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魔法少女リリカルなのは 白黒紅
日時: 2008/03/11 18:49
名前: noa

このssは リリカルなのは第一期 のオリ主、一部オリジナル展開モノです。
そういった物が嫌いな方は見ないほうがいいです、申し訳ありません。
初投稿なので自分のスタイルを探すのもかねていろいろ試したりもしています。
その辺りもご了承ください。


最終回、と言えば聞こえはいいですが正直に言えば打ち切りです。
詳しくは感想の方に書きます。
メンテ

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Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.4 )
日時: 2007/11/22 00:16
名前: noa

 その電話を取った時、高町士郎は本気で受話器を置くことを考えた。

「そんなに邪険にしないでください、かなり重要な話なんですから」
「関わるつもりは無い、そう言ったはずだが?」
「ところがそうも言ってられなくなりました。あなたの娘さんがすでに関わっています」

 わずかだが士郎の顔が強張った。
 だが、それだけだ。
 まだ何があったかも分からないのに取り乱す訳には行かない。

「どうやら今回の事件の原因を知り、何とかしようと考えているみたいです」
「なのはにそんなことできるのか?」
「我々が活動する前にすでにいくつか解決しているようです。魔道庁としても無視するわけには参りません」
「それで、オレに何をさせたいんだ?」
「紫音さんをそちらで預かってもらいたいのです」
「紫電の息子…か」

 昔の付き合いで森田が油断ならない男というのは知っている。
 同時に日本を守るために最善を尽くす男だということも知っている。
 ただ、日本を守るという目的のために手段を選ばないことも。
 そんな森田が何の考えもなく大切な紅を預けると思えないが…

「分かった。だがカグツチもいるんだ。近いうちに必ず8年前のことを話す必要があるぞ」
「かまいません、むしろ早い方がいいのかもしれません」
「…何が目的だ」
「紫音君はまだ9歳だ、ということです」

 その一言で分かった。
 紫音に何が足りないのか?
 そして、それを補うために高町家を利用しようとしていることも

「外道が」
「日本を守るためです、それに世話になる分家賃も払います」
「どうせ経費で落ちるんだろうが」

 家賃についてしばらく話し合う。
 どうせ政府の金だと思いっきり吹っかける士郎とできるだけ低くしようとする森田。
 2人も預かるのは無理だという士郎が言い、結局カグツチを狼の姿で固定させるという条件で森田が勝利した。


 その日から、紫音の高町家での生活が始まった。
 朝はかなり早い時間起きて道場で鍛錬を開始する。
 紅の鍛錬は魔力を高めるものが基本だが、人外を相手にすることを前提とした武術も強力だ。
 それを知った恭也が手合わせしてみようと言い出した。
 結果は紫音の敗北、紅の武術が優秀でも御神の剣術と年齢による肉体の差は埋められなかった。
 あまりにも悔しいので魔道で身体を強化してやろうかと考えた紫音だったが、カグツチに止められてしまった。
 それ以来、道場に這い蹲る紫音の姿は朝のお約束みたいなものになってしまった。

 朝食を食べた後、なのはは学校に行くが紫音、カグツチ、ユーノはジュエルシードを探しに街へ出る。
 『大きな犬』ということで高町家に迎えられているカグツチは家を離れたところで人間の姿になる。
 高町家の住民は快く受け入れてくれたがやはり一般市民が狼を見るのはまずいと思いう判断だ。
 スーツ姿の白髪不良と赤い法衣の少年という怪しい二人組みは時折警官から職務質問されてしまう、その場合は自分たちが紅であることを伝え確認を取ってもらう。
 無線で会話をした警官は怪しみながらも二人から離れていく、魔道庁から警察庁にそして鳴海警察に圧力が加えられているのだ。
 こうして下っ端警官達は事情も分からずに適当な噂話に花を咲かせるのだろう。

 昼になると適当な場所で桃子の作った弁当を食べる。
 高町家でペットとしてすごしているカグツチとユーノに本来弁当は無いはずだが、カグツチが落ち込んでいるのを見た紫音が桃子に頼んで作ってもらった。
 わざわざ動物でも食べられるように材料を考え、それでいて人間用と変わらぬように作ったのはさすが桃子というべきだろう。
 もっとも、普通の狼ではなく人狼のカグツチと元が人間で魔法を使い変身しているユーノはそういうところを気にしなくてもよかったのだが。
 午後も探索を続けていると学校が終わったなのはが合流してくる。
 学校についてなど適当に話しながら探索をしているとあっという使える時間がすぎて行く、夕食までには高町家に戻ることになっているのだ。
 みんなそろって夕食をとったら順番に風呂に入る、当初ユーノはなのはと入っていたがカグツチが 「喰うぞ」 と言ったら紫音と入ることになった。
 それ以来ユーノはカグツチを相手にするときはちょっとビクビクしている。

 寝る前に魔法の訓練をする。
 ユーノやなのはの魔法と紫音やカグツチが使う魔道は違う部分もあるが、基本的な考え方は共通する。
 基本的な魔力の底力を上げるための鍛錬、どのような状況でどんな魔法を使えばいいかの戦術、新しい魔法を使うための構成などを行う。
 なのははまず基本を覚えるために前者二つを中心に行い、紫音は鍛錬と構成を中心に行うことになった。
 ユーノ曰く 「基本魔力はなのはより紫音が高いけれど札や月下炎刃では効率が悪すぎる。デバイスがあれば鍛錬も構成も十分な効果が得られるのに」
 残念ながらユーノが持っていたデバイス『レイジングハート』はなのはに渡している。
 なのはは紫音が使った方がいいのか? と聞いてきたがどうせ魔力があるのだからそのまま使った方がいいという結論になった。
 そもそもなのはがデバイスを手放したら普通の少女に逆戻りしてしまう。
 もっとも、鍛錬中に居眠りを始める紫音がデバイスを持ったところでどの程度効果が上がるのかは分からないが…
 そうこうしているうちに小学生は眠る時間になってしまい、お開きとなる。
 紫音の高町家での生活はこうして過ぎていった。
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.5 )
日時: 2007/12/18 00:58
名前: noa

「今日友達の家に遊びに行くの」
「行けばいいじゃないか、ジュエルシード探しは俺達だけでやる。友達付き合いは大事にした方がいいぞってカグツチが言ってたぜ」

 横にいたカグツチはため息をついた。
 紫音はなのはの言いたいことが分かっていない。
 紅という閉鎖環境で育ってきた紫音は人付き合いというものが苦手だ。
 もっとも、本人は苦手と思っていないだろう、苦手と認識できるほどの人付き合い事態をしたことが無いからだ。
 紅の里の者達は紫音を『現在唯一残っている紅の後継者』として扱ってきた。
 それに対してカグツチは年上の立場として、まるで兄のように接してきた。
 そう、紫音には同年代の友人というものがいなかったのだ。
 紫音のなのはに対する評価とは『一緒に事件を解決する仲間』、『世話になっている家の娘』、といったところが妥当だろう。

「えっと、そうじゃなくて、紫音君もいかない?」
「何で俺が?行く理由が無いぜ」
「アリサちゃんとすずかちゃんに紹介したいの」
「何て言って紹介するつもりだ?魔道関係を一般人に話すのはご法度だぞ、んなことしたら記憶処理しないといけなくなるぜ」

 どうにも話がおかしい、そう考えたのはユーノだった。
 確かに魔法を一般人に話すことは避けるべきだ。
 だが、いくらなんでもこの反応はおかしい。
 なぜ『紹介する』からいきなり魔法関連にもっていくのか?

「カグツチさん、紅という組織はどういう風に魔法について教えているのですか?」
「すくなくとも子供の教育にいい環境では無い、紅も切羽詰っているんだ、いろいろとな」

 せめて紫電がいれば…
 そうカグツチがつぶやいたのをユーノは聞いた。
 紅紫電、カグツチが言っていた紫音の父親、話を聞くと8年前に死んだらしい。
 そういえばなのはの父親である高町士郎が怪我をしたのが8年前だと小耳に挟んだ。
 何か関係があるのだろうか?

「だから、魔法とか関係なくて紹介したいの」

 なのはと紫音の話はまだまとまっていなかったらしい。
 一緒に行きたいと言うなのはとその必要は無いと主張する紫音、どちらかが折れればいいのに意地の張り合いになってしまっている。

「だから、ジュエルシード探さねぇといけねぇだろうが」
「少しくらい大丈夫だから、一緒に行こうよ」
「最低でも一人探してるほうが見つけたときにすぐ対応できるだろうが、何かあってからじゃ遅いんだぜ」
「でも、もう二人に友達紹介するって言っちゃったの」
「友達?だれのことだよ?」
「紫音君に決まってるよ」

 それを聞いた紫音はなぜか言葉に詰まった。
 しばらく悩み、何か言葉を出そうとしたが言えず、ユーノをなのはに押し付けて『何かあったら念話で連絡する』とだけ言って探索に行ってしまった。
 なのはは引きとめようとしたが紅として鍛えられた紫音に追いつけるはずも無く、カグツチは『すまない』と言って紫音を追いかけていった。

「紫音、行ってもよかったのだぞ。少しくらいなら私一人でもどうにかなる」

 紫音に追いついたカグツチは人の姿に変化してそう言った。
 さすがに狼の姿で喋っているところを見られるわけにはいかない。
 変身の瞬間は認識阻害の札を利用することで解決した。
 一般人は人がいたか?犬がいたか?どっちでも構わない、という認識を持つことになる。
 ただ、犬が喋るという明らかな不自然さを誤魔化すほどの力は無い、そういった場合は本格的な術式を組まなくてはならない。
 もっとも、辺りに人はいないのでそこまでする必要もないだろうが
 だが、カグツチの話も聞かず紫音は何も言わずに歩き続けた。
 
 しばらく散策していたが、その間紫音はずっと何かを考えていた。
 ちらちらとカグツチを見てはまた何かを考える、その繰り返しをしていた。

「何か気になることがあるなら言った方がいい、一人で悩むよりも二人で話し合え、そう教えてきたはずだぞ」
「…それじゃぁ聞くけど、友達を作った方がいいっていつも言うよな?」
「そうだな、もう何回言ったか」
「なのはが俺のことを友達って言ったんだよ、俺となのはが友達だって。一週間くらいかな?
同じ家で寝起きして、メシ喰って、ジュエルシード探しとはいっても一緒に街を回ってきた。
くだんねぇことを話して笑ったり、ちょっとからかったらめちゃめちゃ慌てたり、コレって友達って言うんだろ?」
「そうだな、そこまでいっていたら立派な友達だ」
「けど俺は友達だなんて思ってなかった、いや、友達になることすら考えてなかった。なのはとコレまで一緒にいて『友達』って言葉自体を想い浮かばなかった。今日なのはが言ってくれたおかげで初めてそのことに気がついた。
なぁカグツチ、俺は…どこかおかしいのか?」
「今までずっと特殊な環境にいたんだ。これから少しづつ直していけばいい」
「なれるかな?友達」
「なれるさ、なりたいと思っている。だから知らず知らずにこんな所まで来てしまったんだろう」

 気がつくと大きな屋敷の近くまで来ていた。
 なのはと街を回った時に教えてもらった月村の屋敷だ。
 今なのはは友達と一緒に中で遊んでいるのだろうか?
 さすがに今更行くのは常識はずれだが、やはり気になる。
 自分は友達と遊んだことが無い、なのはと暇つぶし程度ならしたことがあるが多人数での活動はまた違ったもののはずだ。
 TVで得た知識では野球、サッカー、ドッジボール、集まっているのは女の子だからそれは無いか?自分が女の子に混じって人形遊びなんかしているところを想像すると笑いがこみ上げてくる。
 
 下手な想像はそこで止まる。
 ジュエルシードの魔力を感じた、場所は塀の内側、この敷地内で発動している。
 一瞬にして体中に魔力を伝わらせ身体強化をする。
 強化された肉体の前に壁など何の意味も成さない、ひとっとびで飛び越える。
 ジャンプの最中に目標を見つけた、無茶苦茶でかい猫だ。

「戦いがいがありそうじゃないか?」
「私は狼だ!」
「俺は何も言ってないぜ、なぁにを想像したんだ?」
「見かけはふざけていても油断するな!」
「一発でカタをつけてやるぜ!天羽々斬で」
「ユーノが言っていただろう、下手したら二度と使えなくなる!月下炎刃だ」

 これから先も戦いは続く、ここで天羽々斬が使えなくなるのはやはり問題だろう。
 仕方なく天羽々斬を鞘に収め、両手に持ち直した月下炎刃を上段に構える。
 この月下炎刃は製作の段階から紫音の使用を想定して作られている。
 大陸より伝わった武器の製法、魔力を持った人間の髪の毛を溶かし入れることで武器そのものに魔力を持たせる。
 それが本人の物ならば相乗効果で並大抵の魔道武器よりも効果を発揮するのだ。
 こうして魔力を込め、赤く変色した刃は鋼鉄さえも切り裂くようになる。
 さらに紅の技術は魔道と武術の融合も作り出した。
 ただ斬りつけるだけでなく、刃を振る瞬間に一気に魔力を込めることによって刀としての切れ味を保持したままの魔力を発射する。
 その名も…

「紅流魔道剣術、空破斬」

 踏ん張りが効かない空中で思いっきり刀を振ったため体が回転してしまう、もっとも訓練されている紫音は何の問題もなく着地できるが。
 発射された魔力の刃は真っ直ぐ巨大猫に向かって行き、その胴体をかなり深く切り裂いた。
 その傷から血が出ないのは月下炎刃が持つ炎の力で傷跡を一瞬で焼いたからだろう。
 ちょうどいい、下手に血をばら撒いたりしたらちょっとしたスプラッタだ。
 掃除する人も大変だろうし、警察沙汰にもなる、血塗られた屋敷なんて近所の奥様の話題に上がるのはさすがに申し訳ない。
 下手に騒いで家の者が様子を見に来るのも避けた方がいい、できるだけ早く片付けた方がいいだろう。
 巨大猫はこちらに敵意を持ったらしく唸りながら向かってくる。
 真正面からぶつかってもいいが安全策をとることにした。

「カグツチ、発射台を頼むぜ」
「分かった、思いっきり飛ばしてやる」

 思いっきりジャンプしたカグツチを踏み台にしてさらに飛ぶ、その高さは先日木を相手にしたときよりも高い。
 そして今回は頂点から頭を下にして落下する。
 自由落下に加え草履に仕込んだ札から打ち出される魔力が紫音をさらに加速させ、 さらに落下途中で足を振り体を回転させる。
 まるでドリルのようになった紫音はそのまま巨大猫の背中に落下していった。
 轟音と共に土煙が巻き起こる。
 煙が晴れた後現れたのは、刀が背中に刺さっても健在な姿を見せる巨大猫だった。

「効いていないのか!?」
「穿孔突きは完璧だったぜ、空破斬は確かに致命傷だったはずなんだけど…こいつが強くなっているんだ!」

 穿孔突きは空破斬よりも強力な技であり、本来は巨大猫の体に大穴を空ける予定だっ。た
 しかし、現在猫一匹の肉も突き破ることができない、その理由は巨大猫を見ることで理解した。
 空破斬の傷がすでに消えている。
 ユーノはジュエルシードは想いに反応すると言っていた。
 そしてこの猫は紫音によって傷を負わされ、敵意を向けてきた。
 そう、この猫は紫音に勝つことを望み、ジュエルシードは猫にそれに見合うだけの肉体を与えたのだ。
 今、猫はリアルタイムで強くなっている。時間をかけるだけこちらの不利になるのは明らかだ。

「体内に直接魔力をぶちこんでやるぜ!」

 月下炎刃はまだ突き刺さっており、紫音は猫の背中にいる。
 刀の柄をしっかりと握り魔力を込める、が猫は思いっきり暴れて紫音を振り落とそうとする。
 2度3度と木にぶつけられているうちに刀が抜けてしまった。
 紫音は運悪くカグツチとは反対の方向に吹き飛んで行き、木の枝をへし折りながら地面に落下する。
 その隙を逃すまいと襲い掛かる巨大猫、その牙が紫音に届く前に猫の体は真横へと吹き飛んだ。
 人型に変化したカグツチが蹴りを喰らわせたのだ。

「大丈夫か?」
「結構効いたぜ、耐久力を上げる術も考えてたほうがいいかもな」

 太ももに刺さったかなり太い木の枝を引き抜く。
 常人ならば歩くことも困難になるほどの傷だが、治癒の札と脳内物質のコントロールで痛みを消す。
 血にぬれた枝はそこら辺に投げ捨てた。

「どうする?天羽々斬を使うか?」
「使わない方がいいって言ったのはそっちだぜ?上に乗った時にジュエルシードの正確な位置を感じたから、たぶん『翼』ならカタをつけられると思うぜ」
「それでだめなら?」
「天羽々斬を使うさ、いざとなったら異界封じだ」

 肉体強化のために全身にめぐらせていた魔力、それを背中に仕込んだ札に集中させる。
 足の傷は問題ない、移動速度は落ちるが攻撃を回避できるだけのスピードは維持できる。
 紅の生み出しだ魔道の奥義を放つために強く拳を握って

「下がってください、後は私がやります」

 黒い服の少女が天から舞い降りて

「ごめん、おそくなっちゃった」

 白い服の少女が走ってきた。
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.6 )
日時: 2007/12/18 01:01
名前: noa

 フェイト・テスタロッサがそのジュエルシードを発見した時、紅い少年と白い狼がすでに戦闘中だった。
 すぐに混ざろうとしたが少し思いとどまる。
 相手は魔術師とその使い魔、そしてジュエルシードの暴走体、さらに魔術師の方は殺傷設定で攻撃をしている。
 そんな中に混ざるのは危険極まりない、それよりも魔術師がジュエルシードを封印する瞬間を狙って掠め取った方がいいのではないか?
 どうやらこの世界の魔道師らしいが少年の戦闘能力は未知数だ。
 それにここで飛び出して万が一、殺傷設定の魔法を使っている人物と暴走体に同時に狙われると厄介なことになる。
 すこし離れた場所から少年と巨大猫の戦闘を観戦する。
 少年の魔力はかなりのモノを感じる、ただ使っている魔法は簡単なものばかりだ。
 簡単な魔法と驚異的な体術、そこから生み出される殺傷設定での一撃必殺の攻撃。
 自分ならどう戦うかと考えながらも少年を見続ける。
 吹き飛ばされて木をへし折りながら地面に叩きつけられる少年、起き上がったその足は太い木の枝が貫通していた。
 そこで気がついた、普通の人とは違う服装だったのでてっきりそうだと思い込んでいた。
 あの少年が纏っているのはバリアジャケットではなく普通の服、つまり少年は物理的にも魔術的にも防御力が無い。
 何かがあったら少年の命に関わる可能性もある。
 そう考えたフェイトは飛び出していった。

「下がってください、後は私がやります」
「ごめん、おそくなっちゃった」
「わりぃな、なのは、来る前に片付けるつもりだったんだけどな、ところでお前誰だ?」

 こうして3人は出会った。

 なのは、フェイト、紫音の3人は互いに動かない。
 なのはは見知らぬフェイトに驚いて、フェイトは紫音に仲間がいると思っていなかったので少し混乱している、紫音は猫を警戒しつつフェイトが敵か味方か判別しようとしていた。
 その沈黙を破ったのは起き上がった巨大猫だった。
 すでに敵と認識している紫音に向かって全速力で突っ込んでくる。
 溜めた魔力で迎撃しようとする紫音、その前に立ちふさがる2つの影、なのはとフェイトは紫音を守ろうとしているが同時に紫音の攻撃の邪魔もしてしまっていた。
 二人のデバイスから魔力弾が発射される、それらはすべて猫に直撃するが猫は構わずに直進してくる。
 これが初期状態の巨大猫だったならばそれなりに効果があっただろう、しかし紫音との戦闘でさらに強力になった状態ではまったく効果が無い。
 猫が二人にぶつかる瞬間、紫音は二人を抱えて思いっきりジャンプした。

「お前たち!邪魔すんな!」
「バリアジャケットも無いのに戦うなんて無謀です、早く逃げてください」
「紫音君、血、血が出てる」
「んなもん唾つけときゃ治るぜ!それよりもなのは、ゴキ…黒いの」
「今台所とかにいる虫を言おうとしましたね。フェイトです、フェイト・テスタロッサ、黒いのなんて呼ばないで」
「アレに中途半端な攻撃は通用しないってことは分かったな?でかいの叩き込むから動きを封じられるか?」
「それよりも病院行かないと!」
「この程度大丈夫、それよりもできるのか?」
「…できるよ」「できます」
「よし、頼むぜ!」

 強化された筋力で二人を放り投げる、なのはが飛べることは知っているしフェイトも空中から降りてきたので飛べると判断した。
 自分は地面に着地する、怪我をした左足に力が入らなくて膝をつきそうになるが人型のカグツチが支えてくれた。
 なのはとフェイトは空中で構えている、猫は真正面にいる、魔力は十分に溜まった。

