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第3回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』
日時: 2008/01/27 21:27
名前: 綾音

恐れ多くもやってきました第3回万魔殿企画。
万魔殿では幾多のキワモノが本日も喧々諤々とむさ苦しく語り合っております。

テン様優勝おめでとうございます。

企画のルールは簡単。各自がお題に沿って書いた話を、読者の方々に『どれが一番いいか』を決めて投票して頂く訳です。

この企画は誰でも参加して頂いて結構です。むしろ書いてくださると嬉しく思います。
作者である私たちからすれば、描写などの練習や刺激になりますので。
ちょっとやってみようかな、と難しく考えずに気軽にご参加を!

最後に。万魔殿メンバーはできる限り書くように!(笑

注意して頂きたいことについて。
※1.御題のリクエストはしない
※2.投稿はお一人様は1つに限ります。
※3.1位に選ばれた人が次の御題を決める。
※4.期限は提案日から1週間(主催が明記)
※5.お題に沿った、一番よいと思えるシーンを3000文字以内で書くこと
※6.編集OKです。パスワードの設定を忘れずに
※7.感想・投票は感想スレッドに

ということで、第2回優勝者テン様から頂きました御題はすばり!

『約束』

デートの約束・結婚の約束・遊びに行く約束・友情の約束色々とありますね〜
抽象過ぎて何書けばいいかわかんねぇぜコンチクショウ

この御題の投稿可能期間は2月1日まで!

追伸 今回より、ある制限を設けます。
それはずばり、『萌え殺せ』のタイトルどおり、ある程度萌える話でおねがいしますね♪
難しく考えなくともダークじゃなければOKです〜
メンテ

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Re: 第3回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.1 )
日時: 2008/01/25 06:23
名前: 小判次

封印されたあのネタを使うべきだ! と神様が降りてきたので徹夜で投下。
ちょっと違和感があったので、投稿直後にもかかわらず最後を一回改定。てか見てる人いたのかなw

※この話のエピソードは筆者の昔のオリジナルゲームネタ(当時高1)のスピンアウト小説ネタ(二年前)のさらに別ルートのワンシーンです。
※ただし、元ネタは筆者の頭の中にしかなく、データとして存在するものは中二病的な設定だけです(しかも一部紛失)。
※必要な設定は文中に織り込むよう努力しますが、分かりづらい部分もあるだろう事をご了承ください。
※メイン出演してるヒロインが某ツンデレマジシャンに似ている等、某救世主なゲームの影響を受けまくっている気がしますが気にしてはいけません。
※一つ上の注釈を書いて気づいたので防火注釈です。
ゲームネタと小説ネタでは主要キャラにおいて平均年齢が1/2以下、4:1の男女比が逆転しているぐらいに登場人物設定が違います。少なくともゲームネタを出した時点では倫理規定作品について無垢でした。

長くなりましたが、以上の点をご了承の上でお読みください。





「はぁ……」

 カヤ・ベルネットは本日何度目かのため息をついた。
 宮廷魔法養成院の中でも才能ある貴族の子弟がほとんどを占めるエリートクラス・統合導師クラスにおいて、平民出でありながら首席をとり続ける彼女は、極一部の親しい友人を除いて人に弱みを見せることなどまずない。
 そんな彼女がここ最近は人前でため息をついているのである。彼女の異変に、学院中で噂と憶測が飛び交っていた。
 そして、そんな渦中の人であるカヤに声をかける男が一人。

「やぁ、カヤ。そんなため息ばかりついてどうしたの?」
「あ、グスタフ……」

 数少ないカヤと親しい人物の一人であり、カヤと共に第三席以下を大きく引き離して統合導師クラスの次席にいるグスタフ・ヴィントブラオトである。

「あ、もしかして想い人でも出来たのかな」
「っぇあ!?」

 カヤは思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。そしてその頬が真っ赤に染まる。
 それを目撃したクラスメートたちは、あのベルネットに想い人が出来たらしいぞ、とか、やれ私の言ったとおりではないか、とか、鉄血女の想い人とやらは一体誰だ、とかそんなことを言っていたが、テンパっているカヤの耳には入っていない。

「おいおい、本当にどうしたんだよ。図星にしてもカヤらしくないよ」

 グスタフは苦笑している。
 カヤもその言葉で少し落ち着いたのか、恨みがましくグスタフを睨み付ける。

「悪かったわね。大体、私らしい図星の指され方って何よ」
「う〜ん、カヤはいつももっと自分を抑えられるよね? 多少びっくりしてもこんなに慌てたりはしないよ」
「それは、まぁ……そうかもしれないけど」

 だが、彼女が慌ててしまったのも無理はないだろう。よりによって、その想い人自らが訊いてしまったのだから。

「で、相手は誰? 僕でよければ協力するけど」

 カヤから見れば余りにも残酷なことを言うグスタフ。
 だが、カヤは胸の痛みを押さえ込み、冗談めかして答える。

「あぁ、目下の悩みが全部消えた人はいいわね。他人の恋路に首突っ込む余裕があるんだから」
「つい二ヶ月前までその悩みだった君が何を言うんだか。まじめに言ってるんだけどなぁ」

 茶化されたのが不満だったのか、グスタフは口を尖らせていた。
 純粋に気に掛けてくれているのだろうが、カヤにはその言葉は凶器でしかない。心に仮面をして、カヤはこの痛みしか生み出さない話題を終わらせるべく口を開いた。

「自分の恋ぐらい自分でけじめつけるわ。気に掛けてくれるのは嬉しいけど、遠慮しとく」
「わかった。相談ぐらいは乗るから、いつでも言ってね」

 そう言うと、グスタフは離れていった。
 そしてカヤはまたハァ、とため息をつく。

 カヤがグスタフを好きになったのはつい最近である。いや、正しくは好きであることに気づいた、か。
 カヤは以前グスタフのことを毛嫌いしていた。理由や経過を話すと長くなるので割愛するが、二ヶ月ほど前に仲直りしたわけである。思えば、そのときから好きだったのだろう。
 そして、それに気づいたきっかけが、ほぼ確定的な失恋である、というのはいかな運命の悪戯か。いかに精神が強くとも不安定になるのは仕方ないといえるだろう。
 先日、グスタフは嬉しそうに義妹がまた昔みたいに話してくれるようになった、と言っていた。そのときは、カヤも良かったじゃない、と一緒に喜んだだけだった。
 ヴィントブラオトの娘、コルネリアのことは、魔術師クラスの成績上位者として知っていた。グスタフと和解してからは、親しい友人の妹としてときどき噂を集めるようになった。
 そしてつい最近のことである。グスタフとコルネリアが許婚である、という噂を聞いてしまったのだ。グスタフはもともと家の血を活性化させるために養子として取られてきたのだ、と。
 グスタフが元孤児であり、養子であることは和解したときに聞いていた。それでも貴族が平民を養子にとるのだ、せいぜい資質を見込んでの道楽だろうとカヤは思っていた。
 これが事実なら、当然グスタフは自覚しているだろう。それでいて先日、義妹と仲を戻せたことをあれだけ喜んでいたのだ。グスタフは優秀だし、この婚約はまず解消されないだろう。
 そう思うと、カヤの胸に鋭い痛みが走った。そして、そこで初めてカヤはああ、自分はグスタフに惹かれていたんだ、と理解したのである。

 時は移ろい、修了間近。カヤとグスタフが組んでの卒業研究も、大詰めを迎えていた。
 この日の実験も終わり、後片付けをしながら雑談する二人。

「もう直ぐ卒業だね」
「そうね」
「一度でいいから、カヤに座学で勝ってみたかったなぁ」
「冗談。あなたに座学を取られたら、首席まで持ってかれちゃうわ」

 カヤの恋煩いは、時間を置いたからか多少なりは潜めていたものの、未だ続いていた。
 そして今、卒業も近い。もうすぐ理由なく彼に会えなくなる、そう思うとカヤの口から自然に言葉が流れ出ていた。

「ねぇ、グスタフ」
「なに?」
「義妹さんと、結婚するの?」

 グスタフは面食らっているようだった。一呼吸置いて、彼は視線を落とし、静かに肯定した。

「……うん。きっとそうなると思う。義父上との約束だし、コルネリアも嫌がってはいないみたいだし。僕もコルネリアのことは好きだから」
「直ぐじゃなくても、近い将来にはそうなるんじゃないかな」
「……そう」

