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黒衣(仮投稿)
日時: 2008/05/15 06:31
名前: テン

浩さんに許可を頂きましたので、暫くの間黒衣を仮投稿という形でこちらに投稿させて頂きたいと思います。

あくまで仮であり、落ち着いたらいつかは今までどうりに投稿したいとは思っていますので。
これも携帯からの投稿なので、少々見づらいかもしれませんがよろしくお願いします。
一章を分割して送っていきます。


目次

>>1-27 恭也編 四十二章

>>54-91 恭也編 四十三章

>>122-156 恭也編 四十四章

>>197-227 恭也編 四十五章

>>228-255 恭也編 四十六章

>>256-268 恭也編 四十七章

>>269-288 恭也編 四十八章

>>289-317 恭也編 四十九章

>>318-330 恭也編 五十章

>>331-340 恭也編 五十一章

>>351-367 恭也編 五十二章

>>368-382 恭也編 五十三章

>>383-394 恭也編 五十四章

>>414-433 恭也編 五十五章

>>434-457 恭也編 五十六章

>>458 恭也編 五十七章

>>459-480 恭也編 五十八章

>>481-503 恭也編 五十九章

>>504-532 恭也編 六十章
>>565-587 恭也編 六十一章

>>28-53 大河編 三十章

>>92-121 大河編 三十一章

>>157-196 大河編 三十二章

>>395-413 大河編 三十三章

>>341-350 外伝
メンテ

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.444 )
日時: 2009/12/06 18:59
名前: テン


だが他の者たちはその責任の重さに震えた。
とくに召喚陣の破壊はこれからに関わる。失敗は許されない。救世主の鎧の破壊も、その効果が伝承通りであれば同じ。破滅の侵攻の足止めとて命に関わる。
どれ一つとっても失敗が許されない。
とはいえ全体的な時間稼ぎの要は、防衛での話。三万の王国軍と義勇兵たちにかかっているから、リリィたちだけの話でもない。結局砲台とはいえ数人。それだけで戦局が覆るわけがないし、時間稼ぎもできない。
だが、奮い立たせせるためか、恭也もクレアもそのことについては告げなかった。

「人選はどうするつもりなんだ?」

恭也と同じく、緊張の色もなく大河は聞く。

「ふむ、そのあたりはミュリエルに任せたのだが」

クレアが視線を向けるとミュリエルが再び口を開く。

「召喚陣の破壊に高町恭也、ベリオ・トロープ、ヒイラギ・カエデ」
「魔法使いはベリオしかいませんが、それで召喚陣を破壊できるんですか?」
「可能です。召喚の塔の魔法陣も、陣を破壊されただけで使用不能になったでしょう?」

なるほどと魔法使い組以外が頷く。
それを見てミュリエルは続けた。

「救世主の鎧の破壊には当真大河」
「…………」
「…………」
「…………」
「って、ちょっと待った! 俺だけ!?」

いくら待っても、他の者の名前が呼ばれないために、大河は思わず叫んだ。

「これ以上の人員は割けません」
「そんな! そこには破滅の将がいるかもしれないのに!」

未亜が抗議の声を上げると、他の者たちも続いたが、ミュリエルは揺るぎもしない。

「学園長、本当にその鎧が重要なものだと思っていますか?」

そのために恭也が改めて聞く。その視線には誤魔化しは許さないとばかりの力があった。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.445 )
日時: 2009/12/06 19:00
名前: テン


しかしそれでもミュリエルは揺らがない。

「当然です。もし伝承が真実であれば、私たちに勝ち目はなくなります。無論それが救世主以外に纏えればですが。しかし、破滅がそれ欲しているならば、それ相応の理由もあるはずです」
「では人選の再考をお願いします」
「できません。あなたも……いえ、あなた達の中ではあなたが一番これ以上人員を他に割けないのはわかっているでしょう? 当真大河の召喚器は様々な武器に変化する応用性の高い武器。ならば一人ででもできることは広がります」
「……鎧の破壊が重要であるとあなた自身が言ったはずです。大河一人では破滅の将が複数現れた場合、無理があります」
「……ではあなたならば、どのような人選に?」

折れたわけではないだろう、ミュリエルは方向を変えるためかそう聞いた。
ミュリエルが言うように、恭也自身もこれ以上人員は割けないというのはわかっている。しかし、それで鎧が奪われてもまずいのだ。
メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.446 )
日時: 2009/12/06 19:00
名前: テン


「俺の代わりに大河が召喚陣の破壊に。そして、俺とリコが救世主の鎧の破壊がいいかと」
「リコ・リス一人を連れて、ですか?」
「殲滅戦ならば久遠がリコの代わりができます。鎧の破壊にリコを連れていくのは、俺の刀、もしくは霊力では破壊できない場合を考慮してです。リコと力を合わせてというのも可能ですし、もしくはリコの逆召喚で、しばらく別の場所に移してもいいでしょう。
破滅の将が複数現れても俺とリコで何とかします。最悪、鎧だけ破壊して、やはり逆召喚で逃げるという選択もできるでしょう」

カエデとベリオの連携ならば、大河とのほうが上手くいく。そして、鎧の方の探索で破滅の将が複数人現れても、恭也とリコの二人ならば逃げ切ることも不可能ではない。
しかし、十万という大群になってしまった以上、前衛よりも破壊力の砲台が欲しいからこそ、前衛を全て破壊に向かわせたのもわかる。その中でリコがいなくなるのも痛手だろう。

「リコちゃんの代わりが俺たち、と思ってもらえませんか?」

耕介が後押しするように言う。
そもそも、耕介たちはいないはずの人間だった。
今の状態でも、耕介たちの戦力を考慮してミュリエルは分けただろう。そうでなくては四人も別の任務に向かわせられるわけがない。
それでも、ここで耕介は自分たちの名を出した。
ミュリエルが自分たちの戦力をすでに数えていたとしても、それ以上の結果を出すと言っているのだ。
さらに本人である大河が嫌々そうながら口を開く。

「破滅の将がどのくらいいるのかはわからない。けどこの前俺が戦ったやつと同レベルなら、正直二人出てこられた時点で俺に勝ち目はないし、逃げるのは無理だと思う。そうなったら最低限の鎧破壊も自信がない」

自信家であるはずの大河がはっきりと言った。
恭也の鍛えられてから、彼我戦力の計算も徹底的にやらされてきた。戦闘においては、できないことははっきりとできないと言わなければ、自分の命が危うくなる上に、さらに仲間の命まで危うくする。
だからこそ、今の大河は戦闘において自分を過大評価はしない。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.447 )
日時: 2009/12/06 19:01
名前: テン


ミュリエルはそれらの話を聞いても表情を変えない。
だが、

「わかりました」

簡単に納得してみせた。

「…………」

今までの反対が嘘のようで、恭也は眉を寄せたが、そんなことに突っ込んでいる状況ではない。
その後、ダウニーが鎧の破壊は反対だという声を上げたが、結局ミュリエルとクレアは今回の任務を変えることはなかった。
そして、最低限の話を詰めたあと、そこで解散になる。
救世主候補たちは、これからのことを考えてか、浮かない表情をしていた。それらに言葉をかけようとした恭也だが、何やら視線を感じ、その方向へと向いた。
そこには男がいた。
どちらかというと女性上位の風潮があるこの世界ではあるが、それでも議会員の半数以上は男。その中でも太っている……というよりも肥えている言った方がよさそうで、指に幾つもの指輪をつけている。
どう見ても成金の中年にしか見えない。
その男がどこか卑下た笑みを浮かべ、恭也に近付こうとしていた。

