どうしたの?」
「この幸『E-』というのは……」
「うっ、うぅぅぅ……」
へたり込むさつきの肩を、そっとシオンが数度叩いて慰めるのだった。
7..マスター:瀬尾 晶 サーヴァント:遠野 秋葉
「うふふふふ。瀬尾、いい度胸ね」
「わ、私の所為じゃないですよ〜」
今にも泣き出しそうな晶を前に、不敵な笑みを貼り付ける秋葉。
「わ、私マスターの権利を破棄します〜〜〜」
晶の叫び声だけが、夜空へと吸い込まれていった。
<おわり>
<あとがき>
短編集〜。
美姫 「って、短すぎるわよ」
あははは。やっぱり。
美姫 「それに、秋葉は二回も」
まあ、それはそれで。
美姫 「ネタも同じような感じだし」
否定しません……。
他にも、マスターが黒桐でサーヴァントが式とかもあったんだけど。
美姫 「月姫じゃないわね」
おう。それに、あまり違和感がないと言うか。
士郎とセイバーと同じような感じになりそうで。
美姫 「まあ、それは良いわ」
なははは。まあ、たまにはこういうのも。
美姫 「はぁ〜。まあ、とりあえずまたね、という事で」
そんなに呆れるなよ……。