 そこに漂う空気からか、グスタフはそれ以上言わなかった。
 カヤはそんな重苦しい空気を破るように、天井を向いて言った。

「私ね、きっとあなたのことが好き」
「……え?」

 グスタフは間抜けな顔をしていた。そんなグスタフに、カヤは笑う。

「やっぱり、気づいてなかったんだ。この鈍感」

 グスタフはまだ呆けて固まっている。それにかまわず、カヤは続ける。

「もうすぐ、会えなくなるでしょ。だから、その前に言っておきたかったんだ」
「ああ、失恋、しちゃったな。大分前から、分かってはいたけど」
「カヤ……」

 復活したグスタフも、彼女にかける言葉が見つからないようだ。

「こんな風に、ずっとあなたと研究していられたら幸せなのにね」

 上を向いていた彼女の頬を、つうっと一筋の雫が伝う。そして、顎からぽとり、と落ちた。
 一人泣くカヤに、グスタフは声をかける。

「ごめん。今まで気づかなかった僕が言える義理じゃないけど、君のことは好きだ。だけど、そういう風に見るには時間が足りなさ過ぎる。君の気持ちには応えられそうもない」
「わざわざ追い討ち掛けないでよ……」
「だけど」

 はっきりと振られて凹むカヤの台詞をさえぎり、グスタフは続ける。

「だけど、いつかまた、一緒に研究しよう。今はヴィントブラオト男爵家は弱小貴族だけど、研究者一人養えるぐらいになったら、必ず君を迎えに行く。君が飽きるまで、ずっと一緒に研究しよう」
「なにそれ、まるでプロポーズじゃない」

 グスタフの台詞に、カヤは泣き笑いを返した。

「そういわれてみればそうだね。でも、僕も君との研究は楽しいんだ。この言葉に嘘偽りはないよ」
「全く、こんな男が夫になるなんて、義妹さんも苦労するわね。……でも、きっとその頃には、笑って話せる様になってるよね」

 そう言うとカヤは涙を拭い、グスタフを真っ直ぐに見つめて言った。

「約束よ。一生、忘れてなんかやらないんだから」

 グスタフも、それに笑顔で応えた。

「ああ、約束だ!」

 カヤの瞳には、彼女本来の強さが戻っていた。





――――――――――――――――――――――――
行頭下げは字数に含まれないと信じますが、仮に含まれても三千ジャスト。
これは……萌えるのか? とりあえず、本来の正ヒロインはカヤさんです、とだけ言っておきます。
メンテ
Re: 第3回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.2 )
日時: 2008/01/28 00:12
名前: クレ

――そうして、ゆっくりと襖を開けた。
隙間から覗く光景は冬ということもあってかどこか寂しいものがある。
しかしそんな寂しい風景の中にこそ見出すべき冬ならではの趣があるのだ。
囲炉裏の中で静かに燃える炭や、部屋を薄っすらと照らす独特の色は冬という季節にこそ映える。
寒さを和らげる暖かい熱もまたそうだといえるだろう……まあ、私は幽霊だから寒さは感じないのだけれど。
まあそれはともかく。
私は開けた襖のすきまからこっそりと音も無く寝室を抜け出した。
できるだけ気配を立てぬように。妖夢にみつかると連れ戻されてしまうし、起こしてしまうのも可哀想だ。
……それに、今は一人でいたい気分なのだ。



辿り着いた先は白玉楼の中でも、一際大きい桜の木――西行妖。
さすがに時期がはやいのかまだ蕾が見られない。もっともこの桜は満開では咲かない、咲いてはいけない桜なのだけれど。
とまれ、いづれ庭中の桜もこの西行妖も一斉に花を咲かせる。
――それはとても美しく心躍らされる光景だ。

「でも、そこに貴方がいないのは……寂しいわ」

桜に手を這わせながらやはりというか、口からポツリと言葉が落ちてしまった。
でも周りには誰もいない。誰も聞いていない。聞いていたとしても、それはすべてを知っている目の前の西行妖だけ。
なら。別にきっと、構わないだろう。
思い出すのはもう思い出すことすらしなくなった遠い遠い昔のこと。
何かに塗りつぶされたかのように思い出せない生前の記憶の中でも、そこだけがほんの僅かにだけど思い出せる。













『これは君のせいじゃないんだから』

それは痛みを伴う記憶でした。

『だから、ほら泣かないで?』

それは胸をつくような痛みです。
そして目の前の光景は間違いなく自分の所為なのです。

『だれも悪くない。だからそんなに自分をせめないでほしい』

貴方はそういったけれど、そんなのはとても無理です。
だって私が元凶なのは確かなのですから。
涙を流す私に、貴方は困ったように、それでも優しい笑顔で微笑むのです。

『泣かないで。優しい幽々子』

もう誰も私に触れようとしないのに、どうして貴方はそんなにも自然に手を伸ばしてくれるのですか?
私はもう貴方を苦しめるだけの存在でしかないのに。私は死をばら撒く疫病神なのに。
だめです。お願いですやめてください。
私に優しくしないで下さい。私に笑顔を向けないでください。お願いします、お願いです、お願いですから……!
だって。でないと――

――貴方の優しさに、縋ってしまいそうなのです。

私の頬に優しく触れる手に、もうほとんど熱は感じられませんでした。
それはもう彼が長くないことを示していました。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
貴方が差し伸べてくれた手に重ねた手が、あなたを死に誘ってしまっている。
だというのに私にはこの手を、貴方の温もりを手放すことができません。
貴方は私を視界に納めるとゆっくりと瞼を閉じました。私の手を振り払うことなく、それどころか弱弱しい力で精一杯に握り締めて。
そして最期に

『もし、輪廻転生というものがあるとするならばその時はきっと君に会いに行くよ。その時こそきっと――』












「……ッ」

記憶はそこで途切れている。
そこから先はもう完全に欠落しているので、思い出すことすらできない。
確かなことは一つだけ。
私は彼と会う約束を交わしていた、ということと、当時の私は彼を憎からず想っていたということだけ。
その証拠に痛みを覚える記憶ではあるけれどそれと同じくらい胸の辺りが暖かい。
胸に感じる温もりを逃さぬように手を当ててもう一度、西行妖を見上げた。
彼との約束はひどく不確かだ。仮に転生できていたとしてもここには死んでいなければ来れない――紅白と黒白とメイドが以前生きたまま入ってきたが彼女達は例外だろう。
時期もわからなければ、場所もわからない。
そもそも彼が転生した先でもあの時の記憶を覚えているかどうかすらわからないのだ。
――だというのに。私は毎年、この桜の木の下で彼を待っている。
以前妖夢に不思議そうな顔で理由をきかれたが、ごまかしておいた。
だって、この約束は私と彼とだけの大切なものなのだから。


私はずっと待ち続ける。

この西行妖の下で、ずっとずっと待ち続ける。

彼と初めて出逢ったあの桜舞う季節に

またきっと、私達は再会できると信じて。




――花をみる心はよそにへだたりて 身につきたるは君がおもかげ――



メンテ
Re: 第3回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.3 )
日時: 2008/01/28 02:59
名前: ペルソナ

 一人、装備を整えていた。
 これから始まる激闘。終わらせなければ成らない事がある。
 悲しみの連鎖を断ち切らなければ成らない。一人の妹の為、何よりもその人の為に……

 漆黒のコートを着て、身体の各部位の稼動に支障がないか確かめる。
 服が、その中にしまった暗器が動きを妨げる事はない。


「恭也」

 聞こえた声は常とは違う。
 快活な声ではなく……いつか聞いたか細い声。

「どうした、かーさん」

 そう、いつか布団の中で聞いた弱々しい母ではなく、女としての声。

 恭也は普段の表情をなるべく柔らかくするように勤めて振り返った。
 そこには無論、不安を顕にしている桃子。

「大丈……夫よね?」

 これから開催される海鳴でのクリステラチャリティコンサートに脅迫が着ているのは桃子も知っている。
 そして、その脅迫相手が強い事も桃子には簡単に予想できた。

 今まで、朝も夜も削って鍛錬してきた恭也がさらに鍛錬を課さなければならないほどなのだ。
 必然的に相手が強敵だという事は分かる。

「あぁ、大丈夫だ」

 そんな桃子の不安を軽くしようと恭也はなるべく微笑んで答える。

 嘘だと自分でも分かっていた。
 相手は完成した御神の剣士。
 膝を砕き、奥義の習得も中途半端、神速も短時間、数回しか使えない。
 まして相手は――美沙斗は裏社会で実戦による経験を積んできた。戦闘における駆け引きの経験は雲泥の差。