「今だ!」
『バインド』

 二人のバインドが猫の動きを封じ込める。
 それを確認すると同時にカグツチは紫音の腕を掴み、猫に向かって思いっきり投げ飛ばした。
 弾丸のように真っ直ぐ飛んで行く紫音、身動きの取れない猫は大声で叫びながらもがいている。
 紫音と猫の距離は一瞬にしてゼロになり…

 ズボッ

 紫音の体は腰の辺りまで猫の口の中に納まった。
 唖然とするなのはとフェイト、自分で投げ飛ばしておいて冷や汗をかいているカグツチ。
 場を静寂が支配する。
 のどに異物が詰まったせいか苦しんでいる猫だけが音を発している。

「「「食べられたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」

 3人同時に叫んで現実に戻った。

「紫音君!大丈夫!」
「この猫め、よくも紫音を」
「さっき自分で投げ飛ばしてましたよね…」
「どうしよう、早く助けないと!」
「本来なら魔力の核を殴りつけるはずなんだが…体内にあると判断したのか?」
「とりあえず引っ張りませんか?あのままじっくり噛まれたら大変なことになりますし」
「そうだな、とりあえず…」

 その時異変が起こった。
 猫の口、正確には挟まっている紫音から紅い魔力の奔流が発生して猫の体が縮み始めたのだ。
 あわててカグツチは猫の胴体、なのはとフェイトは紫音の足を掴んで思いっきり引っ張る。
 そういえば昔『大きなカブ』とかいう童話を聞いたことがある。
 紫音が抜けた瞬間、なのははそんなことを考えた。
 まさしく『スポーン』という音がふさわしい、勢いよく抜けた紫音は二人を巻き込んでゴロゴロと地面を転がっていった。
 木にぶつかって停止する3人、目が回って混乱したが鍛えている二人は回復が早かった。
 紫音とフェイトは同時に覚醒し、お互いの顔が目の前にあることに驚いて飛びのいた。
 紫音の全身は猫の唾液でずぶぬれになっている、服は牙に引っかかってボロボロに、足の傷のせいか何とか立っているという状況だった。
 そんな姿でもフェイトは目を引かれた。
 紫音の背中から放たれている魔力の奔流は収まっていない、左右に広がって波打つ紅い魔力の帯はまるで翼のように見える。

「とりあえず礼を言っておく、助かったぜ」
「怪我は足以外に無いみたいですけど…何をしたんですか?バリアジャケットも無いなんて危険ですよ」
「バリアジャケットはそんなモン持ってない、何をしたかは…ジュエルシードを直接掴んで猫に魔力が行かないようにした。同時にジュエルシードから流れる魔力と猫に溜まってた魔力を一時的に吸収して背中から吐き出したんだ。奥義、紅の翼だぜ」
「それってかなり危ないんじゃ?外部から性質の違う魔力を体内に取り込むなんて」
「危ないからすぐに吐き出してんだよ、それにしてもスゲェなジュエルシードって、体通っただけなのに俺の魔力がガタガタになっちまったぜ。立ってるだけで精一杯だけど、仕上げをしとかないといけねぇ」

 紫音の手の中にはジュエルシード、それに何枚もの札が張り付きボール状になる。
 コレで封印は完了した。
 後は魔道庁の職員に渡せば終わりだ。

「紫音君、怪我は大丈夫?」

 なのはも目を覚ましたようだ。
 カグツチもこっちに向かってきて話に加わる。

「私からもお礼言わないとね、ありがとう」
「そういえば自己紹介をしていないのではないか?ちゃんとした挨拶は友人になる第一歩だ」
「そうだね、私高町なのは、よろしく」
「紅紫音、こっちは相棒のカグツチだ。仲良くしようぜ」
「フェイト・テスタロッサです、それで…その」

 何かを言おうとしているフェイト、3人がその話を聞こうとした瞬間にジュエルシードを引っ手繰ったフェイトは空に飛び上がった。
 紫音はダメージのせいで倒れ掛かってしまいカグツチはそれを支えた。
 なのはは予想外の出来事に反応できなかった。
 フェイトは一言、「ごめんなさい」とだけ言うといずこかへ飛び去っていった。

「そっか、ここに来る用事なんてジュエルシードくらいだからなぁ」
「結構な速さだな、もう追うことはできないだろう。無駄だと思うが森田殿に連絡を入れておく、期待はするな」
「フェイトちゃん、何でジュエルシード集めてるんだろう」
「あのくらいの子供がそんなことをする理由など限られている、親、兄弟、友人、その辺りが妥当だろう」
「もっとちゃんとお話したいな」
「できるさ、『ちゃんとした挨拶は友達になる第一歩』なんだろ?」
「それじゃ紫音君も友達だね、行こう!」
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.7 )
日時: 2007/12/18 01:05
名前: noa

 行こう
 つまりなのはは自分を連れて行く気なのだ。
 紫音は改めて自分の姿を見た。
 どう贔屓目に見ても人に会う姿ではない、こんな状態で挨拶をしても好感など持てるはずが無いと思う。

「さすがにこの格好はちょっと…」
「その格好で街中を歩くのもどうかと思うよ、服を借りた方がいいと思うの」

 困った顔でカグツチの方を見ると軽く笑みを浮かべながらその場を去るところだった。
 引き止める間も無くダッシュで走り去るカグツチを追いかけようとしたが行くことはできなかった。
 ニコニコしたなのはが袖を掴んでいる、顔は笑顔だが意地でも行かせないらしい。
 結局その姿のまま月村家の人々とアリサに紹介された上、いきなり服を借りることになってしまった。
 格好について聞かれたので

「猫に襲われた」

 と答えたら、何匹に襲われたのかと呆れられてしまった。
 1匹だと言うとどんな猫だと聞き返され、少なくとも5〜6メートルぐらいの高さがあったと言った辺りで紫音の評価は冗談が下手な奴と認識されてしまった。
 服はとりあえず男の子が着ても違和感が少ない物を選んでもらった。
 代わりの服の代金は魔道庁に請求できるのだろうか?森田さんに聞いておかなくてはならない。

「足に傷を負ったのか?」

 なのはと一緒に来ていた恭也は気がついたようだ。
 治癒の札で出血は止まったが貫通するほどの傷がそう簡単に治るわけではない。
 痛みは消しているが歩くときに微妙な違和感を与えてしまった。

「木の上から落ちて刺さった」
「それを信じられるほどお人よしじゃないぞ」
「士郎さんも知っていることだぜ、教えないのは心配させたくないからかと」
「終わったら話せるのか?」
「守秘義務に違反しない程度なら許可がでると思うぜ、いつ終わるかは未定だけど」
「ねぇ、何話してるの?」

 恭也と紫音の会話が気になるのか女性陣も集まってきた。
 何を話していたかを聞きたがっているが本当のことを話すわけにもいかない。
 二人が目配せをした後、恭也が先に喋り始めた。

「なに、この小僧がなのはに相応しいかを試していただけだ」
「何言ってるのお兄ちゃん!」
「それで?恭也の御眼鏡にかなったのかな?」
「忍さんも煽らないで!」
「なに、まだまだ発展途上だ。駄目だったら潰す、相応しくなるなら…そうなる前に殺す!」

 殺気を感じた。
 紅の鍛錬で耐性を付けているし猫の口に飛び込む時も恐れなど無かった。
 紅としての宿命も知っている、いざという時には自分の命を投げ出す覚悟もある。
 その紫音がこの恭也に恐怖を覚えた。
 もしかしたら、これから先自分は恭也に勝つことなどできないかもしれない。
 その様子を見ている女性陣は冷や汗をかいている、彼女たちも恭也の言っていることを半ば本気と捕らえたのだろう。

「そ、そういえばなのはがつれてきたフェレットは?姿が見えないけど」
「え?ユーノ君?」
「いたのか?なのはと合流した時にはいたと思うけど…猫とやりあった後にはもう」

 にゃーん

 猫の鳴き声の方向を向く、さっきまで巨大化していた猫が歩いていた。
 巨大化の影響が残っているのかまだ普通の猫より二回りほど大きい、そしてその口にはずっぽりとはまり込んだフェレットが…
 紫音を引っこ抜いた時に気絶したらしい、 なのはは目を回すだけで済んだがフェレットの身では耐え切れなかったようだ。
 全員何も言わずに猫が歩いて行くのを見ていた。
 やがてユーノが足をじたばたさせ始めたところで誰かが 「助けた方が…」 とつぶやいた。

「ユーノ君が紫音君みたいになったぁぁぁぁぁぁぁ!」
「え?アレみたいってどんだけ大きい猫だったのよ!」
「5〜6メートルくらいの大きさって言っただろ、正しく死闘だったぜ」
「それよりも早く引き抜かないと、じっくり噛まれたら大変なことになりますし」
「どっかで聞いたセリフだぜ」

 こうして逃げる猫を全員で追いかけ始めた。


「大丈夫だった?フェイト」
「うん、でも私達以外にもジュエルシードを集めてる人たちがいる、もしかしたら戦うことになるかもしれない」
「今度はあたしも手伝うよ、って何このボール?」
「この中にジュエルシードがあるんだけど…取り出せないの」
「うわっ、硬!?出せないならもうこのままでいいんじゃないの?」
「母さんに渡す時までに何とかしておかないと…」

 フェイトが持つ写真立ての中には幸せそうな家族が写っていた。
 ジュエルシードさえ集めればこのころの母親に戻ってくれると信じている。
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.8 )
日時: 2007/12/21 00:34
名前: noa

「今度の連休、皆さんで温泉に行きませんか?」

 その言葉を聞いたとき、本人を除いてその場にいた全員が驚いた。
 閉店後の翠屋、話があると言われて紫音、カグツチ、なのは、そして事情を知っている士郎は森田を待っていたのだ。
 森田守一、日本魔道庁に所属しており今回のジュエルシード事件を担当している。
 紫音を高町家に預けたり、カグツチや高町士郎と何か因縁があったりと謎が多い人物だがまさかこんな事を言い出すとは思わなかった。

「みんなでってことは俺も?ジュエルシード探さないといけないからそんなに離れることはできないぜ」
「もちろん紫音さんもです、ジュエルシードと無関係でもありません」

 鳴海にジュエルシードが散らばった時、魔道庁はその大まかな位置を探知していた。
 ユーノの情報提供により21個と判明したわけだが、鳴海と離れた位置にも何個か堕ちたことが判明していた。
 そのため個数が多い中心部に多数の職員と紫音を配置し、離れた位置は数名の職員で探索するという体制をとっていた。
 そして先日、その離れた位置の探索をしていた職員がジュエルシードを発見した。
 安定した状態で存在しており現地の職員で封印を完了、現在は輸送待ちとなっている。

「封印完了で輸送待ち?それなら俺いらないぜ?」
「ところがそうは行かないのです、魔道庁の封印では完全に封じ込めることができなかったようで、周辺で暴走体に近い生物が発生するのです。中途半端な封印のせいで変な刺激を与えてしまったようで、幸い発生する暴走体の能力は低く現地の職員で排除できていますが」
「ちゃんとした封印をしたほうがいいって訳か」
「職員を集めて大規模な封印なら問題ないでしょうが、他の場所にもジュエルシードがある以上、現在探索している職員を集めるわけにもいきません」
「すぐじゃなくて連休にする理由は?」
「学校があるじゃないですか、義務教育をおろそかにしてはいけません」
「俺、義務教育ガン無視中だぜ」

 紫音は笑いながら言っているが、なのはは少し落ち込んだ顔をしている。
 自分と同じ年齢の子供が学校に行っていないという所が気になっている、せっかく友達になったのだから学校にも行きたい。
 一度本人に相談したことがあったが、少なくともこの事件が解決するまでは無理、解決したら紅の里に戻ることになっているからやはり無理だろうと言われた。
 しかし諦めきれないなのはは何か方法はないかと日々考えている。
 一方高町士郎は森田の提案について考えていた。
 どうせ連休の予定は決まっていなかった。
 なのはと紫音についても近くにいたほうが何かあったとき対処しやすいだろう。
 それに

「費用はもちろん、そちらもちだろうな?」
「紫音さんがお世話になっていますから、そのお礼も兼ねています」
「ポケットマネーか?いくらなんでもこんなことに経費が下りると思えんが」
「公務員の仕事の一つは裏金作りですよ」
「聞かなかったことにしておいてやる。よし、なのは」

 士郎に呼ばれてなのはは顔を上げた。
 なんだか嫌な予感がする、今の父は兄が自分に意地悪する時の顔と同じ表情をしている。
 間違いなく、なにかすごくしょうもないことを企んでいる。

「なに?お父さん」
「月村家のみんなとバニングスのお嬢さんに伝えるんだ、連休の予定を空けておくように」
「え?もしかして…」
「温泉に行くんだよ『皆さん』でな」

 さすがの森田も少しばかり口元が引きつった。


「なんかすごい寝るわねこいつ、ほっぺた引っ張ってやる」
「アリサちゃん、やめた方がいいよ」
「いいじゃない、出発した瞬間に寝始めたんだし少しくらい起きて話でもさせた方がいいのよ」
「なのはちゃんも止めた方が…」
「それがね、紫音君が寝てる時って何をしても起きないの、時間が来たり呼ばれたりしたらすぐ起きるんだけど」
「ほれほれ、縦縦横横まーるかいてまーるかいてまーるかいてまーるかいて(ry」
「アリサちゃん!伸びてる!何かすごい伸びてるから!」
「うわっ、予想以上に面白いわこれ、癖になるかも」
「なのはちゃん、止めて!って何で目をそらしてるの?まさかやったの!?なのはちゃんも引っ張ったの!?」
「ノーコメントなの…」
「それって肯定してるよ!」

 なのはが言ったとおり到着した瞬間に紫音は目を覚ました。
 何となく頬が痛いことを話したら女の子3人は目をそらした。
 明らかにやましいことをしてた者の反応だが同乗していた桃子が寝ている時に変な体勢になっていたと言っていたので信じることにした。
 少し遅れてもう一台の車が到着する。
 今回の温泉旅行に参加したのは高町家5人、月村家2人、アリサ、紫音、カグツチ(人型)、森田+ユーノの11人+1匹という大人数だ。
 そこで移動の車は高町夫妻と子供たち、もう一台を森田が運転して残りの人達と分かれることになった。
 紫音の乗った車では上記のようなことが行われ、森田の運転する車ではあまり喋らないカグツチを話に混ぜようと努力がされていたらしい。
 部屋はそれなりに高い部屋が用意されていた。
 全額森田が出すと約束させていたのでケチるかと思っていたのだが、無駄に奮発したようだ。
 森田曰く、「半ば自棄なので奮発した。有給も取ったので自分も楽しむことにする」とのことだった。
 とりあえず荷物を置たらまずは温泉につかることにするのだが、なのはと紫音はそういうわけにはいかない。
 待機していた魔道庁職員の案内に従いジュエルシードの元に行く、といっても同じ宿の別の部屋なのだが。
 魔道庁特製のジェラルミンケースの中にはさまざまな模様が書かれた箱があり、その中にジュエルシードは収められていた。

「これは紫音がジュエルシードの封印に使っている札の簡易版ですね、量産も想定してあるんですか?」
「やはりユーノさんはこういう物に興味がありますか、どうです?魔道庁に就職してみれば」
「この事件が終わった時に考えてみます」

 特に問題も無く封印を完了する。
 元々回収したジュエルシードは魔道庁の研究機関で調査される予定だった、しかしユーノの意見を取り入れて核シェルター並みの耐久力を持つ保管庫で完全封印されることになっている。
 再びジェラルミンケースを閉じて職員は去っていった。
 これで仕事も終わったのでゆっくり温泉につかることができる。
 森田が連絡することがあるから先に入っていてほしいと言ったのでそうすることにした。

「温泉ってこの国特有の文化なんでしょ?」
「ユーノ君もきっと気に入るよ」
「気に入るのはいいんだが、ユーノはこっちだぜ、じゃないとカグツチが」
「ガクガクブルブル」
「どうしたのユーノ君、寒いなら早く入ろう」
「ちょっとトラウマ刺激されたようだぜ、今度は犬の口に入ることになるかもしれないってだけだぜ」

 ユーノを掴んで男湯へ向かう紫音、なのはは女湯へ入ろうとしたが出てくる客とぶつかってしまう。
 こけたなのはを助けようとするが、それよりもぶつかった相手を見て驚く。
 ぶつかった相手はフェイト・テスタロッサだった。
 
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.9 )
日時: 2007/12/21 00:34
名前: noa

「で、ここのジュエルシードならもう回収したぜ」
「だったら無理にでももらいます」
「無理だぜ、俺が持ってるんじゃなくて政府に渡したから、ほしいならこの国に喧嘩売ることになるぜ」

 宿から少し離れた森の中、とりあえず宿ではなく場所を移そうという紫音の提案を受け入れ、フェイトの使い魔アルフを加えて移動した。
 辺りに人がいないことを確認するとフェイトとアルフは戦闘態勢を整えて尋ねた。

「ジュエルシードを渡してください」

 渡さなければ戦ってでも奪い取る、そういう意思表明のはずだった。
 だが紫音の答えは最悪といっていいものだった。
 さすがのフェイトも一国の機関を相手にすることはできない、保管されている場所も分からない。
 紫音となのはのどちらかが持っていると思っていたのに、これですべてのジュエルシードを集めるのは絶望的になってしまった。

「フェイトちゃん、教えてほしいの、どうしてジュエルシード集めているの?」
「アレは危険な物なんだ、君たちにどんな理由があって集めているのか、どうか教えてほしい」
「それは…」
「教える必要ないよ!こんな苦労も知らないガキンチョになんか!」

 なのはの意思は固い、どうしてもフェイトと話し合いをしたいらしい。
 フェイトも譲らない、カグツチが理由を推理したが恐らく当たっているのだろう、話せば大切な人物に迷惑がかかると考えているらしい。
 どうしようかと紫音は考え込む、こういう時カグツチならなんて言うだろうか?
 そういえば以前カグツチが言っていた語録を思い出す、たしかこういう時は…

「勝負だぜ」
「「「勝負?」」」
「カグツチが言ってた、『言葉を届かせたいなら体ごとぶつかって行け』って、お互いにぶつかり合うのは勝負だぜ」
「それは…意味が違うんじゃぁ?」
「付き合ってられないね、行こうフェイト」
「待って!私が勝ったらお話させて、フェイトちゃんが勝ったら…私の持ってるジュエルシードをあげる!」

 その言葉にフェイトとアルフは驚き、もう一度戦闘態勢を整えた。
 デバイスを起動してバリアジャケットを身にまとう、紫音はバリアジャケットが無いので魔力を体に通して強化する。
 月下炎刃は抜かない、効率を考えるなら使った方がいいのは確実だ、だが非殺傷設定のできない月下炎刃では最悪殺してしまうかもしれない。
 そこで気がついた、いつから自分はこんな考え方をするようになったのか?
 紅の理論では戦闘で手加減などせず必ず殺すことを教わる。
 それが今素手で戦おうとしているとは…よくも悪くも自分は変わったようだ。
 もっとも、戦うからには勝つほうが望ましい、その為に打てる手は打っておくべきだ。

「いくよ、フェイトちゃん」
「うん」
「ユーノ、カグツチを呼んでくれ」
「え?何で僕掴まれてるの?なんで振りかぶってるの?」
「コレが一番早いからな、頼んだぜ!」

 紫音がユーノを投げるのが合図となった。
 なのはとフェイトは同時に空中に飛び上がり、紫音とアルフはお互いに向かって全速力で走り出す。
 紫音とアルフのスピードはほぼ互角、だがパワー、リーチの面で圧倒的に紫音は負けている。
 ユーノを投げ飛ばした以上、数分とかからないうちにカグツチはやってくるはずだ。
 要するに時間稼ぎで逃げ回れば2対1という状況に持って行くことができるのだ。
 だが、あえて攻める!
 アルフのパンチに合わせて飛び蹴りを仕掛ける、回避されるのは想定済み、そのまま腕を掴んで関節技に持って行く。
 アルフも狙いに気がついていた。完全に極まる前に紫音ごと腕を木に叩きつける。
 木をへし折るほどの一撃、だが紫音はすでにいない、辺りを見回して警戒するアルフだが紫音の姿を確認することはできない。

「紅流魔道体術!」

 その声で上に視線を向ける。
 太陽を背にする形で紫音はいた。
 真っ直ぐアルフに向かって落下してくる紫音に対してアルフも飛び上がって迎撃しようとする。

「打ち落としてやる!」
「大!回!転!雷電蹴りぃぃぃぃぃぃ!」

 アルフの拳と紫音の蹴りが激突する瞬間、紫音は一気に体を回転させて蹴りの威力を倍増させる。
 その回転力で拳を弾かれるアルフだったがそのまま蹴りを受けるつもりも無い、とっさに紫音と同じ方向に回転して少しでも威力を削ごうとする。
 しかし間に合わずまともに蹴りを喰らってしまう。
 そのまま地面に落下する二人、紫音は無事に着地したがアルフは数十メートルほど地表を削ってから停止した。
 紫音はなのは達の方を見るがかなり小さくなっていた。
 どうやら戦闘しながら移動をしてしまったらしい。
 追いかけようとも思ったが、アルフが立ち上がってくるのが見えた。

