Re: 黒衣(仮投稿) ( No.341 )
日時: 2009/02/11 21:56
名前: テン





外伝(番外編?) 勃発 救世主科対一般科 恭也争奪戦 




いつもならば授業も終わり、一日の疲労を労りながらも、仲間たちで雑談などで賑わう食堂。
が、今日は妙に寒々しく、刺々しい雰囲気が流れている。
食堂の中央が特に混沌と化していて、多くの生徒たちがそこに視線を向けている。
その混沌と化している食堂中央には、二十名にも上る男女の生徒の姿があった。

『…………』
『…………』

その二十名以上の男女は、二つの集団に別れ、ただ相対する集団を睨み付けている。一触即発と言えるまでに、その二つの集団はピリピリとしているのが見ているだけでわかる。



Re: 黒衣(仮投稿) ( No.342 )
日時: 2009/02/11 22:01
名前: テン


「それで……一体さっきから何を言っているのかしら、魔導士科主席のフィル・アークスさん?」

唐突に、その中の一人であった救世主クラス主席、リリィ・シアフィールドが猫を被った口調と微笑を浮かべて問う。だがそれらは演技だとわかり、さらに額に浮かぶ井形が、妙な刺々しさを与えている。

「いえ、とくに何も。ただそれでもあえて言わせてもらえば……恭也さんが可愛そうだな、と」

一般科の完璧超人と呼ばれ、どっかでは要注意人物とされるフィルは、うふふ、と優等生な笑みを浮かべて言った。というか、とくに何もとか言って核心を言葉にしてるじゃん、と周りの関係ない生徒たちは一瞬突っ込みかけたが自粛した。だって的になりたくないもの。