 勝つ要素を探す方が難しい。


 だが、それでも勝たねばならない。
 そう、勝ちたいのでもなく、勝とうというのでもなく、勝たなければ成らない。

 故に、勝率が零に近かろうが恭也は引かない。引けない。

「本当に大丈夫よね?」
「大丈夫だ」
「本当の本当に大丈夫よね?」
「あぁ」
「本当の本当の本当に大丈夫よね?」
「大丈夫だ。かーさん。しつこいぞ?」

 そこまで心配してくれるのは嬉しいがここまで確認されると信頼されていないと思えてしまう。

「……だって、だって。士郎さんも同じ事言ってたのよ?」
「そう……だったな」

 いつものように仕事に行って、いつものように帰ってくるはずだった士郎は唐突に死んだ。
 前例がある分、桃子は心配になる。

 士郎と同じ生き方をして、士郎と同じモノを目指して、士郎の背中を追い続けた恭也がそうならないとは限らない。
 ましてや恭也は高校生。信頼していても心配になる。
 
「大丈夫だ。俺は帰ってくる。まだやっていないことが、遣り残した事が沢山ある」

 だから死ねない。
 だが、それは士郎もそうでなかっただろうか? 士郎も今の恭也と同じ事を言い残して死んでしまった。
 
 同じに見える。士郎が死んだあの事件と。

「帰ってきてよね。アンタが帰ってくる場所はここだから」
「あぁ、分かっている。俺はここに帰ってくる、約束だ」
「うん、いってらっしゃい」
 
 心配は募る。心が締め付けられる。恭也が行くのを止めてしまいたくなる。
 だけど、信頼しているから。信用しているから、信じているから見送る。

「恭也、アンタは私と士郎さんの自慢の息子なんだから負けたら承知しないからね!」

 その言葉に静かに頷き返して、恭也はその身を闇に潜ませた。
















 ブザーと共に開演が知らされる。
 始まりを告げるのは舞台だけではなく裏舞台も同じ。
 いや、すでに始まっているのかもしれない。

 聞こえる歌声は心に響く。
 安らぎを、温もりを、癒しを与えてくれる。

 だが、その声に篭った心は桃子には届かない。
 姫君達の歌声よりも心を占めているのは恭也。

 腕を組んで下を向いて祈る。願う。
 必死に、心の底から願う。祈る。

――お願いです。神様、それが無理なら悪魔でもいい。この声が届くのなら、この願いが叶えられるなら何でもいい。
――恭也を無事に帰してください。それが無理ならせめて恭也がこれから先の生活に支障がない程度で帰してください。
――もう二度と恭也が剣を握れなくなってもいいです。
――いっその事、片腕がなくなっても、片足がなくなっても、目が見えなくなってもいい。
――恭也とこれからも一緒に生活できるようになるのならそれでも構いません。
――私が恭也の手になります。足になります。眼になります。
――だからお願いです。心の底から願います。
――恭也ともう一度過ごせる時間を下さい。恭也と笑える時間を下さい。もう失いたくないです。

 どんなに願っても、どんなに祈っても届きにくい。
 人が願っても、祈ってもかなわない事が沢山あるなど知っている。

 けれど、これしかない。
 何かに縋らないと心が折れそうになってしまう。

 だから祈る。願う。
 耳に届く歌声全てを無視してまで一心に願う。





















 マナーモードの携帯が震える。
 祈りを、願いを遮られたようで不吉に感じた。
 また、開演中という事もあって携帯に触れるのはよろしくない気がした。
 だが、それ以上にその携帯は何か大切なモノが乗っていると思った。

 携帯を広げ、画面に映る文字を見て、桃子は周りにいる人の事など考えず走り出した。














 向かった先の地面にぐったりと深い――永遠の眠りに落ちてしまったかのように横たわる血濡れの恭也。
 息が止まった。心臓も止まった。
 
 震える足で前に進む。
 あんなに願ったのに届かない? あんなに祈ったのに叶わない?
 
「恭――「あぁ、かーさんか、早かったな」――へっ?」
 
 横たわり、血に濡れていた恭也から以外にも軽い言葉に驚く。
 こんなに酷い状態なのに……

「疲れていて少し寝ていた。すまん」
「――――――バカッ!」

 心配していたのに、死んだのかと思ったのにのんきな言葉を返されて頭に血が上る。
 
「…………無事よね?」
「あぁ、不思議な事に五体満足だ。しばらくは病院生活だろうが、今後には影響はない」
「嘘、ついてないわよね?」
「この場で嘘をつく意味はない」
「ほんとのほんとに無事よね?」
「あぁ、無事だ」

 トンッと抱きつく。恭也が怪我をしていることなど頭にも入れずに抱きつく。

「かーさん?」
「よかった、よかった」
 
 ぽろぽろと瞳から涙をこぼして歓喜を顕にする。
 これ以上ない良い結末に喜びを示す。

「士郎さんみたいにいなくならないか本当に心配だったんだから!」
「すまん」
「もう、恭也にご飯作って上げられないかと思ったんだから!」
「すまん」
「もう一回好きな人を亡くすかと思ったんだから!」
「すま――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――は?」

 いきなりのカミングアウトに固まった。
 あまりのも突然すぎて止まるしかなかった。

「士郎さんと全然違うのに、根っこのところはおんなじで! でも、私を必死になって支えてくれるところは違って。
 士郎さんがいなくて寂しがってる私に気遣って、私を支えてくれて、そのくせ、カッコ良く育って!
 目なんか士郎さんよりもカッコ良くなって! ずっと見てたんだから惚れないほうがおかしいでしょ!」
「……いや、そうとは限らないと思うぞ?」
「限るもん! そうだもん! 好きになったんだからしょうがないでしょ!
 こっちの事なんか考えないで寝てて、どれだけ心配したと思ってるの!」
「すまん」











「なぁ、かーさん、何時からだ?」
「気付いたらよ」
「そう、か。答えは――「まだいい。それぐらい分かってる」――ありがとう」
「でも、約束して」
「何をだ?」
「絶対に、私を置いていかない事。私を一人にしないこと、できる限り傍にいること」
「了解」
「……それじゃ、約束の証ね」

 突如添えられた唇。
 約束の証として捧げられたキスに驚くも恭也はそれを感受した。

 これからの二人の形がどんなモノになるか分からないが、未来を約束する口付けは……
メンテ
Re: 第3回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.4 )
日時: 2008/01/28 22:56
名前: 綾斗

それは、もしかしたらあったかもしれない一家のお話。

ミッドチルダ西部のアルトセイムは数多の次元世界の中で最も発展しているとも言われるミッドチルダにおいて、今も色濃く緑豊かな土地を残す。
見渡す限りの大草原に、点在する常緑樹。遥か遠くの峰々から悠々と流れてきた山水が湖となって湛えられ、多くの生命を育んでいる。

「パパ!」

一日の仕事を終えた恭也が振り返る。
と、何か大きな影が胸元へ飛びついてきた。

「危ないだろう、アリシア」
「パパなら大丈夫!」

自信満々に答えたのは二人いる恭也の娘の一人で10歳になる、アリシア。
恭也なら受け止めてくれることを微塵も疑わず、さらに強く顔を胸へ埋める。

「おかえり、アリシア」

少々お転婆が過ぎるかと思いながら、ポンポンと撫でる。
すると、今度はアリシアが抱きついているのとは反対側に誰かが抱き着く。

「フェイトもおかえり」
「うん・・・ただいま」

アリシアと瓜二つ、細部に至るまで同じ造作をしているもう一人の恭也の娘、フェイト。
先を越された形になったフェイトは空いた部分に抱きつくというよりもしがみついている。同じ年齢の姉であるアリシアのことをちょっとずるいと思いつつも、素直に飛びつくことができる姉を羨ましくも思う。
そんな内心をくみ取ったのか、恭也は姉妹共通の砂金のような金髪を優しく何度も撫でてくれる。
どれほど気持ち良いのか、フェイトの表情は満たされうっとりしている。

二人は一頻り抱きつき、頭をなでてもらうと満足して離れる。
それからどちらともなく、示し合わせたわけでもないのに恭也を間に親子三人で手を繋ぎながら、舗装されていない道を歩き、家路に戻る。