「まだやるのか?結構な傷だぜ?」
「あたしたちのことなんか何も分からないくせに」
「分かるわけが無いだろう、自分から扉を閉じておいて何故来ないと叫ぶな」

 カグツチが到着した、なぜかぐったりとしたユーノを手に持っている。

「まさか人型でフェレットを口に入れるとは思わなかったぞ」
「でも早かったぜ」
「そこの女は私の同類…いや、違うな」
「あんた…その小僧の使い魔かい?」
「使い魔?私は紫音の兄貴分で相棒、そして誇り高き狼だ!」

 カグツチの姿が変化する、下半身は人間のままで上半身に真っ白な毛が生えだし爪と牙が伸び、顔が獣へと変形して行く。

「半獣形体!?そんな魔法があるなんて!」
「魔法ではない、これが人狼族の真の姿だ。人の技術と野性の力、その身でとくと味わうがいい!」
「んじゃ、俺はなのはの所にいくぜ」
「行かせないよ!フェイトの邪魔はさせない!」
「それはこちらの台詞だ!紫音の邪魔をさせるか!」

 アルフの相手はカグツチに任せてなのは、フェイトの元に急ぐ。
 フェイトの戦闘能力がどの程度かは分からないが巨大猫の時の動きである程度の訓練をしてきたことは分かる。
 それに比べてなのはは本当の素人だ。
 何度か組み手らしいことをしてみたが最終的な結論は接近戦をするような状況にならないようにしようということになってしまった。
 絶対とは言わないが3:7ほどの割合でなのはが不利だろうという予想をしている。
 そしてその予想はしっかりと当たってしまった。
 すでになのはは敗北していた。
 レイジングハートからジュエルシードが吐き出され、それをバルディッシュが回収をしてしまった。
 ジュエルシードを手に入れた以上フェイトにもう用は無い、後はこの場を立ち去るだけだ。
 紫音はそれが気に入らない。
 フェイトと話がしたいのはなのはだけではない、自分だっていろいろ聞いてみたい。
 何故ジュエルシードを集めているかも聞きたいし、巨大猫の時の礼もキチンとしたものをしたい。
 その想いを抱えて、紫音は思いっきり跳んだ。

「これからが第二ラウンドだぜ!」

 フェイトに後ろから組み付く。
 当然フェイトは引き剥がそうとするがパワーなら紫音の方が圧倒的に上なので剥がせない。
 その間に紫音は自分の腕をフェイトの首に巻きつけチョークスリーパーのような体勢に移行する。

「離れて!」
「無理だぜ、俺空飛べないから落ちちまう」
「アルフは?」
「カグツチが相手してるぜ、それよりもっと自分の心配をしたほうがいいぜ」

 フェイトの首を絞めたまま頭を下にして落下して行く。
 そこでフェイトは気がついた。
 紫音の狙いはこのまま落下することだと

「自爆するの!?」
「紅流魔道体術、稲妻落しだぜ!」

 その言葉を最後にフェイトの意識は途絶えた。 
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.10 )
日時: 2007/12/21 00:35
名前: noa

 気がついたら宿の一室だった。
 右を見るとフェイトがいる、左を見るとアルフがいる。
 それを認識した上で改めて目を閉じ 「起きたの?よかった」 ようとしてやめた。
 その声を聞いたのかフェイトとアルフも目を覚ました。 
 周りを見渡したアルフはフェイトの無事を確認し、なのは、紫音、カグツチに囲まれているのを知って飛び出そうとした、しかしフェイトをがそれを止める。

「そう警戒するな、何かするのなら気絶している間にすませておく」
「アルフ、大丈夫、彼手加減してくれたから」
「後から襲ってたじゃないか、アレのどこが手加減なんだよ?」
「仕掛けられた技 「稲妻落としだぜ」 あの技、本当は首を折るんでしょう?意識を落とす絞め方じゃありませんでしたし」
「落下した時に自分から先に落ちて威力の軽減もしている、ただそれで自分が気絶したら意味は無い」
「それを言われるとつらいぜ、でもまぁ」

 紫音はなのはを見た。
 フェイト、アルフ、カグツチ、ユーノ、最後に自分の体を見る。
 全員見事に泥だらけ、特に地面に叩きつけられた紫音、フェイト、アルフがひどい。
 こんな状態で畳の上に寝転がっていたので部屋の中も結構ひどい事になっていた。
 宿の仲居さんと同室の士郎、恭也、森田にも謝っておかなくてはならない。
 もっとも、今は部屋の惨状よりも自分たちの体の方が問題だろう。

「温泉行こうぜ、まだ入ってなかったし」

 異議を唱える者はいなかった。


「紫音君か、遅かったな」
「先に入らせてもらっています」

 男湯には士郎と森田がいた。
 他のメンバーは遊技場でカラオケ、士郎は2回目の温泉で森田はやっと業務が終わったらしい。
 よく土を落としてから湯につかる。
 ここ最近は高町家の湯船だったが、広い風呂はやはり落ち着く。
 泳ぎたくなったがカグツチの視線が痛い、やろうとしていることをがバレバレだった。

「そういえば、ユーノを口に入れたって」
「欠伸をしたらその口にジャストミートだ。またいらぬトラウマを増やしてしまった」
「ボクハオイシクナイヨ、ナマデタベタラドクガアルヨ」
「ユーノ君が喋るのも慣れたな、初めて聞いたときは驚いたが」

 ユーノの正体がフェレットでは無く変身した人間だということを士郎はすでに知っている。
 以前、なのはが調査に関わるので魔道庁の方針やなのはの役割等を説明することがあり、そこに士郎が同席した。
 なのははまだ小学生ということを考えれば保護者の承諾を得るのは当然のことなのだが、魔法が関係する以上専門家の意見も必要ということで森田やカグツチはユーノにも意見を求めたのだ。
 こうして正体がばれたユーノだが、まだフェレットの形を維持している。
 士郎は人間の姿でも構わないと言うが、ユーノはさらに居候が増えるのは負担が掛かるだろうと譲らなかった。
 結局、ユーノはフェレットとして高町家にいついている。
 事情を知らない他の家族は士郎がフェレットに対してやけに丁寧に接していると疑問を持っていることだろう。

「ところで紫音さん、あのお嬢さんのことですが…」

 森田がフェイトについて尋ねてくる。
 フェイトの姿は巨大猫の時にも確認されているし、多少旅館から離れていたとはいえ派手に暴れまわった。
 魔道庁としては見なかったことにするわけにはいかないのだろう。

「住居を特定するくらいなら大丈夫だと思うけど…早まったマネはしない方がいいぜ、一般職員じゃ手も足も出ないだろうし」
「分かりました。現状監視に止めときましょう」
「助かるぜ」

 しばらく純粋に温泉を楽しむ。
 奥に行こうとしたらカグツチに止められてしまった。
 なんでもこの温泉は入り口こそ別々だが奥の方で女湯とつながり混浴になっているらしい。
 ちゃんと分けられた温泉はこことは別の位置にあるとのこと、そもそも入り口に注意書きの看板があったらしい。
 全然気がつかなかったが、知ってしまったからには行かない方がいいだろう。
 大人しく肩まで湯につかる、フェレットの姿なので泳いでも文句を言われないユーノがうらやましい。

「森田さん、カグツチさん、それに紫音君、4人こうして集まるのもあんまりありません。ずるずる延ばすよりもここで話した方がすっきりしませんか?」
「そうですね、なのはさんに聞かせる話でもありませんし、男だけで集まることも無いでしょうし」
「僕は席を外した方がいいですか?」
「ユーノさんもいたほうがいいでしょう、この国と他の世界との関係について意見を聞きたいですし」
「何の話なんだ?大人だけで納得しないでほしいぜ」
「紅紫電、紫音の父親についてだ。私と森田殿、それに高町殿は紫電の最期に関係しているのだ」
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.11 )
日時: 2007/12/21 00:35
名前: noa

 8年前
 富士樹海の洞窟の一つで古代文明の遺産が発見された。
 全長およそ3メートル、形から黒の卵と名づけられたそれはとてつもない魔力を放っていた。
 これを分析すれば魔道技術に計り知れない利益をもたらす可能性がある。
 その情報は他国にもリークされ数多くの組織が黒の卵を狙って潜入してきた。
 それらから発掘現場を守るのは魔道庁職員とそれを率いる現場監督の森田守一、民間から雇われたボディガード高町士郎、そして日本が誇る魔道組織『紅』最期の一人にして歴代最強と呼ばれる紅紫電とその相棒カグツチ。
 森田の指揮に士郎と紫電の実力も合わさり他国の刺客をことごとく撃退、発掘は順調に進み研究機関への輸送を残すのみとなった。
 その最後の晩

「お疲れ様です、発掘も終了しましたし、後は輸送するだけです」
「まったくだ、もう一月近く妻の顔を見ていない」
「あんたの奥さん喫茶店やってんだろ?なんでこんな仕事してんだ?」
「最後にするつもりで払いのいい仕事を取ったんだ。帰ったらしばらくは喫茶店のマスターとして過ごす、仕事もしない」
「いいねぇ、美人の奥さんと共に経営する喫茶店、男の憧れだね、美人の奥さん」
「喫茶店のマスターでなくて美人の奥さんが憧れですか?」
「紅は閉鎖環境だから出会いなんてありゃしない、血を残すために強制的に魔力の高い女と結婚させられる。もっとも、条件に合う女自体がいないからそんな話は無いけどな」
「家庭を持つのも大変ですよ、仕事柄出張も多いですから親子のコミュニケーションも取りにくいですし、仕事でミスして減給になったらいつ三行半を叩きつけられるか…」

「「あんた妻子もちだったのかよ!」」

「お見合いでしたけどね、尻に敷かれています」
「ああ…もう、紅なんかやめて彼女がほしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「うるさいぞ紫電、森田殿も高町殿も止めてくれ、他の職員方にも迷惑だ」

 士郎と森田は溜め息をついて紫電を両側から掴んだ。
 暴れる紫電をそのままずるずると引きずって行く。

「放せ!まだ叫び足りないんだ!」
「愚痴ならコーヒーでも飲みながら聞いてやる、翠屋に来たら御馳走するぞ」
「言ったなぁ、20杯くらい飲んでやるからな、覚悟しろ」
「100杯でも200杯でもくれてやる」
「言質とったぞ、絶対行ってやるからな!」

 その約束は果たされることが無かった。
 黒の卵、時空管理局での呼び名はロストロギア・バーサーカーエッグ
 これを作り出した世界は争いが絶えなかった。
 やがて終わりなき争いを終結させるために一つの卵を作り出す。
 敵味方に関わらず敵意、殺意に反応してその対象を殲滅する。
 戦場に現れて戦っている軍隊を両方とも滅ぼした。
 街角に現れて喧嘩している子供を滅ぼした。
 子供を殺され、怒りを向ける親を滅ぼした。
 仲のいい隣人を殺されて怒る家庭を滅ぼした。
 巻き添えで知り合いを殺され、憎しみを向ける者を滅ぼした。
 滅ぼして憎まれ、滅ぼして憎まれ、滅ぼして憎まれ、滅ぼして憎まれ、滅ぼして憎まれ、滅ぼして憎まれ、滅ぼして憎まれ、滅ぼして憎まれ
 敵意を持たず、人々を守るためにバーサーカーエッグに挑んだ一人の魔術師がそれを封印する。
 その時、その世界の人口は30%にまで減少していた。
 だが、厳重に封印されたバーサーカーエッグは旧暦におきた次元断層により行方不明となる。
 そして今、再び発見されたのだ。

 地上での争い感じ取っていた黒の卵は確実に目覚めへと向かっていった。
 明朝、輸送の情報を掴んだ他国の工作員は最後の攻撃を仕掛けてきた。
 その激しい戦闘で次々と倒れて行く魔道庁職員と工作員。
 双方の疲労がピークに達しようとした時、卵が割れた。
 突如戦場の真ん中へと瞬間移動した卵からクモのように足が生える、上部からは何本も砲台のようなものが突き出した。
 手当たり次第に回りに殺傷能力がある魔力弾をばら撒いて魔道庁も工作員もまとめて吹き飛ばして行く。
 森田は戦闘継続の指示を出した。
 黒の卵がこれほど危険まのは予想外だったが、万が一にも街に向かわせるわけには行かない。
 少しでも戦力がほしい今、自分も銃を持って卵の所へ急ぐ。
 紫電、士郎、カグツチはすでに卵と戦闘していた。
 絶え間ない砲撃の合間を士郎は神速、紫電は魔道で強化された肉体を活用して回避していく。
 空破斬等の遠距離攻撃の効果が無いことは確認できた。
 恐らく魔力そのものが効かないような特殊な力場を発生させているようだが、そうなると接近しての直接攻撃しか手は無い。
 士郎は一点を狙って『貫』を叩き込んで行く。
 直接内部にダメージを与えるこの攻撃は予想以上の効果を発揮していたが、至近距離で神速を多用しながらの連続『貫』は士郎の体にも相当の負担を与えていた。
 紫電は拳で戦っていた。
 斬撃は恐らく効かない、穿孔突きなどの大技は隙が大きいので狙い撃ちされる。
 そこで選んだ攻撃が『紅流魔道体術・破振拳』、拳による衝撃ではなく波動によって攻撃するこの技も表面上の防御力を無視してダメージを与えることができる。
 カグツチも紅の技の基本的なモノなら扱うことができる。
 二人で繰り出す破振拳はその効果を倍増させて確実に卵を破壊していった。

 最初に限界が来たのは士郎だった。
 元々負担の大きい神速を連続で繰り返していたのだ。
 卵の砲撃を避けきれずついに直撃を喰らってしまう、だがただでやられた訳ではない。
 次元断層に巻き込まれた影響で黒の卵が半ば壊れているのが幸いした。
 今まで同じ場所を狙っていたが最後の攻撃で卵の外部装甲を破壊することに成功したのだ。
 吹き飛ばされた士郎を狙う砲台、そこから砲撃が発射される前にカグツチの攻撃で卵はバランスを崩した。
 その隙を逃す紫電ではない、何度も『貫』を受けていたその部分は卵の核といえる部分までの道を作り出していたのだ。

「奥義、紅のぉツバサぁぁぁぁぁぁぁ!」

 核に向かって拳を突き入れる、その瞬間に紫電の背中から巨大な翼が生えて魔力を拡散させていった。
 紫電はさらに両手を突っ込んでから引き抜く、無数のコードを引きちぎりながら取り出したそれは恐らく黒の卵の動力なのだろう。

「終わったのか?」
「たぶんな、大丈夫か?」
「神速を使いすぎた上にあんな攻撃を喰らったんだ。体が動かない」
「相当負担がかかる技なんだろう?ゆっくり休め」
「皆さん、大丈夫ですか?すぐに医療班が到着します」
「森田さん、どのくらい被害が?」
「分かりません、少なくとも50名以上の死者、70名以上の負傷者が出たはずです」
「それが多いのか、幸いなのか…」

 パァン

 突然の銃声、振り向くと数名の外国人が銃を構えていた。

「工作員の生き残りですか」
「紫電も休んでいろ、アレくらい私一人で…」
「全員離れろ!こいつはまだ生きている!」

 叫んだ瞬間に卵からの砲撃が工作員たちを吹き飛ばした。
 動きゆっくりだが立ち上がって、止まった。

「すごく嫌な予感がします」
「同意する、魔力の高まりがすごい。どう考えても自爆だろう」
「どのくらいの爆発だと思う?」
「どう少なく見積もっても、ここにいるのは危険だ。逃げるぞ!」

 全員同時に走り出そうとしたが、問題が発生した。
 先の戦闘のダメージで士郎は動くことができなく、紫電も紅の翼で大量の魔力を体内に通した影響で走れるほど回復できなかったのだ。
 しかたなく士郎を森田が紫電をカグツチが背負いその場を離れる。
 三百メートルほど走ったところで後から木をなぎ倒す音が聞こえてきた。
 間違いない、黒の卵が追ってきたのだ。
 後を振り向く余裕など無い、そんなことしなくても音がだんだん近づいているのが分かる。
 人狼のカグツチはまだ走れるが人間の森田は疲労の限界に達していた。

「カグツチ!降ろせ!迎え撃つ」
「無理だ!ダメージが大きすぎる、相手の核の位置も分からないのに紅の翼は使えないだろう」
「異界封じを使う」

 カグツチの背中から無理やり降りた紫電は黒の卵に向き直った。
 数分とかからずにこちらに到着するであろう目標に備えてありったけの札を空中にばら撒く。

「カグツチさん、士郎さんを頼みます。その方が速い」
「森田さん!紫電を置いて行くのですか!」
「私は魔道庁の職員です、回収したこれを無事に届ける義務があります」

 森田の手には紫電が抜き取った黒の卵の動力が握られていた。
 士郎を背負いながらここまで持ってきたらしい。

「そんな、この状況で仕事を取るんですか?」
「時に仕事は命より重い、あなたも理解しているはずです高町さん」
「それは!?」
「なめんな士郎!この程度楽勝よ!」
「行くぞ、それが紫電の望みだ」
「紫電!生きろ!翠屋に来るんだろ、コーヒー飲むんだろ、美人の嫁を見つけるんだろうが!」

 紫電は3人に背を向けたまま親指を立てた。
 札は重力に逆らって空中を動き回り巨大な魔方陣の形を取る。
 そこまでしたところで黒の卵が目の前に現れた。

「悪いがここから先は行かせないぜ、紅奥義…異界封じ!」

 担がれている士郎は見た。
 空に発生した巨大な魔方陣、札で構成されたそれは弾け飛び、世界が割れた。
 空中に発生した巨大な亀裂、紫電のいた位置から発生する竜巻、吸い込まれる黒の卵と人影。
 あの亀裂は恐らく別の世界につながっているのだろう、異なる世界へ対象を送り込む、それが異界封じ。
 それでは送り込まれる世界はどのような場所なのか?
 もしかしたら人が生きていられる場所ではないのか?
 そんなものは楽観的過ぎると分かっている、だが何となくそんな気がしていた。


「外傷は問題ない、神経と内臓へのダメージが大きいがちゃんとリハビリをすれば日常生活に支障は無いらしい、さすがに神速などは使えないだろうが」
「それは何よりです、御家族が面会に来ています。報酬は口座に、かなり色を付けさせてもらいました」

 色を付けた報酬、それは口止め料に他ならない。
 元々魔道に関することは部外者に話すことは許されない、怪我について尋ねられてもとぼけろということだ。

「カグツチさんは?」
「あの現場に行っています、あれから1週間、毎日」
「森田さん、オレはこの仕事を辞めます」
「通常の活動はできるようになるのでしょう、それでもかなりの腕前だと思いますが?」
「紫電が来た時のためにコーヒーを淹れておかないといけませんから」
「いつか私も行かせてもらいます」

 病室を出て行こうとする森田、その背中を士郎は呼び止めた。
 振り向かない森田に士郎は言葉を投げかける。

「森田さん、あの仕事は紫電よりも優先されるべき物だったんでしょうか?」
「日本は重要な岐路に立っています。そのため魔道技術の向上は急務、この世界は自分たちの手で守らなくてはならない、私はそう考えています」
「一月程度の付き合いだったが、オレたちの間には友情を感じていた。どんな困難でも打ち砕けると思っていた」
「御神の剣士と紅の隠し玉、親密になっておいて損はありません」
「多分、オレは一生許せない、何もできなかった自分を、しなかったあなたを」
「構いません、そういうのには慣れています」

 その後、日本政府と時空管理局の間で協定が結ばれる。
 次元震の発生を理由に介入しようとする管理局、日本政府は当初友好的だったが態度を一変、最終的に管理局の介入は最小限に抑えられることとなった。
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.12 )
日時: 2007/12/21 00:37
名前: noa

「待ってください、その話だと紫音のお父さんは人工的に引き起こした次元震の制御に失敗して飲み込まれたんですよね?結婚していないし子供もいない、それじゃぁ紫音はいったい」
「俺も知りたいぜ、俺は父が死んだ理由を『日本を守るために戦った』としか聞いてないぜ、母に関しては生んだ時に死んだってだけで名前すら聞いたことが無いぜ」

 紫音とユーノが尋ねたのは当然の疑問だった。
 子供を残して死んだというだけであれば何の問題も無かった。
 8年前次元震で消えた父親、現在9歳の自分、存在しない母親、謎ばかりが残っている。

「紫電は戻ってきたのだ」
「戻った?次元震に飲み込まれて戻ってきたんですか?」
「ただ戻った訳ではない、紫電は10歳ほど年を取っていた。赤ん坊を連れてな」
「別の世界に行き、そこで10年過ごして子供を作った…ありえないことじゃありませんが」
「再び現れたのが事件から一月後、さらに瀕死の重傷を負っていたからな、私が人狼で鼻が利かなければ別人と判断していただろう」
「つまり俺の正確な年齢も、母親も分からないってことか?」
「言ってしまえばそういうことだ、大体1歳くらいだろうと年齢を決めた。誕生日は現れた日、母親は分からないが恐らく強い魔力を持った人物、紫電の最後の言葉が 「しおんをたのむ」 だった。漢字は適当に決めたがな」
「そして紫音さんの存在は政治的な問題も関係しています」

