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第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』
日時: 2008/03/03 22:36
名前: 綾音

皆様こんばんわ。
私今回の司会を行います、通称FLANKERさんの飼い主こと綾音です。

第4回優勝者の熊さん、おめでとうございます。
今回もぜひがんばってください。

そして、この度のリクエストは、「恭也と忍が海辺でデート」となりました。
皆様ふるってご参加ください。


この企画は誰でも参加して頂いて結構です。むしろ書いてくださると嬉しく思います。
作者である私たちからすれば、描写などの練習や刺激になりますので。
ちょっとやってみようかな、と難しく考えずに気軽にご参加を!

最後に。万魔殿メンバーはできる限り書くように!(笑

注意して頂きたいことについて。
※1.優勝者以外、御題のリクエストはしない
※2.投稿はお一人様は1つに限ります。
※3.1位に選ばれた人が次の御題を決める。
※4.期限は提案日から1週間(主催が明記)
※5.お題に沿った、一番よいと思えるシーンを3000文字以内で書くこと
※6.編集OKです。パスワードの設定を忘れずに
※7.感想・投票は感想スレッドに

「題にそって書いて、作家による表現の違いを楽しんでもらう」というのが、私たち万魔殿メンバーの理念です。
ご投稿くださる皆様にはこの理念をしっかりイメージしたものをお願いしたく思います。

最後にもう1つ、皆様がお書きになられた自作SSを使ったものは、以降は自粛して頂きます。ご自分の作品とは関係のないものをお願いします。

この御題の投稿可能期間は3月3日〜3月10日いっぱいまで!

皆様のご投稿を万魔殿メンバー一同、楽しみにお待ちしております!
それでは失礼いたします。
メンテ

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Re: 第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.2 )
日時: 2008/03/03 22:36
名前: 綾音

申し訳ありません。
私の手違いで、御題がご本人の意向と異なったモノになっておりました。
正しくは、「恭也と忍が海辺でデート」となります。

申し訳ありません。
投票されたアイン様におかれましては、よろしければ変更、不可能であれば連絡の上、このまま参加とさせて頂ければと思います。

不手際申し訳ありません。
メンテ
Re: 第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.3 )
日時: 2008/03/04 14:45
名前: アイン

私、月村忍は本日、今までなのはちゃん以外決して為し得なかった偉業を達成致しましたっ!
握っている受話器を握る力が思わず強くなっちゃう。……やばいやばい。気をつけないと、壊したらノエルに叱られる。

「ほんとっ!? ほんとに恭也っ!?」

電話の相手の恭也は、もちろん私の恋人。
ずっと一緒って約束してから色々あったけど、ようやっとちゃんと捕まえた、私の大切な人。
何度聞いても信じられなくて聞きなおしたけど、返事は一緒。

『ああ、何度も言っているだろう。男に二言はない』

「やったぁ! 恭也大好きっ!」

『……何度目だ、このやり取り』

段々声が苦笑から疲れた感じに変わっていく恭也。
あ、まずい。このままだと約束無かった事にされるかも。

「あははははっ! ゴメンね恭也。忍ちゃん嬉しくて嬉しくてっ」

『……そうか』

電話越しの声が柔らかくなったのが、ちょっと嬉しい。

「うんっ! じゃあ恭也。明日は私の車で海だからねっ!」

そうっ! 忍ちゃんは恭也を海に連れ出す事に成功したのですっ!
つまり、早い話が明日は恭也と海デート♪

『了解した。じゃあ、明日』

「お休み恭也っ」

『お休み』

その時、私は浮かれすぎて忘れてた。
恭也は……





「そっか。恭也、海には入れないんだった」

次の日、昼ちょっと前から海辺に来て、パラソル立てて更衣室で水着に着替えて戻った私は、そこでようやく思い出した。

「ああ。出来ないわけではないが、見るほうはあまりいい気分ではないだろうからな」

「……人、多いもんね」

夏真っ只中だし、家族連れも結構多い。
誰かを護る為と、その護る力を作るために負った傷だらけのその身体を、ここでは晒せない。

「まぁ構わないさ。折角着替えたんだし、お前は泳いでくればいい……その……み、水着、に、似合っている」

「……えっ!?」

恥ずかしそうにポツリと言ってくれた恭也。
思わず聞き返しちゃったけど、恭也はもう一回は言ってくれなかった。
でも……ホントに嬉しいなぁ。好きな人に褒めてもらえるのって。

「え、えへへ……じゃ、じゃあさっ。まずはお昼にしようよ。忍ちゃん今日は頑張ったんだよっ?」

「そうだな。頂こうか」

「うんっ! 食べて食べてっ!」

考えるのはやめよ。
恭也は分かってて、それでも来てくれたんだ。
私の我侭で連れてきちゃったのに、私が変な顔してたら恭也に失礼だし。





お昼ご飯に私が作ったお弁当は、今は残さず恭也のお腹の中。
美味しいって言ってくれた恭也に思わず抱きついちゃって、砂の上に落ちちゃった卵焼き以外は。

「そろそろ泳いできたらどうだ? 子供連れは皆少し遅めに昼食のようだし、日が落ち始めたら水温が下がる」

暫く二人でパラソルの下でのんびりしてたら、恭也がそう言ってくれた。

「折角来たんだ。ここで見てるから、行って来い」

「うんっ。じゃあちょっと行ってくるねっ」

恭也にそう言って飛び出した私の頭には、恭也悩殺作戦発動の文字が踊っている。
別に企画とかしてたわけじゃないけど、水に濡れた女の子の魅力は倍増するってなんかで聞いたから、どうせだからやってみよって。

「……なんて、上手くはいかないんだよね……」

折角恭也に見てもらおうと思ったのに、海から上がった私を待っていたのは、

「すっげー可愛い! 名前なんてーの?」

「アンタ一人? 一人だろっ? 俺達と遊ばない?」

ワラワラと群がってくるナンパ男×……何人だろ? とにかくなんか一杯いる。
なによまったく! 折角恭也に見せにいこうって思ってたのに……ってか何人いるのよっ!?

「ま、いいじゃんいいじゃん」

「なんも言わないし、一緒に来てくれるんだろ?」

あ、囲まれた。ってかちょっと!?

「ひ、人の手勝手に握らないでよっ!?」

「まったくだ」

私が手を振り払った時、男の山の後ろから声が届く。
重くて威圧感があるけど、聞き間違えるはずがない。私が大好きな人の声。

「忍、いこうか」

静かな、それでいて威圧するような声に完全に気圧された男達の間を、モーゼみたいに真っ直ぐ歩いてきた恭也は、私を見て少し表情を和らげると、そのまま私の手を取ってきた道を戻る。
追いかけられる人は、いない。
さっきのたった一言に籠められた、まるで全てを押しつぶそうとしてたみたいな重圧を感じて動ける一般人なんて、いるはずがないから。

「……だから来たくなかった」

パラソルの下で、恭也が小さく呟く。って、はい?

「あ、あの……恭也? 今なんて? ……恭也が来たくなかった理由って、身体の傷じゃなかったの?」

私がそう聞いた瞬間、恭也の表情が一瞬だけ動いた。
すぐに元の憮然とした表情に戻ったけど、忍ちゃんの目は誤魔化せない。
今のは……“しまった”って顔だった♪

「ねぇねぇ恭也ぁ? ……なんで?」

恭也も……私に見破られた事は気がついたみたい。
本当に、ほんっとうに言いにくそうに、

「お、お前に言い寄る奴がいるって分かってたから……」

って、真っ赤になりながら白状してくれた。
だから私も、

「えへへっ♪ ありがと〜恭也♪」

腕に抱きついてお礼♪
態度はふざけてるように見られるかもしれないけど、でもホントに嬉しいんだよ?
だって、恭也が嫉妬してくれるなんて……忍ちゃん愛されてるぅ♪
ホントに嬉しくてほっぺが緩むの止まらないよ〜♪
でも、恭也はそんな私の顔を見て少し渋い顔をする。
結構長い付き合いから察するに……なのはちゃんにからかわれて面白くないって顔だ。

「まぁ……もう一つ杞憂はあったが、それは本当に杞憂に終ったしな」

…………む〜……なんか嫌な予感。

「……何……その杞憂って」

「いやな、昔から言うだろう。吸血鬼は水に弱いって」

なっ!?