目に見えて醜く、触れば苔生した石のような異質な感触の手が、それでも二人は好きだ。
しっかりと手を握り、さらには楽しそうにぶんぶんと大きく前後に振る。

「二人とも、学校はどうだった?」
「あ・・・・」

親子の会話において基本とされる一つを訊ねると、途端にフェイトが色めき立つ。
隠し事が死ぬほど苦手な娘に内心苦笑しつつ、その様子から本当に悪いことではないと察してアリシアを見やる。

「えっとね、クラスの男子をぶっ飛ばした!」
「あぅ・・・・」
知られちゃったよ、と嘆くフェイト。
「・・・・・・アリシア。父はその理由を知りたいんだが」

自信満々に宣言する娘に何とも言えない心境を抱くしかない。
恭也の態度から何事か感じ取ったアリシアは、その時のことを思い出してか幾分拗ねた調子になる。

「だって、酷いんだよ?クラスの男子って、何かあるとすぐに『ブス』とか『暴力女』とか悪口言ってくるし、いきなり叩いたりするんだから」
「・・・つまり、それで堪忍袋の緒が切れてぶっ飛ばした、と?」
「うん。でも、ちゃんと手加減したよ?」
「そうか・・・」

御神流を教えているため非力な少女でも、やり方によっては酷い怪我を負わせることができる。
今回は何も問題はなかったが、そういうときは御神流を使わないように注意しておく。

(しかし、男子のその行動は・・・・)

所謂、思春期特有の“好きな女の子にちょっかいをかけて、構ってほしい”というアレだろうと推測し、それは当たっていた。
自分の娘ながら、母親に良く似てくれたおかげで二人とも非常に愛らしい容姿をしている。自分が美形であることに全く無自覚な恭也はそう思っている。
父親としては娘が早くも男を惹きつけ始めていることに嬉しいような、寂しいような感慨が湧く。

「それでね、フェイトは―――」
表情が一転して、ちょっと意地悪な色が浮かぶ。
「わわあっ!だ、ダメだよお姉ちゃん!」
「ふむ・・・アリシア」
「ラジャー♪」

フェイトの慌てっぷりに嗜虐心を擽られ、アリシアにゴーサインを出す。
アリシアもノリノリで応え、恭也がさりげなくフェイトを防いでいることで話始める。

「実はね、フェイトがラブレターを貰ったんだ!」
「言っちゃダメェェ!!」

大声を上げて止めようしたが後の祭り。アリシアは言ってしまった。

「・・・・・・・・むぅ」

唸るしかなかった。
まだちょっかいを出されるだけのほうが良かったかもしれない。
自分には縁のない話だったが、今時の10歳というのはラブレターを出すものらしい。恭也は自分でも驚くほどに動揺していた。普段はカーマインやセレブが「超絶親馬鹿」と言われているのを否定しているが、今回ばかりは否定できないかもしれない。
アリシアの話によると、差出人は学校でも中々の人物らしく非常にモテているとのこと。
別段相手のことなどどうでもいいが、フェイトがどういう返事をするのか気になる。もしもOKした場合に父親として、祝福すべきか、反対すべきか悩みどころ。
恭也が難しい顔をしていると、幼いながらも女の勘で悟ったアリシアが手を引っ張って注意を惹く。

「フェイトはごめんなさいってするんだよね?」

覗き込むようにアリシアが言葉をかけると、俯いて顔を隠していたフェイトがゆっくりとだが、こっくりと頷いた。その顔は真っ赤になっている。

「そうなのか?」
「そうなんだよ。だって、わたしもフェイトも、もう好きな人が居るもん」
「なっ!?」

これには流石に声を出して驚き、足が止まってしまう。恭也の記憶の中でこれほど動揺したことなどないほど。相手が誰なのか訊ねることも思い浮かばない。
硬直してしまった恭也に、悪戯の成功を喜ぶかのように笑うアリシアがまた抱きつく。何故か夕日のように顔を真っ赤にしたフェイトも今度は負けまいとはしっと抱きついている。恭也はもはや反射の域で二人の頭を撫でてやるが、物騒なことが頭を過った。

(とりあえず、そいつを斬っておくか)

ほぼ内心で確定した。この際、親馬鹿でも構わんと。
けれども、その確定を見透かしているはずもないアリシアから更なる爆弾発言が飛び出す。

「うん、わたし達が好きなのはパパなんだよ?」
「・・・・・・(コクコク)」
「・・・・・・・・・・・・・」

眩暈がした。なるほどと納得できそうなオチだが。だが、それで済むはずもなかった。

「えっとね、それで大きくなってママみたいに頭が良くて、凄く強くなって、美人でスタイル抜群になったら二人とも一緒にパパのお嫁さんになるの!」
「・・・・・・(コクコクコクコク)!」

これが世に言う三段オチか、と少し現実逃避しかけた恭也だが何を言っていいのか言葉が見つからない。
寄りにも寄ってパパと結婚する。もう色々とダメだが、それを直接言うのは娘達のことを思えば口にできない。

「あの・・・パパ、ダメ?わたし達じゃ、嫌?」
「あ、いや、その・・・すま―――」
恭也が一番弱いフェイトからの上目遣い(+涙目)に、すまないという言葉を急いで呑み込む。
「それじゃあ、二人ともお嫁さんにしてくれる?」
「・・・・・・あ、ああ。分かった」

恭也陥落。それでもOKを貰った二人の表情が恍惚さえ交る最高の笑顔ならばもう何も言えない。

「「パパ」」
「ん?」

二人同時に呼びかけられると、そろって小指を出していた。

「「約束だよ?」」
「そうだな。約束だ」

自分の二本の小指を絡め、“指切り”を交わす。

このとき、恭也は二人の想いが、女の子が最初に好きになるのは父親だという俗説の類だと信じていた。
成長して大きくなれば素敵な伴侶と巡り合い、この約束も恥ずかしい笑い話のタネになるのだと。

10年後、この約束が大騒動に発展することを知らない親子はまた手をつないで歩き始めた。
メンテ
Re: 第3回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.7 )
日時: 2008/01/28 18:01
名前: ペルソナ

主催側から連絡事項です。
ギアさんからの投稿が携帯からなのでスレッドを一つに纏めました。
ですので、こちらの作品はギアさんの作品になります。
ギアさん。纏めましたのでスレッドの消去をお願いします。




「――遅いなぁ」
 ちらり、時計を見る。少し寒い。
「10時……45分……」
 うん、間違いない。
ここに来たのが10時30分。まったく時間が経っていないことに、知らずため息が出てしまう。
「待ち合わせ時間は――」

――確か12時。

さっ、さすがに早く来すぎたかな? 
いやいや、そんな事はない……と思う。絶対……、多分……。
うぅ、やっぱり早いかも――

――だっ、だからって誘われたのが嬉しかったとか、そんな理由で早いとかじゃないよ。本当だよ。

「……うぅぅ……」
嘘です。嘘つきました。凄く嬉しかった、嬉しかったんです! 
あぁ、一人で何言い訳してるんだろ。何か今日の私って……変? 
落ち着け、落ち着け――私。
こんな時は深呼吸。ヒーヒーフー。
「――うん、落ち着いた」
待つ時間も大切だよね。あせらずゆっくり待とう。
ちらり、時計を見る。これで27回目。
「……10時……47分……」
たったの2分、時間が経つのが遅い。
あの時計壊れているのかも、ペシペシ叩いてみようか? 
直るかなぁ―――よしっ! 行動あるのみ。
トコトコと、時計に近づき見上げる。
「うっ、届かない……」
時計君に敗北、大人しく待つことに。そもそも壊れていたら動いていない。
「わたし、浮かれすぎ……?」
自身の行動を思い返すと、急に恥ずかしくなってしまう。
あぁ、かっ顔が熱いです。パタパタと手を使い、あわてて風を送り出す。
ふぅー、熱い。
キョロキョロ周りを見回すが、彼の姿はまだ見えない。
「……よかった……」
こんな顔見られたら……、想像してまた顔を赤らめる。
彼は優しいから、きっと心配してくれるだろう。
あぅあぅあぅ、ダメです……ダメなんです。恥ずかしいです。
ふと気づけば、大きなショーウィンドウが目に止まった。
トコトコと駆け寄って見る。
そこに映るのはもちろん私。うっ、この服少しヒラヒラが多いのでは? でも、みんなが勧めてくれたし……。
「大丈夫だよね」
よしっ! 心の中で気合いを入れ、くるりと一回りしてみる。スカートがふわりと舞い、そこに映る自分はニコリと微笑んでいた。
「……はぅわぁ……」
てっ、店員さんと目があってしまいました。恥ずかしいです。
ううぅ、笑われてしまった。
カァァーーー
わわぁ、全身が熱いです。大変です。非常事態です。
ちっ、違うんです。ほんの出来心だったんです。
女の子ですから身だしなみが気になっただけなんです。
そんな言い訳を胸に、私はあわててその場を離れ、待ち合わせ場所に戻る。
パタパタ……パタパタ……うぅ、熱い。
一生懸命、真っ赤な顔に風を送る。
何だか、通行人の皆さんに見られている気がします。
「――どうした、フェイト?」
「ひゃあっっ!?」
急に声をかけないで下さい。ビックリしました。
ふぅー、平常心平常心。
「何でもありません。恭也さん」
「そっ、そうか……、何か顔が赤いが」
むむぅー、そこはスルーして下さい。
「しかし、フェイトは早いな?」
「わっ、私も今来たところですよ」
わわぁ、恭也さん近いです。凄く近いです。いえ、嫌ではないですよ。
「こんなに手を冷たくして……」
あっ、恭也さんの手……、とても大きくて温かいです。何だか安心できます。
ううぅ、また顔が熱い。
あっ離れて……、わわぁ! 
「……少し熱いか」
恭也さんの手が額に、恥ずかしい……とても恥ずかしいです。でも、気持ちいいのは乙女の秘密です……。
「だっ、大丈夫です」
「それならいいが……」
そう言いながら手を差し出してくれる。
これは握ってもいい――そう言うことですよね? 
ちらり、時計を見る。28回目。