「なにか……」

御用ですか、と恭也が問おうとしたとき、

「恭也、すまないがお前は少し残ってくれ」

クレアが被せるように恭也へと声をかけた。
今度はクレアの方に向き直る。

「クレ……シーダ王女殿下、何用でしょうか?」

ここでクレアを愛称……しかも呼び捨てにしては少々まずいかもしれない。そう考えて、先ほどまでとて拙い敬語を使っていたのだ。ここまできてボロを出したくはない。まあ、元より大河などは気にせず話していたから無用であるかもしれないが。

「少し話がある」

そう言ってクレアは手招きをした。

「わかりました」

頷きながらも、恭也は僅かに振り返り、先ほどの男を見ると、なぜか忌々しそうに顔を歪めていた。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.448 )
日時: 2009/12/06 19:01
名前: テン


何が何やらわからない、と恭也は内心で肩を竦めるが、クレアにもう一度呼ばれると、仲間たちへと先に帰るように伝え、クレアへとついていった。



◇◇◇



恭也が連れて行かれたのは、会議室の隣。部屋自体の大きさは会議室の三分の一以下だが、大きめのテーブルが置かれているところを見ると小会議室と言ったところか。
他の者には聞かれたくない話、といったところと恭也は考えたが、決めつけるのも早計かと口を開く。

「それでどのようなお話が?」
「どうせこの部屋には私しかいない。もうそんな堅苦しい言葉遣いはいらん。だいたい大河など気にしていなかっただろう?」
「ふう、その分議会の人間に睨まれていたようだが?」

一応年長者として恭也は敬語を使っていただけだ。もっともそれならば大河に敬語を使わせることも年長者としてのするべきことだったかもしれないが。
大河がクレアに対等な言葉遣いをしていたために、結構議員から睨まれていたのは事実だ。

「そんなことを気にするような人間か、お前は?」
「それなりに気にはする」

恭也の場合はどちらかというと、自分よりもクレアや仲間たちの立場を考えてというところではある。

「それで先ほど俺に話しかけようとしていた議員に関係する話か?」
「気付いておったのか」
「あれだけ粘りけのある視線を向けられればな。内容は相当に気にいらないものになっただろうが」
「悪いが、私からする話もその気に入らない類だろう。他の者にとっては喜びそうなものだが、お前の場合は気に入らないものかしもしれん」
「そうか……」

あの男の視線とクレアに呼ばれたことで、何となくは予想していたことだ。
内容も何となく予想はつくが、恭也はクレアに先を促す。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.449 )
日時: 2009/12/06 19:02
名前: テン


クレアは少しばかり疲れたように息を吐くと再び口を開く。

「恭也、お前が今回私が……王家が選んだ救世主となった」
「はあ……そうか」
「驚かないのだな」
「予想はしていた」

ミュリエルの話のときは半信半疑ではあったが、こうしてクレアに一人だけ呼ばれたことを考えるとその関係かもしれないと思っていたのだ。救世主の鎧のことでの話とも思っていたが、どうやらこちらだった、というだけしかない。
そう考えると、先ほどの男はミュリエルが言っていたクレアの政敵あたりだろう。

「あの男も俺を救世主にしようとしていたわけか」
「そうだ。大方、今回の戦争が終わったあとに、救世主であるお前を御輿にするつもりだったのだろう。ついでに戦争での御輿にも、な」
「……阿呆か」

もはや怒りを通り越して呆れるしかない。

「ああ。私もそう思う。負けている状態で戦後の利権を考えるなどな。一週間後には国すらなくなる可能性すらあるというのに。とはいえ、私も人のことは言えんが」
「女王としては当然の行動だろう。まあ、まだ女王ではないわけだが」

今の状態で戦後のことなど考えている者たちに救世主という御輿を担がせれば、それこそ破滅だ。
クレアとしては、戦後のこともあるだろうが、今の状態で武器を彼らに渡したくないのだろう。

「とはいえ、俺を巻き込むな」

クレアの考えはわかる。だが、それと恭也の心情は別だ。
政治の道具にされるなどまっぴらごめんだし、戦争の御輿になるのもごめんだ。戦争の武器になるのならばまだいいが、御輿ということはただの士気を上げるためでしかあるまい。

「すまない、とは思っている」

言ってクレアはやはり疲れたように息を吐く。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.450 )
日時: 2009/12/06 19:02
名前: テン


クレアとてある程度は恭也の人となりを知っている。こういう扱いを嫌いそうなのは十分に予想がついていたのだろう。
クレア個人としては恭也にそのような枷を填めたくはない。だが、クレア王女としてはその枷を填めなくてはならない。

「他の世界から来てくれたお前に、このような馬鹿な役をやらせたくはない。とくにお前は別に救世主になりたいと思っているわけではないだろうからな」
「ああ。他に方法がないならともかく、何の理由もなく救世主なんてものになりたいとは思わん」
「それでも私はお前にそれを押しつけねばならない」
「……はあ」

はね除けるのは不可能ではない。
とはいえそれでは立場が悪くなる。自分が、ではなく、周りがだ。

「二つ条件がある」
「何だ?」
「まず聞きたい。お前は知佳さんにどこまで聞いている?」

とりあえす知佳に口止めしたのは、自分が赤の主であるということと。召喚器『斬神』を持っていること。それ以外に制限はしていない。
クレアにどこまで情報がいっているのかがわからない。このへんは知佳に任せているので、あまり介入もしていないし、この所は忙しすぎて、そのことについて知佳と話をする暇もなかった。

「手短に言えば、お前たちがレティアという書の精霊と呼ばれる存在にこの世界に送られたこと。そのレティア以外に赤の書と白の書の精霊が存在し、それが本来は救世主を決めるということ。あとは救世主の断片だな」

ほぼ全部ということだ。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.451 )
日時: 2009/12/06 19:03
名前: テン


ならば余計なことを言う必要はない。とりあえず条件に提示に入る。

「まず一つ。決定的な場面にでもならない限り、俺から救世主などと名乗り出ることはしない。話を聞いたなら、お前もわかっているだろうが、救世主は人間を救うものでも、破滅を滅ぼすものでもないしな」
「わかっておるよ。そもそも王家の者が救世主を決める、というのもただ救世主というのを政治の道具にするためにすぎない。
王家が任命した救世主、というのなら五百年ほど前に現れていてな。その悪習がまだ続いているだけなのだ」
「五百年前?」
「うむ。当時大飢饉が起きたらしてくな。そのときに、な」

なるほどと頷く。それだけでだいたい理解できてしまう。
その王家の任命した人間が召喚器を持っていたのかは知らないが、そんなものは関係ない。人は自分の身が危うくなれば拠り所を欲する。無神論者であっても、神頼みをすることはよくあるだろう。


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.452 )
日時: 2009/12/06 19:03
名前: テン