「……この前、恭也さんに怪我を負わせたあげく、迷惑をかけた人たちが良く言いますね」

リコは珍しく刺々しく、しかも小さい声なのに良く通る声音で呟く。

「ええ、確かにご迷惑をおかけしました。ですから私たちはもう二度と恭也様に迷惑をかけないように強くなると決めたんです。あなたたちとは違います」

カラーは腕を組み、まるで祈るように。

「有言実行できてなくては意味はありません。神も行動力のない言葉は許してはくれませんよ?」

委員長、ベリオはクイっと眼鏡を上げて、その奥の目は鋭くさせている。

「神が何だって言うんですか? 僕たちが信じるのは恭也さんですよ」

ライラックは、僅かに鼻を鳴らして。

「信じる、ですか。そんなことで恭也さんの力になれるとでも思ってるのかな?」

未亜は、うふふふふ、となぜか妙に暗い笑顔を浮かべている。

「信じるのも強さだよ。ボクたちは恭也さんを信じて、そして恭也さんにも信じてもらえるようになるんだ」

パフィオはまるで嘲笑うように口元を歪め、薄い胸を反らす。

「面白いことを言いますねぇ。おにーちゃんを信じることで強くなれるのなら、私たちは無敵ですよ? とくに私なんか世界滅ぼせちゃいますよ?」

口元をヒクヒクと引きつらせ、それでも笑顔を浮かべるなのは。

「世界を滅ぼす、何を言っているんですの?」
「恭也さんがそんなこと望むわけないでしょう?」

アキレアはハッと鼻を鳴らして、アスクは呆れるように首を振った。

「ふう、老師をわかっていないでござるなぁ。老師は目的のためならば世界すら敵に回せる御仁でござるよ」

カエデはやれやれとやはり首を振る。

「…………」

フィルたちの後ろには、他にも数人の生徒たちがいるのだが、それらはただ救世主候補たちを睨み付けている。


Re: 黒衣(仮投稿) ( No.343 )
日時: 2009/02/12 03:21
名前: テン


『…………』
『…………』

再び沈黙し、ただ睨み合う両集団。

なんでこんなことになってしまったのか、それは正直、ここに並び立つ全員が今一理解できていないだろう。
ただ最初に火種をぶち込んだのは、間違いなく救世主クラスであった。
たまたま、本当にたまたま、この両集団は夕食の席で近くになった。
お互いそれほど干渉しようとしていたわけではない。元々救世主クラスは、尊敬を集めるものの、だからこそ一般生徒から敬遠されている節があった。それを救世主クラスの者たちもわかっていたから、干渉しない。
だが、だ。そこにリリィが火種をぶちこんでしまった。
彼らを見て、その彼らが前に恭也が救出した生徒だとわかった彼女は、愚痴をこぼしてしまったのだ。
よく恭也に怪我を負わせて笑っていられるわね、と。
だが、それも一般科の生徒たちは耐えた。それは事実であったからだ。
リリィが言っていることは決して間違いではないし、さらに言うなら、普通親しいものが傷ついたら、その原因となった者に悪意をぶつけてしまうのも仕方がないことだろう。
しかし、リリィの言葉で他の救世主クラスの者たちまで火が点いてしまった。恭也を傷付けられたことで鬱憤が溜まっていたのだろう。似たようなことを次々と言ってしまったのだ。
ここで一般科のフィルが一言言ってしまった。
恭也さんは、あなたたちとは違う、と。
フィルだってわかっていた。あれは自分たちのせいだと。だが、恭也が自分たちの仲間だと当然のように思っている彼女たちが気にくわなかったのだ。
そして、これで一般科の生徒たちに火が点いた。
召喚器を持たずに戦う恭也は、精神的には自分たちの味方なのだと。
そして、ここから両雄共に爆発した。
陰口大会が終わると、全員が立ち上がり、舌戦へと以降してしまった。
それはお互いどれだけ恭也を知っているのか。どれだけ恭也を理解しているのか。どれだけ恭也を信頼しているのか。
全て恭也絡みである。


Re: 黒衣(仮投稿) ( No.344 )
日時: 2009/02/12 03:23
名前: テン


そんな両集団を、同じ集団の中にいながらも、椅子に座ったまま眺めていた大河とセルは、お互いため息を吐いた。

「おい、セル、どういうことなんだよ?」

救世主クラスの者たちが、それぞれ色々な形で恭也を尊敬し、憧れていたのは大河も知っているし、大河とて意識はしていないがその一人だ。
だが、一般科の生徒たちまで似たようなことになっているとは思わなかった。

「いや、この前の任務で、みんな恭也に今まで以上に尊敬しちゃった上に、憧れちゃってさ。まあ、俺もだけど」
「女ばっかりじゃなくて、男までかよ」

無意識にフラグをたてまくる男だが、それは対女性用能力だ。さすがに男にまで効果範囲に入らないはずだが。

「あの背中を見たらなぁ」

セルのその一言で、大河はもう全て理解できてしまった。

「あー、あいつ、無駄に背中で語る男だからなあ。男としては異様に憧れるぞ、あれは」
「だろう?」

多くは語らず、背中で語る男、高町恭也。
その背中で語るという渋い技は男ならば是非ともマスターしたい。

「何にしろ、それでとうとう男まで誑し込んだか」
「ああ」

そこで再びため息を吐き、未だ睨み合っている二つの集団を眺める大河。

「にしても……」
「完全に険悪な雰囲気になってるな」

やはりため息混じりでセルは大河が続けるはずだった言葉を口にする。

「なんでだ?」

確かにお互い言い分はあっただろう。だが、同じ人間に憧れるなら、仲良くしてもおかしくはないはずだ。
セルはその理由をわかってるのか、肩を竦める。

「あれだろ、要は……」
「要は?」
「全員がブラコンで兄貴を独占したい。それがグループ化した」
「……納得しちゃいけないような気もするんだけど、なぜか異様に納得できるな」

背中で語るだけでなく、兄属性を持つ男、高町恭也。
力強くカッイイおにいちゃん(兄貴)というだけで、年下の皆を引きつける男。
だからこそ両者ともに、恭也は自分たちのおにいちゃん(兄貴)だあ、と主張したいという、へんな独占欲が現れているのだろう。
決して他の科になど渡してなるものか、と。

「救世主クラスだけじゃなくて、学園の兄貴になっちまったか」
「なんか、オマエも気に入らなそうだぞ、大河」

頬杖をついて、大河が憮然と言い放ったのを見て、セルは眉をひそめる。

「そりゃそうだろ? 恭也は俺たち救世主クラスの仲間だぜ?」
「は? いや、待てよ、大河。恭也は召喚器持ってないんだぞ? 俺たちの仲間に決まってるだろ?」

当然とばかりに言う大河に、セルは呆気にとられたような表情を浮かべたが、すぐに異を唱えた。
だがそれに大河も目を鋭くさせた。

「はあ? 何言ってやがんだ? 恭也は救世主クラスに所属してるだろ? それにあいつのことは俺たちが一番わかってる」
「それはいくら魂の兄弟とはいえ聞き捨てならないな、大河。確かに俺たちは一度だけ一緒に戦っただけだけど、命をかけて一緒に戦った俺たちは恭也のことを理解してるぜ」
「ああ!? 調子のんなよ、セル! 一度一緒に戦ったぐらいで恭也を理解したつもりかよ!?」
「そりゃあこっちのセリフだぜ、大河! いつも一緒にいるからこそ、お前たちは恭也のことを理解してない!」

