『An unexpected excuse』

    〜令編〜






「俺が、好きなのは……」

そこまで口にした時、恭也の後ろで何かが落ちる音がする。
そちらを振り向くと、一人の女性が顔を蒼白くさせ、茫然と立っていた。
先程の物音は、その女性が持っていた荷物が落ちた音のようだった。
その女性を見て、恭也は驚いた顔になると、その名を呼ぶ。

「令さん。どうしてここに?」

恭也の質問に、令は足が地に付いていないような心ここにあらずな状態で答える。

「剣道部の練習試合でこっちに来たんで、少し早く来てみたんだけど……」

「そうだったんですか」

どこか嬉しそうに言う恭也に対し、令は申し訳なさそうな顔をする。

「ごめんなさい、迷惑だったみたいですね」

「いえ、そんな事は」

「別に良いんですよ。私は由乃みたいに可愛くないから……」

「はい?」

意味が分からず尋ね返す恭也に、令は一人話を進める。

「恭也さんに他に好きな人が出来たんなら、私は……」

悲しそうな瞳で恭也を一度見た後、令は俯き肩を振るわせる。
それを見て、令が先程のやり取りを聞いて、何か誤解していると気付く。
同時に、令の従姉妹である由乃の言葉が思い出される。
令ちゃんは思い込みが激しい上に、落ち込み易いのよ。その上、傷付きやすいし。
いい、恭也さん、令ちゃんを泣かせたら許さないからね。
恭也はすぐさま令の元へと行くと、その肩に手を置く。

「令さん、何か勘違いされているみたいなんですが」

「えっ?」

恭也の言葉に令は顔を上げる。
その令の瞳を真っ直ぐに見詰めて、恭也は続ける。

「何処から聞いていたのかは分かりませんけど、俺はまだ好きな人の名前を言ってませんよ」

「でも……」

それでも尚、何か言い募ろうとする令の口を恭也はそっと自分の唇で塞ぐ。
驚きに目を見開きつつも、令は自然と目を閉じる。
暫らくそうして令が落ち着くのを待つ。
頃合を見て、恭也は唇を離すと、違う意味で落ち着きを無くし、頬を朱に染める令を見詰める。

「俺が好きな人はあれからも変わってません。令さん一人だけですよ」

「……本当に?でも……」

「前にも言いましたよね。令さんは今のままで十分可愛いですよ」

そう言って令をそっと抱き締める。
令もおずおずと恭也の背に手を回すと、その腕にそっと力を込める。

「嬉しい……。ずっと傍にいてくれますか」

「ああ。ずっと……、ずっといるよ、令さんの傍に」

お互いの温もりを感じながら、再び口付けを交わす二人。
そんな二人から忘れられた周りの人たちは、ある者は照れながら、
ある者は興味深げにと様々な反応を見せつつ、そっと見詰めていた。
その事に二人が気づき、照れまくる事になるのは、予鈴のチャイムが鳴り響いてからだった。
それまで二人は、心地良い温もりを逃さないように、少しでも長く感じていられるようにずっと寄り添っていたのだった。





おわり




<あとがき>

万次郎さんの62万Hitリクエストで、令編です。
美姫 「マリみてキャラも、結構増えてきたわね」
よきかな、よきかな。
美姫 「何か偉そうね」
そ、そんな事はないだろう。
美姫 「ううん、偉そうよ」
い、言い掛かりだ。
美姫 「やっぱり、口で言っても無駄のようね」
け、結局、それか!
美姫 「浩は吹き飛ばーーす!!」
ぬぐろみょにょ〜〜〜!
太陽はやっぱり眩しかった〜〜!!
美姫 「ふぅー。また、次回でね♪」







ご意見、ご感想は掲示板こちらまでお願いします。



二次創作の部屋へ戻る

SSのトップへ