「きょ、恭也!?」

顔を見ると……してやったりって表情してた。
む〜……恭也、分かってて言ったな。
私が吸血鬼扱いされるの嫌いなの知ってて……あ〜、なんか涙滲んできた。
さすがに泣くとは思ってなかったのかうろたえてる恭也。
でも……

「お、おい忍? わ、悪かった、悪かったから……」

「大体恭也っ! 時々一緒にお風呂入ってるんだからそんなわけないって分かってるでしょっ!!!?」

「…………………………なっ!? おまっ!?」

「……………………………………………………あれ?」

わ、私今何を……っ!?
み、見られてるっ! 周りの人達になんか見られてるっ!
この視線を言葉にするなら……“このバカップル”?

「……………………………………………………忍」

「……………………………………………………うん」

「……撤退だ」

「りょ、りょ〜かいっ!」

こうして私と恭也は慌しくパラソルをたたんで、好奇の視線に必死に耐えながら海デートを切り上げましたとさ。
え? 涙? そんなもんひっこみましたとも。





「まったく……………………………………………………阿呆」

「……………………………………………………ゴメン」

「はぁ…………………………帰って風呂入って寝たい」

「じゃあ……一緒に入ろっ♪」

吸血鬼扱いの仕返しだっ!

「…………覚悟しておけ」

………………………………………………………………………………えっ? なっ、何をっ!?





差し替えました。
相変わらずワンシーンではないですが、海辺でデートです。……でも、海辺って本来どの部分を指すんだろ?
要するにビーチでデートって解釈で、よかったですよね?
メンテ
Re: 第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.4 )
日時: 2008/03/05 23:10
名前: タケ  <ji19nn73ta09ke18@hotmail.com>

 〜忍シナリオの主題による短い挿話〜





 この日も、海鳴市は春の陽射しが燦々と降り注いでいる。
 土曜日は授業が午前中で終わるから、昼下がりの時間の使い方は自由だ。そんなわけで、
高町恭也と月村忍は放課後、連れ立って商店街を冷やかして回り、いつしか臨海公園に足
を向けていた。



 海鳴臨海公園は、市民の憩いの場であると同時に、ちょっとしたデートスポットとして
も知られている。
 夏場、夜ともなれば各所に配されたオブジェにライトアップが施されたりして、中々に幻想
的な雰囲気を見せるのだが、今はまだその季節ではない。
 恭也と忍の座るベンチの近くの芝生では、ムクドリやスズメが餌を探していたり、通路
と海を隔てるガードフェンスの上では、全身くすんだ青灰色に、胸の緋色が特徴的なイソ
ヒヨドリが、ころころとさえずっている。あたかも、ここは鳥の楽園かと見まがうような
光景。



 屋台でたい焼きと飲み物を買って腰を落ち着け、しばらくは舌鼓を打っていたのだが、
不意に忍がこんな事を聞いてきた。
「そういえばさ」
「ん?」
「恭也って、甘いもの苦手だったよね?」
「ああ。まぁ、な」
 忍には、ちょっとばかり不思議に思う事があった。甘いものが苦手だから、餡子のたい
焼きを食べない、というのは分かるが、それなら何故みたらし団子は大丈夫なのか、と。



 疑問をぶつけられた恭也は、少し考えた。
 確かに、餡子も生クリームも苦手だ。特に後者は幼い頃の出来事もあって、
(大、の字がつく……)
 くらい苦手としている。みたらし団子も砂糖を多く使っているという点では、充分に恭
也の苦手なものに入りそうなものなのだが、
「まぁ、甘いだけではないからな。醤油の味と砂糖の甘味、団子の味がうまい具合に合っ
ているから……だろうな。小豆やごまの餡はさすがに厳しいが」
「あ、そうなんだ?」



 こんな感じで取りとめもない事を話していても、忍は飽きる事がない。
 むしろ、何気ない会話の端々から、恭也の人となりが少しずつ垣間見えるのが、やけに
楽しくて仕方ない。
(一昨年から、ずっと同じクラスだったのに、ついこないだまで会話もなかったなんて……
今考えると、ちょっともったいなかったかな)
 ただ、それも仕方のない事かもしれない。何しろ忍は、
「夜の一族」
 そう呼ばれる者達の一人として、簡単に素性を明かすわけにはいかなかったのだから。



 忍と恭也の距離が一気に近づいたのは、皮肉と言えばそこまでだが、忍の家の〔財産〕
を巡る、叔父との諍いがきっかけだった。
 諍いは不幸にも暗闘に発展してしまったが、恭也は、にも関らず手を差し伸べてくれた。
素性を打ち明けても、聞いたすぐこそきょとんとしていたが、それだけだった。
(やっぱり……恭也はいいね)
 普段の無愛想な外見と、一見そっけない言動から誤解されがちだが、恭也はその内面に
包み込むような優しさを、それに培われた強さを持っている。
 それが、今の忍にはよく分かるのだ。



 つい、そうしたくなった。
 忍は隣の恭也に身体を預け、その肩に頭を乗せる。もちろん、腕を絡めなければその温
もりを感じられない。
「ねぇ、恭也」
「ん?」
「誓いを立てた事、後悔してない?」
 まだ、忍には少しばかりの不安がある。己の素性を知ってしまった者に対して迫る二者
択一。恭也が今の道を選んだと言っても、それでも。



 海に目を向けると、一隻の貨物船が外海に向け、ゆっくりとさざ波をかき分けて行くの
が見えた。一体、あの船はどこに向かうのか。
(俺も、忍も、これからどうなるかなど、分からない。だが)
 恭也は、既に胆をくくっている。あの時、忍と共に歩む事を決めた時。
 だから、何も迷う事などない。
「俺は、もう決めているんだ……持っている全てを賭けて、俺は忍を護る……決めた以上、
後は前に進むだけの事だ」
 優しく、しかし断固として言い切った。



 恭也の言葉が、忍を恍惚とさせる。
「恭也……うん、うん」
 まだ、問題が解決したわけではない。それでも今の自分に恐れるべきものは何もないと、
自信を持って言える気がした。
 こうして、恭也がいてくれる限り。だから、わたしも頑張って、
(恭也のいちばんに、なるんだから)
 絡める腕に、つないだ手にそっと、ぎゅっと力を込める。恭也もまた、そっと、しかし
力を込めて握り返す。



 何気ないこのひとときを、大事にしよう――物言わず、二人はしばし、海を見ながら陽
光の降り注ぐに身を任せていた。
 それからの二人については、また違う物語の中においてこそ、語られるべきであろう。
 ――春の海鳴は、あくまでも暖かい。






 後記

 一応、企画元の万魔殿メンバーながら、これまで腰を上げなかった自称「さまよえる秋田人(笑)」こと、タケです。
 いえね……リリカルねたは動きようがなくて……(苦笑)。
 とりあえず、お題に可能な限り沿うような形で、とらハ3本編に準拠した形を取ってみました。
 海辺と言う事で、砂浜にするか臨海公園にするかと、ほんの少し迷いましたが、最終的にはこういう形になった次第です。
 まぁ、大したもんではありませんが、こんな小品でも楽しんでいただけると幸いです。
 ではでは。
メンテ
Re: 第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.5 )
日時: 2008/03/09 09:37
名前: 糖分の友

さて、今回は忍とのデートということで、恭也は忍と海に来ていた。
だというのに……

「「「「「お兄ちゃん(恭也さん)早く早く〜」」」」」

(なぜここになのはやフェイト、アリサにすずか、はやてまでいるんだ……?)

