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最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定)
日時: 2008/01/18 15:17
名前: ギア

初めに
・リリカルなのはのオリ主ものです。
・最強ものです。
・ノリとギャグで出来ています。
・最後に作者のオリジナル設定、解釈が入っていますので気をつけて下さい。
 かなり、好き嫌いが分かれると思いますので。

「キャラが少し壊れています。」
「第二話を更新しました。」


ぷろろーぐ >>1-11
第一話   >>12-33
第二話   >>34-52
第三話予告 >>53

メンテ

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最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.34 )
日時: 2008/01/18 14:02
名前: ギア

第二話
『あなたは女神ですか、いえ八神です』

 春の暖かさが心地良いお昼の時間帯。太陽の優しさをいっぱいに受けた公園のベンチで、いまだに眠り続ける一人の少年――リーネ。
 それとは対照的に、彼を気遣い起こそうとする一人の少女。車椅子に乗り、先程から何度もリーネに声をかけている。

「あのぉ、ホンマに大丈夫ですか? 生きては……いるみたいやけど、もしもーし」

 その声に反応を示さないリーネ。実際彼は、昨日の戦いで受けた傷を癒すため、より深い眠りについていた。己の強靭な肉体を活性化させ、自然治癒力を高めるためである。よく見れば昨日よりも多少とはいえ、傷が治っている事に気がつくだろう。
 しかし、そのことを知らない少女は、彼に声をかけ続ける。治っていると言っても、見た目はかなり重症なのである。少女の心配する声が届いたのか、リーネは眠たそうに体を動かした。

「うーん、あと少し――三日ぐらい寝かせて」
「寝すぎや! ――あっ、しもた」
「ぐぁが!?」

 あまりの展開についツッコミを入れる少女。出した手がリーネを叩くと同時に、彼はその痛みから目を見開き、飛び起きる事となる。

「痛い! 痛い痛い。なっ何ですかぁ。敵か、敵なのか? 安眠を妨げる悪魔か?」
「だ、誰が悪魔や。手ぇ出したんは悪い思うとりますけど……」

 リーネは、ゆっくりと声のする方へ視線を向け、初めてその存在に気がついた。そこにいたのは彼を心配する一人の少女。
 肩まで届く程の長さの髪が、日の光を浴び明るく染まり、春を運ぶ風にやさしく揺られている。やわらかく澄んだ瞳はこちらを覗き、表情からは優しさと暖かみが感じられた。間違いなく可愛いと言える容姿である。
 見つめ合う二人。どれぐらいそうしていただろうか? 程良い眠気を誘う暖かさの中で、車椅子の少女とベンチに立つ少年。それは一つのおかしな空間を作り出していた。沈黙を破るためか、先に口を開いたのはリーネの方だった。

「バ、バトル希望ですか? ぼっ僕は、たたた闘いませんよ!」

 どうやら完全には覚醒したわけではない模様。リーネは何を言っているのかわからない状態で、腕を大げさに振り一人慌てだす。少女は何か楽しそうに、その光景をじっと見ていた。そんな中オリジンの二人は声も出さず、ただ状況を見守るのみ。

「お兄さん、なかなかおもしろいなぁ。うちは、お兄さんが怪我してるみたいやったから、心配で声かけてたんよ」
メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.35 )
日時: 2008/01/18 14:05
名前: ギア

 その言葉にリーネは、自分の現状を思い出すと共に、改めて襲ってくる痛みに顔をしかめる。多少治ったとは言え、手を見れば皮が捲れ服で見えないが体中にも傷がある。その服にしても爪で切り裂かれ、決して無事には見えない。傷が完治するにはあと数日は必要だろうか……。彼はそう、頭の中で結論付けた。
 そんな彼を、端から見ればかなり怪しい人物であるのは間違いないだろう。しかし彼女は、心配だからと声をかけて来たのである。彼の見た目が子供だったと言う理由もあるだろうが、それでも彼女の優しさが良くわかる。その自然に浮かぶ笑顔を見れば、彼の心は何だか暖かくなるような気がした。

「あぁー、大丈夫。人より数百倍は頑丈だから。はっはっは」

 心配かけまいと、冗談のつもりで言ったのだが、冗談には聞こえないのがリーネという存在である。実際オリジンの二人は無言で納得していた。

「そうか? でも手当てぐらいはせなあかんと思うけど。病院とか――」
「ありがとう。でも本当に大丈夫だから。それに……、あのぅ、その……、お金もないし……」

 前半は心配してくれた優しさに感謝の気持ちを。後半は言いにくそうに、どの道病院には行けない理由を……。

「お金ないって家に帰らへんの?」

 彼女の疑問は当然の事である。子供がお金を持っていないのは、別段おかしい事ではない。しかし、住む家までも無いとは普通考えたりしないだろう。
 そしてこの少年――リーネは普通ではなかったのである。

「た、旅をしてるから! 今の家はこの公園。そしてここが寝室」

 さすがに逃走中とは言えないので、笑いながら寝台であるベンチを、ペチペチ叩く。瞳に溢れてくる、心の汗と言う何かを我慢しながら……。

「しもたぁー、不法侵入してもうたやん―――って、そんな事あるかい!」

 公園が家――その発言に反応したのか、一人でボケて一人でツッコむ少女。彼はそんな彼女を、壊れ物を扱うかのように優しく、時に生暖かく見つめていた。

「わっ、違うんよ、違うんです。あれは天然で! いや、それもおかしいなぁ。あぁ、そんな目で見んといて下さいぃ」

 少女はあたふたしながらも、何か楽しんでいる。そのような表情をしていた。
――ふぅ。どうやらある程度落ち着いたのか、一つ息を吐き調子を整える少女。

「あぁ、なんか久しぶりな気がする。こんなに話して騒いだの。自慢やないが、あまり友達おらへんしな……」

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最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.36 )
日時: 2008/01/18 14:10
名前: ギア


 少女は、初めて会った人に何を話しているのか――とも思ったが、実際のところ、騒いだのは本当に久しぶりなような気がする。目の前の少年が話しやすい雰囲気なのだろう。少女はそう結論づけることにした。