こっちでも戦闘勃発。
どうやらこの二人もブラコンと化していたらしい。
いたるところで火花が取り始めている。
このままでは、いつその火花がガソリンに引火してもおかしくない状況だった。


Re: 黒衣(仮投稿) ( No.345 )
日時: 2009/02/12 03:23
名前: テン





一方そのころ、

「知佳ぁ! 恭也君を呼んできて! このままじゃ学食がぁ! 俺たちの職場が!」
「う、うん! お義兄ちゃんは!?」
「俺は他の生徒たちの待避を!」

厨房でそれらを覗き込んでいた耕介と知佳は、頭を下げてそんなことを言い合っていた。
このままでは食堂が壊滅の危機である。
間違いなく救世主候補たちの方が強いであろうが、それでも一般化の生徒たちは人数が多い。このまま戦闘になれば、被害は拡大してしまう。
この事態を収拾できるのは恭也しかいない。ということで、知佳は食堂を飛び出していく。
そして耕介は、自分では事態の収拾はできないと、とりあえず他の生徒たちの避難を開始させた。

「きょ、恭也君、大人気だな」

耕介は頬を引きつらせながらも、中央を遠巻きに見ていた生徒たちに避難を促し、そんなことを呟いた。

「まさか年下の男子からも好かれる体質だったとは……」

もちろんそれは女性としての視点ではなく、尊敬できる兄のようなものとしてだが、それは初の発見である。
恭也の周りには、基本的に男がいない。いるのは耕介と勇吾、真一郎ぐらいだ。勇吾は友人としての付き合いだし、真一郎もどちらかという友人として。耕介は兄貴分のような感じだった。
年下の男子との関わりが薄かったから、まさか年下の男子からここまで好かれるとは予想外だった。無論、それはこの学園が戦闘を教える場所であり、恭也の技術が突出しているから、というのも理由だろうし、この前の任務も大きいものだったのだろうが。

「これはしばらく荒れるかなぁ」

知佳が恭也を連れてきて、ここを抑えたとしてもしばらくは荒れそうだ。
しかもおそらく、一般生徒組はそのうちシンパを増やすだろう。そうなったらどうなることやら。

「というか、なのはちゃん……恐すぎ」

傍目で見ていてわかる。言葉数こそ少ないものの、一番怒っているのはなのはだ。
元々ブラコンであったし、兄が奪われるのは相当に気に入らないらしい。

「恭也君、頼むから早く来て……」

耕介は恐くなり、彼らから視線を離すと、天井を見上げ、切実に願った。
このままじゃ職場がなくなる。本当に切実だった。



Re: 黒衣(仮投稿) ( No.346 )
日時: 2009/02/12 03:25
名前: テン


耕介が、恭也の到着を切実に待っているころ、すでに救世主候補たちと一般科の者たちは一色触発の状態だった。
リコとなのはなど、その大きすぎる魔力が身体を覆い始め、蠢いていた。
傍から見ていると、本当に恐ろしい。
大河とセルを含めた男性陣は睨みを効かせていて、その目は『ああ!? 調子のってんじゃねぇぞ、ゴラァ!』と熱く語っており、お前らいつの時代の不良だ、と言いたくなるぐらいに荒んだもの。
対して女性陣は、基本的に怒りを顔に表していない。皆大抵笑っている。笑っているが、目が絶対零度の瞳を宿していた。その目は静かに『死にたい?』と冷たく問いかけていて、雪女でもここまで冷たい目はできない。少なくとも耕介たちが知る雪女の方はできなかっただろう。

「ふ、ふふふふふ」
「あは、あははは」
「くっ、くくくく」

そこらから上がる笑い声。
だが、それは恐すぎる笑い方だ。

「どちらがお兄ちゃんの仲間として相応しいか決着、つけますか?」


なのははにっこりと笑いながら、その手に魔力を溜め込む。
なのはは召喚器を所持しなくとも、絶大な魔力を持つ。その行動だけで、その場にいた全員がなのはの魔力を感じ取っただろう。
そして、魔力はなのはからだけ感じ取れるのではない。リコやリリィ、未亜、ベリオなどからも感じるし、カエデや大河などからは威圧的な雰囲気が感じ取れた。
だが、それらに晒されながらもパフィオはニヤリと笑う。