今まで家族などには内密で計画していたデートに、なぜ妹のお友達、仲良し5人娘がついてくるのだろうか……?
恭也がそんな疑問を考えていると、忍がすずかをにらんでいた。

「これはどういうことかな〜、すずか?」

忍は笑顔ですずかに問う。いや、顔は笑顔だが、内心では決して笑っていなかった。なんというか……怖い。
百戦錬磨の恭也にもそう思わせるほど、今の忍は怖かった。
そんな忍に対して、すずかはさも当然そうに……

「お姉ちゃん、抜け駆けはよくないと思うよ〜。昨日、お姉ちゃんが恭也さんと電話で話していることをみんなに話したら、みんなも海に行きたいだって〜」

などと言っていた。
恭也からしてみれば、内緒で海に遊びに言ってずるいと思っている程度だが、もちろんそんなわけでわない。恭也の朴念仁が見事に炸裂していた。

「このませガキィィイ!!」

忍がすずかとなにかもめているようであったが、恭也は気にしないことにした……




デートのはずで海に来た訳だが、5人の乱入者によってすでにデートではなくなっていた。
それで恭也はというと……

「はやて、もう少しスムーズに腕を回せ。あ、バタ足がおろそかになっているぞ」

はやてに泳ぎを教えていた。
今まで車椅子で生活していたはやてにとって、海は初めてで、もちろん泳げるわけがない。
そんな訳で、恭也がはやてに泳ぎを教えているのだ。

「よし…はやて、手を離すぞ」

そういって、恭也は今まではやてを誘導するように引いていた手を離す。

「えっ…そん…ガボッ……!」

いきなり手を離されたことにより、はやてはなにかいいたそうだったが、そういおうとしたときに海水を飲んでしまい、そのまま溺れそうになる。
足はつくので、その心配はないのだが、それを黙ってみている恭也ではない。

「おっと……」

恭也はそのはやてを助けるため、はやてを抱きかかえた。
この行動にこの場にいたはやてを除く5人組と、忍が沈黙する。
恭也ははやてをお姫様抱っこで抱えていたのだ……

「あ…あの……恭也さん……」

はやては顔を赤面させ、どうしたらいいのかわからない状況だった。
恭也に関しては、さすが朴念仁と言ったところだ。

「ガッ……」

突然、恭也が前のめりに倒れる。
なにかが後頭部に直撃したため、その衝撃で気絶したのだ。
恭也に抱えられていたはやても、恭也が倒れると海に投げ出されるわけだが、それを気にするものはいなかった……

さて、恭也の後頭部を襲ったものの正体だが、まあ、答える必要はないだろう。
なぜなら後ろには、どこから取り出したのか、エアガンのライフルを持って、サングラスをかけていた忍がいた……
そして忍はさも当然そうに……

「あれ〜、恭也どうしたの〜?体調悪いのかな?少しあっちで休もう」

そういって恭也を引きずって、この場を離れた。
どこか凄みを帯びた忍を追うなどというものはこの場にはいなかった……




「さて…忍、なにか言い残すことはないか?……」

目を覚ました恭也は、忍にどんな仕返し……もといお仕置をしようか考えていた。
当たり前だ。あんなことをされて怒らないほうがおかしい。
いつもなら恭也の鉄拳が忍に炸裂するが、今日は少し違った。

「恭也のバカ……」

忍の今にも泣きそうな声が聞こえた。

「せっかくのデートなのに……楽しみにしていたのに……」

「忍……?」

せっかくのデート、はやてたちばかりにかまっていて、忍を相手にしていなかった恭也に、忍は嫉妬を感じていた。

「ねえ、恭也……私って、魅力ないのかな……やっぱり恭也ってロリ…痛っ……」

自虐する(ロリコンと言おうとした)忍に、恭也は徹をこめた手刀を振り落とす。
それを頭に受けた忍は、むきになって反論する。

「なにするのきょ……んっ!!」

しかしその反論は恭也が忍を抱き寄せ、唇をふさぐことによって言えなかった。
それよりも、恭也がした行為に意識が行ってしまう。
唇を唇でふさいだのだ。いわゆる…………キスで……

忍は口をパクパクさせた状態で赤面し、恭也を見ていることしかできなかった。

「大丈夫だ。忍は十分魅力的で、かわいいと思うぞ。だが、さすがになのはたちがいる前でいちゃつくのはちょっとな……それと、俺はロリコンではない!!」

最後の言葉を強く強調した後、恭也は再度忍の唇をふさぐ。
10秒ほどしてから唇を離すと、忍は恭也にこういった。

「恭也、大好き」

忍の満面の笑顔に、恭也は頬を緩める。

「ああ、俺もだ」

そういって、恭也は忍を抱きしめた。このときの二人は本当に幸せだった。

だが……二人は気づいていない。
背後にいる魔法少女3人+1人(夜の一族)によって、この幸せが終わることを……






この間はすいませんでした。
失格になってしまった糖分の友です。
今回はちゃんと忍と海に行ってますから大丈夫ですよね?
いちゃつかせてもいますし。
なんか本気で心配です(苦笑)

はてさて、このあと恭也と忍はどうなるのか(笑)
では、今回はこれで。
メンテ
Re: 第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.6 )
日時: 2008/03/05 17:00
名前: uppers

『二人の誓い、二人の決意』



春うららかな陽気な陽射しが差し込むある日、恭也は家の縁側にいた。

「こう陽射しを浴び、昼間は大分暖かくなってきているとなんだか眠くなってきたな。」

風はまだ冷たいが、陽射しのおかげで昼間は昼寝できるぐらいには暖かくなってきた。それでもまだ夕方から朝方にかけては冷え込むのだが。

「母さんとフィアッセは翠屋。美由希となのはは那美さんと久遠のとこ、晶は明心館、レンは友達と。……盆栽の手入れも終わったことだし、寝るか。」

恭也は居間から座布団を持ち出し、半分に折り曲げて枕にして横になろうとした。その時に

「ちょっと待ったぁぁぁぁぁ!!!!!」

ちょっと待ったコールがかかった。

「うぉっ!?なんだ?忍か?!」

恭也にしては珍しい。いつもなら気配を読み、侵入を許すことはない。それとも気付いて忍だから放って置いたのかは恭也にしかわからない。

「なんだじゃないでしょう?!こんな天気いい日に恋人の忍ちゃん放っておいて昼寝なんてなにしてるの?」
「むぅ……しかし、昨日はやることがあるから会えないと言ってなかったか?」
「そ、そうだけど予定より早く終わっちゃったんだからしょうがないじゃない。……それとも恭也は事前に連絡を入れないと私と会ってくれないの?」

若干涙目になりながら上目使いで見上げる忍に対して、恭也は(それは反則だろう)と心の中で愚痴りながらも前髪を押し潰すように頭に手を当て、立ち上がって告げる。

「まぁ、忍のそういったとこは今更だな。で、どこに行くんだ?正午過ぎたからあまり遠出はできないぞ。」
「むぅ〜、今更ってなによ。」
「すまん。……これで許してくれないか?」

恭也の言葉に忍は頬を膨らませて反論するが、恭也の謝罪と幼い子供を宥めるように頭を優しくマメだらけである恭也の手で撫でられるとどうでもよくなってきてしまい、忍は心を許してしまう。

「…………うん。」

恭也は忍が頷いたのを見て手をどけると忍は残念そうな顔を見せるが、恭也は気付かない。

「さっきも言ったが、忍はどこに行きたいんだ?正午過ぎているからあまり遠出はできんぞ。」
「う〜ん……恭也はどこに行きたい?」
「俺か?俺はどこでもいいぞ。」
「でも、いつも私の行きたい場所ばっかりで恭也つまらないんじゃ……」
恭也の答えに忍は俯いてうなだれる。そんな忍に恭也は小さな声で呟く。
「…………忍と一緒ならどこでもいいさ」(ボソッ)
「……えっ?!」

忍は一瞬聞こえた恭也の声が信じられないくらい驚き、恭也を見る。

「ねぇねぇ、今のもう一回聞かせて。」
「……うるさい。とりあえず家から出るぞ。」
「恭也ってば〜。」

恭也は忍がついてくるのを確認して家を出る。忍も後に続き、恭也の後を追い、腕を組む。
「さて、どこに行く?」
「うーん、まだお昼ご飯食べてないからどこかでお昼にしたいな。」
「そうか。なら、とりあえず駅前だな。」
「うん!」

そういうと二人は海鳴駅に向かって歩き出した。




























それからは忍とゲーセンでDREを一緒に踊ってハイスコアを出したり、忍が対戦ゲームをしてるのを恭也が後ろから見てるといったいつもの二人のコース。

忍がゲームを終えた時には既に日は傾き夕日が出ていた。いつもならこのあたりで忍の家まで送りに行くのだが、忍が「臨海公園に行きたい」と言い出したので二人は臨海公園まで足を運んだ。

臨海公園まで来た二人は砂浜まで続く階段を下り、波が当たる目の前まで来た。恭也の手にはタイヤキが全部で三つ。忍にはカスタードを渡し、恭也はチーズとカレーを食べ始めた。



食べ終わってからどれくらいたったろうか。忍は靴を脱ぎ、足を波が当たって潮が引いていく。傍らには恭也が立っている。二人は夕日が遥か水平線の向こうに沈むのを黙って見ていた。周りには誰もいない。まるで二人だけの世界。だからだろうか、忍が悲痛な表情をしていたのは。