 日本政府と時空管理局との交流事態は以前からあったが、日本における管理局の活動に反対する組織が存在する、それが紅と魔道庁だった。
 日本での魔道を管理する魔道庁、事件に対処するための紅、特に紅は日本政府の中でも強い影響力を持っている。
 その二つの組織の強い反対で日本は時空管理局に対して今まで扉を閉ざしてきた。
 だが組織の運営には金がかかる、政府上層部は魔道に関する問題を時空管理局に任せて魔道庁を解散させる機会を狙っていた。
 そこで8年前の事件、紅は唯一の後継者を失い魔道庁も大きな損害を受けた。
 黒の卵=ロストロギア・バーサーカーエッグの核も政治的な取引材料として十分、紅も魔道庁も発言力を失っている。
 これ幸いとばかりに協定を結ぶ日本政府と管理局、だが後一歩の所で紅が横槍を入れる。
 新たな紅の後継者、紫音の存在、紅はまだ滅んでいない。
 それに続き魔道庁も立ち直った。
 こうして結ばれた協定は場合によっては管理局の手も借りるが、基本は日本で問題を解決するというものだった。

「なるほど、天羽々斬なんて持たせた理由は万が一にも失敗したら今度こそ紅が潰れるからか」
「しかし政府上層部は紫音さんが失敗することを望んでいます。紫音さんさえいなくなれば時空管理局にすべてを任せることができる。その為魔道庁に圧力をかけてこの事件に十分な対応をできなくしているのです」
「そんな状況だからウチのなのはを取り込んだんだな」
「同時に紫音さんを高町家に送り込みました。紫音さん、なのはさんのことをどう思ってますか?」
「なのはは友達だぜ、初めての、それにこれからも!」

 紫音は当然のように言う。
 友達かどうかと悩んでいた面影は無く、堂々と答える。
 森田はそれはよかったと微笑んだ。

「仕事として守るのは大人になってからでいいです。紫音さんくらいの年齢なら友達のために守って下さい」
「それを教えるために一つの家庭を利用する、喰えない奴だ」
「もちろん、紫音さんとなのはさんが行くところまで行ってしまえばもっといいです。そうすれば紅はさらに続きますから」
「はっはっは、そんなモノまだまだ先の話だろう」
「魔力を持つ人間そのものが少ないですから、出会いなんてそうそうありませんよ、っふっふっふ」
「大人って大変だぜ」
「どの世界でもそんなものだよ」

 男たちから少し離れた位置にある岩、その後に3人の人間が隠れていた。
 なのは、フェイト、アルフである。
 温泉に入ってからもなのははフェイトと話しをしようとした。
 フェイトとアルフは湯船の中を逃げる、それをなのはが追う、混浴になっていると気がつかなかった3人はいつの間にかかなり男湯に近いところまで来てしまっていた。
 そこで聞こえてきた話し声、3人ともつい聞いてしまったのだ。

「あの小僧も大変なんだね」
「大人の都合で必要にされているし、大人の都合でいなくなる事を望まれている。自分の意思じゃない、周りが勝手に決めていること」
「私は自分でみんなを守りたいって思った。それって大切なことだってわかったの」
「私も母さんのために頑張りたい」

 それを聞いたアルフは苦い顔をする。
 なのはは知らないがフェイトの母、プレシアはフェイトに対してひどい扱いをしている。
 それでも母のためにと頑張っているが、アルフとしてはプレシアのためではなくフェイトの意思で道を決めて欲しいと思っている。

「それがフェイトちゃんの理由なの?」
「うん、なのはの想いも分かったけど、譲れない」

 男たちはすでに温泉からあがって行った。
 3人も上がることにして女湯の出口に向かっていった。
 脱衣所を出たところでお互いに鉢合わせになる。
 士郎はフェイト達に夕食も一緒にどうかと提案すると、フェイトはそれを受け入れた。
 鳴海に戻ったらまた紫音やなのはと戦うことになる。
 せめて今だけは、分かり合えた記念に友達になってもいいと思った。

「遅かったわね…その子誰?」
「フェイトちゃん、私と紫音君の友達、ホント偶然だったの」
「そう、なのはの友達ならあたし達の友達も同じ、よろしくね!」

 夕食はそのまま宴会になってしまった。
 忍が恭也を含めた未成年たちに酒を飲ませようとするがカグツチが阻止する。
 …おそかった、すでにアリサが酔っ払っている。
 食が進んで中盤に差し掛かるとなぜか隠し芸大会を開催することになる、やけにテンションが上がったアリサの独断で紫音とフェイトは強制参加となってしまった。

「紅紫音、割り箸の袋で割り箸を断ち切ります!」
「つまんないぞー、もっと面白いことやれー」
「アリサちゃん、飲みすぎだよ」
「だったら割り箸を10本ぶった切ります!」
「ぎゃははは、増やしただけじゃないの〜」
「10本ってすごいことだと思うの…」
「アルフどうしよう…私、芸なんて」
「大丈夫だよフェイト、次はフェイト&アルフ!フェイトが美女に布をかけると〜」
「自分で美女って言うのはどうかと思うぜ」
「うっさいね、喰っちまうぞ小僧!」
「喰われるならユーノの方が慣れてるぜ」
「ひどっ!君も一度食べられたじゃないか!」
「アレは食べられたんじゃないぜ、飲まれたんだ」
「同じだと思うの…」
「腹話術得意なんですね」
「しまった、しゃべっちゃった!」
「そうか、この手があったぜ、よしユーノ、カグツチ、行くぜ!」
「はーい美女が狼になりました〜って誰も見てねぇぇぇぇ!」

 深夜
 他の者はみんな寝てしまった。
 そんな中、宿の外に出て行く影が二つ

「挨拶くらいした方がいいと思うぜ」

 影が動きを止めた。
 その正体はフェイトとアルフ、皆が寝ている間に帰ろうとしたらしい。

「分かれづらくなります。明日からまた敵ですから」
「カグツチが言ってたぜ、敵か友かはその日しだいだって、また友達になれる日がくるぜ」
「…さよなら」
「ああ、またな」

 フェイトとアルフは夜空へと飛んで行き、紫音は部屋に戻って寝ることにした。
 明日になったらなのはが騒ぎ出すだろう、一人で見送るのがずるいと言い出すはずだ。
 言い訳を考えなくてはいけないが眠気もきつい、3秒ほど考えて眠気を取った紫音は布団にぶっ倒れて眠ることにした。
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.13 )
日時: 2007/12/22 01:56
名前: noa

 連休も終わって数日、皆休日の思考回路から日常生活用の考え方へと戻った頃。
 当然学校も始まっているので年頃の少年少女たちは昼間、街から姿を消すことになる。
 そんな街中を歩いている少年、紫音は今日もジュエルシードを探していた。
 頭にはフェレットのユーノ、隣に人型のカグツチを伴って今日は人が多い駅前の方を調べてみることにした。
 鳴海に来てから結構な時間がたっている。
 もう警察官達に顔を覚えられているらしく職務質問をかけられることも無くなった。
 それでも住民に珍しい目で見られることは収まっていない、やはり紅の法衣は目立つらしい。
 なのはやユーノ、桃子辺りは普通の服を着てはどうかと言うが、この法衣は紅の特製でところどころに札や隠し武器を仕込んである。
 ジュエルシード探索において何かが起きたときのために脱ぐわけには行かないのだ。
 住宅街では珍しいものとして扱われたが、駅前ではまた違った意味で目立ってしまう。
 TVか何かの撮影と勘違いされてしまい、その度にカグツチが近寄ってくる人々を追い払っていた。
 そんな中、見知った顔を見つけた。
 相手はこっちを見つけた瞬間逃げ出すが、街中で魔法を使うわけにはいかないので普通に走るしかない。
 しかし基本的な身体能力はこちらの方が上である、すぐに追いつかれてしまい観念したのか行動を共にする。

「そろそろ昼だし、メシにしようぜ、フェイト、アルフ」

 二人は複雑な表情をしながらもあまり大きくは無い広場のベンチに座った。
 紫音は桃子とカグツチ、ユーノは桃子に作ってもらった弁当を広げ、フェイトとアルフはコンビニで買ってきた弁当を広げる。
 全員が手を合わせて 「いただきます」 と言った後、紫音は妙な視線を感じた。
 周りを見渡してみたらその視線の主はすぐ近くにいた。
 アルフがよだれを垂らしながらこっちを、正確には弁当を見ている。
 まさか鳴海で飢えた獣の眼を見ることに成るとは思わなかった。
 フェイトもそれに気がついてなだめようとするが、アルフは恨めしそうに手元のから揚げ弁当と紫音の桃子製弁当を見比べている。

「ほしいならやるぜ」
「ホントかい!」
「なぁに、俺はカグツチの分を食べるから問題ないぜ」
「なら私はどうすればいいのだ?」
「アルフの分をもらえばいいぜ」
「せめて半分にしろ、私もそれくらいなら譲る」
「うわぁ、うめー!フェイトも食べようよ!」
「本当だ、おいしい」

 二人が桃子製弁当を食べるのを見ながら紫音は二人が残したコンビニ弁当を食べる。
 何の変哲も無い既製品の味、手作りの弁当に比べたらはるかに下回るはずの味、それでも皆で話しながら食べたらとてもおいしく感じられた。
 フェイトとアルフは先に食べ終わった。
 一つの弁当を二人で分けたのだから当然早い、しばらくして紫音達も食べ終わる。
 食後のお茶を飲んでいるフェイトに紫音は一枚の札を差し出した。

「治癒の札、持ってるだけでそれなりの効果を発揮するぜ」
「そんな、もらう理由が無い」
「ケガしてるだろう、この間組み付いた時に分かったぜ。ジュエルシードのせいじゃ無いな、何があったのか教えてほしいぜ」
「…」

 フェイトは答えない。
 それでも紫音はフェイトが話すのをじっと待っている。
 待って待って待って、答えたのはフェイトではなくアルフだった。

「プレシア・テスタロッサ、フェイトの母親だよ」
「母親が子供を!?カグツチは親は子を導くって言ったぜ」
「残念だがすべての親がいい親ではないのだ…、私の言葉には理想論も含まれている」
「母さんは悪くない、父さんも死んで、母さんも苦しんでいるから」
「それでも!」
「そこまでだ紫音、人の家庭の問題に入り込むんじゃない。いくぞ」

 珍しくカグツチが紫音を引っ張って行く。
 紫音もしばらくは抵抗していたがやがて諦めてカグツチについていった。
 残されたフェイトはもらった札をじっと見ていたが、すぐにアルフとジュエルシード探しを再開した。
 一方、紫音達の方は会話もせずに歩いていた。
 かなり不満気な顔でワザとカグツチから目線をそらしている。
 カグツチも何を話したらいいか分からず、困った表情で紫音の先を歩いている。
 その空気に耐え切れなくなったのは紫音の頭の上に乗っているユーノだった。

「紫音、機嫌直して、気持ちは分かるけどカグツチさんの言ってることも間違ってないんだし」
「苦しいことを分けたら半分になる、楽しいことを分けたら2倍になる、そう教えてくれたのはカグツチだぜ」
「苦しみを分けることができるのは望まれた時だけだ。勝手に入り込んだらそれこそ2倍じゃすまなくなる」
「見てる暇があるなら叫べ、叫びながら走れ、後悔するくらいなら突っ込め、そう教えてもくれたぜ」
「突っ込む時を見定めろ、準備もできていないのに戦場へ向かっても死ぬだけだ」

 さらに空気が悪くなってしまった。
 悩んだ末ユーノが出した結論は第三者を入れて場を和ませようというものだった。
 学校が終わる時間にはまだ少し早いが、これから向かえば待ち合わせ場所よりも早く下校途中で合流できるだろう。
 特に異論を出さない二人は駅前から学校へ進路を変える。
 予想より早くついてしまい校門の前まで来たところで下校のチャイムが聞こえてくる、もう数分も待っていればなのはは出てくるだろう。
 出てくる生徒たちが不思議なものを見る目つきで紫音に注目しては何もせずに通り過ぎて行く。
 紫音一人だけだったら声をかける者もいたかもしれないが、隣にいるカグツチは小学生から見たら怖すぎたようだ。
 やがて出入り口からなのはが出てくる、アリサやすずかも一緒だ。
 紫音達の姿を確認したなのははこっちに向かおうとして、アリサに止められてしまった。
 アリサは怒っているように見える、ここからでは何の話をしているか聞こえないがアリサが一方的に怒鳴り散らしている。
 やがて話を止めたアリサは機嫌が悪いのを隠しもせずにこちらに向かって来ると、紫音を睨みつけてそのまま去っていった。

「ごめんなさい」

 そう言ってすずかはアリサの後を追いかけていった。
 訳も分からず見送ると、置いていかれたなのはがやってきた。
 話を聞くと付き合いが悪くなったことを尋ねられ、それに答えられなかったから機嫌を損ねてしまったらしい。
 急に付き合いが悪くなった親友、突然紹介された異性、理由を聞いても答えられない。

「無理もないことだな」
「そういうモンなのか?友達ってのは分かり合えるものだと思ってたぜ」
「人間である以上、ぶつかり合うのはしょうがないことだ。無条件で分かり合うのではなく共に乗り越えるのが親友だ」
「追いかけた方がいいと思うよ、僕とカグツチさんでジュエルシード探索はするから。紫音も一緒の方が説明しやすいだろうし」

 その提案をなのはは拒否した。
 そのまま先頭に立って無理やりジュエルシード探索を開始する。
 よくない状態だとカグツチは感じた。
 なのはは焦っている。
 木の変化体と戦った時は紫音が一発で片付けてしまった。
 巨大猫を相手にしたときもほとんど紫音が戦っていた。
 フェイトと戦った時は自分は負けてジュエルシードを渡したが紫音は引き分けている、フェイトと紫音の話を聞く限り本当は紫音の勝ちらしい。
 紫音は自らの使命で、フェイトは母親のために、自分も大切な人達を守るために戦っている。
 そんな中、自分だけが無力なような気がしてきた。
 いままでやってこれたのはフェイトも紫音もいなかったからではないか?
 自分も戦うと決めた以上少しでも役に立ちたい、少しでもできることをしたい。
 今のなのはは、悪い言い方をすれば脅迫概念に囚われている。
 友人関係のことも含め少し時間を置いた方がいいのかもしれない。
 間の悪いことに、森田からジュエルシード発見の連絡が来るのは5分後のことだった。

「さーて、どうすればいいのか、絶賛意見募集中だぜ」
 
 魔道庁の職員によって封鎖された街、発見されたジュエルシードは公園の真ん中にあった。
 ただし、七〜八十メートルほど上空に浮かんでいる状態だが。
 さすがにそこまでの高さがあったら札を飛ばして包み込むことはできない、カグツチと連携した2段ジャンプでも届かないだろう。
 どうしようかと途方に暮れていたらフェイトが飛んできた。
 こちらを警戒しているがこれまでの戦いで紫音とカグツチが飛べないことが分かったのだろう、ジュエルシードの封印に取り掛かった。
 それを見たなのはも飛び上がり封印を開始する。
 フェイトと共にやってきたアルフはなのはの邪魔をしようとするが地上から放たれた魔力が行く手をさえぎる。
 紅の魔道は基本的に殺傷設定と同じだが、単純に威力の弱い魔道なら軽い傷、場合によっては無傷で済む。
 その程度の攻撃なので嫌がらせくらいにしか使えないが動きを止めることには成功した。
 温泉から帰った後、フェイト達と戦う時に備えて大量に作った札が役に立った。
 フェイトとなのはが綱引きのようにジュエルシードを取り合い、紫音が持っている札を手当たり次第に発動させて魔力弾を放ち、アルフのストレスが頂点に達しようとしたところで、ユーノが異変に気がついた。
 ジュエルシードに魔力が集中しすぎている。
 ジュエルシードがフェイトとなのはの想いと魔力に影響を受けて活性化をし始めたのだ。
 お互いに渡したくないと思う気持ちと二人の強い魔力が集中しジュエルシードの力を強くする、強くなったジュエルシードを封印しようと気合を入れて魔力を込めるとさらに強くなる悪循環が完成してしまった。

「なのは、止めるんだ!これ以上は危険だ」
「アルフ、フェイトを止めろ!じゃないと怪我じゃすまなくなるぜ」
「なんでアンタの言うことを聞く必要があるんだよ!」
「ありゃぁバクダンみたいなモンだ!下手したら辺り一帯吹き飛ぶぜ!」

 その言葉に顔を青くしたアルフはフェイトの元へと飛んでいった。
 必死で説得しているようだがフェイトは諦めない、なのはも止める気は無い、そうこうしているうちに魔力が大気を振るわせ始めた。
 
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.14 )
日時: 2007/12/22 01:57
名前: noa

「このままじゃ危ない、早く逃げないと」
「なのはとフェイトが巻き込まれる!止めるしかないぜ」

 ユーノが止めるのも効かずにジュエルシードに向かって跳び上がった。
 ジャンプが頂点に達したところで後から追いかけてきたカグツチを踏み台にする、さらにありったけの札を爆発させてその衝撃も利用して上空に上がって行く。
 このまま魔力が爆発すればその被害は甚大なものとなってしまうが、紫音にはそれを阻止する手札が存在した。
 奥義『紅の翼』
 対象から直接魔力を奪い無害なものとして放出するこの技ならばジュエルシードに溜まった魔力を安全に逃がすことが可能だ。
 そのためには対象の核、この場合ジュエルシードに直接触れなくてはいけない。
 魔力が爆発するか紫音の拳が届くか?
 飛び上がった直後、紫音は自分に分があると思っていた。
 落下する時に減速することなど考えず、すべて上昇に力をそそげば十分に届く距離という計算だった。
 それが途中で止まってしまう、ジュエルシードから発生する魔力が物理的な衝撃を持ち紫音を押し返した。
 爆発する時までもう猶予が無い。
 なのはとフェイトを見るが二人とも無理やり封印しようとしている。
 このまま爆発すれば魔力の直撃を受けてしまう、もっとも一番近い位置にいる自分が一番危ないのだが…。
 紅の翼は届かない、魔力の爆発まで時間が無い、逃げようとしても間に合わない、逃げるわけには行かない。
 ジュエルシードが一層輝きを増したその瞬間、落下しながら紫音は懐から剣を取り出した。

「壊れたってかまわねぇ、頼むぜ!天羽々斬」

 なのはとジュエルシードの取り合いをしていたフェイトはとっさに防御の姿勢をとった。
 同時にジュエルシードの輝きが頂点に達し、爆弾のように爆発する、が、予想していた衝撃は来ない。
 落下している紫音から伸びた一筋の光がジュエルシードを包み込み、そのまま天に上っていた。

「何したんだい?あの小僧」
「魔力が一杯になったジュエルシードにさらに魔力を打ち込んだみたい、あのロストロギアから放った指向性を持つ魔力で爆発の衝撃をそらしたんだと思う」
「そんなことしてジュエルシードは?」
「たぶん、無事じゃない」
 
 落下した紫音の元にカグツチが駆け寄る。
 自由落下に加えて天羽々斬の衝撃でさらに加速して地面に激突した紫音は、それでも無事だった。
 巨大猫、そしてフェイトと戦った時に対衝撃の対策をとっておいた方がいいと考え、札を作っていた。
 それでも何本かの骨が折れたのは確実、むしろその程度で済んだのが奇跡といえるだろう。
 堕ちたショックで体は動かないが一時的なもの、折れた骨は治癒の札の効果で回復する。
 さすがに2〜3日というわけには行かないが魔道による治療なら自然治癒の数倍の速度で回復できる。
 どうやら紫音が無事らしいことを確認したフェイトはそういえばとジュエルシードを見る。
 収まった光の中から現れたジュエルシードには無数のひびが入っていた。
 重力に従い地面に落下したそれは乾いた音を立てて砕け散る。
 こうなってしまっては回収どころではない、フェイトとアルフはいずこかへ飛んで行き、なのはは地面に降りてきた。

「紫音君、大丈夫?」
「すぐに魔道庁の医療班が来るぜ、現代医学と魔道技術ならすぐ直るぜ」
「紫音、天羽々斬を捨てるんだ!」

 ユーノの叫び声を聞いて目だけで握っている天羽々斬を見る、そういえば後一回打てるかどうかだったはずだ。
 つい全力で打ってしまったが大丈夫だろうか?
 手の中の天羽々斬が一瞬大きく震えて―――爆発した。

 魔道庁の医療班が下した判断は『肉体的にも魔道的にも命に別状は無い』だった。
 天羽々斬の爆発は根性で意識を保っていた紫音を気絶させた。
 爆発自体の物理的な衝撃はそれほどでも無い、ただ砕けた天羽々斬の破片が頭に直撃してしまった。
 治癒の札が働いているので負傷はそのうち治るが、それでも全身数箇所の骨が折れていることに変わりは無い。
 頭も打っているので万が一を考えて鳴海大学病院へ搬送されることになった。
 物々しい集団と現在進行形で傷が回復している少年、当然医師達は疑問に思うが国家機密ということで何も言えなくなってしまう。
 負傷の治療自体は魔道庁医療班がすでに終わらせているので医師達がすることは無い、せいぜい頭を打ったせいで脳に異常が無いかを調べる程度だ。
 最終的に魔道による治癒速度を計算に入れて全治1週間と診断された紫音は、一般病棟の個室で静養することになった。
 
 入院開始から三日、そろそろ味気ない病院食に飽きてきた。
 やっと歩けるようになった程度だが紅の技術なら病院を抜け出すことなど簡単なことだ。
 ただ、そんなことをするとなのはが本気で怒りそうな気がするから止めておく。
 入院初日に面会が許可された時、なのはは泣きながら謝ってきた。
 落下直後、紫音が平気そうな顔をしており目立つ外傷が無かったためたいしたケガはしていないと思っていた。
 だが魔道庁医療班や医師の話を聞くうちにかなりの重症だということを知ってしまった。
 自分がフェイトとジュエルシードの取り合いをしたせいでこんなことになってしまったのではないか?