――10時58分。

約束の1時間前。
フフ、嬉しいです恭也さん。早く来てくれて。
1時間も長く一緒に居れますね。私も早く来て正解でした。

――でも、

私は手を握らず、恭也さんの腕に抱きつく。

――私を待たした、恭也さんへの軽い罰
――早く来た、私から私へのプレゼント

そんな行動に少し驚いた顔の恭也さん。
でも直ぐに微笑んでくれる。

――だから、私はあなたが大好きです。

「行きましょう、恭也さん」
今日のデートはこれからですから……。

おしまい。

 壊れキャラは好きですか?
と言う訳で、真面目なあの娘の心の内――それをコンセプトに、一人称ぽくしてみたらこうなりました。フェイトファンの皆様、本当にスイマセン。
ちなみに作者は恭×フェイ派です。フェイトは大好きです。
でも、壊れキャラは萌える……のかな?

 あと、綾音さんスイマセン。携帯からの投稿で2つに別れてしまいました。
そちらで1つにまとめて頂けたら助かります。あとで削除しておきますので。

それでは。
メンテ
Re: 第3回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.8 )
日時: 2008/01/29 02:05
名前: uppers

フェイトはまどろみの中から目を覚ました。

目を覚ましたフェイトの目は赤く、見れば泣いていたことが誰の目にもわかる。

しかし、周りには誰もいない。今、この部屋にいるのはフェイトだけだ。

フェイトは立ち上がり、窓に近寄り、外の様子を見た。


「……雪だ。」


フェイトは呟き、俯いた。

とにかく、起きたのだから朝食の用意をしなきゃ と思い、寝室を出た。
その後ろ姿から読み取れるのは淋しさ、悲しさ、怒り、様々な感情が浮かびあがる。

リビングに来たはいいが、フェイトは朝食を作る気も食べる気がしなかった。
わかってはいる。
恭也さんの仕事が『護ること』を信念とし、その仕事が急に延長になることは今までにもよくあったことだ。
でも今日だけは会いたいと切実に願った。
けれど、その願いは無情にも一本の電話によって遮られた。


「……すまない。」


最後にそう言っていた恭也さんは電話越しでもわかるぐらいに申し訳なさそうに告げていた。
でも、思ってしまう。

(なぜ、今日に限ってそうなるの?)

今の気持ちはなんだろう。
会いたい。けれど会えない。

フェイトは淋しさからか、リビングにあるソファーのクッションを抱くと小さく縮こまった。

(いつもならこういうふうになると恭也さんは隣に座って黙って頭を撫でたり、肩を抱いたり、時には……キス……してくれたり、その後は……)

フェイトは考え始めると止まらなくなってしまった。
会いたい。
ただそれだけなのに。


「……恭也さん、恭也さん、約束したのに、今日は一緒に過ごすって約束だったのに……」


フェイトの目からはいつからか涙で溢れてた。
フェイトは涙を拭おうとはせず、クッションをさっきより強く抱きしめ、涙を流した。

けれど、わかってる。きっと恭也さんは来ない。
あの人は仕事に対して真摯だから。私としても私のためにだけ戻って欲しくない。戻って来てくれるのは嬉しいけど、そのせいで恭也さんはきっと……ううん、必ず後悔する。
恭也さんはそういう人だ。
家族や大切な人をなによりも優先するけれど、恭也さんには護れる力があって、その力を必要とし、理不尽な力から真っ正面から立ち向かうような人の刃となり、楯となる。
その事で自身が傷つくことは省みない。
私だって不安だ。
きっとまた恭也さんは傷ついて帰ってくる。
私がその傷を癒してあげたいと思う。
けれど、珍しく取れた休暇を今日に使ってしまった。明日も休みではあるが、恭也さんが帰ってくるのは難しい。
仕事が始まったら会うことはこうして約束をするしかないのだ。
お互いの休みが合うのなんて、年に数回なのに と考えてたフェイトは泣き疲れたのか、クッションを涙で濡らしながら小さく寝息を立てていた。


「…………恭也……さん。」


小さく、小さい寝言は誰に聞かせる訳はないのに、誰もいない部屋に響いた。















トントンと包丁がまな板を叩く音が聞こえ、フェイトは目を覚ました。
いつのまにか寝ていたらしい。
ふと、台所で料理をしてる人物はフェイトが起きたことに気付いたように、声をかけた。


「起きたか、フェイト。」


声をかけた人物は優しい声でフェイトの名を愛おしそうに呼んだ。
声をかけられたフェイトは信じられないように言葉を紡いだ。


「……き、恭也さん。」
「ん、どうした。」


そういうと恭也は包丁を置き、ガスを止めて、フェイトに近付いた。
それに対してフェイトは質問をぶつけた。

「……仕事は……どうしたんですか?」

弱々しい声で言葉を紡ぐフェイトに対し、恭也はただ抱きしめた。

「仕事は終わらしてきた。フェイトに会いたかったんだ。それじゃだめか?」
「だ、だめじゃないです。」

フェイトは真っ赤にして答えた。そんなフェイトを優しく諭すように語りかける。

「約束だったからな。今日はフェイトとの記念日だろ?」
「えっ、恭也さん。……覚えていてくれてたんですか?」
「当たり前だ。……と言いたいとこだが、実はなのはに言われたんだ。『フェイトちゃんはずっと楽しみにしてたんだよ。』という内容を電話越しに一時間は説教された。」

苦虫を噛み潰すような表情で渋い顔をしながら話す恭也を見て、フェイトは自然に表情は笑顔になる。
お節介な親友に感謝を。
その言葉を受け止め、すぐに駆け付けてきてくれた大好きなこの人に最高の笑顔を。

もう離したくないと思い、フェイトは恭也を見上げ、キスをした。
恭也ははじめ驚いたが、すぐに受け止めた。いつまでしていただろう。どちらからともなく唇を離した。
お互いに見つめ合い、その空間には世界に二人に残された、二人のための二人だけの世界。

恭也はその空間の中、重々しく口を開いた。

「昨日の仕事が終わったら実はフェイトに伝えたいことがあるんだ。」
「えっ。」

フェイトは驚いた。いや、驚きよりどちらかというと悲壮感漂う表情がしている。


嫌だ。

恭也さんは何を言うの…

別れてくれとか言うの……

どうして……私が人間じゃないから……

作られたモノだから……

私に愛想が尽きたの……

私じゃ一緒に生きられないの……





フェイトの目から涙が溢れてきた。流したくないのに、もうこれ以上流したくないのに……
どうやっても涙は止まらなかった。一度思ってしまったら止まらない。ダムの蓋が開かれたように止まらなかった。
そんなフェイトを愛おしく、恭也は抱きしめた。
フェイトは恭也の腕の中で暴れた。離さないで欲しい、捕まえていて欲しい、という想いを抱えて。そんなフェイトの気持ちを知るよしもない恭也は言葉を紡ぐ。

