『An unexpected excuse』

    〜アイリーン編〜






「俺が好きなのは……」

『好きなのは』

恭也の言葉に全員の言葉が続きを促す。

「好きなのは……」

全員が息を潜める中、更に恭也の言葉を促す相槌が出る。

「ふんふん、好きなのは?」

「………………」

恭也は無言で隣から相槌を打った人物を見る。

「…………何でここにアイリーンさんがいるんですか?」

きっちり三秒間固まり、疑問を当の本人へとぶつける恭也。
そんな恭也を楽しそうに眺めて、

「私がここに来たから」

「いえ、そうじゃなくて、何でツアー中のアイリーンさんがここに、って事なんですが」

「やーね。分かってるわよ。冗談よ、冗談。今日、明日は移動日だから、来たんじゃない」

「そうでしたか」

「そ・れ・よ・り〜。続きを早く言って欲しいんだけど」

「続き?」

アイリーンの言葉に茫然としていた者たちも我に返り、恭也に再度詰め寄る。

「そう、そうだったわ。恭也、早く言いなさいよ」

「いや、しかしだな」

「私も聞きたいな〜」

アイリーンも楽しそうに恭也に詰め寄る。

「アイリーンさんまで一緒になって何を言ってるんですか」

「だって、聞きたいんだもん。それとも言えないの?」

どこか悲しそうに言うアイリーンに恭也は言葉を詰まらせる。

「い、言えない訳じゃないんだが……」

「だけど?」

「その人に迷惑が掛かるといけないし……」

「そんな事は絶対にないわよ。それに、皆の前でもはっきりと言ってくれる方がきっと喜ぶと思うけどな〜」

「そうなのか?」

「そうそう。って、皆どうしたの?」

恭也とアイリーンのやり取りを大人しく見ていた美由希たちに声を掛ける。

「い、いえ、ただアイリーンさんと恭也さんが親しそうに話していたので」

「だって、恭也とは古くからの知り合いだしね」

「でも、恭ちゃんの口調がいつの間にか、私たちと話すときみたいになってるし」

「ああ、それも私が注意したからね。さっきまでは丁寧に話してたみたいだけどね。
それよりも、恭也の答えを聞きたいな」

アイリーンの言葉に全員が思い出したように恭也を見る。
恭也は何か考えていた様子だったが、全員の視線が再び自分に戻って来ると、決心したように一つ頷く。

「俺が好きなのは……」

全員が注目する中、恭也はアイリーンの肩を掴むと引き寄せ、その唇を奪う。
驚いて何も出来なかったアイリーンを離すと、

「アイリーンさんだ」

ボーと熱に浮かされたみたいに恭也を見ていたアイリーンは恭也の言葉に我に返ると顔を赤くし俯く。

「きょ、恭也、いきなり過ぎるよ」

「す、すまない」

「でも、ちゃんと言ってくれたから許してあげる」

そう言うと、今度はアイリーンから恭也へと軽くキスをする。

「あ、あのーひょっとしてお二人は……」

「もしかして……」

レンと晶の問い掛けに笑いながら、アイリーンはあっさりと言う。

「うん♪恋人同士よ♪」

『えっえぇぇぇぇぇぇーー!!』

アイリーンの言葉に、一斉に声が上がり、恭也とアイリーンは耳を塞ぐ。

「な、ななななな」

「落ち着け美由希。何が言いたいのか分からんぞ」

「何で黙ってたの!」

「言える訳がないだろうが。アイリーンさんに迷惑が掛かるんだから」

「あ、そうですよね」

「私は別に構わないって言ったんだけどね。その方が他の子に取られる心配もないし」

「そんな心配はいらないって言っただろう」

「恭也の事は信じているけどね。これはまた別なのよ」

「そういうもんか?」

「そういうものなのよ。現に今回もねー」

意味ありげに笑うアイリーンと意味が分からずに首を傾げる恭也。
それらを見ながら、FCたちは諦めたのかその場から一人、また一人と去って行く。

「さて、じゃあ私もそろそろ行かないとね」

「そうか」

「まあ、明日の昼まではいるから、放課後に会いましょう」

「そうだな」

「アイリーンさん、良かったら家に来てくださいよ」

「そうですよ。きっと桃子さんも喜びますよ。俺も腕を振るいますし」

「おサルだけには任せておかれへんから、うちも腕を振るいますし」

「あっ、だったら私もお邪魔したい!」

「私もお邪魔させて頂いても?」

「忍さんも那美さんも大歓迎ですよ」

「じゃあ、桃子ちゃんにも連絡せんとあかんな」

「だったら、師匠はこのままアイリーンさんと翠屋に行ってください」

「いや、しかし授業が」

「恭ちゃん、アイリーンさんを一人にするのはどうかと思うけど。
 万が一のために護衛した方が」

「……そうだな。悪いが忍、後は頼むぞ」

「良いわよ!その代わり、今度SEENAのサインをお願い!」

「あははは。それは私から頼んどいてあげるわ。じゃあ、お言葉に甘えて、恭也行こうか」

「ああ」

恭也とアイリーンは腕を組みながら、学校から出て行った。
二人は腕を組みながら、翠屋へと向う。

「皆には感謝しないとね」

「そうだな」

「ふふふ。ツアーが終るまで会えないと思ってたから、嬉しいね♪」

「ああ」

「次は多分、ツアーが終るまで会えないと思うけど、ちゃんと待っててよ」

「当たり前だろう」

「うん」

恭也は少し不安そうな顔を見せるアイリーンの額にそっと口付ける。

「約束だ」

「うん♪今日はずっと一緒にいてね」

満面の笑みを浮かべるアイリーンの言葉に、恭也も笑みを浮かべ、力強く頷いた。





おわり




<あとがき>

フィンさんからのキリ番260,000Hitリクエストで、アイリーン編です。
美姫 「やっと完成〜」
フィンさん、リクエストありがとうございました!
美姫 「さあて、次のヒロインは……?」
次は、いよいよ(?)あの人が!
美姫 「誰?誰?」
あの人がぁぁ!
美姫 「考えてないわね」
あ、あの人がァァァ!と、言う訳で、次回!
美姫 「あ、こら浩。もう!じゃあ、皆さんまたね」





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