「どうした?忍。」
「……やっぱり恭也にはわかっちゃうのかな?」
「忍が悲しそうで今にも泣きそうな表情していれば俺でなくとも気付く。」
「あはは…………そんな表情してた?」
「ああ。」
「そっか……」
「……俺には話せないことなのか?」
「……ううん。恭也じやなきゃダメ。恭也にしか話せないことだよ。」

そういうと忍は立ち上がり、恭也に向きなおった。恭也は思わず見惚れた。忍が立ち上がり、その後ろには夕日が沈みながらもまばゆい光を発してながらも夜という闇に飲み込まれていくという一枚の絵画を思わせるその絵は今まで見てきたどんなものよりも綺麗だった。
恭也は忍に見惚れていたが、忍から発しられた声に戻された。

「…………恭也は私と……ううん、夜の一族である私と誓いを結んだことを後悔していない?」
「今さらなにを言うんだ。俺は全てを知った上で夜の一族の誓いを結んだんだ。それはこれからもだ。後悔など誰がするか。」
「そう……最近よく思うんだ。安次郎のことがなければ恭也とは恋人になれなかったとは思う。今は恭也と恋人になれて嬉しいよ!夜の一族である私が他の誰でもない恭也と結ばれたことは生きてきた中で一番嬉しいの。でもね、恭也はいつかいなくなってしまう。それなのに私は生きていく。永遠という長い時間を。私は恭也がいなくなってしまったら生きていけるかわからない。もう恭也がいなきゃダメなの…………恭也じゃなきゃ……ダメ…」
「忍……」

忍の叫び。それが魂からの心からの叫びだと恭也はわかる。わかるからこそ辛い。今までどうして言ってくれなかったのかという想いとようやく言ってくれた想いが交錯する。恭也は一歩ずつ詰め寄ると忍を抱きしめた。恭也の想いを伝えるために。

「ありがとう、忍。そこまで俺のことを想ってくれて。前に言ったよな?俺は忍と共に生きると。忍と永遠を生きる方法がない訳じゃない。眷属にすることは忍が望まないだろう。俺は確かにいつかは忍の傍を離れてしまう。それでも俺は忍と永遠の時間を歩もう。身体が朽ち果てようともこの魂は忍と共に未来永劫にある。もし生まれ変わることが出来るならまた忍に会おう。会って忍と恋をしよう。愛しあおう。」
「恭也……恭也ぁーーー!!」

二人は抱きしめあう。今は誰もいない夜の海辺で。いつのまにか夕日は沈み、月光が降り注ぐ。

「今こそまた俺の決意と誓いを。俺は未来永劫、忍と共にある。不破と御神の名において俺は誓おう。」
「私も……私はこの魂が永遠の時を恭也と共に。月を冠し、夜に生きる月村の名をもって私は誓う。」
「「愛してる、恭也(忍)。」」

そういうと二人は誓いのくちづけを交わし、海辺を歩き出した。残るは二人の足跡のみ。それが未来を案じるように、月光が眩しいくらいに降り注ぎ、潮が引いては押し返す。海から運ばれる風はまだ肌寒い春の夜風だった。
メンテ
Re: 第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.7 )
日時: 2008/03/06 21:54
名前: ゆきっぷう  <yukippuu@hotmail.com>

ざざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……んっ

 押し寄せる波しぶきが荘厳な響きを上げ、

ざざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……んっ

 吹き付ける海風は肌を刺すように冷たく、

「恭也の……馬鹿ぁぁぁぁぁっ!」

 恋する乙女こと月村忍は思いの丈を精一杯、三月のまだ荒れる日本海にぶつけるのだった。





 事の発端は一週間前、大学の追試を終えた恭也からデートの誘いの電話が鳴ったことによる。内容は端的に「試験も全部終わったから海にデートへ行こう」というもの。
 朴念仁が服を着て歩いているような彼から、デートの誘い。それも海。
 おそらく恋人になって以来初めての純愛イベントに忍は(三月であるにも拘らず)麦藁帽子と白のワンピースに身を包んでデート当日に臨んだ。

―――――臨んだのだが


「うむ。すばらしい海原だ」
「ええ。すばらしい荒れっぷりよね」

 浜辺を歩く恭也は、下手な漁船なら転覆しかねないほど荒れ狂う日本海を眺めながらうなずいた。

「で、なんで日本海なの?」
「うむ。忍と日本海が見たかった」

 さらりと、まんまの答えを返す恭也。相変わらずの仏頂面だが、本当は太平洋側のビーチ付近で宿が取れなかったとは口が裂けてもいえない彼である。
 まあ、見慣れた海鳴の臨海公園よりは刺激的かもしれないが……刺激の意味が違いすぎる。もとい荒んでいた。

「なんか、世界の終わりみたいな風景よねぇ……」

 轟々と唸る潮風。
 人気のない浜辺。
 寄せては砕けて散る波たち。
 なんかもう、人類最後の日どころか地球滅亡の様相を呈している。常識的な観点でいえば、絶対にデートには誘わない場所だ。

「だが、二人きりだ」

 厳しい鍛錬に引き締められた頬をほころばせ、恭也の瞳が忍を見つめる。

「きょ、恭也……」

 二人きり。
 世界で二人きり。
 自分と恭也の二人きり……
 甘いリフレインが呪文のように忍の耳を打ち、胸をときめかせる。一気に紅潮し、もう彼女の心は悩殺メロメロを通り越して『発情トロトロ』状態である。

「愛しているぞ、忍」
「きょうや〜」

 腰に手を回し、忍を抱き寄せる。その濡れた瞳が恭也の理性を強かに打ちのめしていく。
 二人の唇が近づき―――――

 びゅう、と一陣の風。
 いきなりめくりあがったスカートを慌てて忍は両手で押さえ込んだ。しかし遠くシベリアから吹き込む風は押さえに押さえられず、ちらりと見える浪漫の影。

「……見た?」
「……いいや」

 紫のTバックなんて、見たとは口が裂けてもいえない恭也だ。しかし残念ながら彼の顔は正直である。赤みを帯びた両のほっぺを抓られては、白状するしかなかった。

「見た?」
「……ふぁい」

 むくれて下から睨み上げる忍を、今度は両腕で抱き上げる。世にも有名な『お姫様抱っこ』というやつだ。

「ちょ、ちょっと恭也!?」
「宿に行くぞ」
「え、ええ? 宿って――――」
「見てしまった責任を取らねばな」

 歩き出す男の腕に抱かれ、女がかぶる季節外れの麦藁帽子はゆらゆら揺れる。
 前途多難な恋はさながら今日の海景色のようで。

 それでも岬に伸びる一本松のごとく、雨風に晒されようと二人の思いは永久に真っ直ぐだろう。


※あとがき※
この企画ではお初になります、ゆきっぷうでございます。
しかし……何故だろう。海辺のデートと聞いて思いつくのが大時化の日本海沿岸なのは何故だろう?
いや、日本海沿岸だって立派な海辺だから大丈夫ッスよね? どれだけ荒れてたって、人気がなくっても大丈夫ッスよね?
メンテ
Re: 第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.8 )
日時: 2008/03/06 22:33
名前: ホークス