「今更そんな魔力が大きいだけで驚いたはしないよ、ボクたちは」

召喚器を出されたとしても、すでにパフィオたちは驚きもしないし、勝てないと嘆きはしない。
召喚器などなくても、救世主候補たちに勝てると示した存在がいるのだから。
だか、そんな態度も救世主候補たちには気に障る。
別段、以前のように畏怖されたり尊敬されたいわけではない。その態度をとることができる理由が恭也であるからだ。
その力を与えたのが恭也であるのが気に入らない。
しかも、彼らにあるのは、まだその仮初めとも言える意志だけだ。恭也の真似事でしかない。恭也を真似るだけの彼らが気に入らない。
ただ恭也というう存在を知っただけで、強くなったかのように錯覚している彼らを見ていると、まるで恭也の今までを侮辱されているように感じる。


Re: 黒衣(仮投稿) ( No.347 )
日時: 2009/02/12 03:25
名前: テン


だが気に入らないというのは、一般科の生徒たちとて同じこと。
恭也という存在を知った彼らは、召喚器を持たない一般の生徒たちとて、決して格下と見下すことはないだろう。
そうしたのは恭也だ。
きっと恭也という存在がなければ、彼らは慢心し、脅威とも思わなかっただろう。
だが、だ。それで全ての慢心がなくなったと言えば嘘になる。
彼らはまだ見下している。召喚器を持たない者相手には、この程度で十分という威圧的な雰囲気。
それらが気に障る。
無論、一般科の生徒たちは、まだまだ恭也のようにはなれない。だが、それでも恭也という存在を知っていながら、慢心を持つ彼らを見ると、まるで恭也を馬鹿にされているように感じた。


とは言って、これらはこの二つの勢力たちの勝手な思いこみだが。相手が気に入らないから、さらに気に入らない理由を見つけようとしているだけである。

「あんたたちに召喚器を使う必要なんてないもの」
「こちらの流儀に合わせてくださるんですの? 私たち、あなたたちが苦手な直接的な殴り合いは得意ですのよ?」

頬を引きつらせて言うリリィに対し、アキレアも同じく額をひくひくと動かして挑発する。
そんな二人の会話で、お互いに笑みを引っ込め、再び睨み合う。
すぐにも乱闘が起こりそうだった。
ただお互いにゴングを待っている。そんな状態。
食堂が戦場になる。そんな耕介の危惧していた状況が今、完全に出来上がりつつあった。
あとは引き金を待つだけ。


Re: 黒衣(仮投稿) ( No.348 )
日時: 2009/02/12 03:27
名前: テン


そして、その引き金が……

「召喚器を使う? 殴り合い? 何をしている、お前たち」

……引かれなかった。
聞こえてきたのは、別段張り上げたものではないのに、いやに腹に響いてくる重たい声。
その声を聞いて、救世主候補、一派科の生徒たち問わず、先ほどまでとは違った意味で顔を引きつらせた。
まるでブリキの人形のようにギギギと音がしそうな感じで首を曲げる。視線を向けるのは食堂の入口。
そこにいたのは黒衣の青年。その後ろには知佳が苦笑いながらも、その青年から距離をとっていたのだが、生徒たちの目には入っていなかった。

「やべ、恭也のやつ、むっちゃ怒ってる」

入口に立つ青年……恭也を見て、大河は顔を引きつらせたまま、思わず呟いた。
怒ってる。
恭也は間違いなく怒っていた。
いつも通りの無愛想、無表情だが、その雰囲気から心底怒っているというのが、どうしてもわかってしまう。
というか大河たち以上に、無表情上でも恭也の感情を理解できるなのはなどは乾いた笑みを浮かべ、さらに冷や汗まで流している。
恭也が一歩動く。
それだけで、全員が仰け反った。
別段恭也は歩いただけだ。だが、それは先ほど大河たちが見せていたそれよりも、洗練され、重苦しい威圧感を放っている。
こう、何て言うのだろうか、着ている服と相まって……魔王の行進?