「俺と結婚してくれないか?ありきたりな言葉で申し訳ないと思うのだが。」

フェイトは見上げた。恭也が言った言葉が理解できなかったから。
だから、もう一度言ってくれるように頼む。

「俺と結婚してくれと言ったんだ。それとも俺とでは釣り合わないか?」

フェイトは黙って首を横に振る。そこにはもう先程まであった悲壮感は漂ってはいない。
あるのは嬉しさの歓喜の表情だけだ。

「なら、これを貰ってくれるか?」

出されたのは指輪。
黄色に輝く指輪はフェイトによく似合う。
指輪の名をベリドット。
夫婦の幸福。
恭也はこれからの自分達を祝福するように願って選んだ。
恭也は指輪を取るとフェイトの左手をとり、薬指に嵌めた。

「これからも共にいてくれるか?」
「……はい、恭也さん。」


二人は共に歩くことを選んだ。
結婚という約束の名を。
きっと二人の想いは途切れないだろう。
なぜならお互いが愛しているから。



  −完−
メンテ
Re: 第3回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.10 )
日時: 2008/01/31 19:56
名前: 糖分の友

あれは、私とアルフがいつものようにジュエルシードを探索していたときのことでした。
それは月のきれいな夜、いつものように戦闘をして、ジュエルシードを回収する……ただそれだけのことが、今日は違いました。

場所は夜の海鳴臨海公園、相手は犬に取り付いたジュエルシード。
犬といっても、大きさは車くらいあり、牙も鋭く、まるで狼のようでした。
そのスピードは私達より速く、私達より威力のある攻撃を放っていました。
その犬は、私達が油断した一瞬の隙をついて、喉に噛み付こうと接近してきました。
そのスピードはまるで音速のようで、私にはまったく反応できませんでした。
アルフが必死で助けようとしますが、間に合いそうにありません。
私は殺られると思い、目を閉じます。

………
その衝撃はいつまでたってもやってきません。
私が疑問に思い、目を恐る恐ると開けると、そこには犬の代わりに、闇のように黒い漆黒のバリアジャケットと、月夜に輝くきれいな、2本の刀のデバイスを持った青年が立っていました。
その青年は刀を鞘に納めると、私に優しく「だいじょうぶか?」と声をかけてくれました。
それが、私とあの人との出会いでした。

この人は私を家まで送り、怪我の治療と、夕食を作ってくれました。
最初はなにかと突っかかっていたアルフですが、アルフは夕食が並ぶとすっかりと機嫌を直し、今はご飯をほおばっています。
ですが、私は疑問に思いました。

「どうしてこんなに優しくしてくれるんですか?」

その質問にこの人は「俺がそうしたいと思ったから、じゃ駄目かな?」と笑顔で言いました。
その顔はとても優しく、私の心を癒してくれるようでした。
私は顔をまっ赤にしてしまいました。
今度は逆に、この人が質問をしました。

「フェイトは、どうしてジュエルシードを集めているんだ?」

この質問に、私は素直に答えます。
この人なら信用できる。
そう思ったから。

私は話しました。
母さんのためにジュエルシードを集めていること、目的はわからないこと、途中、アルフが母さんに対する不満を言っていましたが、この人はそのどれをも真剣に聞いてくれました。
話が終わると、この人は優しく私を抱きしめました。
最初はいきなりでびっくりしたけど、あたたかく、とても気持ちがよかったです。

「俺はフェイトに何もできないが、フェイトが困ったときは俺が力になろう。俺がフェイトをどんなことからも護ろう」

この人の言葉が嬉しかった。
今まで、アルフやリニスに優しくされたときよりも嬉しく、昔、母さんに優しくされたときと同じくらい嬉しかった。
そういう思いとともに、私は泣いてしまいました。

それからというもの、この人が遊びに来てくれるようになりました。
そのときがとても嬉しくて、とても楽しかったです。
私はこんな日が毎日続けばいいなと思いました。
ですが……こんな日は、ある日を境に終わってしまいました。

それは4度目の白い防護服の子との戦闘のとき。
場所はあの人とであった海鳴臨海公園。
ジュエルシードを巡っての戦い。
私はフォトンランサーで隙を作り、アークセイバーで白い防護服の子に向かって振り下ろした。
完璧に隙をつき、決まったと思ったその攻撃が何者かに受け止められた。

「えっ……」

私はアークセイバーを受け止めた人物を見て絶句しました。

なぜ……なぜこの人が……

私が思考するよりも速く、この人は私に2本の刀で攻撃を仕掛けた。
私は攻撃をかわすことも、防ぐこともできずに、そのまま攻撃を受けてしまう。
私は信じられずに、呆然とした状態で、あの人の顔を見入ってしまった。
あの人の顔は、今は殺気の塊のようなもので、あのときのような優しさはまったく含まれていなかった。

なぜ……?なぜですか恭也さん……
あのときの約束は嘘だったんですか?

そんな私の思いもむなしく、恭也さんの刀が私に襲い掛かった。



多分これから書くかもしれないSsに続く。





……いや、守られない約束、をテーマにしたんですが、これは萌えますか?俺は萌えました。(外道だ)

遅くなりました。始めまして。甘党の「糖分の友」と言います。
今回のSsは俺が考えていたSsの一部分から抜き出したものですが、これが好評だったら連載してみようかなーなんて思っています。どうでしょうか?

にしても、文字制限があるので設定がなかなか出せない。(書いて気づいたけどこれダーク?)
フェイトと恭也の出会いですがどうでしょうか?

気に入ってくださると嬉しいのですが……
では、長々と失礼しました。
メンテ
約束だよ二ノ宮くん ( No.17 )
日時: 2008/01/31 19:19
名前: 氷瀬 浩


駅前の少し開けた場所。
そこに立つ一人の少年の元へと駆けて行く一人の少女。
少女が通り過ぎる度に、すれ違った男性たちが後を追うように振り返る。
その視線に僅かに身を強張らせるも、一気に走り抜ける。
が、強張った身体に恐怖からか目を閉じていたせいで少年まであと数歩と言うところで何かに躓き転ぶ。
いや、実際には完全に転ぶ前に少年が少女を抱き締めるようにして受け止める。

「大丈夫、月村さん」

気遣わしげに尋ねる少年へと月村真由は笑顔で礼を言いながら自分の足で立つ。

「はい、大丈夫です。ありがとうございます、二ノ宮くん」

真由の言葉に二ノ宮峻護は少しぎこちない感じで左手を差し伸べ、少し緊張した顔で告げる。

「それじゃあ、行こうか」

「あ、はい」

その手におずおずと手を差し出し、手を繋いだ二人は初々しいカップルといった感じで駅前から歩き出す。

事の起こりは唐突で、姉である涼子の言葉であった。
男性恐怖症である真由の治療の一環として、峻護にデートをするように言ったのだ。
その際、反対しようとした麗華は家の方の用事で実家へと戻る事となり、
涼子と真由の兄である美樹彦もまた急な仕事で出掛けねばならず、命令するだけしてとっとと出掛けて行った。
普通に考えて、嫌ならばそのまま無視を決め込めば良いのだがそんな事が出来るはずもなく、
結果としてこうして二人はデートしているのである。
とは言え、本当に嫌かと言われればそうでもないのだが。

「えっと、どこか行きたい所とかある?」

「あ、その、あまり良く分からなくて。すみません」

「あ、いや、謝るような事じゃないから。と、とりあえず、歩きながら考えよう」

いつもならあまり気にしないのに、繋いだ手の温もりに赤くなりつつ峻護は真由のペースに合わせて歩く。
互いに無言のまま数十分が過ぎ、何か話さなくてはという焦燥感にも似たものに突き動かされ、

「「あのっ」」

二人全く同じタイミングで話し出してしまう。

「あ、二ノ宮くんからどうぞ」

「いや、大した事じゃないから月村さんから」

「わ、私も大した事じゃないので」

互いに譲り合いながらも結局はまた黙ってしまう二人。
またしても沈黙が降り、そのまま歩くこと数分。
いつの間にか周囲に自然が増えてきて、二人の視線は自然と近くの木々へと移る。
夏も過ぎ、秋に入ったばかり故にまだ木々は青々しているが、二人は足を止めて暫し木々を眺める。
やがて緊張も解けてきたのか、峻護が少し可笑しそうに笑う。