 熱い太陽がギラギラと輝く、真夏の午後。

 漫画や本では、夏の日差しに負けじと、バカップルぶりを見せ付けるものたちがいる。

 しかし、あえて断言しよう。そんなものは現実にいるはずがない。

 特にこの日の気温は、デートするにも外へ出た瞬間、百年の恋すらも冷めてしまうほどの猛暑日。

 さらに、夏ならではのデートスポットである海ともなると…… もはや、命を削るようなものだ。


「ね、ねぇ、ノエル、これ少し子供っぽくない?」

「いえ、問題ないかと……」

「大アリだよ! これだと私のイメージが」

「ですが、私のデータによれば、殿方は例外なくこういう格好がお気に召すかと…… 恭也様もきっと、喜ばれます」

「ホントに?」

「はい」

「そ、そっか、恭也が喜ぶんだったら…… え、えへへ♪」


 月村家のプライベートビーチにて、屋外に設置された脱衣所の中で月村忍は、その大人っぽい外見とは裏腹に、子供のような照れた声を上げる。

 最近、ようやく…… 本当にようやく結ばれた恋人に対して、相変わらず情熱的に迫る彼女だが、その裏側はやっぱり普通の女の子。

 メイドであり、親友でもあり、何よりも大切な家族であるノエルに諭されながら、今日もまた恋人を自分に夢中にさせる計画を考えるのであった。


「…… 話が筒抜けなのだが、俺はここにいていのか?」


 いかにプライベートビーチといえども外は外。

 何者かに覗かれないよう、周囲に厳しい視線を向けているのは、忍の恋人である高町恭也。

 恋人ができてからは、少しは鈍感も直るかと誰も思ったのだが――


「ふむ、俺が喜ぶ水着か…… ふんどし?」


 ―― 相変わらず、一般人の斜め上をぶち抜いていた。

 しかし、忍の意外な一面を知りながら、これからのことに恭也は若干の不安を抱く。
 
 それは今まで、自らを高めるために積み重ねてきた苦難と努力の足跡そのものが原因であった。


「……」


 このクソ熱い最中、汗一つかかずに、恭也は黒の長袖・長ズボンを着崩さずにきっちりときている。

 時に汗腺が麻痺しているのではないかと疑ってしまいそうだが、本人の言葉によるこれも鍛錬の賜物らしい。

 それはともかく、彼は袖をめくり、体に刻み込まれた幾多の傷を見つめながら、少しネガティブな気分に陥る。

 忍は構わないといってくれたが、やはり恋人ときた海では自分だけが服を着ているというのは本当に申し訳ない。

 今まで一度たりとも後悔したことはなかった無数の傷を、初めて腹立たしく思う恭也であった。


「お待たせー、恭也♪」


 物思いにふけているうちに、忍の着替えは終わったようだ。

 ゆっくりと、振り向いた恭也だったが、そこでトンデモナイものを目にする。


「ああ、随分おそ―――― っ!?」


 嬉々しながら脱衣室から出てきた忍に、恭也は我が目を疑った。

 それもそのはず、彼女の姿は脱衣所に入る前と後とではまるで違っていたからだ。



 まず、忍といえば特徴的なのが、ラヴェンダーによく似た紫色のロングヘアー。

 しかし、今その髪は二つに分けられ、血のように赤いリボンを使ってツインテールとして纏められている。

 たったこれだけで、学校での『クールな美人』という印象を覆し、『明るくて、活発な可愛い女の子』として大変身する。

 そして、さらに彼女が着ているビキニ水着は、鈍感な恭也でさえも驚きを隠せなかった。
 


 上は大胆に胸元が大きく開いたフリル付いたものを着用。

 薄いピンク色の生地をベースに小さな赤と白のハートが無数にちりばめられている。

 しかも、サイズは少し小さく、豊満な忍の乳房は高校生とは思えないほどの妖艶でセクシーな魅力が溢れていた。

 そして下半身は、なのはのような幼い女の子が喜ぶ、ヒラヒラとしたミニスカート状のセパレートをはいている。
 
 これにも同じようなフリルが付いており、ピンク色の柄がとてもキュートで愛らしい。



 こうして、普段とはまるで違ったセクシー&キュートな忍がここに誕生したのであった。

 ただ、流石の忍もここまで可愛い系の格好をしたことなど、恐らく初めてなのであろう。

 経験したことのない照れと恥ずかしさから、彼女の頬はほんのりと赤く染まっていた。


「どう、似合う?」


 何も聞かずに、恭也の腕に抱きつく忍。

 胸を押し付けているのも、上目遣いで悪戯っぽい顔をするのも全て計算のうち。


「まぁ、それなりに…… な」

「うわぁ、ヒドイ!? せっかく、恭也のために恥ずかしいのを我慢しているのにぃ」


 素っ気無い恭也の返事に、忍はバレバレの嘘泣きで顔を伏せる。

 いや、先ほどの脱衣所から聞こえてきた声が真実ならば、この『嘘泣き』こそが本当の嘘なのかもしれない。

 普段、鈍感なはずの恭也。

 いつだって、今日だって、そんなことに気づくわけがないと忍は思ったのかもしれない。

 けれど、忍という恋人を得たことで、ほんの少しだけ…… 恐らく、忍のことだけはちょっぴり鋭くなっているのかも知れない。


「忍……」


 恭也は忍をそっと放すと、日頃、なのはにやるような手つきでそっと忍の頭を撫でる。

 もちろん、彼女にこんな子供じみた優しさをかけたのはこれが初めてのことだった。


「えっ、恭也?」

「そんな無理はするな。 …… その、水着に頼らなくとも、十分お前は……その……だから……」

「恭也……」


 最初は、驚いていた忍だったが、今はすっかり気持ちよさそうな顔。




 その後、彼らは特別なことは何もせず、時間を忘れて楽しんだ。

 ビーチボールを膨らませては、それを落ちないようにして遊ぶ。

 次に、突然の忍の攻撃から始まったビショビショになるまで水の掛け合い。

 お昼には、当然のように一つのトロピカルジュースを二つのストローで飲む。

 それから釣りをしたり、岩場を探索したり、童心に返って砂のお城を作ったり……

 そして、最後は何をするわけでもなく砂浜でゴロゴロしながら過ごしていた。





 
 二人にとって幸せな時間はあっという間になくなり、太陽はもう水平線に沈もうとしていた。

 オレンジ色の夕日に照らされながら、浜辺に座り込む忍の横には、うつ伏せで眠る恭也の姿があった。


「…… 恭也、もうそろそろ、帰らないといけないよ」

「う、ううん…… しのぶ? いつの間に俺は眠っていたんだ」


 どうやら遊び疲れて、迂闊にも途中で眠ってしまったらしい。

 体を揺すられて目を覚ました恭也は、すっかり日に焼けた忍の満面の笑顔に出迎えられた。


「きっと、遊びなれていないから疲れたんだよ? でも、恭也の寝顔はかわいかったよぉ?」

「悪趣味な」


 ニヤリと笑う忍に、恭也はぶっきらぼうに答える。

 別に呆れたわけではない。

 単に照れているだけなのだ。


「ん? 忍、お前、その腕……」

「ふふん、気がついた? 綺麗にできているでしょう」


 立ち上がった恭也は、忍の二の腕に目がいく。

 そこには、小麦色の肌にくっきりと――


 『キョウヤ LOVE☆』


 ―― という白い跡が刻み込まれていた。


「もしかして、イヤだった?」


 紫外線を遮断するマーカーを振りながら、忍はにこやかに笑う。


「…… 恥ずかしいやつ」


 このとき、恭也は気づいていなかった。

 眠っている間に刻み込まれた、今は服を着ているために見えないでいるが……

 彼の、その広い背中には……


(くふふふ、自分のモノにはちゃんと名前を書いておかないとね♪)


 無数の傷の中に、恭也と忍のアイアイ傘が描かれている。

 それはまるで、『傷』という悲しい雨から身を護るようにして寄り添った恭也と忍、そのものであった。

メンテ
Re: 第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.9 )
日時: 2008/03/06 23:05
名前: 遊び人


「こんな日に、浜辺に来たいって、どうかしたのか?」

 冬の海は寒々しく、海から吹く風は冷たい。真っ白のコートと帽子、マフラーと白尽くしの忍と黒いコートと黒の手袋の恭也は浜辺に来ていた。
 海鳴から少し離れた浜辺で二人は歩いていた。二人が通った足跡が残っている。どこか二人が通ったかはっきりと分かる。

「あのね、恭也と海に来たこと無かったから。こうやってデートを重ねてても、海は来なかったじゃない?」
「そうだったな」
「それに、冬の海も綺麗だよ」
「そうだな」

 恭也と忍は誰も居ない海を見る。誰もが居てもおかしくない海。だが、今は二人だけにあるための海のようだ。此処最近は冬でも流れるプールやら波のあるプールがある。
 恭也と忍は夏場も山ばかりで海へとデートは繰り出さなかった。別荘があって、その近場のプライベートビーチでも良かった。だが、二人とも遠慮した。
 そこに大体がなのはや友達といった面々が加わるからだ。家族思いの恭也だからこそだし、夏なのだし涼しい場所がということだ

「空は青いし、海って、夏場と違う点って、太陽の傾きだよね」
「そうだな。今日は晴れてるからな。後は雲の違いじゃないか?」
「かもね。でもね、夏気分」
「そうだな」