Re: 黒衣(仮投稿) ( No.349 )
日時: 2009/02/12 03:29
名前: テン


というのは、大河たちの勘違い。恭也は本当に普通に歩いているだけなのだが、その双眸がいやに無感情で、そう感じてしまうだけだった。
だがその視線が、逃げ出そうか迷っていた大河たちを逃げさせない。
そして、恭也はとうとう彼らの前に立つ。

「知佳さんに、お前たちが喧嘩をしていると聞いてきてみれば……」

そんなことを呟いて、恭也は深々とため息を吐いた。

「まったく、お前たちは戦う者としての意識が薄すぎる」
「え、えと、恭也さん、これはその……」

ベリオが何やら言おうとしたので、恭也は彼女に視線を向けるのだが、その鋭い視線に威圧され、ベリオはあううと弁解というか、言い訳の言葉を失った。

「全員、正座」
「いや、あの、恭也?」

ベリオに変わり、ご機嫌をとろうとセルがひび割れた笑顔を浮かべながら近づこうとしたたが、ベリオとは違い、完全に睨まれ、

「はい」

率先してその場で正座した。
今の恭也に逆らうのは色々とまずい。全員が本能的に理解しているので、セルに続いて我先にとその場に正座する。
恭也の世界で言う寺などではなく、学校の食堂で二十名以上の少年少女が正座する光景は、まるで修学旅行か何かで悪ふざけをして怒られている、というように映る。

「何となく知佳さんに聞いているだけだが、最初は口論だったそうだな」
「いえ、口論というか……」

フィルはそれ以上を口ごもる。まさか本人を目の前にして、あなたを取り合っていたとは言いづらいし、恭也は余計に怒りそうだった。

「口論ぐらい、まあ、べつに構わない。お互い科が違うし、そういったものでそれぞれ分かり合えるものもあるだろう。だが、味方同士がその口論の末に戦おうとするなど論外だ」
「うう」
「いくらここが戦闘を教える学園であっても、平時に、それも人が集まる食堂で喧嘩など以ての外だ。しかも魔法や召喚器、武器なんてものを使おうものなら大惨事だ。お前たちも戦う者のならそのぐらい自覚しろ」
「はぃぃぃぃ」

それからも次から次へと出てくる説教の数々。それも全て正しいことなので反抗もできやしない。それも全員へのものから、個別にまで内容が豊富だった。
正座に慣れていない者たちなど、すでに足が痺れてきていたが、この恭也を目の前に崩すことなどやはりできない。



Re: 黒衣(仮投稿) ( No.350 )
日時: 2009/02/12 03:31
名前: テン


しかも恭也が説教を続ける間に、いつのまにか食堂が営業を再開していた。次々と他の生徒たちが戻ってきて、食堂の真ん中で正座する一同に目を丸くする。

「恥ずかしい……」

衆目にこんな姿を晒すのは恥ずかしすぎて、未亜は顔を赤くして縮こまる。もっともそれは大半の者がそうだった。
さらになぜか見守っている他の生徒たちは、説教をする恭也を尊敬の目で見ている。あの争いを止めた上に、あの救世主候補たちと、これまで高い成績を誇っていた生徒たちや、ここ最近頭角を現してきた生徒たちに容赦なく説教をしているのだ。無理もない。
それらを横目に見たあと、大河は視線だけをセルに向け、小声で話しかける。

「なあ、セル」
「……ああ、また増えたな」

後の通称、恭也教、または高町派。このときまたもシンパが増える。

「とりあえず大河、もし次があったら直接戦闘だけは止めよう」
「賛成。なんか他のことで勝負を決めよう」

このままいくと、いつか一般科の生徒全員VS救世主科なんてことにもなりかねない。そんなことになったら、さすがに救世主候補たちでもどうにもならない。
何より、

「聞いているのか、大河、セル」
「「聞いております、サー!」」

この説教はもうやだ。
そんなことを心で呟きながら、なぜか大河とセルは軍隊口調で応え、さらに敬礼していた。
しかしながら、全員が同じ心境であったのは言うまでもない。


こうして恭也の活躍により、恭也のせい(?)で勃発した最初の戦いは終止符が打たれた。
がしかし、この戦いは後の第二次、第三次恭也争奪戦の序章でしかないことを、恭也以外は気付いていた。
……恭也はきっといつまでも気付かないのだろう。自分が理由で争いが起こっていることなど。
そして、この戦いは最終的に科対抗の戦いになっていったり、派閥同士(恭也にお似合いの相手は誰だ!?)の戦いになっていったりするのだが、それはまた別の話である。