「そんなに緊張しないで、もっと普通にすれば良いんだよな」

「うふふ、そうですよね。緊張し過ぎて、疲れちゃう所でした」

「ああ、俺もだ。折角の休日なんだから、もっと楽しまないとな」

「そうですよ。あ、二ノ宮くん、私行きたい所ありました」

「うん、何処だい。何処でも良いよ」

「こっちです」

真由は案内するように峻護の手を引き、それに数歩遅れて付いて来る峻護を急かす。

「早く行きましょう」

「分かったから、そんなに急いだら危ないよ」

急にはしゃぎだした真由に苦笑を見せつつ、峻護は少し歩調を速めて真由の隣に並ぶ。



時間もすっかり夕方に差し掛かり、二人は帰路に着いていた。
今日あった事などを話しながら楽しそうに笑い合う二人。

「今日は本当に楽しかったです。涼子さんのお陰ですね。
 二ノ宮くん、ありがとうございます」

峻護と繋いでいた手を離し、ぺこりと頭を下げる真由。

「俺の方も楽しかったよ。こちらこそ、ありがとう」

「えへへへ、そう言って貰えてとっても嬉しいです。
 あ、あの、もし、もし良かったらまた今度……その……。
 や、やっぱり何でもないです! あははは、早く帰って夕飯の支度をしないといけませんね」

何かを言いかけて止めると、真由は峻護に背を向けて歩き出そうとする。
その手を掴んで引き止め、改めて向かい合うと峻護は珍しくすんなりとそれを口にする。

「月村さんさえ良かったら、今度は特訓とかじゃなくて普通にデートしよう」

何を言われてのか分からずに呆けたように峻護を見上げる真由を見て、
峻護は自分が発した言葉を反芻して、思わず頭を抱えて蹲りそうになる。
確かに嘘偽りのない本心ではあるが、よく照れもせずに言えたものだと、
今更ながらに赤くなった頬を隠すように口元を手で覆い、真由の返事を待つ。
その意味がようやく伝わったのか、真由も峻護に負けず劣らず顔を赤くしながらも、

「あっ……、はい!」

満面の笑みを浮かべてそう返事をする。
誰も知らない二人だけの約束。
それを結ぶ為に、まるで神聖な儀式のようにそっと小指を絡ませて、もう一度約束を口にする。
小指から伝わる確かな温もりに、顔を夕日によるものではない紅さに染めて。



おわり
メンテ
Re: 第3回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.18 )
日時: 2008/01/31 19:40
名前: ペルソナ

主催側からまたまた業務報告
以下の作品はテンさんの作品です。
投票の際にはお間違えのないように






高町家の庭で少年と少女が向き合っていた。

「約束、してくれる?」
「む、むう」

小指を差し出してくる幼いフィアッセに、同じく幼い恭也は唸る。

「して……くれないの?」

恭也の反応を見て、フィアッセは目元に滴を溜めた。
それに恭也は慌てて首を振る。

「い、いや、そんなことはないんだ」

だがその約束の内容は恭也としては頷きにくい。
恭也にとって約束とは反故にしてはならないもの。それは当然のことではあるが、フィアッセが求める約束は色々な意味で難しいのだ。
約束を破ってしまうとかではなく、恭也の心情的に。
しかし決してその約束をするのが嫌だというわけではない。

「じゃあ、約束……」
「ぬう」

今度は眼前に指を差し出してくるフィアッセに、再び子供らしくない唸り声を上げる恭也。
その約束の内容、恭也は嬉しいと感じている。
恭也はずっとフィアッセのことを大切だと、守りたいと思ってきた。だからその約束は本当に嬉しいもので。
だが同時に恥ずかしい。

それでも恭也はゆっくりと腕を上げ、自らの小指をフィアッセの小指に絡めた。
それにフィアッセは笑顔となって約束の内容を再び口にする。




「恭也が大人になったら……」

それはつまり同時にフィアッセが大人になった時。

「結婚してくれるって……約束」
「うん」

恭也は僅かに頬を赤くし、小さく、だが確かに頷く。

「約束……する」

恭也が応えたことで約束は成立した。
それは恭也にとって誓いにも相当する大切な約束。

「きっと……約束だよ」
「ああ。俺は大人になったら……フィアッセとけ、結婚する」

約束の内容の恥ずかしさとこそばゆさに、恭也はさらに顔を赤くさせるが、フィアッセは本当に嬉しそうに笑っていた。
暖かな空気が高町家の庭に流れる。二人の可愛らしいとも言える約束の内容がすでに守られ、それを祝福するかのように。
だが、

「はっはっはっ、心配するなフィアッセ!」

そんな空間をぶち壊しにする者が、高笑いをしながらいきなり道場の中より二人の前に飛び出てきた。

「と、父さん!?」

いきなり現れた士郎を見て、恭也は慌ててフィアッセの指から自分の指を離し、自らの父親へと向き直る。
士郎はそんな恭也をニヤニヤとした笑みを浮かべて眺めたあと、フィアッセへと近づいた。

「フィアッセ、恭也は絶対にその約束を破らない」




きっとその言葉は自分の子供が約束を守ると信じる父親として正しいセリフなのかもしれないが、そのにやけた笑みは何なのか。

「なぜなら証拠がある!」

そう言って士郎はどこからか小型のラジカセを取り出した。そしてその再生ボタンを押すと。

『ああ。俺は大人になったら……フィアッセとけ、結婚する』

それはまさしく先ほどの約束の言葉。おそらく録音の機能もあったのだろう。恭也の声がはっきりと聞こえた。
テープから聞こえるからこそ、恭也のその声が上擦っているというのがよくわかる。
その瞬間、ラジカセに向かって白刃が飛ぶ。

「ぬおっ!」

恭也が放った小刀の一撃を士郎は両手ごと上半身をのけ反らすようにして避け、ラジカセを守っていた。
そんな士郎に向かって恭也はただ右手を差し出す。

「父さん、大人しくそれを寄越せ」
「それはできん、できんなぁ恭也。これは証拠なんだからな」
「そんなものなくても約束は守る!」

珍しく声を荒げて叫ぶ恭也。
その叫びを聞いて、フィアッセは顔を赤くし、士郎はさも楽しそうに口笛を鳴らした。

「嬉しい、恭也!」
「あ、いや、これは」




再び嬉しそうに満面の笑顔を浮かべて抱きついてくるフィアッセに、恭也は自身が何を言ったのかを理解して再び顔を真っ赤にした。
だがその隙に士郎は駆けだしてしまう。

「ではフィアッセ、いや未来の義娘、色んな意味で愚息を任せた! 恭也、フィアッセを幸せにするんだぞ!」

二人を祝福するかのように、わざとらしく目頭を押さえながらも、神速を使っているのではないかと疑ってしまうほど超高速で高町家の庭から脱出していくその姿は不気味だ。

「って、ちょっと待て、このクソ親父!」

すぐにでも追いかけようとする恭也だったが、フィアッセが離してくれなかった。彼女が相手では振り払うこともできない。
フィアッセは恭也に抱きついたまま、彼の耳元でそっと囁く。

「約束だよ、恭也」

まるで宝物を抱えるかのように抱きついてくるフィアッセの言葉を聞いて、恭也は士郎を追いかけるのを止める。

「ああ。約束する」

そしてもう一度、何より大切な約束を交わした。





真っ黒な服装を好む恭也が、その日は真っ白な服……タキシードに包まれながらも、待合室で時間を潰していた。

「で、フィアッセ」



目の前いる純白のドレスに包まれたフィアッセに恭也は話かけるが、彼女は笑ったままその手に持つ小型のラジカセのスイッチを入れる。

『きっと……約束だよ』
『ああ。俺は大人になったら……フィアッセとけ、結婚する』

そのラジカセから聞こえてくる二人の幼い声。
それは幼い時に交わした何より大切な約束。

「先ほどから何度聞いている。というか、残っていたのか、それ!?」
「うん。あのあと士郎に貰ったの。恭也が壊したのはダビングしたやつだって」

フィアッセの答えに恭也は眉間を押さえたが、すぐに苦笑した。彼女は彼女で、また聞き直していたりする。

「もういいだろう?」
「でもこれ、後で流すよ?」
「やめてくれ!」
「もう桃子にダビングして渡しちゃった」




イタズラっぽく舌を出して言うフィアッセを見て、恭也は肩を落とす。がしかし、またもすぐに立ち直り、純白のドレスを着た愛する人へと近づいた。
そして、まだ約束の言葉を聞こうとするフィアッセの手からラジカセを取り上げて、近くにあったテーブルに置くと、彼女の身体を優しく抱きしめる。