 冬場でも、ほんの少し視線を先に向けるだけで、それは少し違った夏の海だ。寂しいと誰かは言う、悲しいと誰かは言う。だが、海は命を育ててもいる。それは暖かなものだった

「忍」
「ん?」
「手、ずっと出してると冷えるぞ」

 忍は手袋をはめてなかった。その左手の中指には、小さなリングが光っている。少し前、恭也が渡したものだった。忍は恭也が差し出した手を掴む。恭也もゆっくりと忍の手を握る。

「ありがとう。でもね」

 忍はそのまま恭也の手を離し、恭也のコートのボタンを外して、恭也のコートの中に入る。

「あったかい」
「少しだけだぞ。これだと動けないんだし」
「うん。少しだけ」

 冬の寒さは、二人で寄り添えば寒くない。二人は冬の海を見て、寂しさと悲しさと暖かさを味わう。命の重たさを知ってる二人だからこそ。そんな大学一年の冬
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Re: 第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.10 )
日時: 2008/03/06 23:42
名前: T.S

降り注ぐ日差しが肌を焼く夏の真昼間、海鳴から離れた位置にある海辺には人が多くいた。

夏という季節、海辺という場所、それらを考えると人々のほとんどは海水浴に来ていることが分かる。

浜辺でパラソルを開きシートを敷いて寝転がる者、海の中に入って泳いだり水の掛け合いをする者。

人によってすることは様々だが、一様に誰もが夏の海を満喫しているように見えた。


「……はぁ」


そんな楽しげな喧騒が響く浜辺の一角にて、とても憂鬱そうに溜息をつく男性がいた。

パラソルの下に敷かれたシートの上に座る、周りの人々と比べると異質すぎる上下共に黒の長袖長ズボンの男性。

この格好だけで見る者が見れば誰かと分かるこの男性――恭也は本来海という場所には行きたがらない。

というのも、長年積んだ鍛錬によって付いた傷がほぼ全身にあるため、周りの人を不快にさせてしまうと本人は思っているからだ。

故に彼は学校であるプールの授業もほとんど見学し、海へ行こうという誘いに至ってはいつも断りを入れていた。

そんな彼が水着ではないとはいえ、なぜ海辺に来ている理由……それは数日前に高町家に掛かった一本の電話から事が始まる。


『今度のデートだけど、ちょうど夏なんだから一緒に海行こ♪』


電話を掛けてきたのは二ヶ月ほど前に恋人として結ばれた少女――忍だった。

しかも掛けてきていきなりそう言い出した彼女には、我が恋人ながらさすがの恭也も呆れた。

いつもならこのままそれがデートの予定になってしまうのだが、今回ばかりは恭也も反論を試みる。

しかし、さすがは忍というべきか……恭也のいい感じに丸め込み、結果としてデートは海でということになってしまった。



そういうわけで現在に至るというわけなのだが、ここに来て傷以外での問題が発生した。

それは水着に着替えるために忍が更衣室に行ってしまった故に、一人になった恭也に女性がお誘いを掛けてくることだ。

先ほども挙げたとおり目立つ格好、加えて恭也の顔は美形と言える部類である……言い寄ってきても不思議ではない。

しかし、いつもならお誘いを掛けてきた女性に対しては丁重に断ってはいる(言い寄る理由は理解していない)恭也だが、今回は少し違った。

誰しもが開放的になれる夏という時期の海辺であるためか、言い寄ってくる大胆な水着を着る女性も多々いる。


「お兄さん、お一人なら私たちと一緒に遊びませんか〜?」

「い、いえ……その、連れがいますので」


そのためそういった女性に対して純情な恭也は直視出来ず、顔を赤くし若干どもり気味で断りを口にしてしまう。

それが女性にとっては脈があると感じてしまうため少し強引な手段に出られてしまい、頭はパニック状態に陥る。


「恭也〜、おっまたせ〜♪」


その状況下の中、この場に限ってまさに救世主と呼べる人物がやってきた。

普段恭也の着ている服に合わせた色のビキニ、日に照らされ眩しくも見える白い肌。

いつもの髪型とは異なり、後ろで根元を一つに束ねられたポニーテールがとても特徴的な少女。

浮かべられた表情と髪型から可愛いとも、身に纏う水着からセクシーとも言える少女――忍は声を掛けると同時に恭也の背中へ抱きつく。

言い寄っている女性が目の前にいるのに大胆な行動であるが、実際それはその女性たちを追っ払うという意図があってのものだ。

その意図に沿ってのものか、それとも恭也の言うことが本当だと確信したためか、女性たちは諦めて他へと去っていった。


「ふぅ……ありがとう、忍。 正直助かった……」

「どういたしまして♪ でも、ほんとに恭也ってモテるわよね〜」

「そんなことないだろ? さっきの人たちにしても、俺が暇そうにしてたから誘ったのだろうし」

「それだけの理由じゃあんなにアプローチしないって……」

「そうなのか?」

「そうなの! ……はぁ、ほんとに鈍感なんだから」

「むぅ……」


呆れるような言葉と溜息に、恭也は憮然とした表情で短く唸る。

だがその後、やっと今気づいたかのように背中から感じる感触に顔を赤くする。

しかし、恋人になる以前なら引き剥がしたりもしたが、今の恭也は忍が抱きつくのを止めさせたりはしなかった。

そのことが「自分に気を許してくれている」と思わせ、忍は嬉しさを感じながら更にきつく抱きついた。


「まあいっか……恭也が鈍感でも」

「む、それはどういう意味だ?」


ポツリと呟かれた一言に反応し、恭也は忍を覗き込むように顔を動かして尋ねる。

正直なところ、鈍感と言われ続けてきた恭也は恋人である忍にも言われたために直したほうがいいかと考えていた。

そんな恭也の考えに反して、続けて口にされた言葉はそんなもの……疑問に思っても仕方の無いことだった。


「だって……」


覗き込んできた恭也に顔を向けて口を開くも、忍はそこで一旦言葉を切る。

そして続ける言葉に自身の抱く気持ちをありったけ込め、綺麗な笑顔と共に告げた。










「鈍感でも……私の気持ちには気づいてくれたから♪」










とても素直で、純粋な気持ちが込められた言葉。

それには恭也もさすがに予想できず、顔を赤くしたままそっぽを向いた。

だが忍には分かる……その行動が照れ隠しであるということが。

分かるからこそそれ以上は何も言わず、ただ居心地良さそうに背中に抱きつき続けた。

そんな彼女の行動に同じく温かさを感じつつも、恭也は更なる照れ隠しの言葉を掛ける。


「……泳がないのか?」

「うん……もう少しだけ、このままで」


照れ隠しはまたも素直な言葉で返され、恭也はもう何も言わずに成すがままになった。

そしてしばらくの間二人は影を一つに重ね……人の声と波の音が響く浜辺を眺め続けていた。


メンテ
Re: 第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.11 )
日時: 2008/03/07 12:28
名前:   <kuma0922@hotmail.com>


「ナイト・ハーバー」





海鳴市 埠頭

そこは昼間の作業者や搬入の騒々しさとはうって変わって不気味な程の静けさが辺りを包んでいた。
遠くには埋立地に建設されたテーマパークが強い光と微かな歓声を生み出しており、この埠頭を包み込む空間がいっそう、その雰囲気であふれていた。
太陽の下では特に気にならないコンテナ郡も、暗黒の世界の中では無機質な森と壁と化しており、更に雰囲気を強めていた。
そこに一体の鉄の獣が巨体をしなやかに岸壁とコンテナの間に滑り込ませ停止した。
獣はその体を停止させると光る目を閉じ、震える呼吸を停止させた。

鉄の獣――シルバーを基調とした車、その車中にうごめく二つの人影を覗く事ができた。
運転席に座っていた人影は、たった今エンジンを切り、そのままシートベルトを手際よく外すとその身を浮かせた。
その身を浮かせたかと思うと、助手席に座る人影へと迫る。
途中でシフトレバーに足を取られながらも覆いかぶさると、そのまま横にあるレバーを引くとシートがゆっくりと倒された。

「ぁ……」

そんな声が小さく漏れてきた。不意を突かれたのかその声の持ち主は、普段より目を少しだけ大きく見開いていた。
覆いかぶさった影は、その様子に満足したのか少しだけ頬をゆるませる。
そして、倒れた勢いのまま顔を近づける。お互いの唇の距離が無くなり、その小さな面積でお互いの体温が交換された。
その小さな接触面。その小さくも二人にとって通じ合える部分。その部分しか血液が、神経が無いのかと思うくらいに意識する。