神頼み、というのも人が本当にどうしようもなくなったときにすること。
形のないものでも構わないが、もしそれが形を持っていたなら。
だから王家は作ったのだ、伝説にある救世主という拠り所を。
救世主がいるから何となくなる、大丈夫だと士気を上げ、さらにその救世主を誕生させたのは王家だと宣言することで、飢饉で下がった王家への信頼を回復させる。
王家によって作られた英雄。

「よくできているものだな」
「……すまぬ」
「別に謝ることではないだろうさ。王の行動としては別に間違ってはいない」

それを認める認めないは別にして、民を先導する王としては間違ったものだとは恭也も思っていない。
これから似たようなことを自分でされると思うといい気はしないが。

「話がそれたが、今回はただ恭也は私側に引き込んでいるという状況がほしいだけだ。民への威光ではなく、議員への牽制なのだよ」
「お前が言っていた作られた救世主と比べると、何ともスケールが落ちるな」
「まったくだ」

苦笑しあうが、あまりいい状況ではない。今は利権争いなどしている時間などないのだから。
それもこれも女王が存在しないからこそ。

「もう一つの条件はなんだ?」
「俺に何かあった場合や今回の任務のようにしばらくなのはたちの元に戻れないという状況になったなら、なのはに護衛をつけてくれ」
「なに? どういうことだ?」
「先ほどの男も……というよりも、あの男を中心としているのかわからないが、あの男の派閥が俺を救世主にして使おうとしていたのだろう?」
「ああ。恭也はこのごろ学園外でも有名になってきていた。いや、我々がわざとその手の噂を流していた部分もあるが」

やはりかと恭也は嘆息する。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.453 )
日時: 2009/12/06 19:04
名前: テン


この前の救出で目立ったとはいえ、どうして学園外にまで自分の噂が届いているのかとも恭也は思っていたが、元よりクレア、もしくはその政敵がわざと噂を流して、次の救世主は恭也ではないかと思わせていたのだろう。
なかなかの情報操作だ。どうせそれらの噂には恭也が召喚器を持っていないなどというものはなく、民衆は恭也が救世主に近いところにいる、とでも思っているというこだ。
恭也があまり学園の外に出ないからこそ、いつのまにか外堀だけが埋められつつある。

「クレアを抜きで、どうやってその派閥が俺を救世主に仕立て上げようとしたのかはわからないが、そこまで外堀を埋めておいて、クレア側に俺がついたところでそれらが諦めるか?」
「当然引き入れようとするだろうな」
「では、その際に交渉の材料に……それも突っぱね続けられ最終的に使いそうなものは?」
「……人質か」

そういうことだと恭也は頷く。

「まあ、さすがにこの戦争中に手を出してくるほど馬鹿ではない、と思いたいが、あの様子ではな」

自分たちが戦場の場に立っていないからこそ、議員たは今が戦争中だという危機意識か薄い。
それを見れば、動いてきても不思議ではない。

「重ね重ね面目ない」
「別に責めているわけではないさ。クレアはクレアで良くやっていると思う」

なのはと同じほどの年齢で、本当によくやっていると思う。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.454 )
日時: 2009/12/06 19:04
名前: テン


だが、年齢故にできないこともあるのだろう。いや、どれだけ能力があろうが、年齢故に舐められる。

「耕介さんや知佳さんは大丈夫だと思う。だがなのはは少々人を信頼しすぎるし、戦うことを決めたとはいえ、優しすぎるところもあるからな。二人よりも与しやすいと思われるだろう。召喚器を持っているが、戦闘以外での人相手は少しばかりまずい。戦闘でも人相手に強く出れるかはわからないしな」

ただの過保護で終わってくれるならばいいが、政治の話になるとどうしても武力だけではどうにもならないことも出てくる。護衛というのは、別に身を守らせるためだけではなく、なのはに近付いてくる者を監視しろということだ。

「恭也の危機感はもっともだ。護衛をつけておく」
「ああ。できればダリア先生辺りを付けてくれるとありがたいが。あの人はあれで抜け目ないしな」
「っ!?」

ダリアの名前を出すとクレアが珍しく驚いた表情を見せ、目を見開く。

「その反応だとどうやら間違いないようだな」
「……鎌をかけたのか」
「半分はな。予想はしていたが確証がなかっただけだ」

ダリアはクレア……王家が派遣した諜報員ということがわかったならそれでいい。

「ふう、わかった。ダリアからは私が連絡しておこう。あと何人かをつけるが、破滅との戦闘になったらどうなるかわからんぞ?」
「それは構わないさ。最も着いていてほしいのはそれ以外の場所だからな」
「では、その条件も了解した」

これで条件はクリアだ。
恭也は見せかけの救世主になることが決定した。だが、問題はまだ残されていた。

「で、どうやって俺を救世主とする? そもそも俺には召喚器がない。形だけの救世主とはいえ、召喚器がなければ話にならないだろう」

実際にはあるのだが、これは恭也の最大の秘密……その一つだ。そう易々とは開示できない。

「ああ、それはこちらで用意した」
「用意だと? 召喚器をか?」
「正確には召喚器の偽物だ」

そういえばミュリエルもそんなことを言っていた。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.455 )
日時: 2009/12/06 19:05
名前: テン


召喚器の偽物。確かにそんなものがあってもおかしくはない。救世主はどんな望みでも叶えられるという伝説がある。それを求めて偽物を作りだした者がいたのだろう。
それに道具として救世主を作るのならば、見せかけである偽物の召喚器を王家が所持していもやはりおかしくはない。
そんなことを考えていた恭也に、クレアは一つの指輪を渡した。

「指輪?」

飾り気もない銀の指輪。しかし指輪にしては少しばかり大きい。男の恭也の指でもブカブカだ。

「それを握りしめ、リング、と呼べ」

恭也は言われた通りに指輪を握りしめ。

「リング」

と、呟いた瞬間、恭也の手の中に大剣が出現した。
大河のトレイター……剣の形態……と比べれば、刃は厚みはそれほどでもないが、その長さは同じ程度で、やはり華美な装飾はなく、無骨な剣。

「これは……」
「それも古代の遺産だ。兵器と呼べるほどのものではないが、召喚器を真似て作られたであろう魔導武器とでも言えばいいか。名は言った通りリング」
「……指輪だからリング。人のことを言えたことではないが、ネーミングセンスが悪すぎるんじゃないのか?」
「作った本人に言わぬか。まあ何千年も前の人間だから意味もないがの」

そうだなと恭也は返し、指輪から剣になったそれを見つめた。

「しかしまあ何とも……」

何でもありな世界だな、と恭也は胸中で続けるが、考えてみれば自分の世界も似たようなものだった。

「これを召喚器の代わりにしろ、ということか」
「リリィのように常時顕現している召喚器もあるが、どこからともなく現れる、というほうがインパクトと説得力はあるだろう」
「まあ、な」
「本当なら本物の召喚器を渡せれば良かったのだが」
「それこそ無い物ねだりだろう。召喚器などそうそうあってたまるものか」
「それがそうでもない」

クレアの言葉に、恭也は眉を寄せる。


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.456 )
日時: 2009/12/06 19:06
名前: テン


「あるのだよ、王宮にも召喚器は」
「…………」
「千年前のメサイアパーティーにして、王女であり、後の女王であったアルストロメリア・バーンフリートが使用していた召喚器がな」
「なるほど。ライテウスと同じか」
「うむ。まあ、あれは一応、王家の至宝だ。そう簡単に外に出すわけにもいかん……というか、誰も御者として認めないから、運ぶこともできん」