「気にすること無いぜ、この程度すぐ直る」
「でも私のせいで…紫音君達においてかれる気がしたの、それで私も頑張らなきゃって」
「友達だろ、足踏みくらいするし手を引っ張ってもいける、後から押してもいいし、何なら抱えてやるぜ」
「まだ若いんだ、一人で責任を感じることなど無い」
「そうだよ、ボクも紫音もカグツチさんも、森田さんや魔道庁の人たちだって手伝ってくれる」
「早速手伝ってもらうぜ、遠距離攻撃ユーノミサイルの特訓だ」
「ボク投げられるの!?」
「安心しな、あのアルフって奴にジャストミートだぜ」
「口にだよね?絶対口にジャストミートさせようとしてるよね」
「大丈夫だよ、アルフさんならちゃんと吐き出してくれると思うの」
「まず投げるのを止めてよ!」

 その日は面会時間が終わるまで話し込んだ。
 また明日となのはが言ったので、抜け出して会いに行くと答えたら寝てなきゃ駄目だと釘を刺されてしまった。
 次の日、備え付けのTVを見ていると人が来る気配を感じた。
 小学生くらいが3人、一人はなのはだろうがあと二人は?

「お邪魔します」
「なんだ、元気そうじゃないの」

 すずかとアリサだった。
 簡単な世間話をするが喋っているのはすずか、なのは、紫音だけでアリサは話に加わらない。
 やがてアリサがなのはに飲み物を買ってきてほしいと言った。
 なのはに話を聞かれたくないから部屋から出したということはすぐに分かった。

「なんでなのはなのよ」
「やれるだけの力があって、やろうという想いがあるんだ。止めても無駄だと思うぜ」
「そんなケガするのに?」
「俺は付き合い短いけど、この程度で止める奴じゃないって事は分かったぜ」
「そうよねぇ、なのはってすごい意地っ張りだし、頑固なとこあるし」

 少しの間笑いあう、そうしているうちになのはが戻ってきた。
 なんで紫音とアリサが笑っているのかすずかに尋ねるがはぐらかされてしまう。

「悪いな、もう少しの間借りるぜ」
「利子付けて返してもらうわよ、それと事情の説明も」
「そいつは怖い、できるだけ早く済ませるぜ」

 そんな会話をしたのが二日目、この日は他に森田や士郎もやってきた。
 そして三日目、誰も来ないまま面会時間が終わろうとしている。
 昼寝し放題なのだがいつ見に来ても寝ているのを看護婦に心配されてしまった。
 しょうがなく漫画を読んで時間を潰す。
 思えばずいぶんと現代社会に属されてしまった気がする。
 本当なら体を動かしての鍛錬をしたいが病院内でそんなことをするのもまずい、魔道に関する鍛錬なら座ったままでもできるが退屈すぎて寝てしまう。
 なのははジュエルシードを探しているのだろうか?
 窓の外を見ていると後、部屋の中から魔力を感じた。
 ジュエルシードではない、なのはやフェイトでもない、まったく知らない人間が部屋の中に転移してくる。
 魔道を使う人間が日本魔道の隠し玉である紅の入院している部屋に転移してくる。
 絶対に偶然では済まされない。
 枕の下に隠しておいた月下炎刃を構える、転移してきた人物は構えようともしない、ただ紫音の顔を見続けている。

「ここは病院だぜ、そろそろ面会時間も終わるし、また明日来たらどうだ?」

 転移してきたのは黒く長い髪を持つ女性だった。
 警戒をする紫音に向かってゆっくりと手を伸ばし、頬に触れた。


「なのはさん、お見舞いですか?」
「はい、もうすぐ面会時間も終わるけど少しでも会いたくて、森田さんも?」
「いえ、実は大変な問題が起きたので…」
「紫音君に何かあったの?」
「どうやら…消えたらしいです」
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.15 )
日時: 2007/12/22 01:59
名前: noa

 時空管理局巡行艦アースラ
 管理局執務官クロノ・ハラオウンは苦い顔をしなら椅子に座っていた。

「どーしたのクロノ君、若いのにそんな苦い顔しちゃって」
「エイミィか、苦い顔をしたくもなるさ。この事件、長期化も予想される」

 この事件、つまりジュエルシードについてだが、何故長期化することをを考えなくてはならないのかエイミィは分からなかった。

「ロストロギアが辿り着いた世界が問題なんだ。第97管理外世界、この世界はいろいろと問題が多いからな」
「へー、何で?」
「…近年の管理局の歴史と日管魔道協定を頭に叩き込んでやる」
「はは…お手柔らかにお願いします」

 引きつった笑みを浮かべるエイミィを見て溜め息をつきながらクロノはある画面を呼び出した。
 そこには数人の魔道師がミッドチルダ式とは違う魔法を使っていた。

「ここに映っているのは第97管理外世界の魔道師が使う魔法、その一部だ」
「へー、一つの世界でこれだけ違う魔法が使われるのも珍しいね…アレ、何で魔道師がいるのに管理外なの?」
「この世界はごく一部を除いて管理局の介入を拒否している。この世界全体の魔法を統括する組織が存在しないんだ。無数の小さな組織がその地方で発達した魔法を管理している」

 管理局が初めてこの世界にを調査した時、一般に魔法は秘匿されて一部の魔道師だけが魔法を使うということが分かった。
 そのような世界はいくつか存在するので対応も考えられている、調査によって判明した組織のいくつかに局員を派遣し交流を計ろうとする管理局。
 派遣されたのはある程度の規模を誇る20の組織、そのほとんどで戦闘行為が発生し死者が発生する場合もあった。
 管理局は使者として出された局員への対応を問題として言及するが、現地の組織は取り合わない。
 そのうち友好的な組織と交流が進み、管理局はこの世界に実態を知ることになる。

「この世界の魔法は現地の宗教と深いかかわりがある。そういった考えは他の考えと決して相容れない、それがそのまま魔法組織に現れている」
「宗教ねぇ…聖王教会みたいなもの?」
「もっとひどいぞ、進化論を完全否定している物から神の使者が人類の滅亡から救うというもの、億単位の昔に現在よりはるかに高度な文明が存在していたなんてのもある。他にも…」
「どうせ分かんないからその辺はいいわ、それで管理局はどうしたの?」

 長い時間をかけて少しづつ、管理局は現地の組織と接触していく。
 そのほとんどが友好的で無い中、時に戦闘に発展しながらも地球の魔法についてデータを集めて行く。
 そんな中、管理局が注目したのは日本魔道庁から提供された技術だった。

「これが提供された技術のデータだ」
「うわぁ、紙に書くって…何世紀前の技術なの」
「ミッドチルダの魔法もここから始まったんだ。そのうちデバイスも作るかも知れないが、管理局が注目したのは別の理由がある。例えばこれ、この紙はEランク相当の魔力弾を打ち出す」
「Eランク、手間の割りにすごくしょぼい気がするんだけど?」
「そうだな、それを使ったのが魔力の無い一般局員じゃなかったらここまで注目されなかっただろう」

 地球から得られた魔法技術、管理局は何人かの局員を使い実際に使用してその効果を確かめることにした。
 最初、札を使っていた魔道師は妙に魔法を出しやすいくらいにしか感じていなかった。
 やがて高ランクの魔道師はいくら魔力を込めてもそれに見合う威力が得られないことに苛立ちを感じ始めた。
 結局、役に立たないと判断されたそれは資料として保管されることになるが、その最中に一般局員が魔法を出す真似事をする。
 魔法にあこがれるがリンカーコアが無いために武装局員になれなかった青年のちょっとした遊び、それが本当に魔力弾を打ち出すなど誰も想像していなかった。
 急いで残りの札の再調査がされて判明したのは何らかの特殊な方法で魔力を保管し、使用者に関わらず一定の効果が得られるということが判明した。

「今思えば…罠だったんだろうな」
「罠ってどういうこと?」
「魔道庁はミッドチルダの魔法がリンカーコアを持っている人物しか使用できないことを知ったんだ。そこで魔力の無い人間でも魔法を使える技術を見せることでその後の展開を有利にしようとした」
「でもサンプルがあるんだから、それを調べたら意味無いんじゃないの?」
「札は紙でできた袋の中にさらに魔法の構成が書かれた紙が入っている。詳しく調べようと外側の袋を開封したら中の紙が消滅する仕掛けまでされていて手が出せない。提供されたサンプル自体の数が少ないから無理に調べることもできない」

 管理局はさらなるサンプルの提供を求めるが魔道庁はそれを認めない。
 交渉の末、資料の提供と引き換えに日本国内における管理局の活動の否定が決定した。

「管理局の活動の否定って、何でそんな条件飲んだの!?」
「当時の管理局は恐れたんだろうな、提供されたサンプルではEランク程度だったがもしかしたらもっと高いランクの魔法が使えるのかもしれない。地球の魔法は非殺傷設定なんてものが無いし、向こうはやろうと思えば国民全員で戦うことができる。ペテンにかけられたことが分かった時にはもう遅かった」
「実際はそんなことできなかった?」
「そういうことだ、Eランクでもやっと作れるくらいの技術だったらしい。だが管理局が次元世界の管理をしている以上、交わされた契約を破ることもできない。そんなことをすれば他の次元世界に対する管理局の信用が無くなってしまう」

 こうして管理局は自分たちよりはるかに技術の劣る日本に対して手出しできない状況になってしまった。
 状況に動きがあったのは8年前、日本国内におけるロストロギア・バーサーカーエッグの暴走がきっかけとなった。
 それにより多大な犠牲を払うことになった魔道庁、そして紅。
 魔道庁そのものをよくない目で見ている日本政府はこれを機に魔道庁を潰し管理局と正式な協定を結ぼうと画策する。
 これは管理局にとっても渡りに船だった。
 日本への進出、事実上断絶が確定した紅の魔法技術の接収、驚くほどのスピードで話はまとまっていった。

「日本進出もそうだが管理局は現地の魔法組織『紅』の技術を要求した」
「日本の技術ってEランクくらいじゃないの?」
「魔法組織『紅』だけ別物なんだ。意図的にリンカーコアを持つもの同士で子孫を残していくことで魔力を維持しているらしい。8年前、紅に所属する人物は人工的に次元震を引き起こしている」
「次元震を引き起こす技術…そりゃ管理局も欲しがるわけね、でも結局失敗したんでしょ?」
「紅の後継者が見つかったことで魔道庁も力を取り戻したらしい。ちなみにこれがその後継者だ」

 画面に映った紫音の姿をエイミィが見た感想、まず真っ先に思いついたのは『生意気そう』だった。
 ついクロノと見比べてしまう、クロノは落ち着いた生徒会長とすれば紫音は入学したての不良1年といったところだろうか?

「もっと最近の映像は無いの?この年頃で8年っていったら別人になっちゃうと思うけど」
「これが最新だ。紅紫音、9歳、どのくらいの魔力を持っているのかは不明」
「当時1歳かぁ、この子も大変だねぇ」
『それがもっと大変なことになってるみたいなの』

 画面に現れたのはクロノの母親であり、アースラの艦長でもあるリンディ・ハラオウンだった。
 突然現れたので驚いたがすぐに落ち着いて何が起きたのかを尋ねる。

『日本政府から時空管理局に要請が入ったわ、クロノには現地に降りてロストロギア・ジュエルシードの回収作業に入ってもらいます』
「魔道庁じゃなくて日本政府から?」
『紅の魔道師が負傷したらしいの、魔道庁は隠そうとしてるけど情報は漏れるものね』
「協定があるから一気に多人数で乗り込むのはまずいな、僕だけでいきます」
『エイミィも戻って、現地で魔道師同士の交戦が始まったらしいの』
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.16 )
日時: 2007/12/22 02:01
名前: noa

 紫音に近づく黒髪の女性、月下炎刃に手をかける紫音。
 警戒はしているが女性に戦う意思を感じないので手を出すこともしない、そんな紫音の頬を女性はそっと触る。
 お互いにじっと見詰め合った状態で女性は何かつぶやいた。
 驚いた顔をした紫音は尋ね返す、その言葉までは分からない。
 女性は紫音をやさしく抱き、光と共に消え去った。

「以上が防犯カメラの映像です。何か気がついたことはありませんか?」

 なのは、ユーノ、カグツチ、森田と士郎は高町家のリビングでビデオを見ていた。
 防犯カメラの記録から紫音がいなくなって3時間、他の高町家のメンバーに席を外してもらい事情を知っているものたちだけで映像の検証が始まった。
 全員が考える中まず士郎が手を上げる。

「そもそも護衛や監視はいなかったのか?いくら紅といっても負傷していたのだろう」
「常に見られているのは落ち着かないとの事でしたからカメラの設置で妥協してもらいました。護衛は扉の外と中庭に2名づつ、ジュエルシード探索もありますから人数を割けませんし、異変に気がついた職員が病室に入ろうとしましたが扉が開かなかったらしいです」

 士郎は腕を組んでまた考え出した。
 次にカグツチが手を上げる、もっとも狼の姿なのでお手をしようとしているように見えるが。

「魔道庁の方で予兆みたいなモノは無かったのか?いきなり誘拐などという手段をとるとは考えにくい、また要求などもこないのか?」
「紫音君を人質にした要求等はありません、そういった目的では無いみたいですね。予兆と言えるか分かりませんが先日魔道庁に泥棒が入りました。盗まれたのは紫音君に関するデータ一通りです」
「十分な予兆だと思うが?」
「紅は日本魔道の隠し玉です、そのデータを欲しがる組織は数え切れませんし週に5〜6回は泥棒が入ります。もっとも、データといっても紫音君は9歳です。現在の容姿、身体能力、家計図くらいしかデータはありません」
「重要な魔道技術は魔道庁にも秘匿していたな、紅の技術を狙ったのだろうか…」

 紅から魔道庁に提供されている技術はかなりあるが札や手書きの魔方陣を利用した魔道がそのほとんどである。
 それとは別に代々の紅の後継者のみが使う技が存在する。
 空破斬、穿孔突きなどが代表的なモノであり秘伝書は紅で保管されており、異界封じにいたっては口伝でのみ継承される。
 それらを狙うために負傷した紫音を攫う、ありえる話だった。

「ボクとしてはこの女性がミッドチルダ式の魔法を使っているところに注目したいです」

 女性が転移するときに現れた魔法陣、持っているのは恐らくデバイス、この女性がミッドチルダに関係する魔道師であるのは間違いない。
 そうすると紫音は別の世界に連れて行かれた可能性も大きくなる、そうなったら魔道庁の技術では追跡不能だ。

「別の世界の魔道師がこんな事件が起きている時にこの世界の魔法関係者を攫う、偶然では済まされません」
「ユーノさんはこの女性がジュエルシードに関係していると?」
「十中八九間違いないです。そして同じようにミッド式の魔法を使うもう一人にも関係しているはずです」

 フェイト・テスタロッサ、母親のためにジュエルシードを集める少女、この女性がフェイトに関係があるとすれば答えは一つしかないだろう。
 そうするとジュエルシードを集める敵を減らそうとした、というのも考えられる。
 だが、それなら誘拐などという手段をとるのもおかしい、すぐに殺すなりさらに傷を負わせて再起不能にしたりする方が手っ取り早い。

「自分の戦力に引き込む気かもしれませんね、最悪洗脳されて我々と戦うことになるかもしれません」

 何が起きるか分からない以上、あらゆる可能性を考慮に入れておかなくてはならない。
 紫音と戦うかもしれないと聞かされ、全員言葉を失った。
 カグツチは最悪の場合は自分が決着を付けなくてはならないと重い表情になる。
 だが、なのはは 「そんなことにはならないと思う」 と否定した。

「この人、多分泣いてる、悲しいんじゃなくて嬉しい涙。それに紫音君をすごくやさしく扱ってるから…そんなことしないと思うの」

 カメラの角度のせいで表情まで読み取ることはできないが、確かに泣いているようにも見える。
 紫音を連れて行くときも攻撃で気絶させるなど乱暴なことはしていない。
 なのはが言っていることもあながち的外れでは無さそうだ。
 結局この会議はジュエルシードの反応で中断、紫音がいないので戦力に不安を感じた森田と士郎は自分たちも現場に向かうことにした。


 現場に着いた時、すでにフェイトとアルフがいた。
 今回、暴走体はすでにフェイトが倒したらしい、封印の直前になのは達は到着した。
 まずなのはは空中に飛び上がってフェイトと戦い始めた。
 アルフは前回と同じくフェイトの援護をするつもりだった。
 ある程度空中に浮いていればカグツチは手が出せないのを知っている、前回は紫音が邪魔をしたが今回はいない。
 それ確認して安心していたら地上から思わぬ攻撃を受けた。
 森田がランドセルほどの大きさの機械を背負い、それから伸びている銃口をアルフに向けている。

「すごい、魔力が無いのに魔法を打ててる」
「魔道庁の試作兵器です。紫音さんの負傷したときに万が一を考え取り寄せましたが、本当に使うことになるとは思いませんでした」
「それは8年前の?」
「ええ、卵の黄身から得た技術を使っています」

 札がもっとも代表的だが日本の魔道は使用者の魔力に関わらずある程度の効果を発揮することができる。
 それに機械的な技術を組み合わせて魔力が無い人物でも魔力弾を打てるようにした機械がこれである。
 もっとも、 40キロという重さ、管理局ランクでE程度しかない威力、他の魔法を使えるほどの汎用性も無いなど問題点も多いので実戦投入は見送られてきたが。
 そうとは知らないアルフは純粋に驚く、魔力を持たない人間が打ち出す魔力弾、他にも何か隠しているのかもしれない。
 前回はちまちまとした攻撃のせいでフェイトの援護ができなかったので今回は先にそちらを潰すことにする、森田の背負っている機械さえ壊せばいいという判断だったが、士郎とカグツチが通さない。
 アルフは魔力の無い士郎を突破しようとするが、刀を交差して受け止める。
 この刀は紅から魔道庁に提供されたモノで刀身自体に魔力が付いている。
 魔道庁職員も持っているが魔道によって発生した事件で接近戦は危険なのでめったに使われない、だが士郎の技量なら問題ないだろう。

「娘が世話になっているな」
「あんた、あの子の親かい?だったらもうちょっとおしとやかに育てな!」
「元気なのが取り得の、自慢の娘だ!」

 戦況はなのは達の有利な展開になった。
 アルフは実質3対1の戦いをしている、それが何とかなっているのは時折フェイトからの援護があるからだ。
 そのフェイトはアルフの不利を援護しなければならないのでなのはに集中できない。
 このまま時間をかければ勝利できると森田は考えていた、だが第3者の乱入で唐突に戦いは終わった。

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。全員戦闘行為を停止してもらう」

 全員が声の方向を向く、黒い服の少年が空中に浮かんでいた。
 反応が早かったのはアルフだった。
 フェイトをつれてその場から離脱しようとするが、バインドに囚われて動けなくなってしまう。
 フェイトもアルフを置いたまま逃げることはできない、アルフのバインドを何とかしたいが見逃すとも思えない。

「日本の魔道事件は魔道庁及び紅が解決します。管理局は不干渉が原則では?」
「魔道庁から要請があった。日管魔道協定に基づいて時空管理局は今回の事件に介入させてもらう」
「協定では魔道庁を中心として管理局が協力するとなっているはずです、我々の指示従って下さい」
「紅は負傷して現在戦闘不能、魔道庁の技術では十分な対応ができないのでは?」
「ウチの職員は優秀です、十分対応は可能ですよ、ねぇ、なのはさん」

 突然話を振られたなのはは驚いて森田を見る、言葉には出さないが 「はい」 と言って欲しい気持ちが伝わってきた。
 だが、なのはが答えるより前にアルフが動いた。
 自力でバインドを破りフェイトと共に逃げようとする。
 クロノは逃がすまいと攻撃するがなのはが前に立ちふさがる、仕方なく攻撃を止めてフェイト達を見逃す。
 森田はカグツチに何か指示を出した。
 それを聞いたカグツチはフェイトに向かって何かを投げる、すでに小さくなったアルフがバランスを崩すのが見えたので命中したのだろう。

「どういうつもりだ?管理局の活動を妨害することは罪になるぞ」
「なのはさんの行動は魔道庁の活動の範囲内です。日本国内では魔道庁の活動が優先されるので問題ありません」
「敵を逃がすことを活動と言うつもりなのか?」
「温泉に行って宴会までした仲です、そんな敵なんているはず無いでしょう」
「まあいい、君たちにはアースラに来てもらう」
「拒否します、他の次元世界では管理局法が適応されますから、話し合いならそちらが来て下さい」

 クロノと森田が火花を散らしているのが分かる。
 詳しい協定を知らない他のメンバーは完全に置いてきぼりになってしまった。
 結局、今回はクロノ達管理局側が折れることになった。


 管理局も動き出したことで活動しにくくなる。
 アルフはジュエルシードを集めるのを止めようというが、フェイトは拒否する。
 母親のためにジュエルシードを集めるのを止める訳にはいかない、そんなフェイトを説得できないアルフはとてももどかしく感じていた。
 そんな中、フェイトは持ち帰ったDVDを見ようと言う、カグツチが投げつけたモノをそのまま持って帰ったのだ。
 その中には、自分の母親が紫音をつれていく所が録画されていた。
 自分にジュエルシードを探すように指示した母親が何故紫音を連れて行ったのか?
 アルフが止めるのも聞かず、フェイトは直接尋ねることにした。
 時の庭園についてまず空気の違いを感じた。
 これまでは暗く重く感じていたが、今日はどこと無く暖かく感じる。
 母の部屋に入るとテーブルが置いてある、一昨日来たときには無かったはずだが母が置いたのだろうか?