「っぅあ」

どちらとも付かない声が車内に響いた。
満足したのか一つに重なっていた影に少しだけ隙間ができる。
そして互いの額を付けあったまま見つめあった。
二人だけの世界。そう錯覚しそうになるが、対岸のテーマパークの光と途切れ途切れの歓声が現実だと実感させる。
そして、影の一つ「月村 忍」唇が、先ほどの行為によって普段より一段と艶やかに怪しい唇が開く。

「なんだか、久しぶり……こんな風に過ごすのって」

忍に取ってこのように過ごす時間がとても大切だった。
それはもう一つの影「高町 恭也」も知っていた。その為、謝罪の言葉が自然と出る。

「……すまない」

「…………ずるい。そんな顔するなんて……それに恭也にとっても私と一緒に過ごせなかったんだから、ね」

「ふぅ、自分でそれをいうか」

恭也は呆れた言葉とは裏腹に口調と目は優しく、忍もそれに気付いており笑みを返した。





どれくらいの時間がたったのだろうか、気付けば対岸のテーマパークでは夢の終わりを告げる花火が幾つも打ち上げられていた。
特に何をする訳でもない。
只、体を重ね合わせるだけ。その行為はお互いの体温を感じあうだけだったが、二人はそれで満足だった。
ふと、忍はある物に気付き、それを撫でる。
恭也はそれを受け入れる。

「いつの間にか、傷が増えたね」

服の隙間からそれは顔を覗かせていた。
学生時代に出合って以降、恭也は家族の為、友人の為、そして忍の為に闘い傷ついた。
恭也は意地悪な笑みを浮かべた。

「……醜いか?」

「ううん、だってこの傷もそっちの傷も、服の下にある傷も『高町恭也が色んなものを護ってきた証』だもの」

恭也は忍の答えが解っていたのか、応えるように優しく忍の体を撫で、再び影が一つになる。






三十分程たっただろうか影が二つに分かれる。
分かれるとそのまま運転席へと戻り、再び車に命を吹き込んだ。
心地よい震動の中、二人はシートベルトを締めると互いを見る。

「そういえば、来週からまた仕事……だよね」

「ああ、イギリスへエリスの……この前紹介した奴だ。そのエリスの所の会社と合同での護衛だ」

「確か、一月程だっけ」

「早ければな、長引けば最大で三ヶ月の契約だからな」

「……無理、しないでね」

「…………いや、今回は無理させてもらう」

「えっ」

「忍の誕生日に間に合わないからな」

「あっ、憶えてて……」

「当たり前だ」

目を丸くさせ驚く忍に対し、恭也は心外だとばかりにため息をつきながら答えた。
忍はベルトの枷を気にせず身を乗り出すと恭也の口を塞いだ。
先刻のとは違い、軽く触れ合うだけの口付け。
今度は逆に恭也が目を丸くした番だった。その様子に満足したのか忍は微笑みながら席に戻る。

「全く……お前は」

忍はそんな恭也の言葉に小さく芽を出すように笑った。
そして、そのまま片手でハンドルを、もう片方でレバーを操作すると器用に車を反転させ進ませた。

「さぁ、来週までは休みなんでしょ。付き合ってもらうからね」

「それは構わんが、今は前を見て運転しろ」

「大丈夫、大丈夫。忍ちゃんの運転を信じなさいって」

恭也は二度目のため息をついた。



テールランプが暗闇に小さく消える頃、テーマパークの灯りもいつの間にか消えていた。



終わり



文字数1926字(改行空白タブを除く)


あとがき

無難なお題なんで大丈夫かな、と思ってましたが参加者が多くて一安心です。
で、今回のお題「海辺でデート」の部分、私にとって海でのデートっていうと車で海沿いに行くっていうイメージがありました。
それで少々いじって埠頭でのデートという形になりました。
現在投稿されている方の作品を拝見しましたら、想定していなかったシチュエーションがあり、成る程と感嘆しました。

今回、文章を変えてみました。
中々思い通りにいかず、難産でした。色々な表現を試してみましたがどうなんでしょう?
生きてる部分が少ないなぁと自己判断、これが第三者ならどれだけ生きている部分が見えるのかドキドキしています。
メンテ
Re: 第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.13 )
日時: 2008/03/08 12:33
名前: ペルソナ

 サクサクと砂を踏みしめる音が二つ。
 月光が零れ落ちる人の居ない砂浜に二人の男女が寄り添っていた。
 寄せては返す波の音をBGMに男女の二人は恋人とも友人ともとれない距離で歩いていた。
 
 つかず離れずの距離。手を伸ばせば届きそうな距離。されどその手は繋がっていない。


 目的地が定まっていないかのようにゆっくりとした歩み。
 何処に進むでもなく、時折立ち止まり歩く事を楽しむ。











「楽しいか?」
「ん〜?」

 恭也が声をかけると忍は嬉しそうとも不機嫌とも言えない曖昧な言葉が返ってくる。
 声をかけた為に今まで横顔だった忍の貌が恭也の方へむく。

 夜に支配される一族だからだろうか?
 月明かりに照らされた横顔は……幻想的というほどに美しかった。
 太陽の下では決して見ることの叶わない影が差した顔。人工の影の下では生まれない艶やかさを生み出す月明かりの魔力。

「楽しいよ」
「……そうか」

 月明かりの下ですら輝いていると言える笑顔。明暗を生み出しやすい月明かり下だからこそ余計にその笑顔は輝いていた。
 見ている方が楽しいと感じられるほどに明るい表情。
 いつも見ているはずの忍の表情に……いつもと少し違う忍の表情に恭也は笑った。

 唯、その笑顔が見られたことが嬉しくて笑った。

「恭也は?」
「…………こういうのも悪くはない」

 恭也の偽りのない本心。
 いつもは手が触れている。寧ろ腕を組み合うほどの距離に居られてドギマギしたりもしている。

 いつも忍の豊満な胸を押し付けられることで感じられる羞恥と僅かとはいえない優越感。
 
 二人っきりで歩くとなればそれが当たり前。
 だが、この日はそうではなかった。

 息が触れ合うほどに近い訳ではなく、手を繋ぐわけでもなく、ましてや腕を組むようなモノでもない。
 手を伸ばせば触れ合える距離であるのに触れ合わないと言う中途半端な距離を保つ。

 それが不思議と心地よかった。
 
 手を繋いでいるのでは伝わらない思いが、腕を組んでいるのでは受け取りにくい想いが――――――伝わってくる。

 
 曖昧な距離だからこそ余計に伝わってくるような気がした。




「そっか、私も悪くないよ。こういうのは」

 えへへっ、普段好く見る表情。
 だが、月明かりと波の打ち返す音。そして海面によって僅かに反射された月光に照らされた笑顔は何時もと少し違う。

 大人びた忍がぐんっと大人に見えた。



 普段とは少し違う忍の表情に恭也は見とれていた。
 幻想的で、しかし幻想としたくない忍の表情に……見とれていた。

「……あぁ、悪くない」
「うん、悪くないよね」


 悪くないと繰り返す。
 離れすぎていない距離は、傍にいるという温もりが感じられる距離は……どこか心地いい。

 近すぎる為に見えなくなる部分がそこでは見える。
 少し、遠めで見ているほうが見えてくる部分がある。
 
 例えば――月明かりによって輝く忍の後ろ髪。

 近ければ見えないモノがある。

















 サクサクと砂を踏みしめて後を残していく。
 足跡の距離は付かず離れず、一定に保ったまま刻まれていく。
 
 とても近い関係であるのに、近過ぎない距離。
 恋人よりも遠く、他人よりも近い距離で刻まれた足跡。
 
 足跡よりも雄弁に物語るのは二人の空気。
 甘い空気ではなくしっとりと包み込むような温かい空気。


 恋人よりも親密な、恋人よりも近い…………

「もう少し、歩くか?」
「うん♪ もう少し歩こう」

 砂浜に刻まれ続ける等距離の足跡。
 海風と波によって何時か消えるであろう足跡。

 されど……恋人よりも親密な二人の心にはしっかりと跡が……………


メンテ
Re: 第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.14 )
日時: 2008/03/10 23:32
名前: 綾音