ライテウスもリリィを主に認めなければ、きっとその場から動かすことはできなかったのだろう。
デザイアはまた違うだろうが。
まあ、召喚器など恭也は必要としていない。そもそもこの剣を使うこともないだろう。召喚器のように身体能力を上げることもないようだし、見た目からわかる通りに重く、恭也の戦い方には合わない。せいぜん持ち運びに便利で、小太刀が使えなくなったときに使う予備の武器にしかなるまい。

「そもそも偽りとはいえ、俺が救世主だ、などと名乗りでたくはないからな。本物の召喚器など持ってない方がいいのかもしれない」

そうは言っても、斬神を持っているが。
しかし、これも今は呼ぶことはできないし、少なくとも今のところは呼ぶつもりも恭也はなかった。

「で、この剣、どうやって消せばいいんだ?」
「単純に戻れと言えばいい。あまり複雑な造りではないようなのでな」
「戻れ」

言葉にすると本当に剣は消え、手の中に指輪が残った。
これでとりあえず、形だけは救世主として体裁が整ったわけだ。あまり興味はないが。

「面倒なことにならなければいいのだかなあ」
「それはどういう面倒だ? 破滅か、それとも我ら王家や議員たちの関係かの?」
「どちらもだ。破滅はすでに面倒の領域を越えてこのままでは負けかねんし、それに対処しながら政治絡みなど、どう考えても俺の手には余る」

恭也は首を振り、深々と溜息を吐く。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.457 )
日時: 2009/12/06 19:06
名前: テン


どうしてもこうも面倒なことばかり集まってくるのか。ただでさえここ最近は、情報収集やら、話し合いやら、自分の鍛錬の上に他の科の訓練を見たりやら、大河の戦闘訓練やらで寝不足気味だったというのに。まあ、その分睡眠不足は意識を失うという形で解消されたが。
真面目に過労でどうにかなりそうだ。
仕事で不眠不休というのはあったが、ただっじっとしていることの方が多かった。しかし今はやることが多すぎる。
しかもそのほとんどが恭也がやらなくてはいけないという状況の上、特段恭也が得意としている事柄でもないときている。
一度元に世界に戻って、縁側に座り、ゆっくり茶でも飲みたいと本気で思う。

「とにかく、救世主の鎧の破壊、任せたぞ」
「命に代えて、とは言えないが、最低限破壊だけはする。だが、大河の言っていた通り、複数人破滅の将が現れた場合、勝てるかはわからない。とりあえず一人でも多く消せるようにはしてみる」
「消す……か」
「もっと直接的に言った方がいいか?」
「戦争中だ。私とてそれなりの覚悟はある。だから別にどちらでも構わぬよ。それよりお前はそれができるのか?」

その問いは、破滅の将を倒せるのか、ではなく、人を殺せるのか、というものだ。

「……元の世界ですでにな」
「……そうか」
「元よりこの手の役は。他の仲間にやらせるつもりはなかった。俺の仕事だ」

仲間の手を血で汚させるつみりはない。ただの綺麗事と言われようと、偽善と言われようとだ。
血で……死で汚れるのは自分だけでいい。

「それにあいつらはたぶんできない。大河たちはもちろん、耕介さんたちだってそこまで割り切れはしない。捕縛を優先するだろう。だから俺がやる」

策を弄せず、真正面から戦って捕縛というのは、格下が相手か、こちらの人数がかなり多くなければ不可能だ。
それでも行おうとすれば、どこかで無理が出る。そして逆に殺されるだろう。
ならば人が殺すことができる者がやるだけの話。

「すまん。本当にお前には迷惑をかける」
「構わない。半分以上は自分のためだ」

救世主などや政治関係は巻き込まれただけだが、他は違う。
話はこれで終わりだろうと、恭也はクレアに背を向けて歩き出した。
しかし、ドアノブに手をかけたところで止まり、振り返る。

「クレア、勝つぞ」
「当然だ。破滅に人の底力を見せつけてやるとも」

二人は強く頷き合った。
恭也にしては珍しく微かに口元を歪めて、不敵ともとれる笑みを浮かべ、クレアもそれに応えるように、やはり不敵に笑う。
それから恭也は今度こそクレアの前から去った。


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.458 )
日時: 2010/02/14 17:00
名前: テン






クレアに任務を受けた次の日、すでに救世主候補たちはそれぞれ役目のために別れ、行動を起こしている。
そして、その中の一組である恭也とリコは地下墓地の中を歩いていた。

「この学園はなんでもありだな」

恭也はぼやきながらも、墓地を見渡した。

「私もそう思います」

隣を歩くリコも、魔法で出した光の球体を操作しながら頷いた。
二人が目指す救世主の鎧が安置されている洞窟は、学園の地下にあると説明を受けた。
さらには話によると、今回の戦争の要であるレベリオン。それが安置されている場所にも、学園のどこからか繋がっているらしい。
禁書庫といい、救世主や破滅との戦争に関わりそうなものは、全て学園のどこかに繋がっているということになる。
大きさも尋常ではないが、こうも色々とあるとは。もう恭也はこの学園が空を飛んだとしても驚かないだろう。

「ちなみにリコは知っていたか?」
「いえ。私が知っていたのは禁書庫に導きの書がある、ということぐらいです。この学園はミュリエルが建設したものですから、彼女が繋げたのかもしれません」

あまり今は関係のないことか。
そう思いながらも、恭也は辺りを見渡す。

「どうしました?」

そんな恭也が珍しかったのか、リコは小首を傾げ、彼を見上げた。

「いや、考えてみれば、俺はここには初めて来たと思ってな」

地下墓地など来る理由もなかったため、恭也がここに来たのは初めてだ。ナナシはここで寝泊まりしているらしいし、すでにいくつか鍵やリコの魔法で扉の封印を解くなどして奥にいるため、ここまで奥にはナナシは来たことはないだろう。そもそも鍵などで封鎖されていたことからも、おそらくはほとんど人も来ないはずだ。
それなりの数の墓所。ここに埋葬されているのは、学園の関係者あたりなのだろう。それにしては、結構な数の墓がある。

「ん?」

そんなとき恭也は唐突に足を止め、目を細めた。
リコもつられて足を止める。

「マスター?」
「少し待ってくれ。何か光った。確かめてくる」

リコの魔法の光が反射して、何かが光った。それは本当に微かな反射であったが、ボディガードとして

違和感に対する感度を高めた恭也は気づけた。
まだ救世主の鎧があるという洞窟に入ったわけではないので、罠ということはないし、後から調べてもいいのだが、何となく気になり、恭也はその光を反射したものがある場所に向かう。
それは墓所の一つ。

「これは……」

その墓石の上にロザリオが置かれていた。
墓に眠る人物へのお供えかとも思ったが、少しばかりおかしい。
ここはもう地下墓地の奥地だ。鍵を所持していて、さらに魔法の封印を解けなければ来ることはできない。おそらくここにある墓は、かなり昔の人物……それこそすでに縁者が絶えた者たちが眠っているのだろう。
墓参りに来る者などそうはいないだろうし、いたとしてもここに来るには許可が必要だから、最低でも数ヶ月単位で人は来ないだろう。完全に閉鎖されていたとすれば、それこそ数十年、数百年単位で誰も訪れていないはずだ。
それにしては、そのロザリオは輝きを失っていない。数ヶ月放っておかれただけで、普通ならそれなりの埃ぐらい被っていてもおかしくない。