「僕も友達はあまりいないよ? ん、あまり? ――ほとんど……いないよ」

 なぜか、目から流れる青春の滴が一つ頬に路を作る。リーネはすぐにそれを拭い、目の前の少女と友達になろうと思い立つが、まだ名前を聞いてないことに気がついた。ならばと名前を聞こうと行動に移すも、意外な方法で邪魔が入る。
 ぐぅぅぅ――と、かなり大きな音が辺りに響く。その音に少女は目を丸くして驚くしかなかった。

「なんや、ご飯食べてへんの?」

「う、うん、だけど今から捕りに行こうかなぁって」

 そう言いながら指差す先には、遠くの方に山が見える。それはどう見ても普通の山なのだが、リーネはもう冬眠もしてないだろうから――と。その言葉に呆れる少女。この少年は今の時代に、狩猟による完全な自給自足をすると言いだしたのである。
 彼女は何故かこの少年を、放っておく事が出来なかった。

「なら、家に食べに来たらどうです? ちょうど今から帰るとこやし」

「あなたは神ですか! いや女神ですか!?」

「女神ちゃうで。うちは、八神や。八神はやて」

「はやてちゃんか、良い名前だね―――はやてっちって呼んで良い?」

「うん? 別にかまへんよ」

 昼ご飯の確保と共に、目の前の少女の名前を知ることができたリーネ。彼は自分なりの呼び方をはやてに伝え、彼女もそれを軽く了承する。その言葉に彼は満足そうに頷き、ならば今度は自分の番だと自己紹介を始める事にした。

「じゃあ、はやてっち。僕の名前はリーネ。それでコレがサラとシルフィ――あっ……、まっ、いっか。よろしくね」

「おぉ、リーネさんはアクセサリーに名前をつけるタイプなんやね? あっ、別におかしいってわけじゃないんよ」

 ついオリジンの二人まで紹介してしまうリーネ。この世界では有り得ない存在のため、どうしようかと考えたのだが、まぁ大丈夫だろうと結論づける。その考え通り、既にはやての中では二人の事は解決済みらしい。物に名前をつけただけと解釈してくれた。

「まぁ、そんなもんかな。うん、何の問題もないね。じゃあ、お互い名前もわかったことだし、これで僕たち友達だね。改めてよろしく」

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最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.37 )
日時: 2008/01/18 14:12
名前: ギア


「せやな……、友達や」

 新しい友達も出来、リーネもはやても嬉しそうな顔をする。

【サラもこれから、よろしくっス】
【!………】
「!………」
「?………」
【――ハッ、しっ、しししまったっスぅ。……あうあう……にゃ、ニャーニャーっス】

「――なぁ、リーネさん。何か声聞こえへんかった? おもに、そのペンダントのサラさんから」

 いきなり挨拶するオリジンが一人。まるで、自身のマスターの心配を無視したような行動。そしてそれに気づき、さらに混乱するサラ。さすがにおかしいと気づいたのか、はやてがリーネにたずねる。

【やれやれ、仕方ありませんね】
「シルフィ?」
【では、お馬鹿なサラのために私が説明しましょう】
【うぐっっス】

 あきれたような声が左手の腕輪から聞こえてくる。リーネは彼女に問いかけるが、サラのフォローをするのだとわかり、後は任せる事にした。
 そこでシルフィは魔法の事は秘密にし、しゃべれる事実のみを、身近にある機械を例に上げ簡単に説明する。

「ほかほか、二人は人工知能なんやね。確かに最近は機械とかしゃべるのあるし、それが発達したのがサラさんとシルフィさんと……。うんうん、うちが知らんだけで、世界は広かったんやなぁ」

【サラをそんな――あっ痛っス……】

 サラをそんな街中の機械と一緒にするなっス。そう反論しようと声を上げるが、リーネのデコピンにより強制終了させられた。

「それじゃあ、疑問も解決したことやし、そろそろ帰ろか? サラさんもシルフィさんも、改めてよろしくや」

【よ、よろしくっス。うぅ、痛いっス】
【よろしくお願いします】

 微妙に納得出来ない所もあるはずなのだが、どうやら聞かないでいてくれるらしい。その事に感謝しつつ、車椅子を押しながら彼女の家に向かうリーネ達であった。

「こっちでいいの?」

「そや、もう少し歩いたら見えてくるよ」

 あれから少し歩きはやての家に向かうなか、リーネは自身の現状を思い出した。さすがにこの格好ははマズいのではないか? 服が黒いこともあり、血が目立つことはない。しかし、切り裂かれた服はさすがに怪しい……。

「――でも、僕が急に行って家族の人は迷惑しない? 結構怪しいよ……僕」

「――うちは一人暮らしやし、親はおらへんしな。大丈夫や」

「へぇー、僕もいないんだ。サラとシルフィはいるけどね」

メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.38 )
日時: 2008/01/18 14:14
名前: ギア


 はやての言葉に別に気にしたような素振りも見せず、自分の境遇を話し出すリーネ。彼女自身も心配された経験はあるが、こうもあっさり返されたのは初めてだった。しかし、リーネの頬に涙が伝う。はやても、やっぱりと心の中では思うが顔には出さない。だが、はやてはリーネという人物を甘く見ていた。

「いっ、家があるからって、ううっうらやましくなんか……ないんだからね!」

 マジ泣きであった。その光景を見たはやては、ただリーネの顔を見上げその瞳に彼をとらえるだけ。ただ、何故彼を放って置けないのか? その理由が少しだけ分かったような気がした――彼は自分と似ているのだと。しかし、彼女はそれを面に出す事はない。

「リーネさんはホンマ不思議な人やなぁ。子供の一人暮らし、普通は心配するもんやで?」

 だから少し意地悪な質問をする。彼ならどう答えるのかと――しかし彼からは謝罪と、彼女にとって意外な言葉が返ってきた。

「あっ、ゴメン。気に障ったなら謝るよ。……実は僕、家族とかってよくわからないんだ……。サラとシルフィは家族のようなものだけど―――やっぱり、わからないや。でも、はやてっちには笑っていてほしいな。これは本当だよ」