「フェイト、戻ってきたの」
「かあ…さん?」

 扉の所に母がいた、外に出ていたらしい。
 フェイトは一瞬自分の母が別人になったのではないかと感じた。
 顔が明るい、言葉使いがやわらかい、今なら母に双子がいたと言われても納得できる。

「ちょうどいいわ、食事にしましょう。アルフも席について」

 置いてあるテーブルの周りの椅子にプレシアが座る、フェイトとアルフも混乱しながら言われたとおりに座った。
 母と食事を共にするのはどれくらいぶりだろうと思い返す。
 そこでおかしなことに気がついた。
 母は食事にしようと言ったが料理が来ていない、テーブルの周りに椅子が四脚、テーブルの上に皿が4枚。
 間違いない、ここには自分たちの知らないもう一人がいる。
 そういえば来る前に見たDVDには確か…

「お帰りフェイト、手を洗ったか?じゃないとアルフがうるさいぜ」

 自分の母が紫音をつれていったはずだ。

「母さんも食欲でてよかったぜ、どうしたフェイト?キョトンとして」
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.17 )
日時: 2008/03/11 18:35
名前: noa

 3日前――

 フェイトとなのはが取り合ったジュエルシードは紫音の放った天羽々斬によって粉々に砕け散った。
 これで21個のジュエルシードをすべて集めることは不可能となってしまった。
 このことをプレシアに報告しなくてはならないフェイトはかなり落ち込んでいた。
 アルフは別の意味で落ち込んでいる、経緯はどうあれジュエルシードを手に入れることができなくなったことはプレシアの逆鱗に触れるには十分すぎる。
 きっとまた鞭が振るわれる。
 きっとまたフェイトは涙を流す。
 ジュエルシードをあのままにしていたらフェイトは怪我をしていたかもしれない、だがこのままでもフェイトは鞭に打たれてしまう。
 紫音に対してフェイトを助けたことの感謝をするのか、叩かれる口実を作られて恨み言を言うべきか、なんとも微妙な気持ちになってしまった。
 そんなことを考えていても移動していれば目的地に辿り着く。
 手に入れたジュエルシードは巨大猫の分と温泉でなのはから手に入れた2個を合わせて3つ、プレシアがこの数で満足するはずが無い。
 アルフの予想通りプレシアは鞭を振るい始めた。
 広い部屋に肌を打つ音が鳴り響く、痛みに耐えるフェイトの声など聞きたくない。
 止めに入ればプレシアはもっと酷くするだろう、ただ耳をふさいで目を閉じて一刻も早く終わるのを待つことだけがアルフのできることだった。
 その音が唐突に鳴り止む、いつもより早い、もう終わったのかと期待して顔を上げる。
 しかしプレシアは鞭を手放さない、それだけでなくすごく気に入らない物を見る目でフェイトを見つめている。

「フェイト、あなたは母さんのことが嫌いなのね」
「そんなこと…ありません、私、お母さんのことが」
「そんなはず無いわ、だって母さんがあなたのためを思って『お仕置き』してるのに治癒魔法を使っているじゃない」

 もちろんフェイトはそんなものを使っていない。
 だが現実にフェイトの傷は少しづつ塞がり始めていた。
 フェイトは混乱しているがアルフには思い当たることがあった、紫音から渡された札だ。
 確か紫音は持っているだけで効果があるといっていたが、ここまで即効性があるとは思わなかった。
 渡された時はフェイトの損にならないなら持っていてもいいと考えていたが、最悪の状況で最悪の発動をしてしまっている。
 プレシアが腕を振り上げた時、アルフは思わずフェイトを庇っていた。

「邪魔をするの?駄目な使い魔ね」
「これはフェイトがやろうと思ってるんじゃないんだ!フェイトは治癒魔法なんか使ってない!これだよ、紫音って現地の魔道師のガキが持ってた紙切れ!これに治癒魔法がかかってたんだ」

 そう言ってアルフはフェイトの懐から札を取り出してプレシアに見せた。
 プレシアは札を引っ手繰るとじっと見つめ始めた。
 つい、見覚えがあるのか?と聞きたくなってしまったが余計な刺激は与えないことにした。
 下手に意識をこちらに戻して再び鞭打ちを再開させるわけにはいかない、できればこのまま終わって欲しい。

「答えなさい、これを持っていた現地の魔道師は紫音というのね」

 こんなことを聞かれるのは予想外だった。
 プレシアが何を求めているのかは知らないが『はい』とだけ答える。

「もしかして、その紫音の苗字は紅かしら?」
「はい、紅紫音って名乗ってました」
「できる限り詳しく教えなさい、あなたが紅紫音について知っていることを全部」

 そう言われても詳しく知っているわけではない。
 たった数日しか顔を合わせていない上に直接話したのは温泉と街で偶然あった時くらいしかない。
 そこでアルフは温泉で盗み聞きしたことを思い出した。
 正確には紫音本人ではなく父親の紫電のことだがこの際構わないだろう、とにかくプレシアが満足する話をすればフェイトに対する仕打ちが終わると考えたのだ。
 曰く、父親は紫電といい、ロストロギアと共に次元震に消え去った。
 曰く、10年ほど年を取って戻ってきた。その際赤ん坊の紫音を連れていた。
 その他にも盗み聞きしたことをできる限り思い出して伝える。
 一通り話し終わるとプレシアは急に笑い始めた。
 部屋中に響き渡るほどの大声で笑ったかと思うと奥の部屋に引っ込んでしまう。
 フェイトとアルフはそれを唖然と見ていたが、結局何がプレシアを満足させたのかは分からなかった。
 プレシアは泣きながら笑っていたのだろうか?床には涙の後と思われる水の後が残っていた。


 現在――翠屋

「戦闘不能とは聞いていたが…まさか犯罪者に誘拐されていたとは、日本魔道庁の秘密兵器『紅』もたいしたこと無いな」

 客のいなくなった翠屋店内でクロノを交えて今後の相談が行われていた。
 一般人に話せる内容ではないので桃子、恭也、美由希は席を外してもらっている。
 そこで今後のことも考えて一度紫音と顔を会わせたいとクロノは提案した。
 当然紫音はいないので顔を会わせるどころではない、紫音が誘拐されたことを知られるのは管理局に大きな借りを作ることになってしまうだろう。
 だがその行方を捜すのに管理局の協力があればずっと楽になることも確かだった。
 迷った末、管理局の力を借りて紫音の捜索をすることにしたのだ。

「捜索するとなると局員を投入したいんだが?協力と言っても僕一人だけじゃ何もできないぞ」
「日官魔道協定で介入できる管理局員の数は限定されていますから…別の次元の可能性を調べて下さい。日本国内は魔道庁が担当します」
「そんなこと言ってる場合じゃないと思うんだが」
「日本は奇妙な国でして、実益よりも体面を取ることの方が多いのです」

 やれやれとクロノは溜め息をつく、紫音の基本的なデータは資料で見ている。
 管理局に入れば優秀な局員になるかもしれないのに、才能のすべてを引き出せずにこの国で埋もれて行くのは少し勿体無い気がした。
 やがてビデオの準備ができた。
 管理局という立場から紫音誘拐の現場を見てもらおうという判断だった。

「ジュエルシードを取り合っている魔道師はフェイト・テスタロッサと言ったな…エイミィ」
『はいは〜い、データ検索完了、プレシア・テスタロッサに間違いないね』

 クロノの周りにプレシアのデータが浮かび上がった。
 空中の画面というものを始めてみる地球人たちはビックリしているが、見慣れているクロノは別に気にしない。
 ビデオの女性と画像のプレシアは同一人物で間違いないが、それよりもデータと現実の差異が気になってしまう。

「これによると娘の名前はアリシアとなっているが?」
『かなり前に死亡しているね、生きていたとしても30にはなっているはずだよ』

 そこまで年が離れているならアリシアとフェイトは別人と考えた方がいいだろう。
 だが新たに子供を作ったにしては似すぎている、そもそも夫も死亡しているのだ。
 半分別の血が入ってここまで似るなんてありえないだろう。

「夫、娘、息子の死亡が同じ日だな」
『息子の名前、シオン・テスタロッサだって、紅の魔道師も紫音って言うんでしょ?自分の息子を思い出してついつい攫っちゃったんじゃないの?』
「そんなバカな、26年も前のことだぞ今更他人の子供を攫ってどうする?しかも死んだのは当時1歳にも満たない赤ん坊だ。9歳の子供とは違う」

 そう言ってクロノは次々にデータを現した。
 適当に画像を出していると誰かが『紫電』とつぶやいた。
 その言葉が気になったので『シデン』で検索するとプレシアの夫の名前がそうだった。

「ああ、夫の名前がシデン・テスタロッサだな。36年前に次元漂流者として登録されているが…出身97管理外世界!旧姓シデン・クレナイだって!」
「間違いない、この男は紫電だ!」

 カグツチは画像を見ながら叫んだ。
 もっとも長く紫電と付き合っていたカグツチが見間違えるとは考えられない、森田と士郎も同じ考えのようだ。
 しかしクロノは納得しない、記録上で紅紫電は8年前のロストロギア事件で死亡したことになっているのだ。
 だがそこは森田が8年前の真相を話して落ち着いた。今更隠すことでもないと判断したのだ。
 そして管理局の記録と魔道庁の記録を合わせることで真実が見え始めた。
 8年前、日本で行った異界封じに飲み込まれた紫電はどこをどう彷徨ったのかは知らないが36年前のミッドチルダに辿り着いた。
 そこでプレシア・テスタロッサと出会い結婚、元々紅の仕事を嫌っていた紫電はそのまま永住することを決意して2児をさずかる。
 10年後、何かが起こり紫電は再び異界封じを行う。
 その結果彼は息子を連れて8年前の日本に姿を現し、同時に26年前のミッドチルダでは死亡として扱われた。

「しかし…異界封じは紅の奥義だ。それを再び使うなんて何があったんだ?」
「プレシアは次元航行エネルギーの研究をしていた。その駆動炉ヒュウドラの暴走でアリシアは死亡、恐らくシデンはシオンを守るために異界封じを行ったんだ。駆動炉自体を飛ばそうとしたのか、自分たちが飛んで逃げようとしたのかは分からないが」

 そこでなのはが手を上げていることに気がついた。
 あまりにも重い内容だったので自分から意見を言うことができず、気づいてもらえるのを待っていたのだろう。

「次元航行エネルギーって何か知らないけど…それってそんなに危ないものなの?」
「文字通り次元移動するためのエネルギーだ。暴走事故の被害が少ないのは異界封じのおかげだな、本来は数倍の被害が出てもおかしくないしプレシアが生き残ったことも奇跡的だ」
「それじゃぁプレシアさんや紫電さんは、そんなに危ない所に自分の子供たちを連れて行ったの?」

 そう言われて言葉に詰まる。
 自分の仕事ぶりを子供に見せることはあるかも知れないが暴走の危険がある現場に自分の子供を、しかも片方は1歳に満たない赤ん坊を連れて行くのは考え難い。
 事故が起きない自信があったのか?
 連れて行かざるを得ない事情があったのか?

「エイミィ調べておいてくれ」
『了解! それにしても意外なところで誘拐の理由が分かっちゃったねぇ』
「26年前に死んだと思っていた息子が生きていたんだ。誘拐したくもなる」
「何はともあれ、無事なことは確かでしょう。少なくとも拷問とかそういうことはされてないでしょうし」

 なのはは窓から空を見上げた。
 すでに夜になって星が瞬いている。
 紫音がプレシアの息子ということはフェイトとは兄妹ということになる。
 父親が死んだ紫音はそのことを知らないがプレシアとフェイトにとっては生き別れの家族と再会のはずだ。
 感動して抱き合っているのだろうか?家族で団欒をしているのだろうか?
 家族とあえて本当によかったと思う反面、結局出生が分からなかったフェイトのことが妙に気になった。
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.18 )
日時: 2008/03/11 18:37
名前: noa

 料理の味は覚えてない。
 それよりも母の様子が気になって仕方が無かった。
 母と食事を共にしたのは何年ぶりだろうか?
 最後に笑顔を見たのはどれくらい前だったろうか?
 いつだったかは思い出せないがそんなことはもうどうでもいい、これからはずっと見続けることだってできる。
 ただ一つ気になるのは…

「それじゃ、皿洗いしてくるぜ」

 何で彼は当然のようにここにいるのだろう?
 母が彼を連れて行ったことは見た映像で知っている。
 ジュエルシードを取り合っている現地の魔導師、人質なり彼の持っていったジュエルシードのありかを聞き出すなりすることはあるだろう。
 それが自分の母を『母さん』と呼び、母もそれを受け入れているのはどう考えても異常だ。

「いいのよ、私が洗うから部屋に戻ってなさい」
「そういう訳にはいかないぜ、男の子は見栄を張るものだってアルフが言ってた」

 思わず自分の使い魔の方に振り向いた。
 アルフは首を左右に振って『そんなことは言ってない』とアピールしている、同時にそんなことを言いそうな存在が一人だけいることを思い出した。
 紫音の相棒、白い狼と青年の姿を持つ人狼のカグツチなら似たようなことを言うに違いない。
 今の紫音はカグツチとアルフを間違えている、それが自分の母であるプレシアを母さんと呼ぶことにつながっているのだろうか?
 紫音の姿が消えると母の顔はいつもの冷たい表情に戻った。
 悲しいことだがやはり自分ではなく、彼がいたことで母は微笑んでいたのだ。

「何で戻ってきたの?フェイト」
「母さんが彼を連れて行ったって聞きました。だからそれを確かめたくて」
「そう、ただジュエルシードを集めていればよかったのに」

 声もさっきまでの暖かさが無くなっている。
 いままで母と過ごしてきた自分ではなく、ぽっと出の彼が母の笑顔を取り戻せることに嫉妬を覚えてしまいそうになるが考え直す。
 どんな理由であれ母は元気を出してくれた。
 なら素直にそれを喜べばいい、彼に感謝を述べればいい、頭の中でそう結論付けた。
 だがどうしても聞いておかなくてはならないことがある、これを聞かないうちには理解はしても納得はできないだろう。

「いいわ、教えてあげる。シオンは私の子供、かわいい坊や」
「子供って、フェイトだってアンタの子供だろ!何でこんなに扱いが違うんだよ」

 プレシアは一瞬『何を言っているんだ』というような顔をした後、大声で笑い始めた。
 あまりに突然のことでアルフも驚いていると、腹を抱えたままフェイトの方を見て口を開いた。

「そうだったわフェイト、あなたも私の子供だったわね、あはははははははははは!」
「お母さん?」
「いいフェイト?あなたはシオンの妹よ、シオンはあなたの兄さんよ、それを守っている限り私はあなたを愛してあげるわ」
「いったいどういう…」
「さぁ、いっしょに皿洗いを手伝ってあげましょう?みんなでやったら早く終わるわ」

 まだ聞きたいことがあったがこれ以上ははぐらかされるだけだった。
 ただ一つだけ分かったことは、母は自分を愛してくれると約束してくれた。
 その条件として『紫音の妹でいろ』と言われたからには彼の妹になろう、精一杯彼と兄妹として接しよう。
 調理場には泡にまみれた紫音がいた。
 皿洗いなどしたことが無かったのだろう、洗剤を多く入れすぎたらしく皿を確認することも困難な状態になっている。
 母と共に彼に近づく、息を吸い込んでここに辿り着くまでずっと考えていたセリフを口にする。

「兄さん、私も手伝うから」

 その一言で私は彼を家族にした。


 その日からフェイトは現地の隠れ家よりも時の庭園ですごす時間の方が多くなった。
 一日のジュエルシード探しが終わったら時の庭園に戻り、家族で団欒する。
 最初、アルフはかなり警戒していた。
 ジュエルシードが見つからないたびにまたフェイトが鞭で打たれるのではないかと心配していたが、プレシアはそのようなことをせずに労いの言葉を投げかけ、次第にアルフも安心していった。
 そうしてすごした数日の間に3つのジュエルシードを発見できたことは十分な成果といってもいいだろう。
 フェイトがジュエルシード探しをしている間、紫音は何をしているのかをアルフが尋ねたことがあった。
 本人曰く、時の庭園の探検と魔道の自己鍛錬らしいが、魔道の自己鍛錬について尋ねようとしたらプレシアが睨みつけてきた。
 カグツチとアルフを混合させていることからプレシアが紫音の記憶に何らかの手を加えたのは間違いないだろう。
 プレシアが下手に以前のことで刺激して記憶が戻ることを警戒したのを感じ取ったフェイトとアルフはそれ以上聞くのを止めた。
 紫音が元に戻ったとして困るのはプレシアだけでは無い、プレシアが以前のように戻れば紫音の妹でいることによって母と過ごしているフェイトの生活は壊れてしまう。
 以前の生活と完全に切り離すことを狙って魔道鍛錬自体を止めさせようとしたが、それは紫音本人が拒否した。
 フェイトを兄妹として認識している紫音は彼なりに悩んでいるらしい。

「魔力はあって困るもんじゃないし、妹が頑張ってるのに兄が見てるだけなのは情けないぜ」

 一度月下炎刃を持って探索についてこようとしたのを三人がかりで必死に説得した。
 結局デバイスが無くては探索に参加してはいけないとプレシアが言ったのをしぶしぶ受け入れたが、その感情が日増しに大きくなっているのは誰の目にも明らかだった。
 紫音の身体能力はフェイトもよく知っているので探索自体はできるだろう、だが万が一なのはやカグツチ達と出会ってしまったら一気に記憶が戻ってしまうかもしれない。
 そのことを考えると気晴らしに街へ連れて行くことも危ない。
 結局、外出の許可をもらえず不満を募らせながら、発散する『何か』を探して時の庭園を歩き回ることが紫音の日課になってしまっている。
 紫音は着々と不満を募らせているころ、フェイトも少し焦っていた。
 ジュエルシードの合計は紫音が一つ破壊してしまったので20個、そのうち自分たちが6個集めたわけだがいよいよ見つからなくなってしまった。
 残りの数が少なくなれば発見はそれだけ困難になるのは当然だが、魔道庁及び管理局が何個か発見したと仮定しても5〜6個はまだ残っているはずなのだ。
 こうなると海に落ちてしまったことを可能性に入れるしかない。
 かなり危険だが海に直接魔力を叩き込んでジュエルシードを無理やり活性化させれば封印もできるはずだ。
 アルフは止めろと言う、プレシアが暴力を振るわなくなった今、そんなに慌てて集める必要を感じなくなったからだ。
 逆にフェイトは今のうちに集めておかなくてはいけないと主張する、こちらは個人だが相手は組織なのだ。
 向こうが本気になって海中の捜索を始めたら人数の少ないこちらは圧倒的に不利になってしまう。
 紫音がどこからかデバイスを持ってきたのはそんなことを相談していたときだった。

「で、これどうやったら動くんだ?」

 最初紫音はただの紅いビー玉だと思っていたらしい。
 ビー玉なんか持っていてもしょうがないのでフェイトに渡そうとしたらデバイスだと判明したのだ。

「そもそもどこで見つけたの?デバイスって簡単に見つかるものじゃ無いと思うけど」
「俺の部屋のタンスの裏に落ちてたぜ、落ちた札を探してたら見つけた」
「タンスの裏って…なんでそんなところに」