「…………」

恭也は慎重にそのロザリオを手に取ってみる。
やはり汚れなどはない。
首を傾げ、それから墓石を見つめた。
そこにはおそらくこの墓所に眠るであろう人物の名前が彫られている。

「ルビ……ス……フ……アス?」

恭也もこの世界の文字をある程度読めるようになってきたが、この墓石はかなり古いもののようで、かなり劣化が進んでいた。そのため名前の途中途中が欠けてしまっていて、完全には読めない。
この人物関係のある物なのだろうか。
そんなことを思ったが、考え直してみれば、関係のないことだ。
恭也はロザリオを墓石の上に戻そうとしたが、

「……ルビナス……のお墓?」
「リコ?」

リコが恭也の背後に近付いて、唐突に言う。

「知っているのか?」
「……はい。ルビナス・フローリアス。千年前の救世主候補……そして私の主、赤の主でした」
「つまり俺の先代か」

そして、ミュリエルの仲間。
ならば、ロザリオを供えたのはミュリエルだろうか。
それにしてもこんなところに千年前の救世主候補の墓があるとは。

「恐らくアルストロメリアが墓を造ったのでしょう」
「クレアの先祖か」

女王であったというアルストロメリアなら、学園に仲間の墓を造ることもできただろう。なぜ学園に、とも思うが。

「ただ、ここにルビナスは眠ってはいないでしょう」
「そうか」

身体はどこか別に埋葬されたのか、それとも千年前の戦いで、それこそ身体すら残らなかったのか。
いや、死亡していたなら、千年前に対となる白の主が救世主になっていただろうから、それも違うのかもしれない。
しかし詳しく聞く気にもなれなかった。

「マスター、それは?」

リコが恭也の手の中にあるロザリオを見て聞く。

「ああ。この墓に供えられていた。これがリコの魔法を反射して光ったんだろう」

それにしては少し強い光だったような気もするが。

「見せてもらってもいいですか?」
「ん? ああ」

恭也は頷いてリコにロザリオを手渡した。
するとリコは、すぐに目を鋭くさせる。

「これは……ルビナス……あなたはまだ……」
「どうした?」
「いえ。それよりもマスター、これは私が預かってもよろしいですか?」
「供えられていたものなんだが」
「はい。ですがこれは、おそらくルビナスの遺言、もしくは遺品と言ってもいいものです。彼女に渡さないと」
「彼女?」
「……ルビナスはきっと、まだこの世界のために戦うつもりなんです。赤の精として、彼女の強い心を……無視できません」

リコの言う意味は恭也にはわからない。だが、リコはロザリオを握り詰め、かつての主を思いだしているのか、どこか悲しげとも、嬉しげとも、誇らしげとも言える複雑な表情を浮かべていた。
それを見て、駄目だとは言えそうもない。
だから恭也は短く頷いた。




第五十七章




恭也たちは、すでに地下墓地を抜け、その奥に封鎖されていた洞窟、地下道とも言える場所に辿りつていた。
救世主の鎧が安置されているという場所に続くこの洞窟の中は、アンデットなどがそれなりに現れた。

それだけではなく、幽霊のようなものだ。
恐らく霊力を扱えなかったら、恭也ではどうにもできなかっただろう。話によると召喚器はそう言った存在にも対抗できるらしいが。
リコの魔法も本当に役に立ってくれていた。

「ふむ」

何度目かの戦闘を終えると、先を歩き出しながらも、恭也は唐突に懐に手を入れる。そしてその中から小さな小瓶を取りだした。
それはこの場所に赴く前にミュリエルから渡されたもの。
もし身が危なくなり、それでもリコを守りたいならば、彼女と自分に降りかけろと言われて渡された。

「さて、どう思う?」
「中身は石化の秘薬ですからね」

この小瓶のことはリコには言うなと言われていたが、恭也はすぐさま暴露した。
どうにも怪しいと思ったのだ。
別に信頼していないわけではない。だが、ミュリエルの目的を考えるに、何か裏があるのではと恭也は考えた。
だからこそ恭也はすぐさまリコに暴露し、試しに飛針へと降りかけてみたのだが、それは見事に石へと変化。
本当になんでもありだと、恭也はミュリエルへの批判ではなく呆れた。

「おそらくミュリエルは私と大河さんが救世主であると疑っているのでしょう。あとなのはさんと未亜さんも」

最終的に、禁書庫の最下層に辿り着いた救世主候補はその四人。
ミュリエルは、召喚器を持っていないと思っている恭也を除外しているため、その四人の中の一人が救世主候補だと考えているのだろう。

「それで当初は大河を一人で行かそうとしていたのか」

その中で救世主候補として頭角を現しているのは大河だろう。
ただこれは間が悪かったとも言える。大河が頭角を現したのは、禁書庫での戦いのあとに、恭也と戦闘訓練を行うようになってからだった。つまりミュリエルからすれば、禁書庫での戦いの後から強くなったと思われているのだろう。だから、彼が真の意味で救世主候補であるかもしれないと考えている。

「しかし、なのはは?」

なのはもそのぐらいから頭角を現し始めた。
しかし、今回ミュリエルはなのはにこれとした任務を与えなかった。

「マスターがいますから。マスターの話からすれば、ミュリエルはマスターのことを信頼し始めているでしょう。それもありますし、同時にやはり一番厄介なのはマスターだと思われているのだと思います」
「俺がいるからなのはには迂闊に手を出せない、ということか」

今回、恭也石化したならば、その後をなのはをという可能性もあったわけだ。

「ええ。ですが知佳さんと耕介さんもいますから、そう簡単な手出しはできないでしょうし、なのはさんを狙うならもっと慎重にやると思います。まずは大河さんから、というのなら一番怪しいんでいるのは大河さん、ということでしょう」
「……そうだな」

未亜も大河がいては手が出しづらいだろうし、彼女が大きく成長を始めたのはもう少し後になってからだ。おそらく未亜は一番確立が低いと思っているだろう。
任務の成功率などを考えて、今回はリコを行動できないようにすることにした、というところだと思われる。
しかし、直接殺しにくるわけではないところを見ると、切羽詰まっていないと見るべきか。
それとも殺すのは躊躇われるのか。
まあ、本当に一番救世主になる可能性のある男は除外されているわけだから、皮肉な話と言えば皮肉な話だ。

「考えてみると、俺の立場も複雑だな」
「赤の主でありながら、その正体は数人しか知らず、仮面救世主ですからね」

リコは、恭也以外にはあまり見せない笑顔を浮かべた。
彼女には本来救世主を決める者として、偽りの救世主になったことを伝えてあった。
というよりも、リコには大抵のことは教えたかもしれない。

「そういえばマスターはクレア王女とよく顔を合わせているのですか?」
「他の救世主候補たちよりは合わせているだろうな」

リリィたちなどは、初めての任務のときと、この前以外は会ったことはないだろうし、大河もあの禁書庫のとき以来だろう。
恭也は知佳と情報の交換をする際にはよく顔を合わせていたし、あのとき以外にも何度かクレアの護衛として禁書庫に入ったことがあった。