 彼はそう言ってはやての瞳を見つめる。笑ってほしい――その言葉は、偶然とらえた彼女の表情を見たから。

「うちはいつも笑顔さんやで」

 はやてはニコニコと笑顔を浮かべ、おかしな事を言うリーネを見つめ返す。

「やっぱり独りは寂しいのかなぁと思っただけ。ゴメンね……、変なこと言って。家族の話しが出た時、一瞬悲しそうな顔してたもんだから、つい……ね」

「気のせいや」

 何か胸がざわつく感覚。だがリーネの言葉に笑顔で答えるはやて。確かに見間違いかもしれないとリーネは思うが、何かが引っかかる――そんな感じ。

「会ったばかりの奴が何を言ってるんだろうね? でもお節介ついでに言っとくね」

 リーネはそう言って一度瞳を閉じた。何かを思い出しているのか少し間を空け、再度開かれた瞳に彼女の姿が映る。

「寂しい時は寂しい。悲しい時は悲しい。そんな時はたくさんたくさん泣いて、その後いーっぱい笑顔になればいいと思うんだ。我慢なんかしなくていいし、する必要もない。わがままだって時に大切なこと――人生の教訓ってやつかな?」

 これは二人から聞いた言葉。そう言って、リーネは何か恥ずかしそうにオリジンをはやてに見せる。

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最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.39 )
日時: 2008/01/18 14:16
名前: ギア

「うちは悲しくなんかあらへんよ。今までだって独りやったし……。全然寂しい事なんかあらへんよ」

 寂しくない訳がない。まだまだ子供なのだ。本来、両親の愛情をいっぱい受けて、わがままを言って困らせて、そして笑って……。悲しく泣きたい時だってあるはず。
 リーネは彼女ではない。だから彼女の本当の気持ちも分からない。だけど、もし自分だったら――そんな想いで紡いだ先程の言葉。それは、自分に対しても言えること。

「はやてっちは強いんだね。でも、僕は寂しいかな……。サラとシルフィがいなかったら、きっと泣いてたと思うし。でもさ、決めたんだ」

「何をや?」
「今を目一杯楽しでやるって。過去の自分が羨むくらい楽しんで、幸せになってやるって」

 リーネのその言葉にはやては考える。
 自分は今、笑えているだろうか? 
――笑えて……いる。
 自分は今、楽しんでいるだろうか? 
――楽しんで……いる。
 そう、ただそこに本来いるべき者がいないだけ……。

「はやてっちは楽しんでる? 過去は変えられないけどさ、未来は自分次第なんだよ――」

 思考の中、はやてに尋ねられた問い。それは先程、自分自身に問い掛けたもの……。
――人は永遠じゃないから……なら、楽しんだ者勝ちだよ!? リーネはそう言って、はやてに微笑みかける。次に大袈裟なほど手を振り、語りだした。

「はやてっち。満天の星が照らすこの世界――そこは演技じゃない、本当の自分を表現できる特別な場所なんだ。その舞台では僕たちが主役で……、一人一人が様々な生き方をしている――」

――ならば、楽しくてハッピーエンドの方が絶対いいよね。そう言いながら、空を見上げるリーネ。そこには満天の星空。はやてもつられて空を見上げる。

「昼間やから星、見えへんなぁ」
「えっ!?」
「見えるんか! どんな視力してるんや!?」

 ハハハっと向きあい笑いだす二人。側で見れば微笑ましい光景だった。
 心から笑う――それは簡単そうに見えて難しく、しかし難しそうに見えて、意外にも簡単なのかもしれない。

「うん、やっぱり笑ってた方がいいよ。はやてっちは可愛いし、間違いなくヒロインだね」

 へへへっとリーネは鼻の下をこする。はやてはうつむき何かを考えているのか、その表情を伺うことは出来ない。

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最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.40 )
日時: 2008/01/18 14:18
名前: ギア

「楽しんだ者勝ちかぁ……。うち、見たとおり足悪いやろ? つい周りに迷惑かけんか考えてしまうんよ。自分のわがままで迷惑かけたら申し訳ないし……」

「わがままは子供と女の子の特権だよ。神様からのささやかなプレゼント」

 はやての独白に気にする事ないと、リーネは笑いかける。可愛いわがままは何の問題もないと……。

「なぁ、リーネさんは住むとこも無いんやろ? なら家に住まへん? リーネさんも独りやと何かと不便やろ」

 急な展開に慌てるリーネ。確かに家が無くて不便だが、生活が出来ない事はない。それに自分は逃亡中である。オリジンの二人も、いきなりの提案で驚いているようだ。

「えっ、ダメだよ。全身真っ黒だよ。傷だらけだよ。怪し過ぎるよ。僕だったら間違いなく通報するよ」

「リーネさんが行き倒れへんか、心配やからやで。独りは寂しいみたいやし……。それに、わがままは特権なんやろ?」

 はやては何か悪戯が成功したような、そんな顔をしてリーネを見る。実際はサラとシルフィがいるので独りではないが、おそらくその言葉を、自身に重ねているのかもしれない。
 彼女自身が決めた楽しむための――その第一歩。

 リーネは考える。来たばかりだが、この世界は嫌いではない。なら、この世界にいる間は可能な限り――

「うっ、なら僕たちは友達じゃなくなっちゃうね」

「えっ!?」

 はやての言葉に友達ではないと返すリーネ。はやてもその言葉に驚き、つい声に出してしまうが、リーネはそれに気づく事なく、さらに言葉を続ける。

「一緒に住むんだったら……、友達より家族の方が似合うかな?」

 あまりよくは知らないけどね――と、リーネは苦笑いを浮かべる。

「……家族……」

 そう呟いたはやての言葉は、とても小さく本来聞き取れないものだが、リーネの耳にはしっかりと届いていた。

「今日からは僕とサラ、シルフィ。……そしてはやてっちも家族だね」

 その言葉にはやては、モジモジと体を動かし何か照れくさそうな、恥ずかしいような、そんな表情をする。そしてうつむき何かを考えだした頃、いつの間にか一件の家の前に来ていた。