 大学生の夏休みは長く、三泊四泊の旅行を考えたとしても、なんらおかしな事は無い。
「恭也、海辺にある私の別荘で一緒に勉強しない?」
 降って沸いた話ではあったが、日頃の勉強を忍に頼っている恭也が、否と言える筈も無かった。




 波の打ち寄せる音。
 自由に飛ぶカモメの甲高い鳴き声と、何処までも広大で真っ青な海と空。

「恭也ぁ〜 こっちこっちぃ〜」
「ふぅ……」
「ごめんなさいね」

 元気一杯な女性の声に、諦めを含む溜息で応じた恭也の背後から、桜色の髪をした二十歳過ぎと思われる女性が詫びる。

「いえ、さくらさんは悪くないですよ。 まぁ、少しの息抜きと思って遊んできます」
「そう言って貰えると助かるわ。 忍も、やる時はやるんだけど」

 先ほどまで二人の家庭教師役を勤めて居たその女性の名前は、綺堂さくら。
 忍の叔母に当たる人物で、人狼とのハーフであったりもする。

「気まぐれというのか、こらえ性の無さは良く分かってますから」

 苦笑気味に答えた恭也は、早くも砂浜に出て手招きする忍に手を振り返すと、彼女へ一礼してゆっくりと歩き出す。

「恭也君、忍の事、よろしくね」
「はい」

 そんな言葉を交わして。





「もぉ、遅い!」
「すまん」

 ワンピースにつばの広い麦藁帽子という、ある意味完璧な避暑地のお嬢様と言った感じの忍が、頬を膨らませ腰に手を当てて怒っている。
 そんな様子にどこか微笑ましいものを感じつつ、ゆっくりと砂浜へと踏み出と、一歩毎に熱せられた砂がサンダルの中に入り、恭也にはそれが気持ちよかった。

「……怒ってる?」

 恭也が傍に来た所で、下から覗き込むようにして忍が聞く。
 せっかく海に来たのだからと、前日の夜にさくらにも話をつけた上での誘いであったが、肝心の恭也の反応は普段と変わらず。
 それで心配になるなと言う方がおかしい。

「いや。 すこし、懐かしかっただけ」
「そっか」

 恭也の過去を、忍は知らない。
 聞きたいと思うこともあったが、恭也はあまり語りたがらず、本当に必要な事は教えてくれるだろうと、半ば達観しているのが現状。
 それでも、忍には確信を持って言える事がある。

「恭也、手、つないでいい?」
「ここでか?」

 恭也の視線の先には、熱海とまではいかないまでも、そこそこ観光客らしき姿も見える。
 もともと、恭也と言う青年は、極度に人目を嫌う。

「はずかしい、かな」
「そんな顔するな。 ほら」

 忍が少しだけ寂しげな表情を見せた途端に、恭也は忍に手を差し出した。

「えへへ、私、こうやって恭也の手を握りながら歩
きたかったんだ♪」
「ん」

 一変して喜び全開の表情になると、差し出された左手だけでなく、そのまま腕を絡めるようにして歩き出す。
 忍が確信を持っていえる事。
 それは、『恭也は絶対に私を護ってくれる』
 これは、単に『危ない時には身を挺して』と言った物ではなく、月村忍と言う個人のすべてを、持てる物全てでもって護るのである。
 しかし、忍の全てを容認する訳では無く、間違った道へ進むと言うのであれば、恭也は正しいと信じる道へ戻そうとする。
 ある晩の、月にだけ見守られた二人の誓い。
 あの時、恭也はそれだけの覚悟を決めた。
 それが分かったからこそ、忍はこうして自分を曝け出す。

 両親を早くに亡くし、時々訪ねて来るさくらと自動人形であるノエルの二人を友として、一人で生きてきた忍。
 甘えると言う事が出来なかった分、どこか子供っぽさを残しているのは、当然の事であった。



「気持ちいいねぇ」
「あぁ」

 砂浜で腕を組んで歩く美人と美男子と言うのは、さすがに目立つ。
 無断で撮影する者や、それぞれに声をかける者が後を絶たず、いい加減疲れた二人は、砂浜からやや離れた所にある堤防へと足を伸ばしていた。
 手を握ったまま、足を垂らして寝そべる二人に見えるのは、真っ青な空。

「ねぇ、恭也」
「ん」
「恭也は、私を護ってくれるけど、私は恭也に何をしてあげられるのかな」

 唐突な質問に、恭也は一瞬言葉を失う。
 それは、あまりにも当然の事を聞かれた為。
 だからこそ、悩む事も無く恭也は答える。

「俺は、忍を好きでいられるから、忍が傍に居てくれるから、以前よりも笑う事が出来るようになったし、以前よりも強くなったとも思う」
「ぇ?」

 忍には、予想外の言葉だった。
 彼女は怖かった。

「気づいてないと思ったか? 最近、時々暗くなったりするから、心配してたんだぞ」

 自分と恭也の持つ時間の違いが。

「ごめんね」

 夜の一族である自分は、恭也よりもはるかに長い時間を生きる。
 それは、恭也が自分を残して行ってしまう事を意味する。
 自分よりもはるかに強い恭也。
 そんな彼に、自分がどれだけの事をしてあげられるのだろう?
 彼女として一緒の時間を過ごす内に、忍の中に生まれた不安だった。

「だが、悩みがそれでよかった」

 忍の肩をそっと引き寄せると、忍の頭の下に腕を入れ、引き寄せる。

「ぇ?」
「こうして、俺が答える事が出来るから。 答えて不安を取り除く事が出来るから」

 そのまま、抱きしめるように両腕を回すと、忍と向き合うように顔を向け、額を触れさせる。
 すぐ間近で見つめる恭也の瞳はあくまで優しげで、それが忍にはつらい。

「ねぇ、恭也。 私悪い子になっちゃいそう」
「ん?」
「あのね。私、恭也を離したくない。 美由希ちゃんと剣の練習をしているのを見ると、フィアッセさんがじゃれて居るのを見ると、
那美の傍でお茶を飲みながら笑っているのを見ると、すごく胸が苦しいの」
「ああ」

 そっと頭を撫でる恭也の手は、もう遠い昔のアルバムの1ページでしかないはずの父親を忍に思い起こさせる。
 暖かで、大きくて、それが、忍にそっと語りかけてくる。
『怖がらなくてもいい。 勇気を持って』と。

「私は恭也を護りたい。 恭也と一緒に居たい。 恭也を離さない。 他の誰にも、どんな運命にも、死の宿命さえも押しのけて恭也と一緒に居たい。
 例え世界が砕けても、こうやって恭也に抱きしめていられればいい」

 恭也の背に回した腕で、力いっぱい抱きしめる忍は、叔母が言った言葉と瓜二つである事は、無論知らない。
 強すぎるまでの愛情は、彼女達の覚悟の表れとも言える。
 絶対に自分が見送る事になる相手への愛情は、将来の悲しみを意味する。
 それでも自分は、貴方と居たい。
 それだけの覚悟をもって、彼女達は自分の正体を明かし、パートナーを求める。

「ありがとう、忍。 それだけ想ってくれて本当に嬉しい」
「うん」

 忍の目じりに浮かぶ涙をぬぐい、やさしく微笑みながら、恭也は言葉を続ける。

「俺は、忍が悲しむ顔を見たくないから、出来る事をがんばる。 でも、出来ない事もあるから……」
「その時は、一緒に、だね」
「あぁ、一緒に立ち向かおう。 死ぬことは避けられない。 でも、死ぬ前に一杯楽しかった思い出を残してやる事は出来る。 俺の父さんがしてくれたように」

 いつも力強く、笑いの絶えなかった父。
 時には死ぬような目にもあったが、それすら恭也には良い思い出であった。



「キス、して」
「ん」

 恭也が死ぬのはまだ先で、彼はその生涯におい
て、忍との間に五人もの子供を作る事になり、忍をして「忙しくて泣く暇も無い」と言わしめるまでになる。
 だが、今はただ愛する女性を護る事だけに一生懸命な、不器用な青年だった。





「恭也、愛しているよ」
「あぁ、俺もだ」
 
 夏の日差しに見守られた二人は、幸せの真っ只中である。
メンテ
Re: 第5回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.15 )
日時: 2008/03/11 00:02
名前: 綾音

皆様ご参加ありがとうございます。
結果は3日後の投票完了をお待ちください。
今回は皆様の質も高く、良い内容であったかと思います。

お疲れ様でした
メンテ

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