「それがどうかしたか?」

なぜそんな話を持ってきたのかと、恭也は横を歩くリコを横目で見下ろす。
するとリコは、少しばかり眉を寄せた。

「いえ、何となくマスターはクレア王女を気に入っているように感じたので」

そんな言葉を聞いて、恭也は目を丸くする。
リコはそんな恭也を見上げながらも続けた。

「赤の精であり、あなたを主にした私が言うのも変ですが、仮面とはいえ、マスターが救世主になることを了承したのが不思議だったんです。何となくクレア王女からの頼みだから了承したのかと」

リコが言い終えると、恭也は苦笑を浮かべる。

「そうだな、俺はクレアを気に入っている。他の人……例えば議員に同じことを言われても引き受けなかった。この世界で生活するのに不利になったとしても」
「なぜ、と聞いてもいいですか?」

構わないと頷き、恭也は語る。

「単純に俺は、自分の信じた道を往く人が好きなんだよ。俺の剣は大切な人だけでなく、そんな人たちの道を遮る者を斬るためでもある。そういう人たちを守るのが好きというのも、またある」

恭也がボディガードの仕事をしているのはそういう理由だ。その人が往く道を守りたいと思うからこそ。

「クレアは言ってしまえば俺とは対極だ」
「対極……ですか?」
「あいつは外に向いていて、俺は内に向いている」
「……すみません。ちょっと理解が」

リコは心底すまなそうな表情を浮かべながらも、恭也に意味を問う。

「わかりやすく言えば、あいつは王家……もしくは王国という組織のトップだ。まあ、トップとは言い難い環境ではあるし、女王になったとしても、全ての決定が通るわけでもないが、対外的にはあいつが一番の決定権をもつ。
あいつの想いはともかく、考え方と行動も王族としてのものだ。つまり個よりも全体を優先する者」

クレアは多くの民を守るためならば、個を切り捨てることを躊躇わない。全体を守るためならば、個を切り捨てる。心の中でどれだけ切り捨てたくないと悲鳴を上げようが、それでも声には出さずに容赦なく行動するだろう。
それこそ必要ならば、自分にとって大切な者でさえ切り捨てるかもしれない。
それは王に必要なものであり、王国という組織のトップにも必要なものだ。
情に流されてはいけない。とはいえ冷酷すぎてもいけない。
切り捨てたモノ以上の者を守る者。
切り捨てられた者たちからすればたまったものではないだろうが、それは決して組織の長として、王族として間違ったものではない。
それがクレアという少女ではなく、クレシーダ・バーンフリートという王女だ。

「対して俺はどこまでも個を優先する」

恭也は、例え守りたい人間を殺さなければ世界が滅ぶ、と言われようと、その人を守る方に回る。
大切な者を守るために世界を滅ぼさなければならないと言われたなら、……実現可能かどうか別として……実行するだろう。
葛藤はあるかもしれないが、最終的には個を優先する。
これは恭也個人としての性格だけでなく、その仕事……ボディガードとしても同じ。
ボディガードというのは、個……つまり護衛対象者を守ることが全てだ。極端な話だが、他の全てが全滅していようと、護衛対象者だけが最後に守りきれていればそれでいい。
無論、護衛対象者の風評や精神などを考えれば、それだけでは済まされないし、護衛対象者を危険に晒した時点で、本来はボディガードとしては失格だ。
しかし、最終的には……もしくは最悪……護衛対象者を守るのにそれしかないのなら、他は容赦なく見捨てる。
他の全体という人間全てが死のうと、ボディガードとしては護衛対象者という個を優先するのは当然のこと。全てというのには護衛をする自分自身さえ入るのだから。
全体を見捨てても個を優先する。そこに容赦はなく、個を守るために全体を見捨てなければならないなら躊躇はしない。
つまりクレアは究極的に全体を守る者であり、恭也は究極的に個を守る者。
むしろ事の次第によっては、お互い敵になりえる二人でもある。
個を切り捨てようとして、それが恭也の大切な者だったならクレアを長とする王国という全体と敵対する可能性はあったし、これからもある。また逆にクレアが王国全体を守るために、恭也という個、もしくは彼が守る者が邪魔になれば、容赦なく敵対してくるだろう。
そこまで二人の生き方は、どこまでも対極なのだ。

「対極であるからこそ、あいつのことは気に入っているんだ」

まるでお互いのないものを埋めるように。
本来なら対極であり、事によっては絶対的に敵対するというのに、相手の考えが理解できてしまう。
それはぴったりと填る凹凸。
生き方は違うとも、目的のためならば容赦なく、躊躇わないのは同じだ。
しかし、対極ではあっても、どちらも人間として間違った行動でも、想いでもない。これも結局は同じ。ただその行動と思いが外に向いているか、内に向いているか……もしくは全体に向いているか、個に向いているかの違いでしない。
どちらも向く方向は違っても、その根源は同じだ。だからこそ二人はお互いが理解できた。

「とはいえ、たまにあるのだがな」

今までその仕事の性質上、財政界などのトップ……つまり組織の長というべき人たちの護衛を恭也はしてきた。
しかし、それらを理解することはできなかったことが多い。
どうしても生き方が異なる。
本能的に水と油だと考え、心のどかで気に入らないと思ってしまっていた。無論、そんな私情を仕事に挟むことはなかったが、大抵そういう者たちの依頼は、それ以降受けることはない。
そう言った立場でありながら、クレア同様に気に入ることもある。例を上げれば、アルバート・クリステラなどだ。
それらの差は何か。
何のことはない、覚悟の差だ。

「それらの人たちは皆、どんな犠牲を出そうと、それを仕方がないと割り切るのではなく、それが自分の選んだ道だと受け入れている。憎しみだろうと、罵りだろうと受け入れる覚悟がある。だからそんな人たちの道を……想いを守りたいと思うんだ」

クレアもそういう人物だった。
だからきっと恭也は彼女を気に入っている。
彼女を、彼女の道を守るためならば、恭也は剣を振ることに躊躇いはないし、彼女の願いならば、今回のように自分の生き方を曲げない程度なら受け入れられた。
彼女の道を邪魔する議員の暗殺ぐらいは受けてもいい。クレアがそれを頼むとは思わないが。

「要約してしまえば、先ほど言ったとおり、俺はクレアのような生き方をする人間が好きなんだよ。例え敵対してしまう可能性があってもな。もちろん、その可能性は限りなく低いだろうが」

王国という組織……その根底にある理念や思想、在り方そのものは、恭也の生き方とどこまで相反するために、理解はできても、どうやっても納得はできないだろう。
組織の長……というよりも、組織そのものを恭也は忌避する。
それこそ水と油。反りが合わない。
香港警防隊に入隊しなかったのも、法を護るためなら法を犯す、法の守護者という在り方が自身を変質させてしまうかもしれないし、個を守ることができなくなる可能性も高く、根本で反りが合わないと考えたためであることは否定できなかった。
クレアのそれは使命であるが、恭也の場合はむしろアイデンティティ、もしくはレゾンデートル(存在理由)に近い。そうであるが故に、もしかしたらそれら全体の長たちよりも生き方を曲げられない。
それでも、その組織の一部を気に入ることはある。それは人そのもの。
組織の長……それもその組織を体現するような存在も本来好かないが、恭也はそこに本当の覚悟を持つ者は好む性質があった。
今回はそれがクレアだったというだけだ。