「―――家族か。リーネ、リイネやから――リン兄やな!」

 そう言って顔を上げたはやての表情は、今は見えない満天の星空のごとく輝いていた。

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最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.41 )
日時: 2008/01/18 14:28
名前: ギア

「ん? リン兄ここや、ここ! この家や」

 顔を上げたはやては、いつの間にか家の前に着いていた事に気づき、通り過ぎようとしたリーネを慌てて呼び止める。

「おぉ! ふぅ、危うく通り過ぎる所だったよ」

 家の玄関に着くと家主であるはやてが先に入り、リーネはそんな彼女を確認した後、中に入ろうと一歩踏み出した。

「よし、入るね――おじゃましまーす」

「むぅ、違うで。ただいまや――ただいま」

 リーネは中に入ろうとするが、その声に足を止める事となる。一瞬キョトンと動きを止め――はやてと目が合った。

「おぉ、そうだね。では改めて――ただいまぁ」
【ただいまっス】
【ただいまです】
「うんうん、おかえりや」

【――マスターが家に入るとき、『ただいま』って言うのは初めてっスね?】
【そうですね。いつも野宿ですし、私達はいつも一緒に居ますから】
「それ、ホンマですか?」

 その言葉にはやては驚く。旅をしているとは聞いたが、いつも野宿とは考えていなかったのである。

「うっ、しっ仕方ないよ。なかなか子供じゃお金稼げないし」

 確かにその言い分も間違っていない。実際そうやって、今日まで生きてきたのである

「リン兄はご飯の前にお風呂やな。さっぱりせなアカンやろ? その間に作っとくから」

 はやてはそう言ってお風呂の準備に向かう。しかしリーネ達の会話が耳に届くと同時に、その動きを止める事となる。

「ねぇシルフィ、お風呂って何?」
【水浴びの事かと思われます】
【確か、温い水が出てくるっスよ】
「なるほどぉ。冬でも便利だね」
「!?………」
「ど、どーしたの? はやてっち」

 その会話を聞いて、もう驚きを通り越したはやて。彼女には獲物を狩り、水浴びをするリーネ――そんな自給自足の生活が脳裏に浮かんでいた。

「あっ、着替えがない。お金も……」

 はやてのそんな胸中など分からないかのように、現実を口にするリーネ。はやてはその言葉に考えをめぐらす。

「ええで、それぐらい出すよ。ご飯食べてから買いに行こな? お風呂はその後やね」

「はやてっち、ありがとう」

「任せとき――家族やろ!」

 はやては笑顔でそう言うと、料理を作るため台所に向かう。その後に続きながら、リーネも何か手伝うことはないか聞くが、大丈夫だと返されてしまった。どうやら料理は趣味のようで、期待してても良いらしい。

メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.42 )
日時: 2008/01/18 14:30
名前: ギア

「はやてっち、家の中探検していい?」

「ええけど、別に面白いものないよ」

 リーネの、暇をつぶすためのその問いに、はやては苦笑いを浮かべながらも了承する。それならばと、彼はさっそく部屋を見て回るが、一つの部屋に入りその足を止めた。

「あっここ、はやてっちの部屋だね。さすがに女の子の部屋はマズイよね」

 一人呟きながら苦笑し部屋を出ようとするが、シルフィの言葉にその足を再び止める事となる。

【あれは――夜天の魔導書ですか?】
【あっ、本当っス。夜天の魔導書っス】

「夜天の魔導書って、あの鎖で封されている本のこと? 二人はあれが何か知ってるの?」

 いきなり会話を始めるオリジン達。リーネも、彼女達が一冊の本について話していることに気がついたのか、よく見える位置まで移動する。

――夜天の魔導書
 それは、古代ベルカにおいて主と共に旅をし、各地の魔導師の技術を収集、研究するために作られた、研究分析用の魔導書のこと。実際二人も何度か見ただけで、詳しくまでは知らないようだ。

「へぇ、デバイスなんだ――でも、どうしてここにあるんだろう?」

【名前を聞かなくなったのはかなり前っスね。どうしてここにあるかまでは分からないっス】

 リーネは夜天の魔導書について簡単な説明を受けるが、彼女達にも何故ここにコレがあるのか、さすがにそこまでは分からないらしい。

【代わりに闇の書と言う名前はよく聞きますね。確か十年以上前にも管理局で何かあったみたいですから】
【昔、ベルカでそんな名前のデバイスを聞いたことがあるっス。よくは知らないっスけど……】

「ふーん、でも自分にはあまり関係ない事かな。闇の書も聞いたことはないし、危険なことは避けないとね」

 リーネは、夜天の魔導書も闇の書も自分には関係ないため安心しているのか、その顔に緊張感はうかがえない。しかしシルフィの発言により、彼は先程までとは違い驚愕する事となる。

【彼女はこの夜天の魔導書の主かも知れませんね】

「彼女って――はやてっちが!?」

【その通りです。彼女もなかなかの資質を持っていますから。そう考えるならば、先程の主の疑問――コレがここにある理由にはなります】

【でも、どこかとは言えないっスけど……、コレはサラ達が知っている夜天の魔導書と少し違う気がするっス】

メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.43 )
日時: 2008/01/18 14:33
名前: ギア

 そのサラの言葉を受け、彼はもう一度夜天の魔導書を見てみる。実際初めて見るものであり、違いなどわかるはずもない。しかし二人には何か違和感があるようだ。存在が違う気がするのだが、全く違うわけではなく――何か曖昧でわからないらしい。
 そんな中、シルフィが話しを変える。いくら考えても、答えが出ないからであろう。

【もしかしたら、彼女の足はコレが原因では? 調べてみなければ分かりませんが――】

 その言葉を無視できず、リーネはシルフィに説明を求める。彼女が言うには、術者に何らかの負担がかかっている可能性が考えられるらしい。
 夜天の魔導書自体、主に負担をかけるような物ではなかったと思うのだが、やはり詳しくないためわからないとの事。
 ただコレは封印されていて、完全な主として彼女が覚醒していないのは、間違いないらしい。