「フィアッセ、俺はその約束……守ったよ」

恭也の言葉に、フィアッセは大きく頷き、自らも愛する人の身体を強く抱きしめた。

「うん。ありがとう、恭也」

今日この日、約束は確かに守られる。
なぜならこの日こそが、あの幼い日に交わした約束が本当に実現される日なのだから。




終わり




二シーンになってしまった。
むしろ赤くなり、恥ずかしがる恭也に……。
なのはを期待してくださった方々にはすみません。
携帯からなのでまた手数をおかけします。

メンテ
恋愛っぽくはないです。 ( No.19 )
日時: 2008/01/31 22:20
名前: FLANKER

今回は拙作のA‘s編42話で、フェイトと蒼牙が約束をする前を補完的に描いたものですので、それを前提にお願いします。
ではでは。










「お兄ちゃんも蒼牙さんもまだ来てないね」
「うん」

 『アースラ』艦内の戦闘訓練室に、今回、なのはとフェイトの相手役を務めるはずの恭也と蒼牙はまだ来ていなかった。
 恭也が監視役を請け負うということで向かっているのだが、手続きやら何やかやで手間がかかっているのだろう。
 先に準備運動をしておくことにして、バリアジャケットを展開し、柔軟体操や軽くランニングをして体をほぐしておく。

「はあ、ふう、わ、私って本当に体力ないかも……」
「…………」
「フェイトちゃん、ちょ、ちょっと待って。速い速い」
「――え? あ、ご、ごめん」

 と言ってもフェイトにしてみれば本当に早足程度にしか思えない速さなのだが、艦内施設とは言え、意外に広いこの訓練室ゆえ、それを3周ほど回ればなのはが疲れてくるのも致し方ないのかもしれない。
 しかしそれからもなのはが声をかけなかったら6周も7周もいきそうなフェイトに、なのははさすがにもう「軽く」じゃないと思う。

「フェ、フェイトちゃん、はあ、はあ、も、もうランニングは……はふう、い、いいと思う、よ……」
「あ、うん、そ、そうだね……なのは、大丈夫?」
「はいひょうふれす〜」
「舌が回ってないよ、なのは……」

 その後の柔軟体操でも……

「フェイトちゃん、これ以上はいかない……!」
「…………」

 背中を押してもらって体の屈折運動をしているのだが、フェイトは上の空か聞いていない。

「にゃ〜、痛い痛い! フェイトちゃん、折れる折れる折れる折れる〜!」
「――はっ!? ご、ごめん、なのは!」
「はう……フェイトちゃんが何だか運動イジメを……」
「い、イジメ!? そんなつもりはないよ、なのは」
「蒼牙さんに言いつけてやる〜」
「…………」
「……フェイトちゃん、やっぱり何か考えてる?」
「あ、ううん、別に……」

 他人のことに鋭いのは恭也譲りというか、恭也以上でもあるため、なのはもいい加減フェイトがおかしいのには気づく。
 それも何となくだが、誰のことで悩んでいるのかも。

「蒼牙さんのことで何か悩んでるの?」
「えっと……」
「無理に言わなくてもいいよ、フェイトちゃん。私はお話いつでも聞くけど、今は無理に聞きだすべきじゃないと思うから」

 ただフェイトの親友を自称しているくらいだから、親友の悩みに相談くらいはしてあげたいと思う。

「あ、あのね……その……」
「うん。ゆっくりでいいよ」

 そもそも誰かに相談するなんてことはフェイトには経験などほとんどないだろう。
 それができる相手が圧倒的に少ないこともある。

「この戦闘訓練も兄さんと約束したことでね」
「うん、知ってるよ。フェイトちゃん、楽しみにしてたもんね」

 たくさん約束したことがあったのだろう。
 少し前も一緒に料理をしたと学校で楽しそうに、ちょっといたずらをされたようで愚痴のようなことも言っていた。

「ただ、その……約束はしたけど、これが終わったらもう約束って無効になっちゃうのかなって」
「じゃあ、また約束したらいいんじゃないかな?」

 そこでフェイトがちょっと顔を俯かせて不安そうにする。問題はおそらくそこにあるのだろう。

「……兄さんをまるで縛り付けてるみたいで悪いんじゃないかなって……」

 約束とは裏返せば約束したことに対し当事者を拘束する。
 その日、その時間、その日できること……予定を入れてしまい、相手を自分に付き合わせる。
 考えてみれば約束のほとんどはフェイトから蒼牙にしたもので、蒼牙は己が義のために約束なんて破れはしないだろう。
 それをフェイトは理解しているわけで、『蒼牙の義につけこんで縛り付けてしまっているのではないか』と思い込んでいるわけだ。

「そんなふうに考えることはないと思うよ? そんなこと言ったら、私、お兄ちゃんを縛りつけてばっかりになるし……」
「そうなの?」
「私もね、思わなかったわけじゃないよ」

 昔、士郎が大怪我をするなどで家族が家にほとんどいなかった頃、なのはは家では1人ぼっちだった。
 だがそれを何とかしようと、恭也が自分のためにいろいろしてくれた。

「夜に本を読んでくれたり一緒に寝てくれたり……いつも明日もってお兄ちゃんにお願いしてた」

 縛り付けてるなんて意図はもちろんなかった。ただ純粋に嬉しくて、恭也といたいと思ったから。
 ただある日、恭也も疲れているだろうなと思った。恭也はなのはだけではなく、家族全員を支えていたわけだから。





「『そんなこと考えなくていい。俺たちは兄妹だからな』」





「え?」
「お兄ちゃんが言ってくれた言葉だよ。そんな堅苦しく考えなくていいって。いっそ縛りつける気でいてくれてもいいぞって」
「…………」
「妹のわがままを聞いてやらないで兄を自称する気はないって」

 もちろん、だからと言ってなのはも構うことなくわがままばかり言う気はない。
 ただ恭也の言っていることは、もっと気軽でいてくれればいいということ。
 兄妹だからと言って約束を軽はずみにしていいわけではないが、互いが遠慮ばかりするような間柄も兄妹らしくない。

「兄さんも……そう思ってくれてるのかな?」
「思ってると思う」
「どうしてそう思うの?」
「だって蒼牙さんってお兄ちゃんと同じだし」
「す、すごい説得力あるね、それ」
「あ〜、うん。私も言ってて思った」

 2人して苦笑い。

「約束ってね、お互いがそうしようって思ってするものだと思うの」

 時に一方的な取り決めもある。でも、なのはと恭也の間ではそんなことはない。ちゃんとお互いが了承する。
 『約束だよ』『ああ、約束だ』と。

「それにね、フェイトちゃん。約束するっていうの、むしろ私は好きだよ?」
「え?」
「ほら。ちゃんと繋がってるって思えるでしょ?」

 なのはとフェイトはP.T事件の後、また会おうねと約束した。その約束は……

「あ……」

 とても嬉しかった。フェイトにとっても、なのはと親友の絆ができたようで。

「お互いを繋げて、出会わせてくれる。その約束がとても楽しみになる。魔法みたいだなって思う」
「魔法……」
「だからね、縛りつけるなんて考えないで、蒼牙さんともっと兄妹として繋がっていたいって思おう。きっと蒼牙さんもそれがわからない人じゃないから」
「……うん」
「それじゃあ、フェイトちゃんにも教えてあげる。その魔法の使い方」










 そして訓練が終了し、負けはしたがフェイトは褒められもしたし、少しやりすぎだとお説教もされたが、とても楽しかった。
 これからも、こうしていたいなと思った。

「まあ、とりあえずこれで約束は果たせたわけだな」

 その言葉に不安と躊躇を抱きながらも、そばで見ていてくれるなのはに勇気づけられて。

「でもこれからも付き合ってくれますよね、兄さん?」

 これからもこうして蒼牙と兄妹として在りたいと願って。

「……それはまあ構わんが」
「じゃ、じゃあ約束して下さい、兄さん」

 そして、フェイトはなのはから教わった魔法――『指きり』を、恥ずかしがりながらも応じてくれた兄と交わした。
 約束ができた。繋がりができた。
 それだけのことが……フェイトはたまらなく、嬉しかった。





 終わり





恋愛っぽいの多いのでそっちとは関係なしのものでいってみました。
ちょっと中身が薄いかな……反省点です。
メンテ
Re: 第3回万魔殿企画『みんなで参加だ! 御題のままに萌え殺せ♪』 ( No.20 )
日時: 2008/02/02 00:07
名前: 綾音

さてさて締め切りです〜
第3回の優勝者はどなたになるのでしょうか?!
結果は2月4日に決まります!

投稿してくださった皆様お疲れ様でした!!
メンテ

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