「好き、ですか」
「その生き方がな。俺にはできそうもない」
「マスターが救世主を求めないのもそういうことなんですね」
「全体を助ける気がさらさらない上に、そんな力もないしな。あったとしても、それさえ内に、個に向いてしまう」

恭也の場合、救世主というのが手段であるならば、それは個に向けてしまうし、救世主というのが目的ならば、それを目指すことはない。
世界という全体に興味はなく、世界という全体に恭也が守る個が入ってしまえば、世界を守ることも選択するが、それ以外ではありえない。
救世主の力を手段として見るなら、場合によっては手に入れることも吝かではないが、目的(立場)として見るなら興味はない。
ここまで割り切れてしまう人間も珍しいだろう。

「…………」
「マスター?」

そんな会話をしていたなか、恭也が目を鋭くさらせた。
それにリコが目を瞬かせた。敵が現れたのかとも考えたが、それらしいものはない。

「……声は聞こえていないだろうが」
「どうしました?」
「いや」

リコに首を振ってみせるか、恭也は思考し続けていた。

(どうしたものか。泳がすべきか、それとも……どちらにしても状況的にはまずくなりそうだ)

こんなことなら、多少無茶をしてでも、事前に脅威を排除しておくべきだったと内心で続け、リコには気付かれないように小さく溜息を吐いた。



◇◇◇



そこはまるで祭壇のようだった。
横に長い階段が百段以上に続き、その頂上に金色に輝くそれがあった。
いや、おそらくこれは本当に祭壇なのだろう。救世主が纏うとされるそれを祀っているのだ。

「あれが救世主の鎧、か」
「ですね」

高い場所に祀られたそれを、恭也とリコは見上げる。
長くこの場所に祀られていたにしては、輝きを失っていなかった。とはいえ、ここからでは細部まではわからない。
ここに来るまで、リコに救世主の鎧について聞いてみたが、それほど輸液な情報はない。少なくともミュリエルたちが言っていたことが真実であったということと、召喚器同様にリコが導きの書から誕生する前には、あれはすでに存在したらしい。
つまり破壊するしかないわけだ。
その前に恭也は辺りを見渡した。

「……あまりいい場所ではないな」

それは自分が戦うには適していないという意味だった。
洞窟であったから、これまでの天井は低かった。しかしここは、祭壇があるために天井が高い。
ここまで何度かモンスターにも出会ったが、恭也が天井など使い、御神の剣士としての本領を発揮でき、さらにリコの援護があったため、モンスターの数の多さに苦戦する場面こそ何度かあったが、危機と呼べるほどの自体に陥らなかった。
しかし、ここでは平面で戦わなくてはならない。

「リコ」
「はい?」
「鎧を破壊したら戦闘になるかもしれない。準備を怠らないでくれ」

破滅の将が送られる可能性があると言われていたが、周辺に敵の姿はない。隠れていたとしても、恭也に気付かせないような穏行を持つような存在は稀だ。
そもそも破滅が救世主の鎧を求めているとしたら、この場面で隠れて待つわけがない。
だからこそリコは怪訝な顔を浮かべた。

「破壊したら、ですか?」
「何を考えているのかはわからんが、誰が出てきても驚かないようにしておけばいい」

恭也は適当に濁し、自分とリコの二人がかりなら、大抵の敵は無力化できるだろうが、この人物はどうだろうと、戦術を考えるが、今はそれよりも鎧の破壊を優先するべきだ。
今度はどう鎧を破壊すべきか考える。
霊力技で破壊できるならよし。できないならリコの魔法。それでもできないなら二人がかり。そこまでやってできないなら、二人でとことん攻撃をぶつけるしかないだろう。

「とりあえず上まで行くか」
「はい」

二人がまず鎧に近付こうと階段に向かおうとした。
そのとき、

「ん……?」

恭也が声を上げた。
すぐさま足を止め、隣にいたリコを手で制し、同じく歩みを止めさせる。

「マスター?」
「……動いた」
「動いた?」
「鎧が動いた」
「え?」

リコは恭也の言葉につられ、鎧を見上げる。
鎧は祭壇の上に、まるで中身があるかのように立っているが、それは元からだ。リコには変化は見えなかった。
しかし、リコからすれば主が言うことは絶対だし、そうでなくとも恭也の感覚は鋭敏だ。信じるに値する。

「どうして」
「わからん。すでに着込んだ人間でもいたのか」

間違いないと恭也は言う。
目に見えたわけではないが、僅かに動いた気配を感じられた。それは身じろぎしたかのように感じる。
するとリコは目も同じく目を鋭くさせた。

「……怨念」
「なに?」
「恐らくあれに中身……着込んだ人間はいません。集まった怨念が鎧を動かしているのかもしれません。魔力が異常なんです。その量ではなく、質と言えばいいのでしょうか。まるで何人……いえ、何万を越える人間の狂った魔力を無理矢理融合させたかのように」

霊障のようなものかと恭也は呟き、同時に舌打ちした。
こんなことなら耕介に来てもらった方が良かったかもしれない。恭也も霊力を使えるようになったとはいえ、霊障に関することは知識的にもかけるし、それに対して効果的な戦闘法というのがわからない。

「……本格的に動くようだな」
「みたいですね」

恭也たちが離しているうちに、鎧は本格的に動き出した。
一歩。二歩。
ゆっくりと歩く巨体。

「リコ!」
「はい!」

恭也がリコの名を呼び、それに彼女が応えると、二人は大きく後ろへと跳ぶ。
同時に救世主の鎧が、大きく飛び上がった。
そして、百段以上ある階段を一気に飛び降り、先ほどまで二人がいた場所に落下。
落下の衝撃と、かなりの重さがあるのか、着地した救世主の鎧が地面を抉り、粉塵が舞い、石の飛礫が恭也たちを襲う。
二人は自分に向かってくる石を両手で捌き、さらに後ろへと下がった。
粉塵が晴れた先には、金色に輝く巨大な鎧があった。
近くで見ると本当に大きいことがわかる。少なくとも人一人が纏うレベルの鎧ではない。
兜にはまるで闘牛のような角が着いている上に、全体的に尖った部分が多く、攻撃的に見える上、金色ながらどこか禍々しさ感じさせる鎧。
だが、今はそんな外見よりも、

「浮いていますね」
「そうだな」

鎧のため当然関節部などを区切りに独立しているのだが、それらが全て浮いていて、無理矢理人の形を取らせている。
さらに人の目に当たる部分は、僅かに赤く光っている。
その目とも言える部分を見て、恭也は嘆息した。

「……どうやら敵対する意思があるようだな」
「はい……」

人の目とは違う赤い光。しかし、それが敵意を放っている。何よりその目が一番禍々しい。
恭也が抜刀すると、リコも赤の書をどこからか取り出す。

「壊そうとしているのを理解しているのか、それとも近付く者全てを排除しようとしているのか、どちらだと思う?」
「後者かと」
「そうか」

もし前者なら、ここは逃げ、後から魔法と霊力で狙撃を狙いたかったが、どうやら正面から戦うしかなさそうだ。

「行くぞ、リコ」
「はい、マスター」

リコが頷くのを見て、恭也は救世主の鎧へと飛びかかっていく。
次いでリコは、前衛で戦う主を補佐するため呪文の詠唱へと入った。


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.459 )
日時: 2010/03/08 19:35
名前: テン