「魔法では治療できないの?」

 説明を受けた彼のその問いにオリジンの二人は、原因が夜天の魔導書にあるのならば――と、前置きしてから答える。

【専用に魔法を構成し、フルブースターを使用しても無理っスね】
【実際は治るのですが、それは一時的なもので直ぐに症状が出てきます。何の解決にもなりません】

 その説明を受けたリーネは、何も言う事が出来なかった。そんな主に、だから調べるのです――と、シルフィは言葉をかける。それを聞き、どうやるか相談するなか、はやての弾んだ声が聞こえてきた。

「リン兄ぃー、ご飯できたでぇ」
「うん、すぐ行くから待ってて」
【主、では頼みましたよ?】

 シルフィのその問いにリーネは頷き、はやてのもとに急ぐように駆けだした。

「こっちや、こっち。そこに座って――ほな、食べよか。いただきます」
「いただきます」

 リーネは手を合わせ、はやての真似をする。目の前に並ぶ物はどれも見たことがない料理だが、直ぐに食事を開始。「うま、うま」とものすごい勢いで食べていく。
 はやてはそんな光景を、ニコニコと笑顔を浮かべ眺めていた。時折、人の手による味付けは懐かしい――という発言に対しては、苦笑いを浮かべてはいたのだが。
 リーネ達は食後のお茶も飲み終わり、早速行動を開始する事にした。

メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.44 )
日時: 2008/01/18 14:42
名前: ギア

「はやてっち、体触っていい?」
「えっ!」
【胸の辺りを希望するっス】
「ええぇっ!?」
「?………」
【その言い方では誤解されますよ。服の上からでいいので、お願いできませんか?】
「あ、あのぅ……」

 何か凄く慌てるはやてに、リーネは首を傾げる。そんな中、シルフィが直ぐにフォローを入れ、さらにはやての気持ちを簡潔に言葉にした。

【主、彼女も立派な女性なのです。その行為はやはり、恥ずかしいのだと思われます】

 その言葉にコクコクと頷くはやて。リーネも自分の失敗に気づき素直に誤る。
 次にシルフィが、その症状に心当たりがあるので調べさせてほしいと説明。それを聞いたはやても一瞬驚いた顔をするが、自分の動かぬ足は原因不明である事を思い出し、あまり期待はせずにそれを了承した。

「――ええですよ。初めてやからその……、優しくして下さい」

 そう言いながら恥ずかしそうに頬を染め、モジモジと体を動かすはやて。リーネもようやく、自分の行う行為に恥ずかしさを覚えたのだが、ここで逃げるわけにはいかず、決意をあらたに行動を開始する。

「では失礼します……、姫」

 そう言って、お姫様だっこで彼女をソファーに運び寝かせるリーネ。間違いなく混乱状態である。体を覆う布があるとはいえ、さすがに恥ずかしいのか、はやての体に力が入る。大丈夫だよと微笑みかけ、彼は優しく撫でるように胸をさすりだした。

【シルフィ、どうっスか?】
【ふむ……。主、もう少し強くお願いします】

 実際、何もやましいことはしていないのである。はやてもそれが分かっているのか、じっとリーネを見つめていた。

【分かったっスか、シルフィ?】
【ふむ……、全くわかりません!!】
「…………!」
「…………!」
【…………!】

「なんじゃそりゃぁー!」

 叫び出すリーネ。しかし、分からないものは分からないらしい。決してシルフィ一人が悪いわけではない。リーネもそれは分かっていたのだが、叫ばずにはいられなかったのである。

「うち、汚されてもうた……。もうお嫁に行かれへん……」
「はっ、はやてっち!?」

 急にうつむき、悲しい声でそう言うはやて。リーネからは、その表情を見ることは出来ない。だが、彼女の顔は間違いなく笑みを浮かべていた。実際、期待はしていなかったのである。ただ現状のまま、何も変わらないだけ。

メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.45 )
日時: 2008/01/18 14:44
名前: ギア

【マスターの変態度が増しただけっスねぇ】

 サラのその言葉を聞きリーネはすぐに窓へと駆けよる。勢い良く窓を開け放つと、彼女を首から外し強く握り締めた。既に右腕の筋肉は人外の領域まで達し、彼はゆっくりと腕を振り上げる。
 その表情は何か眩しいものを見るかのように、目を細めながら空の彼方を見つめていた。

【マママっマスター……、何をする気っスかぁ!?】

「……星に―――なれぇぇ!!」

【マスターァァァァァ―――】

 サラの言葉を無視し全力投球。凄まじい速さで、空にキランっと新たな星が一つ生まれる。はやてはそんなリーネの全力投球を見て、すごいなぁと感心していた。
 しかし、忘れてはいけない事がある。オリジンは必ずマスターのもとに帰って来るのである。リーネはそれを忘れたわけではない。そもそも、覚えているからこその全力投球である。
 しかし、今のサラはとても小さく、リーネ自身がはやてに意識を向けていた。そのような様々な要因が重なった喜劇を、誰が予想出来ただろうか? 

【――ァァァァアアア……ぐはっス!】
「ん? ……ぐおぉ!】

 悲鳴が尾を引き、それでも帰還を果たしたサラ。その声に振り向き、おでこに直撃を受けるリーネ。凄まじい音が辺りに鳴り響く……。
 倒れるリーネを見て、はやてはどうすればいいのか分からず、ただ混乱するしかできなかった。

【大丈夫ですか? サラが主で主がサラで――状態になっていませんか?】

「いたたたたっ、何とか大丈夫っス」

 シルフィの心配する声。そこに、おでこをさすりながら立ち上がるリーネ。しかし、口調は間違いなくサラである。ただ、気絶したマスターの体を動かしただけなのだが、サラはこの時点ではやての存在をすっかり忘れていた。実際それを見たはやては、目を見開き驚く。

「!? ……………うきゅぅぅーー」

 先程の緊張とこの異常事態に、自身の限界に来たのだろう。はやては、そんなの嘘や――と思いながら、意識を手放した。それを見たサラは状況を把握し、慌ててしまう。

――ゴスっ――

「ぐはぁ、かっかなり痛いっス」

 シルフィが一瞬でリーネの体を操り、彼自身の顔に向け殴りかかる。拳が当たった瞬間に魔導器に戻り、サラだけが痛さに転がり回る結果となった。実際リーネの体である事も計算されている。

メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.46 )
日時: 2008/01/18 14:47
名前: ギア

【二人ともお仕置きです!】
「うぅー、痛いっス……」
【知りません! しかし、コレは好都合ですね。今のうちに調べますよ】

 そう言いながら、リーネの体を操るシルフィ。そのとき顔が痛かったのは、彼女だけの秘密である。
 さっそく作業に取りかかる。先程は調べても分からなかった。だがそれは腕輪と体に距離があり、自分が触れていなかったため分からなかったのである。今の状態なら、主の体を通して直に触ることができる。
 一応許可は貰っているから大丈夫だろう――と考えながら、気絶したはやての胸、腰、足を順に触っていく。サラは邪魔しないよう既に魔導器に戻っていた。決して顔が痛かったわけではない。

【どうっスか?】
「――分かりました。やはり予想通りですね」
【でも、結局治せないっスよ? 夜天の魔導書をどうにかするっスか?】

 サラの言葉は間違っていない。魔導書自体をどうにかすれば良いのである。しかし、そうする事で何が起きるか分からないのも事実なのだ。

「何を言っているんです。私たちは良い物を持っているでしょう――サラ、ジュエルシードを出しなさい」

「なるほどっス! 考えたっスねぇ。既に解析済みっスよ」

 サラはリーネの体に戻ると、オリジンからジュエルシードを取り出しシルフィに渡す。その後リーネの体からは、フフフっ、ハハハっス――と、二つの笑い声が溢れていた。

「では、私は作業に移ります。サラは彼女を――後は主の体を、きちんと休ませておいて下さい」
「わかったっス」

 その言葉を最後にシルフィは魔導器に戻り、サラは気絶したはやてを抱き上げソファーに寝かせた。例え肉体強化魔法を展開していなくても、これぐらいならば出来るのである。
 自分も腰を下ろし、ゆっくりと瞳を閉じる。おそらく次に目を覚ますときには、シルフィの作業も終了しているだろう。

――おやすみっス、マスター。


 シルフィが作業に取り掛かってから三時間が過ぎた頃、ようやくリーネが目を覚ました。

「うーん、……おでこが痛い……」
「おはようさん、リン兄」

 リーネが目を覚ませば下から覗くはやての瞳。痛むおでこをさすりながら、彼はおはようと挨拶する。
 それに満足したのか、彼女は先の不思議な体験の事を聞いてくる。しかし彼にしてみれば、気絶中の事なので何の事か分からない。

「えーと、ゴメン。記憶がないや」

「むぅー、家族に隠し事は無しやで」

メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.47 )
日時: 2008/01/18 14:51
名前: ギア

 記憶がないと言うリーネの言葉に、はやてはむくれながら反論する。だが、気絶していた事を話すと納得したのか、彼女は自分の見たことを話し出した。
 これに困ったのはリーネである。またサラがやってくれたか――と、頭を抱えどうするか考えるなか、シルフィが声をかけてきた。

【主、私が説明しましょう】

 そう言ってシルフィは話しだす。魔法の事は言わないが、サラとシルフィがリーネの体を操れる事、自分達には不思議な力がある事など、今まで以上に詳しく説明する。

《いいの、そんなに詳しく話して》

《問題はないでしょう。魔法とまでは言いませんが、不思議な力があると思われた方が都合がいいのです》

《そうなの、もしかして何かわかったとか?》

《はい、あの後詳しく調べました結果、原因も分かり、既に対応策も準備出来ています》

 その言葉にリーネから笑顔がこぼれる。シルフィが調べた結果を聞けば、はやてのリンカーコア――魔導師が持つ魔力の源――が侵食されていて、魔導書の魔力が肉体に負担をかける事により、体に麻痺という形で影響を与えているとの事。普通の方法では治すことが出来ず、進行を止めないと生命活動そのものが危なくなるらしい。
 そこで、普通の方法では治せないならば、違う手段を用いるだけとシルフィは説明する。

《主はジュエルシードを覚えていますか?》
《うん、昨日の青い宝石でしょ?》

 聞けば、昨日回収したジュエルシードは既に解析済みで――その結果、次元干渉型エネルギー結晶体である事が判明。この場合、エネルギー結晶体であることが重要で、そのエネルギーをリンカーコアの補助にあてる事にする。
 エネルギー自体は、本来何かの動力に用いたり、使い方次第で様々な事に流用できたるため、今回はそれの応用で補助を行う。
 さらに都合の良いことに、コレは生物の想いに反応する性質があるらしく、相性も悪くない。
 危険がないのかと問われれば、心配はいらないと答えるシルフィ。実際、使い方を間違えば大変な事になるのだが、間違いさえしなければ、何の問題もないらしい。それは用途が代わっても同じで、手順と制御さえしっかりしていれば大丈夫とのこと。
 ただこれらを可能にするには完全な制御が必要であり、オリジンのような、自称アルハザードの叡智と呼ばれる存在があって、初めて行えることである。
 そこまで念話で伝えると、シルフィは次に対応策の説明に入る。

メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.48 )
日時: 2008/01/18 14:58
名前: ギア

 まずは、ジュエルシード自体に制御プログラムを構築。これにより、暴走させないよう封印状態を維持し、尚且つ各プログラム通りに、少しずつ力を取り出せるように制御する。
 次いで、はやてのリンカーコアの補助プログラムを作成。彼女の侵食されたリンカーコアを補強、肉体と魔力に負担をかけないように補助をする。
 そして、リンカーコアとジュエルシードが反発しないよう、調整・適合させるための補正プログラムの作成。
 また、足の筋力の衰えに対し、それを補うプログラムも別に組み込む。
 最後に全てのプログラムを管理するための管制プログラムを作り、それらのプログラムを一つに組み上げる。
 その結果、封印状態のジュエルシード一つでは無理である事が判明、二つ使用する事になった。
 結局、封印状態のままではこれが限界で、さらに数を増やしても意味はない。封印を解除すればいいのだが、はやての体に悪影響が出る可能性と、あまり侵食に抵抗すればどうなるかわ分からないので、現状のままで落ち着くことになる。
 大まかな概要のみの説明だが、実際はもっと複雑なのだろうことは、リーネにも分かった。