 畳、和タンス、ちゃぶ台、紫音の部屋は時の庭園の中で異常な雰囲気を放っている。
 そもそもプレシアは日本に来た事が無いのに何でそこまで純日本風の部屋を作れたのか理解できない。
 日本で育った紫音に合わせて部屋を作ったのかと考えたが畳やタンスはそれなりの年季が入っていて一朝一夕で用意したものでないことが分かった。
 そんな部屋で見つかった物ならば以前部屋に住んでいた人物の物と考えるのが妥当だろうが、あいにくフェイトには日本風の部屋に住む人物に心当たりは無かった。

「で、全然動かないけど壊れてんのか?壊れてるなら持っててもしょうがないぜ」
「起動キー自体が分からないから…作った本人じゃないと分からないと思う」
「作った本人…母さんだろうけど、教えてくれそうに無いぜ」
「それだけ兄さんを心配してるんだと思うよ」
「ダメもとで聞いてみるぜ、教えてくれたら儲けモンって程度だけど」

 どうせ無理だろうな〜と言いながら苦笑いをしている紫音だが、フェイトは母が教えることは絶対に無いと考えていた。
 紫音がデバイスを持ったら今度こそ無理やりにでも探索について来るだろう。
 そうなったら記憶が戻る危険、暴走体との戦闘で負傷する可能性、心配事を上げればキリが無い。
 プレシアが紫音をそんな状況に放り込むはずも無い、起動キーを知っていたとしても知らないと言い張って教えたりしないはずだ。

「それじゃぁ、私はアルフとジュエルシード探しに行くから」
「気をつけるんだぜ、怪我でもしたら悲しいからな」
「そうだね、気をつける」

 たとえフェイトが怪我をしてもプレシアは悲しまない。
 紫音は悲しむだろう、兄として妹の心配をするはずだ。
 そしてプレシアは悲しむ紫音を見て悲しむ、自分に対して悲しんではくれないだろう、むしろ紫音を悲しませたとして怒るかもしれない。
 そう考えること自体、自分と母の心が繋がっていないということなのだろうか?
 ジュエルシードをすべて集めてプレシアの望みがかなえば、鳴海から完全に離れて紫音が元に戻る心配が無くなれば、こんな事を考えなくて済むのかも知れない。

「なぁ、フェイト、俺はちゃんと兄貴してるかな?」
「いきなり何いってるの?兄さんは兄さんだよ」
「あんまり兄貴っぽいことをした記憶がないぜ」
「兄さんのおかげで母さんは元気になったから」
「だったらいいんだけど、まぁそんだけだぜ」


 フェイトとアルフは転移で鳴海に向かった。
 今の自分が行っても役に立たないことなどよく分かる。

「そろそろ潮時かもなぁ」

 プレシアの子かフェイトの兄かと聞かれたら、どう答えるかなんて決まってる。
 一日たりとも手入れを欠かさなかった月下炎刃を持って、紫音はプレシアの部屋に向かって行った。 
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.19 )
日時: 2008/03/11 18:40
名前: noa

「入るぜ、母さん」

 眠り続けるアリシアの前でプレシアは何かの作業をしていた。
 紫音が入ってきたことに気がつくと手を休める。

「あら、どうしたのシオン」
「フェイトはジュエルシード探しにいったぜ、かなりやばいことするみたいだった」
「そう、ちゃんと回収できればいいんだけど」

 その言葉を聞いて紫音は溜め息をつく。
 プレシアは紫音が何をそんなに呆れているのか分からない、どこか調子が悪いのかと見当違いのことを心配してくる。

「デバイスを見つけたんだ。動かしたいけど起動キーが分からなくて、母さん知ってる」

 心配するプレシアを無視して持っていたデバイスを見せた。
 プレシアは少し驚いてデバイスを受け取る。

「これをどこで見つけたの?」
「俺の、いや、父さんの部屋だぜ」
「そう、あそこは手を加えずに保存しておいたから見落としていたのね」

 懐かしむような悲しいような表情をしながらそれを見つめる。
 しばらく見ていたが紫音の手の中にそれを戻す。

「これはお父さんが作ったの、でも使おうとしなかった。お父さんは自分の知る魔法を使うことを嫌っていたから」
「嫌っていた?」
「このデバイス、クリムゾンソウルにはお父さんの過去が封じてあるの、これを使う時は家族ではなく過去の姿に戻る時」
「そんなに大変なものなら母さんも起動キー分からないか」
「さぁ?過去の自分の魂の言葉って言ってたけど、何のことか」
「過去の自分の魂、紅の魔道、その心得ってことか」

 プレシアの顔が驚愕に歪む、紫音の記憶は封印していたはずだった。
 ここにいるのは紅紫音ではない、自分の息子シオン・テスタロッサのはずなのだ。
 それなのに何故 『紅』 などという単語が出てくるのか?
 何故 『魔法』 ではなく 『魔道』 と言うのか?

「シオン、あなた……まさか」
「記憶が戻ったのかって? 違うな、初めから残ってたんだぜ」

 日本の魔道は媒体さえあれば魔力が無くても扱うことができる。
 そして紫音は紅の唯一の後継者、万が一にも敵に操られたりしては対抗手段など存在しない。
 そこで取られた安全装置、体内に直接魔道を組みこんだ媒体を埋め込み、精神的な攻撃を受けた際に自動で発動して防壁を張るのだ。

「初めに体を調べていたら埋め込まれた媒体に気がついてたかもしれないけど、まぁ後の祭りだぜ」
「だったら何故、何故私の子供になったの? あなたが紅紫音なら、シオン・テスタロッサじゃないのなら!」
「一つは母さんが埋め込もうとした記憶、アリシアの記憶を元にしたんだろうけどそれに残っていた母さんがすごく優しそうだったから」

 赤ん坊の時に世界を渡った紫音には当然家族と共に過ごした記憶が無い。
 そこでプレシアが取った行動はアリシアの記憶を改編して上で紫音に埋め込もうとしたのだ。
 その前の段階、今までの紫音の記憶を消すところで安全装置が働いたのだが、一応プレシアが埋め込もうとした記憶も認識していた。

「家族ができるって知ったときはスゲェ嬉しかった。こんな優しい母さんなら俺も欲しいと思ったんだ。紅を捨ててもいいかなって」
「だったらずっと家族でいて、今のことは聞かなかったことにするから、ずっとシオン・テスタロッサでいて!」
「もう一つがフェイトだ」

 フェイトは母親にひどい仕打ちを受けているとアルフは言っていた。
 だが記憶の母親はそんなことをする人物に見えなかった。
 そして記憶の中にアリシアはいてもフェイトはいない、だから尋ねてみた。
 目覚めた時の第一声は 『母さん、おはよう』 その時のプレシアの嬉しそうな顔はすごく印象に残った。
 これからこの人の子供になってもいい、自分が黙っていれば何事も無く家族として付き合うことも可能だと考えるとすごく嬉しくなった。
 だが二言目言った言葉 『フェイトは?』 で気が変わった。
 その言葉を聞いた時の顔も忘れられない、対象を憎むようなその顔は数秒前の喜びを打ち消してしまうのに十分だった。

「何故かは知らないけど母さんがフェイトを嫌ってるのは分かったぜ、原因を取り除くまでフェイトが傷つかないようにしたかった」

 だからフェイトを妹にした。
 フェイトの兄になった。
 そうすれば一時的にでもフェイトへの仕打ちは止まり、その間に原因を探し出して何とかすればいいと思っていた。
 狙い通りプレシアはフェイトに対する妹発言を記憶移植の一部失敗と考える。
 そして現在の記憶を否定することでの過去の記憶の復活を恐れたプレシアはそのままフェイトをシオンの妹として扱った。

「まぁ、その原因も分かりかけてきたけど、時間切れだ」
「時間切れ? どういうこと?」

 どこからとも無くカラスが飛んできて紫音の肩に止まる。
 そのカラスがただのカラスでないことはプレシアにも分かった。
 ここ時の庭園は次元空間に浮かんでいる、そこに普通の生物がやってこれるはずが無い。
 よく見れば足が3本ある、こんな生物が自然に存在するはすも無い。

「ヤタが教えてくれたぜ、管理局が介入を始めたって、魔道庁の方は俺が言ったらなんとかなるけど、母さんは管理局じゃ思いっきり犯罪者だし」

 デバイス――クリムゾンソウルを右手に、月下炎刃を左手に持つ。
 顔つきが変わる、もう母親を見る子供の顔ではなくなった。
 そこにいるのは戦士、戦いを覚悟し、相手を傷つけ傷つけられることを覚悟した一人の男。

「プレシア・テスタロッサ! 大人しく魔道庁に投降してもらおうか、うまくいけばこれまでと同じ生活もできるはずだぜ」

 プレシアは少しの間黙っていたが、デバイスを起動してバリアジャケットを身に纏う。
 紫音を見る目には狂気が浮かんでいた。
 そういえば自分に記憶操作をする直前の顔がこうだった気がする。
 優しい顔ばかりだったのですっかり忘れていた。

「まだよ、あなたの中の媒体を取り出してもう一度思い出をあげる。フェイトがジュエルシードを持って帰ったらアルハザードへ向かう、管理局も魔道庁も手は出せないわ」
「無理だぜ、フェイトはなのはに勝てない、ジュエルシードを持ってくることは無い」
「何故言い切れるの?」
「フェイトはアンタのために戦ってるけど、アンタはフェイトに何も返してない。だがなのはフェイトと分かり合いたくてぶつかろうとしている。ケンカってのはしっかり相手を見たほうが勝つってカグツチが言ってたぜ」
「一理あるわね、ならあなたは私に勝てるのかしら? 私はあなたを手に入れる為ならどんなことでもするつもりよ」
「なめんじゃねぇぜ! 『その魂、紅なればいかに血潮を纏おうと刃欠けることあらず』」
「起動キー? させないわ!」
「言わせて貰うぜ! 『炎の剣は心中に、我と共に敵を焼かん、目覚めろ! クリムゾンソウル!』」 『set up complete』

 紫音の体を魔力が纏う。
 同時にプレシアから魔力弾が放たれるが、単発なら問題ない、簡単に避けられる。
 目の前に札を投げつつ移動する、この部屋は狭い、大広間まで誘導したほうが動きやすいと判断した。
 札から発生した光が一時的にプレシアの視界を奪う、光が収まった時、紫音の姿はその場に無いがあわてずに探索魔法を使う。
 紫音が大広間に移動していることを確認すると今度は転移魔法で先回りする。
 場所を移動したのは紫音の作戦だがそれはプレシアにとっても都合がいい、アリシアの眠るこの部屋では強力な魔法を使えなかったが大広間ならかなりの魔法を使うことができる。
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.20 )
日時: 2008/03/11 18:41
名前: noa

「鬼ごっこは終わりよ、もっとも、転移魔法が使えないんじゃ時の庭園から出ることもできないでしょうが」

 大広間に入ってきた紫音の姿は先ほどと変化していた。
 プレシアが用意した普通の服ではない、紅い法衣、紅の戦闘服にも見えるが細部が異なっている。
 一番違うのは右手につけている指なしグローブだろう、本来紅はそんなものを付けないがそこが普通のデバイスでの杖にあたる部分となっている。
 激しい動きをすることを想定して、邪魔になるものを持たないように配慮した結果だろうが当然それだけ通常の魔法の使用は制限される。
 もっとも通常の魔法を使用せず、細かいものは札で対処できるので問題は無いが。
 プレシアが少しばかりの怒気を含んでいるのはバリアジャケットが紅を象徴しているからだろう。

「そうでも無い、ここは魔道関係の資料が豊富だったから試作品ならできたぜ。精度は分からないけど日本に出る程度ならできるはずだぜ」
「記憶にミッドチルダ公用語を入れたのは間違いだったかしら?資料室には鍵をかけてたはずだけど」
「紅はピッキングも教えるからな、魔力的な鍵もあけられるぜ、面白そうな資料がたくさんあったのに、『FATE計画』とかな」

 プレシアの動きが止まる。
 だがそれは一瞬だけですぐ元に戻る。
 すぐに何事も無かったように魔力のチャージを始めた。

「アレを見たのなら私がフェイトを嫌う理由も分かるでしょう?」
「ああ、アンタが母親として最低の人間だってのは分かったぜ、こんな女に惚れた親父は頭がどうかしてたんだ!」
「なんですって!」

 この言葉にはさすがに動揺した。
 ある程度の罵倒なら予想していたが、まさかいきなり最低の人間、頭がどうかしているとくるとは思っていなかった。
 適当な魔法でダメージを与え戦意をそごうとしていたが変更する。
 最大級の非殺傷魔法で思いっきりダメージを与えることにした。

「俺がアンタの子供なら、フェイトは俺の妹だ、アリシアの妹だ、アンタの子供だ!」
「あの子はアリシアじゃ無い、アリシアの姿を真似た人形よ」
「あの子はアリシアじゃねぇ! アリシアは死んだ、生きてるフェイトを愛してやれ!」
「知った風な口を聞いて、サンダースマッシャー!」 『Thunder smasher』
「防御だ!」 『Protection』

 魔力の奔流が紫音を飲み込み、そのまま壁を突き抜けて行く。
 光と煙が収まった時、紫音は3部屋ほど壁を突き抜けて瓦礫に埋まっていた。
 バリアジャケットもところどころ損傷して大ダメージを負ったことが一目で分かる。

「おまえ……札の防御を組み合わせてなかったら一発でやられてたぜ」
『Sorry my protection is not strong』
「あー、そうか、紅の魔道が詰まってるんだったな、防御に期待したのは間違いだったぜ」
『But attack is strong』
「例えば?」
『Blade set up』

 紫音の右手に紅い刀が現れる。
 刀身から柄まですべて魔力で作られたそれは全く重さを感じない。
 普通の刀を振るよりも数倍速く腕を動かすことができ、普通の刀よりも圧倒的に切れ味が鋭い。
 しかも非殺傷設定で相手を傷つけずに倒すことも可能となっている。

「なるほど、やっぱり他の世界の魔道はすごいぜ」
『Thank you』
「お前をほめたわけじゃないぜ」
『You are bad master』
「共に戦う相棒に対してひどい言いようだぜ、褒めて欲しいならそれなりに働いてもらうぜ、空破斬だ!」
『OK Ku-Ha-Zan』

 プレシアは倒れているであろう紫音を回収するため瓦礫に近づいてきた。
 しかし魔力の高まりを感じて足を止める、直後に飛んでくる無数の紅い刃。
 命中することを考えずにやたらめったら打ち続けているだけだ、万が一当たっても自分のバリアジャケットを切り裂くこともできない。
 紅紫電を夫に持つプレシアは紅の魔道について多少の知識を持っている。
 空破斬は魔力を飛ばして相手を切り裂く技、切り裂くことを目的としたそれは肉体的ダメージを与えても魔力ダメージを与えることを考えていない。
 生身の肉体には効果が高いが、シールド等で体に届く前に防いでしまえば傷一つ付かないのだ。
 加えてプレシアのバリアジャケットは普通の魔道師のシールドよりも防御力があるし、非殺傷設定で放たれる空破斬はさらに威力がなくなっている。
 この程度の攻撃けん制にすらならない、全く気にせずに前に進める。

「そんなものより爪楊枝でも投げた方が効果があるわよ、大人しくこっちに来てデバイスを渡しなさい」
「こいつを渡したらどうするんだ?」
「砕くわ、それは家族の絆を壊すもの、存在してはいけないの」
『I want to save my life』
「絆なんて物はこんなもんで壊れたりしないぜ、その程度で壊れる絆なんて間違ってる」
「それもカグツチとやらの言葉?」
「いや、俺のオリジナルだぜ、それじゃぁ絆を確かめるために……人生最初の親子喧嘩だ!」
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.21 )
日時: 2008/03/11 18:42
名前: noa

 空破斬の刃とは違う、質量を持った物が飛んできた。
 何が飛んできたかは分からないがシールドを発生させて防御する。

「確かに爪楊枝よりは威力があるけど、私のシールドを破ることはできないわ」

 飛んできたのは刀、紫音が左手で持っていた月下炎刃だった。
 プレシアのシールドは硬い、魔力を込めていてもこの程度なら弾き返してしまう。
 乾いた音をたてて地面に落ちた月下炎刃を乗り越える、再び空破斬が飛んでくるが無視する。
 魔力でできた刃を持つ紫音の姿を確認した。
 後はバインドで動きを封じる、そう目論んでいたプレシアは後から思わぬ衝撃を受ける。
 ダメージは無いがそれなりの衝撃、何故後から攻撃を受けたのか分からず思わず振り返る。
 そこには何も無い、先ほどのサンダースマッシャーで穴が開いた壁があるだけ。
 なら今の攻撃は?
 落ちていた月下炎刃の刀身が砕け散り、柄だけになっていることに気がついた。
 元々魔力を込めていた上に空破斬の刃が当たったのだろう、簡単なバクダンみたいなものになって辺り構わずに魔力を撒き散らしたのだ。

「大! 回! 転!」 『Hyper-tornado』

 それが紫音の狙ったものだと気がつくのは声が聞こえたからだった。
 忘れていた、紅紫音は日本魔道の隠し玉、戦闘のプロなのだ。
 日本の魔法技術が低いことで甘く見ていた、そうでなくても相手から目を離すなんてうかつだと言わざるを得ない。

「シールド!」 『Round Shield』
「雷電蹴りぃぃぃぃぃぃぃぃ!」 『RAIDEN-Kick』

 シールドがギリギリで間に合ったが安心はできない。
 足の裏からシールドにぶつかってきた紫音はドリルのように回転する。
 空破斬のような射出系の技の威力が通常より落ちたのなら、このような突撃系の技はさらに威力が増していた。
 デバイスの使用によって効率よく魔力を利用できるようになって技の完成度はさらに上がっている。
 魔力でできた刃で攻撃するのとは違う、体ごとぶつかるのでいくら非殺傷設定といってもかなりの肉体ダメージを喰らうことになる。
 紫音の魔力自体はプレシアより低い、だが一点突破の攻撃は少しづつシールドにめり込んでいく。

「このままぶち破ってやるぜ」

 紫音がさらに魔力を込める、このままでは押し負けると判断したプレシアはシールドの角度に変化をつけて紫音の体を受け流した。
 予想通り紫音はプレシアを通り越して反対側の壁に吹っ飛んでいく。
 壁を突き破る音が連続して聞こえたのでまた2〜3部屋先まで行ったのだろう。
 先ほどはプレシアの攻撃を喰らって移動したが今回は紫音の技で壁を突き破ったのでダメージは無いと判断したプレシアは追撃することにした。

「フォトンバレット・マルチショット」 『Photon Bullet Multishot』

 普通は一発のフォトンバレットを連続して打ち出す。
 サンダースマッシャーを防いだのはデバイスのプロテクションと紅魔道の札が合わさったから可能だった。
 しかし札には回数制限がある、何度も攻撃を防ぐことはできないし、長時間防御を展開することもできない。
 時間をかけた飽和攻撃を続けていればやがて耐え切れなくなる。
 その判断は当たっている、紫音はサンダースマッシャーで防御用の札をすべて使い切っていた。
 さすがに無数の魔力弾をすべて回避することはできない、壁を壊しながら隣の部屋に移動する。
 だがその動きはプレシアに読まれていた。

「サンダースマッシャー」 『Thunder Smasher』

 左右どちらの部屋に逃げたのかは分からないが関係ない、サンダースマッシャーを横なぎに発射する。
 大広間の中央から時計の針のように動き、一つ一つ周りの部屋を潰していく。

「ぐわぁ!」
「そこね、いい子だからじっとしていなさい」

 3部屋目で命中した。
 すかさずその部屋に集中して攻撃を加える。
 先ほどのようなミスは犯さない、完全に気絶するまで攻撃を継続する。
 数十秒の間サンダースマッシャーを打ち続けて、ようやくプレシアは攻撃を停止した。
 病気で弱ったこの体、かなり疲労が蓄積したが何とか勝つことができた。
 さすがに自分と夫の子供だと思う、早く身柄を回収してもう一度記憶処理を施さなければならない。
 もはや瓦礫だけとなった部屋に入ると、紫音は部屋の中央でうつぶせに倒れていた。
 バリアジャケットはすでに解けている、維持する魔力も残っていないのだろう。
 9歳の子供といってもプレシアには抱えていくほどの体力は残って無い、魔法を利用して紫音の体を宙に浮かせる。

「甘いぜ!」
「何ですって!?」

 右から声が聞こえた。
 とっさにシールドを張るが何もこない、その方向には壁があるだけだった。
 いや、壁には札が張ってある、この札が声を発したと理解するのと同時に倒れた紫音が偽物だと悟る。
 後から魔力弾、そこはサンダースマッシャーが通り過ぎた後であり見落としていた。
 何らかの方法でやり過ごして反撃の機械を伺っていたのだ。

「フォトンバレット!」 『Photon Bullet』
「こっちだぁぁぁぁぁぁ!」

 違う、フォトンバレットは何も無い空間を飛び去る。
 二重の罠を仕掛けた上で紫音は上の部屋に逃げていたのだ。
 天井に空いた穴から紫音が飛び降りてくる。
 とっさに拳に魔力を溜めて紫音を殴りつける、が、それも罠だった。
 拳が当たった瞬間、紫音の体はバラバラに砕け散り無数の札に変化する。