大河、ベリオ、カエデの無限召喚陣破壊の任務を請け負った三人は今、その無限召喚陣が描かれているという森の入口から少しばかり離れた場所で、円陣を組んで座っていた。
行っているのは、突入前のちょっとした作戦会議のようなものだ。

「さて、実際どうするか」
「どうするとは?」
「このまんま突入して大丈夫なのか、ってことだよ」

クレアの代わりに、ここまで王国軍の人間に案内されたあと、この森の先に召喚陣がある、という報告を受けた。
しかし、だ。教えてもらったのはそれだけでしかない。

「無限召喚陣ってのは、それこそ腐るほどモンスターを吐き出すんだろ? ってことは、近付けば近づけくだけモンスターが出てくるじゃないか」
「そして、人数は不明ながらも恐らく破滅の将もいる、ということでごさるな」
「モンスターも数が多ければ、私たちでも脅威ですし、それに破滅の将が相手だと……」

こちらは三人だ。破滅の将が一人ぐらいなら何とかなる。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.460 )
日時: 2010/03/08 19:36
名前: テン


しかし、二人だった場合、あちらも連携ぐらいしてくるだろう。そうなると押されかねないし、逆にこちらと同じ人数、もしくはこちらよりも多い人数だった場合……

「……無理っぽいよなぁ」

大河は嘆息して事実を言った。
単純な身体能力だけなら勝っている自信はある。しかし、あれらは恭也と同じだ。大河たちのように『強いだけの素人』、もしくは『少しだけ戦闘技術がある素人』ではなく、完全な戦闘者。
その人生のほとんどを戦うこと、もしくは戦う技術を習得するために費やしてきたような奴らだろう。地力が違うのだ。
もう少し、もう少しだけ時間があれば、召喚器があるからこそ……そして、恭也がいるからこそ、追いつくことができたかもしれないが、すでに始まってしまっている。

「せめてモンスターだけでも……」

モンスターだけでもどうにかできればいい。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.461 )
日時: 2010/03/08 19:37
名前: テン


三人以上が相手だとしても、今回のこちらの第一目標は破滅の将の撃破ではなく、召喚陣の破壊。破滅の将と戦いながらでも、それが可能かもしれない。
しかし、そこに大量のモンスターが現れたなら、もしくはそこに行くまでに大量のモンスターと戦い、体力を大きく消費してしまったなら。
できるだけそれらの脅威を払っておきたい。

「師匠、拙者が斥候に出るでござるよ」

せめて敵の布陣を確かめてくると、カエデが立ち上がろうとする。
しかし、大河はそれを手で制した。

「待て待て、カエデ。お前を信用してないってわけじゃないけど、それはまずい」
「なぜでござるか?」
「もう今回は、出てくる敵のレベルは全て恭也レベルだと思った方がいいと思うんだ」
「それはそれで嫌な想像ですね」

ベリオは、恭也が二人現れただけで勝ち目がないような気がしてならない。恭也が二人もいるわけがないから、そういう前提で戦おうということだと言うのはわかるが。
しかし、あながち間違いとは言えない考えだろう。相手を過大評価しすぎてもまずいが、それぞれ相手にした破滅の将の話を考えると、敵全員の技術、戦闘経験が恭也レベル、もしくはそれ以上である可能性が高い。

「んでカエデ、お前、恭也相手にどこまで気付かれないように近づけられる?」
「む、ためしたことがないでござるよ。ただ、老師はやろうと思えば最長で半径30メートル内の気配が読めるそうでござる。精度を無視すればその倍から三倍はいけるとの話でござった」
「そ、それはそれで人間止めてるな」
「恐らく拙者でもその範囲に入れば探知されるでござろう。というよりも、気配の感知にしろ消す方法にしろ、拙者よりも老師の方が上でござる。忍者の面目丸つぶれでござるよ」

少しばかり項垂れるカエデ。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.462 )
日時: 2010/03/08 19:37
名前: テン


「あー、なるほど」

大河としてはそれなりに納得だ。
恭也に少しはばかり聞いていたことだが、恭也の流派、さらに恭也の家系は裏に属し、敵対組織の殲滅や要人の暗殺行為の方が主であり、感覚部分は本家よりも勝っていたとか。そして恭也も、もう殲滅や暗殺などすることはないだろうが、似たような鍛錬はしていたらしく、殲滅も暗殺もできると言っていた。
対してカエデは忍者でありながら、戦闘になれば真正面から戦うのを主としている。殲滅はできないが、暗殺に必要な技術もあった。だがそちらよりも真正面から戦うというのを意識しているのだろう。無論、カエデは奇襲なども十分に行える。しかし、相手に存在がばれてしまったときは真正面から戦う。
大河はあまり詳しくないが、これはどちらかというと、カエデが血を苦手としているからこその違い。彼女は、後ろから接近してザックリという真似はできないからだ。首を折るという方法もあるだろうが、それでもまかり間違えて血を見てしまえば失敗。
暗殺というのは、失敗した場合のリスクがかなり高い。自分の死はもちろんだし、捕まって背後関係が現れるのもまずい。故に失敗は許されないし、失敗した時点で最低でも姿を見られる前に逃走。最悪で自害でも選択しなければならないが、それも死体が残るのは色々とまずいこともある。
だからこそ暗殺よりも正面から戦闘に比重を置いた。とはいえ、敵を見つけても真正面から吶喊して戦うことを前提にしているわけでもない。奇襲などを織り交ぜる。ちなみに殲滅は元々……相手が同じ忍者の組織でもない限り……忍者の仕事ではない。
それにカエデ自身が気付いているかはわからないが、トラウマ故にだろう。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.463 )
日時: 2010/03/08 19:38
名前: テン


大河たちの世界にも、忍者の国家資格……正確にはもっと違う名前だが……あるのだが、大河はあまり詳しいことは知らないので、カエデとどう違うのかはわからないが、恭也ならばそれらもどうとでもしそうな気がする。というよりも、恭也の場合、剣士+暗殺者+忍者……ちなみに恭也は房中術の関係で色技もできる……と言った方がしっくりくるだろう。
何より、やはり大河は知らないことだが、決してカエデが穏行を苦手しているわけではない。この場合は、恭也の……というか不破の穏行術や気配察知が異常なのだ。
それに忍者というのも、その形態は様々あり、何より一番怖いところというのは、本来はその隠密性と集団性。事を起こすのは一人でも、その合間に様々な忍者が動くこともあるし、事に集団で動くこともある。
そもそも本来忍者というのは戦闘者でもなければ、闘う者ですらない。あくまで闘うこともできる、でしかなく、真正面から戦うことができても、真正面から闘うことを前提にしている者は忍者失格以前にすでに忍者ではない。
こういっては何だが忍者というのは、一人ではそれこそ色々なことができる個人でしかないのだ。

「んじゃあ斥候はなしだ。相手がそこまでできるかはわからないけど、できたらまずい」
「そうですね」

カエデや知佳の話だと、暗殺者タイプもいたという話だから、絶対にできないとは言い切れない。

メンテ

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