【これが、そのジュエルシードです】

 そう言ってシルフィは、リーネの左腕の魔導器から、二つの青い宝石を取り出す。よく見れば、ミッド式でもベルカ式でもない立体魔法陣が、複雑に絡み合っているのがわかる。

「ん? リン兄、それは何や」

 先程まで、サラと二人で話していたはやてが、ジュエルシードに興味を持ちリーネに寄りかかってきた。

「うーん……、ジュエルシード――奇跡の石かな? はやてっち持って見て」

 少し考えたが、自分では説明が出来そうにないので曖昧に答える。はやても興味があったため、何の警戒もなくそれを受け取った。

「なっ、何や? なんか足が……」
【問題ないです。効果が発揮されている証拠です】

 おそらくジュエルシードの力を利用し、足の衰えを補うプログラムが作動しているのだろう。それは同時に、ジュエルシードがリンカーコアの補助として働きだした事を意味する。

「……うそ……、う……ごく……、リン兄! うちの足、動いてるよ!?」

「奇跡の石だったでしょ? はやてっち、よかったね!!」

メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.49 )
日時: 2008/01/18 15:02
名前: ギア

 はやては、その言葉を聞いても何の反応もしめさない。ただ目を見開き言葉にならないのか、口をパクパクさせているだけである。やがて理解できたのかその顔に笑顔を見せ、嬉しそうに立ち上がった。

「あっ、歩ける! ――わっわわぁ」

 喜びに満ちた顔で歩きだすはやて。その歩みはゆっくりと覚束ない足取りだったが、確かに自分の足で歩いていた。だが少し速度を上げると、バランスを崩し転んでしまう。

【ふむ、長期間歩いていないのです。無理はいけませんよ】

《どうやら問題ないようですね。足の補助プログラムも正常に展開されています。ただ補助ですので、後は彼女の頑張り次第ですね》

 その念話を聞き、転んだ理由も分かったのでリーネは安心してはやてを見る。

「はやてっち、無理しちゃ駄目だよ。まずは足の筋力つけないと……。当分は杖があった方がいいかな?」

「そうやな、……あっ、病院にどうやって説明しよ?」

【今までも歩けなかったのは原因不明なはずっスよ? なら急に歩けたのも原因不明っス】

 はやてもそのサラの言葉に納得した。実際、自分も分からないのである。不思議パワーなどとは言えないので、そう説明するしか出来なかった。

【これから重要な事を伝えます】
【サラ達は結構ヒドいことをしてるっスよ】

 急にかけられるたその言葉に、はやては真剣な顔になる。シルフィが言うには、現状のままで生活に何の支障はないのだが、絶対にジュエルシードを手放してはいけないとの事。何故ならば、体を治したのではなく誤魔化しいるだけなので、ジュエルシードが無ければ再び歩けなくなるから。後は、胸に近い場所の方がより効果が出るため、袋にでも入れ首からかけておけば良いらしい。

【最後になりますが、現状でそれ以上の誤魔化しは無理です。さらに症状が悪化すればどうしようもありません】

《えっ、どうにかならないの?》

 今の現状からならば、多少悪化しても何も問題はない。ここでシルフィ達が言っているのは、夜天の魔導書が活性化した場合。
 しかし、彼女が真の主として覚醒すれば何も問題ないはず。実際これ以上魔導書に抵抗すれば、主である彼女に何が起こるかわからない。実際にオリジンの二人が、魔導書についてあまり詳しくないこと。何よりあれが、本当に夜天の魔導書なのかが分からない。
 シルフィが自身の考えを念話で説明する。それを聞いたリーネも、納得するしか出来なかった。

メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.50 )
日時: 2008/01/18 15:04
名前: ギア

【希望持たせて悪いっスけど、完全に治療できたわけじゃないんスよ】
【申し訳ないですが……、現状で出来ることは、誤魔化し様子を見るだけです】

 はやては先程の言葉を聞き何か考えていたのが、謝るシルフィ達の声を聞き微笑み返す。

「別に気にしてへんですよ。誤魔化しているだけでも歩けるみたいやし。もし歩けなくなっても元に戻るだけやから。……なら、今を楽しんだらええと思うんです。そうやろ、リン兄?」

「……うん、そうだね」

 今を楽しむ……。また歩けなくなる可能性があると聞き、それでも笑顔で答える彼女を見て、リーネも笑顔で頷く。
 本当は辛いかも知れない。だけど今を目一杯楽しむために……。
 いつか必ず治してみせる。その想いを胸に、彼は静かに誓いを立てた……。

「それでどうするの? 買い物行くなら車椅子を押すよ」

 この後の予定を思い出し、リーネははやてにたずねる。

「このままでええよ。ゆっくりでも歩いて行きたいし――でも、手ぇ繋いでな」

 はやてはそう言うと、少し頬を染めながらうつむいてしまう。リーネも、それなら大丈夫だろうと納得して軽く頷き、それを見た彼女は嬉しそうに、外に出る支度を始めた。どうやら首にかけるための入れ物を探しているようである。
 少しして全ての準備が整ったのか、此方に近づいてくるはやて。それから二人はゆっくりとした足取りで、買い物へと出かけて行く。

【そう言えば、マスターのぷっつんモードのこと話してないっスねぇ】
【そうですね。いきなりでは混乱しますから、説明が必要ですね】
「えっ、説明するの」
「何ですか、それ?」

 リーネは、はやての前でぷっつんする事はないと思うのだが、全く説明していなければ、そのとき彼女が混乱するのは目に見えている。
 オリジンの二人はその時の事を考え、ときどきリーネの性格・口調が激変し、全くの別人みたいになるのだと簡単な説明する。要点だけで詳しくは話さないが、二人はこれだけの説明で大丈夫だろうと判断した。
 また、ぷっつんモード時に執行者と名乗り出したのはサラの考えである。これにより顔、性格、口調、名前まで特定される事がないので、逃走には大変役に立っている。
 二人は、今聞いた事は絶対内緒にするようはやてに伝え、彼女も了承しリーネを見上げた。

メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.51 )
日時: 2008/01/18 15:09
名前: ギア

「二重人格なん?」

「うーん、よく分からないや。記憶もあるし、自分で体を動かしているのは間違いないんだけど……」

【主は主です。どちらでも変わりありません】
【そうっスね。でも本当に別人に見えるっスよ。例えるなら、鬼神戦神大変人っス】
「おお! 見てみたいわ」

 はやての問いに曖昧に答えるリーネ。実際のところ、彼にも分からないのだ。オリジンを使うためには、今のところぷっつんモードか、彼女達二人が体を動かしている必要がある。しかし、自分の意志でかわる事が出来ないため、何かと不便だったりする。主に戦闘面で……。
 リーネも別に戦いが好きな訳ではない。むしろ嫌いな方である。だが、力が必要な時もあるのは間違いない。結局、まぁいいか――自分は自分と、考えを放棄するリーネ。その考え通りオリジン達が声をかけてくれるが、いつものようにサラが余計な一言を入れてくる。
 だが、はやてはサラの言葉が気になるのか、声を上げ興味津々であった。そんな中リーネは、ゆっくりとサラに向け手を伸ばす。

【マママっマスター、嘘っスよ】
【主もサラもさっきの繰り返しですよ】
「ふぅー、まったく……」
「ははっ、あー何か楽しいわ」

 その様なやり取りをしながら、四人のお出かけは始まる。リーネはゆっくりと歩くはやてを気遣い、それでも彼女が気にしないように、笑顔で話しかける。彼女にとって、そんな小さな気遣いがとても嬉しかった。
 今まで他人に遠慮していた事もある。彼が家族として、接してくれている喜びもある。目の前の兄は旅をしていると言った。ならばこれは、永遠じゃないのかもしれない。
 それでも――

――胸に感じる、この暖かさは本物で

――手に感じる、この温かさは現実で

――私は、笑顔でいようと思う。
 いきなり始めた家族ごっこ。例え『ごっこ』でも、自分が欲しかったモノ、求めた絆。そして今の現実、偽りの家族。だけど、それでもいい。別に構わない。この温もりは、この暖かさは、……間違いなく現実で、本物だから――

「どうしたの、はやてっち?」
「ん? 別に、ただ幸せやなぁって」

――だから、心から笑って行こう。

 はやては、満面の笑顔をリーネに向ける。今日を明日を――これからを目一杯楽しむために……。握る手に僅かな力を込め、二人は歩き出した。

メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.52 )
日時: 2008/01/18 15:12
名前: ギア

 そんな微笑ましい中、目的地に着いて買い物を始める四人。どうしても黒の服が良いと騒ぐリーネ。その理由が血が目立たないからと知り、白を買おうとするはやてとの対立があったが、概ね無事に買い物も終了した。
 家に帰り、お風呂で傷が痛むと騒ぐリーネと、水責めにあっているのかサラの叫び声を聞き、夕飯を作りながら微笑むはやて。食事を済ませ、くつろぎながら話しに華を咲かせる四人。
 そろそろ寝る時間かと立ち上がるリーネ。それと同時に、彼は袖に僅かな抵抗を感じる。視線を向ければ、はやてが彼の袖を掴み、チラチラと見ている事に気がついた。

「どうしたの?」
「……リン兄、一緒に寝てええ?」

 彼は一瞬驚いたが「家族だしね」とすぐに頷き、それを見た彼女も笑顔を返す。断られるかもしれないと、不安があったのだろう――その表情はとても嬉しそうだった。

「今日は楽しかったわぁ……。明日からも楽しいんやろなぁ」

「そうだね、きっと楽しいよ。世界はまだまだ捨てたもんじゃないからね。楽しいことはいっぱいあるよ」

「うん……そやな――――おやすみや、リン兄」

 はやては何か考えていたのか、少し間を空けたあと瞳を閉じる。リーネはそれを確認すると、彼女の頭を一度撫で、同じく瞳を閉じた……。

「おやすみ、はやてっち」

 規則正しい寝息。
 こうして日常が終わり、ここから新たな非日常が始まる。
 突然目を開けるリーネ。隣に眠る少女を起こさないようゆっくりと立ち上がり、服を着替える。そっとのばされる彼の手が、優しくはやての頭を撫でていた。

「どうしました、サラ?」
「サラは妹が欲しかったっスよ」

 はやてを見つめるリーネ――サラの顔は優しさで満ちていた。

「シルフィはどうっスか?」
「……私には、トジですが良くできた妹がいますから」
「……サラも最高の姉がいるっス」

 沈黙が辺りを支配するなか、時計の針だけが音を立て部屋に響きわたる。そんななか、急に恥ずかしくなる二人……。

「さっ、さぁ行きますよ」
「うっ、うたげの始まりっスね」
「フフフっ」
「ハハハっス」

 リーネの体を操りし二人のオリジン。その笑い声は、月が照らす優しき闇へと静かに消えていった……。

――さぁ、非日常から新しき世界へ

ジュエルシード
リーネ  零個
なのは  二個
はやて  二個

メンテ
最弱なりて、最強なるもの 無印(リリなの×オリ主・オリ設定) ( No.53 )
日時: 2008/01/18 15:22
名前: ギア

次回予告

「――あれ、……立てへん……」

ジュエルシードを集める新たな魔導師。

《いいの? ―――》
《ジュエルシードは―――》

ぶつかり合う黒き少女と漆黒の少年。

「はん、このサラに接近戦っスか? いい度胸っス」
「バルディッシュ!!」
「サラ、私に代わりなさい」
「……ア……ルハ……ザード……」

歯車が揃い、一つに組みあがる。

「―――、それは本当?」
「はい、母さん……」

回りだす歯車。動き出す物語。

「こちらにいらっしゃい。―――、私の……」
「……母さん……」
「ついに見つけた、アルハザード――アルハザードの使者……。私と娘たちの救いの……」

くるくるクルクルくるクル狂狂、回る。

「ユーノ君―――!」
「―――な゛の゛はぁぁ!」

次回、『最弱なりて、最強なるもの』

 「可愛い天使は、小悪魔でした」

メンテ

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