「これも偽物!?」
「一旦上に上ったけど、降りてきて死んだ振りをしたんだぜ」

 一番最初のバリアジャケットを着ていない紫音がプレシアのデバイスを掴んでいた。
 連続したフェイントのせいで最初に倒れていた紫音はプレシアを呼び込むための罠だと思ってしまった。
 そう思わせること自体が罠だったのだ。

「それでどうするのかしら、あなたはバリアジャケットの維持すらできないでしょう?」
「確かに、バリアジャケットを貫く攻撃なんてできないぜ、でもそっちも無いなら話は別だ」
「解除すると思うの?」
「解除してもらうぜ……紅の翼だ!」

 プレシアがデバイスにこめる魔力、それは再びプレシアに戻ることなく紫音が奪い取り、紅い翼となって空中に放出されていく。
 デバイスを媒介にしているすべての魔法はその効果を発生する前に魔力を吸い取られる。
 それはバリアジャケットも例外ではない、プレシアのバリアジャケットは強制的に解除されしまう。

「紅の翼、確かにこれならデバイスを介した魔法は無効化されるわね。もっとも、自分のデバイスも無効化されるから実戦では使えないらしいけど」
「そうなのか? 一か八かで効果があると信じて使ったんだけど」
「お父さんが使っているところを見たのよ、使うのは嫌がっていたけど他の世界の魔法に興味があったからお願いしたの」
「だったらここから何を考えてるのかも?」
「紅の翼は相手が直接放つ魔法までは消せないわ、対してあなたはボロボロ、こちらの圧倒的有利よ」
「それでも一発ぶん殴るくらいの力は残ってるぜ」
「あなたを気絶させるくらい、一発あれば十分よ」

 お互いに動かないまま時間がすぎる、一瞬でも視線をそらせば相手の拳が飛んでくることをお互いに理解している。
 数秒か数分か、体勢を維持したまま沈黙していたがプレシアが口を開いた。

「何でそんなにフェイトを気にかけるの? 妹といっても数日だけの付き合いでしょう」
「向こうに友達がいるんだ。その友達がフェイトと友達になりたいって言った。俺もなりたいって思った」
「いい友達ができたわね、あなたにも、フェイトにも」
「その言葉をフェイトにも聞かせたいぜ」
「無理ね、私はフェイトを愛していない、愛さない、私が愛するのはあなたとアリシアよ」
「それでもフェイトには母さんが必要だ。俺もフェイトと一緒にいたいぜ」
「私にはあなたがいてくれればいいの」
「殴り合いってのは思いの強い方が勝つってカグツチが言ってたぜ」
「母さんの 『思い』 が弱いと思うの?」
「それを今から確かめるんだろ?」

 紫音とプレシア、二人の腕が同時に相手の顔に向かっていった。
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.22 )
日時: 2008/03/11 18:45
名前: noa

 プレシアが気がついたとき、そこは光の無い真っ暗な空間の中だった。
 右を見ても左を見ても闇が広がるだけ、何故自分がここにいるのかも分からない。

「母さん」

 声が聞こえた方を向く。
 そこにいたのはフェイト、いや、似ているが違う、アリシアだ。
 思わず駆け出しそうになるが足が動かない、アリシアは離れた場所から悲しそうな顔をしてこちらを見続けている。

「母さん」
「無理にこっちとは言わない、選びたい方を選ぶべきだぜ」

 別の方向から聞こえた声、その方向には紫音とフェイトがいた。
 どちらかを選ぶ、つまり自分が望めばアリシアを選択することも出来る。
 しかし紫音はアリシアと別の方向にいる。

「どちらかしか選べないの? あなたとアリシア、両方を選ぶことは出来ないの?」
「望むものすべてを手に入れられるほど人間の手は大きくない、ってカグツチは言ってたぞ」

 アリシアがいた方向から男の声が聞こえた。
 紫音に良く似た男、紫音の父でありプレシアの夫、紫電の姿がそこにあった。

「俺とアリシアか、紫音とフェイトか、お勧めは向こうだけどな」
「こっちへ来いとは言ってくれないんですね、貴方」
「こっちへ来るってのがどんな意味か分かるはずだ。あの時、お前に生きて欲しいから俺は異界封じを使ったんだ。紫音も一緒に飛んだのは予想外だったけどな」

 生きていたからいいじゃないか、と紫電は笑った。
 だが生きている紫音のせいで決断が鈍る。
 紫音も向こう側ならきっと迷い無く選んでいただろう、しかし紫音は反対側、フェイトと共にいる。

「シオン、あなたは母さんと一緒に来てくれないの?」
「友達ができたんだ。初めての友達でさ、まだ全然相手のこと知らないけどこれから付き合って行くうちに分かると思う」
「母さんよりも友達を選ぶの?」
「死んだ人間を頼るのなんて間違ってる。俺はそっちにはいけないぜ、けど母さんがそっちを選ぶなら止めることも出来ない」

 フェイトもいるしな、と紫音は笑った。
 その様子は本当に父親に似ている。
 改めて両方を見比べて、決意と共に一歩を踏み出す。
 後からの声に一度だけ振り向く、微笑んでいる少女に笑みを返してまた前を向き、プレシアは差し出された二人の手を取った。



 プレシアが目を覚ますと見たことの無い天井が目に入った。
 そこが日本の病院だと気がついたのは看護婦、医療機器、隣のベッドで寝ている紫音を確認したからだった。
 最後に紫音と殴りあった記憶までは残っている、時の庭園ではなく日本にいるということは自分は負けたのだろう。

「気がつかれましたか?」

 紫音の近くに座っていた男が声をかけてきた。
 普通に考えれば魔道庁の職員のはずだ。
 森田と名乗った男は予想通り魔道庁の職員で、現状の説明を始めた。
 曰く、紫音とプレシアはボロボロの状態で翠屋の前に転移してきたこと。
 現在プレシアとフェイトの身柄は魔道庁の預かりになっていること。
 これからどうなるかは管理局との話し合いによって決定すること。
 そして、アリシアの 『遺体』 を魔道庁で回収したこと。

「そう、アリシアは……遺体なのね」
「一応周りの装置ごと回収させてもらいました。どうするかの判断を尋ねた方がいいと思いまして」
「この国では火葬するって聞いたけど、夫も?」
「はい、紅一族の墓地に」
「あの人は紅を嫌っていたから、別の場所に移せるかしら? アリシアもそこに」
「手続きをしておきます。他には?」
「フェイトと話をさせてもらえないかしら?」

 森田が部屋を出て行き、入れ替わりにフェイトが入ってきた。
 フェイトもジュエルシード回収となのはとの戦闘でかなりのダメージを負って入院をしていた。 
 それでも自分の身より母親を心配している、その娘に残酷な現実を伝えなくてはならない。
 隠したままにも出来るだろうがそれはアリシアが許さない気がした。
 もしかしたらフェイトに嫌われるかもしれない、今までのことを考えると見捨てられても仕方が無い。
 真剣な母の表情を見たフェイトが緊張している、話す自分も緊張する。

「フェイト、よく聞きなさい、あなたは――」


「フェイト、大丈夫かなぁ」

 病室の外でアルフはつぶやいた。
 隣にはなのはとカグツチが座っている。
 プレシアがフェイトにどんな仕打ちをしてきたか、アルフは一番近くで見てきた。
 さすがに公共の場所でそんなことをするとは思えないが、それでも心配だ。

「でもフェイトちゃんもお母さんと話すことが必要だと思うの」
「そうだけど、やっぱり今までのことを考えるとねぇ」
「恐らく大丈夫だと思いますよ、そんなにひどいことにはならないはずです」

 森田が数本の缶ジュースを持って現れた。
 3人に渡して自分も椅子に座る。

「いやに断定的だな、話を聞いた限りではそう簡単に変わるとは思えないが?」
「これ、プレシアさんを治療した医師が発見しました。背中に張り付いていたらしいです」

 取り出したのは一枚の札、なのはとアルフはどんなものか分かっていないがカグツチは理解した。

「何ですか? これ」
「紅が使用する札だ。夢を媒介にして伝えたいメッセージを相手に直接ぶつける。そんなに強力ではないが、相手が迷っている時の一押しには十分だ」
「これを使用したということは、勝算があったのでしょう。後は結果を信じましょう」

 しばらく誰も喋らなかった。
 やがて扉が開きフェイトが出てくる、目が赤いのはきっと泣いたからだ。
 アルフが病室へ乗り込もうとするがフェイトが引き止める。
 フェイトと感覚が通じているアルフは、フェイトが悲しみと喜びを同時に感じているのを知った。
 顔を洗ってくると言ってフェイトとアルフはその場を離れた。

「フェイトちゃん、泣いてた」
「嬉涙と悲しい涙がごちゃまぜになってるけど、まぁ大丈夫だと思うぜ」

 紫音が病室から出てきた。
 フェイトが入っている間に目が覚めて、飲み物を買いに行くらしい。
 なのはは心配しているが紫音は平気そうな顔で森田から缶ジュースを受け取る。
 結局フェイトとプレシアはどうなったのか?
 その質問に紫音はすぐに答えられない、どういう風に説明したらいいかを悩んでいる。

「まぁ、娘にはなれないけど家族になれたってことかな」

 なのははよく意味が分かっていないが、紫音の言葉ではこう表すのがやっとだった。
 空き缶をくずかごに投げ入れて病室に戻る、疲労した体はまだ睡眠を求めている。



「まったく、見事としか言いようが無いな」

 時の庭園の大広間でクロノは呟いた。
 プレシアと紫音が戦った跡は残っており、そこら中に瓦礫が散らばっている。
 そして辺りの捜査をしている局員の報告を聞くたびに溜め息をついた。

「ホント、一週間でここまでするなんて、すごい根性」
「アルフとかいう使い魔をフルにこき使ったんだろうな、恐らくフェイト・テスタロッサの身柄を取引材料にして」

 管理局員がいくら時の庭園内部を調べても何も発見できなかった。
 プレシアが何を研究していたかのデータはもちろん、その機材、魔法資料、果ては日用雑貨に至るまですべて魔道庁に回収されて文字通りの空っぽとなってしまっている。
 魔道庁が入ってきたのは恐らく決戦の後すぐ、比較的軽症だったアルフに転移を頼んだのだろう。
 管理局が入ったのはそれから一週間後、魔道庁の連絡を受けて時の庭園の座標を特定したが、そこにあったのは生活観の欠片も無い廃墟だった。

「日本は魔法技術が遅れてるから、そういう資料はやっぱり真っ先にほしいんだろうね」
「やはりフェイト・テスタロッサの身柄はこちらで回収するべきだった」
「仕方ないよ、母親が向こうに回収されたのならそっちに行っちゃうって」

 なのはとフェイトの戦いの後、クロノはフェイトをアースラに呼び寄せようとした。
 だが、森田からプレシアを保護したという話を聞きフェイトはそちらに向かってしまう。
 そのままなし崩しでフェイトは魔道庁の保護下に入ってしまった。
 事件の重要人物を二人とも取られたのは痛い、そうして出遅れた結果が今の状況だった。

「事件自体が解決したのはいいことだが、二人の身柄をこっちに移すのはいったい何時になるのか」
「そのことなんだけど、いいニュースと悪いニュース」
「いい方から聞こうか」
「魔道庁とフェイトちゃんが回収したジュエルシード、明日にでも引き渡されるんだってさ」
「悪い方は?」
「プレシア・テスタロッサ、フェイト・テスタロッサ両名はそのまま日本魔道庁が身柄を保護するらしいよ」
「馬鹿な! 犯罪者の引渡しが行われないのか?」
「両名は犯罪者では無く、第97管理外世界への移住希望者扱いなんだって」

 フェイト・テスタロッサ、プレシア・テスタロッサの両名はジュエルシードとは何の関係も無く地球へやってた。
 しかし同時期にジュエルシード事件が発生、魔道庁は彼女たちに協力を要請し受け入れられる。
 その際、連絡の不備があり紅の魔道師及び現地の協力者と交戦、紅紫音は話し合いのためプレシア・テスタロッサと接触することになる。
 その間に現地の協力者とフェイト・テスタロッサはお互いの仕事に乗っ取りジュエルシードを回収、事故でプレシア・テスタロッサと接触が遅れたせいで数回戦闘が行われたこと以外は問題なく回収完了。
 これが魔道庁の用意した筋書きだった。

「管理局と魔道庁の間で何か取引があったみたいだな」
「アリシアの死亡事故を調べるの、上から圧力かかって中止したけどそれだろうね」
「あの事故は管理局が関わっていた。そして魔道庁はそれらの資料を手に入れた……か」
「噂じゃ日本に大使館ができるらしいよ、自分の国に管理局常駐させてまで二人の身柄と資料を持っておきたいらしいってことかな?」
「それも取引の一つだろうな、魔道庁は二人によっぽどの利用価値を認めたらしい」

 現状ではそれ以上調べられないし、上が決断したのなら自分達には手出しできない。
 明日、残ったジュエルシードを受け取り管理局に持って変えれば仕事は終了だ。
 しかしクロノは遠くない将来に再び地球で事件が起きることを予感していた。
メンテ
Re: 魔法少女リリカルなのは 白黒紅 ( No.23 )
日時: 2008/03/11 18:51
名前: noa

「お邪魔します」

 そう言って翠屋に入ってきたのは森田だった。
 事件から一週間が過ぎ、つい先日クロノ達アースラクルーがお礼を言ってきたばかりだった。
 桃子の案内で空いている席に座った森田は日替わりのランチを注文する。

「で、昼間から何の用だ? 公務員」
「いろいろと御報告しておこうと思いまして、まず紫音さんのことですが、しばらく御家族と共にしばらく鳴海に住まわれることになります」
「紫音君が? 彼は紅だ。仕事が終わったら里に戻るんじゃないのか?」

 ジュエルシードの事件は終わったはずだった。
 後処理などがあるかもしれないが、それは魔道庁の仕事だろう。
 戦闘要員の紅紫音がまだ鳴海に残る理由が無い。
 家族という言葉も気になる、紫音の家族といっても父親はすでに死亡している。

「順番にお話しましょう、紫音さんが残る理由ですがジュエルシード暴走体に近い生物が鳴海に発生しています」
「すべて集め終わったんじゃないのか? 何故まだ暴走体が出る」
「それが……紫音さんが砕いたジュエルシードが粉末になって鳴海中にばら撒かれたらしいのです。その後処理、というのが表向きの理由でしょう」
「表向き?」
「さすがに粉末ではそれほど力が無いみたいで魔道庁で対処できます、しかし紫音さんに残るよう指令が出た。どうやら紅の里に戻したくない理由があるみたいですね」

 しばらく考えるが何も思いつかない。
 そもそも紅でもっとも重要なのは紫音のはずだ。
 それを遠ざけておいていったい何が出来るのだろうか?

「長期間なのはと接触させて取り込もうという計画か?」
「それもあるでしょうが、やはり鳴海に置いておくよりは里から引き離す方に意図があるように思えます。まぁアレコレ考えても現状では何も出来ませんが」
「そっちは置いておこう、それで、紫音君の家族とは?」
「プレシアさんとフェイトさんのことです。戸籍を作るときに家族とさせてもらいました。来週からなのはさんと同じ学校に通うはずです」

 日本の法律では両親がそろっていないと養子は取れない。
 しかしプレシアとフェイトは別の世界からやってきたので戸籍など無く、紫音は紅という特殊な立場なので戸籍が曖昧だった。
 そこを逆に利用して戸籍をでっち上げたのだ。
 書類上、プレシアは夫である紫電と離婚時にフェイトを引き取り、さらに紫電が死んだので紫音を引き取ったことになる。

「ついでにユーノさんは私が預かることになりました。ホームステイという扱いになります」

 ユーノの扱いは複雑だった。
 ユーノはジュエルシード回収に来たのであって、それが終わった今日本に残る理由が無い。 
 スクライア一族の元へ返すのが当然だろうが魔道庁は魔道技術の相談と保存されている特殊遺産、及び日本国内で発掘作業されている遺跡の調査協力を餌にユーノを引き止めた。
 スクライア一族も管理局の知らない遺産のことが気になるらしく、一部情報の提供を条件にユーノを預かることを許可したのだ。
 付き合いがある森田がその預かり先に選ばれ、なのはと同じ学校に通うことが決定した。
 ユーノはフェレットの状態ですごすとばかり思っていたらしく、学校についてはかなり驚いていた。

「プレシアさんは病気を患っていることが分かりまして、入院ということになりました。カグツチさんはしっかりしているので紫音さんやフェイトさんの生活に支障は無いでしょう」
「紫電の惚れた女性か、一度挨拶に行くべきだな」
「その時はご一緒します、私もちゃんとした挨拶はまだですから」

 出来上がったランチを森田の席まで運ぶ、コーヒーはサービスでつけておいた。
 紫電に飲ませる約束だったコーヒーを持ってお見舞いに行こうか、それとも結婚したのだから約束は無効になるのだろうか?
 昼時になり客も増えてくる、士郎は厨房に戻り、森田は食べ終わった後、領収書を書いてもらった。


 紅の里、鳴海に来る前の紫音がすごしていた場所であり、その戦闘技術を叩き込まれた場所でもある。
 日本魔道でも重要な位置を占めており、魔道庁の戦闘職員の30%は何らかの形で関わっている。
 また、魔道庁の戦闘技術指導も行っており、研修としても利用される。
 そんな紅の元締めは齢100になろうかという老婆だった。
 その老婆の前にスーツ姿の男が一人、正座をして頭を下げている。

「以上が管理局への対応です」
「日本国内に別世界の魔道師を常駐させるとは、情けない」
「申し訳ありません、しかしそれに見合う対価は得たつもりです」
「確かにそれは認める。特にこの計画が完成すればもう管理局など相手にもならなくなる」
「どこでも似たようなことは考えるものです。向こうの技術の方が数段先ですが、大部分を流用できます」
「製造に4ヶ月、訓練と教育に2ヶ月かかると考えて、今年中には何とかなるのか?」
「そんなところでしょう、12月には専用デバイスも完成する予定です。苦労してプレシア・テスタロッサの資料を確保したかいがありました」
「日本製デバイスを装備した紅の戦士達、日本魔道は紅が守る、永遠にな」

 暗い部屋で老婆の笑い声が響き渡った。



「ユーノ、飯喰いに行くぜ!」

 授業終了の礼をすると同時に教室の扉が開く。
 そのまま教室の中に入ってきた紫音はユーノの首を掴んで教室から走り去って行く。
 教室内の誰も驚かない、この学校に3人の転校生がやってきてからこの光景は当然の物となっていた。
 数十秒後、また教室に現れた紫音とユーノは鞄から弁当箱を取り出して再び出て行った。
 向かう先は屋上、そこには4人の少女達が待っている。

「待たせたな、飯にしようぜ」
「それはいいんだけど、ユーノ君死んでない?」

 ユーノは口から泡を吹いて白目になっている。
 連れて来る時に首を絞めてしまったらしい、気合を送り込んで覚醒させる。
 ユーノは文句を言ってくるが女子達は笑うだけで助けようとしない、この数日の間でユーノはいじられキャラだと認識されてしまったらしい。
 弁当を広げておかずを交換しながら食べる。
 ユーノは森田の妻に作ってもらっているが、紫音とフェイトの弁当はカグツチが作っていた。
 料理が出来るとは付き合いが長い紫音も知らなかったことで、エプロンが死ぬほど似合わないと笑い転げた。
 食事が終わったところで紫音の携帯電話が鳴る。
 相手は森田、学校の時間帯に電話をかけてくる理由はひとつしかない。

「仕事?」
「そうらしいぜ、魔道庁の職員じゃ手こずるのが出たらしいけど、4人なら昼休み中に終わるぜ」
「だったら放課後は暇ね、すずかの家に集合しましょう」
「姉さんにフェイトちゃん紹介したいんです」

 アリサとすずかは魔道について少しだけ説明をしてある。
 本来なら話すこと自体いけないことだが、事件が終わったら説明をすると紫音が約束したので問題の無い範囲での説明が許可されたのだ。

「母さんのお見舞いに行くから、その後なら」
「そういえばフェイトの母さんに挨拶してなかったわね」
「今日お父さんもフェイトちゃんのお母さんに挨拶するって言ってたの」
「それじゃぁ一度挨拶に行こっか、果物とか持って行くわ」
「それよりも早く行かないと魔道庁の人たち大変じゃないかな?」

 ユーノはすでに準備が完了していた。
 フェレットの姿になって紫音の肩によじ登る。

「行こう、レイジングハート」
「バルディッシュ、お願い」
「行くぜ、クリムゾンソウル」

 学校指定の制服から白、黒、紅のバリアジャケットに姿が変わる。
 3人+1匹は勢いよく空に飛び出し、墜落しかかった紫音をなのはとフェイトが支えた。


 紅紫音、9歳、義務教育中。
 まだ空を飛ぶことに慣れていないけど友達と一緒に頑張ってます。
メンテ

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