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黒衣(仮投稿)
日時: 2008/05/15 06:31
名前: テン

浩さんに許可を頂きましたので、暫くの間黒衣を仮投稿という形でこちらに投稿させて頂きたいと思います。

あくまで仮であり、落ち着いたらいつかは今までどうりに投稿したいとは思っていますので。
これも携帯からの投稿なので、少々見づらいかもしれませんがよろしくお願いします。
一章を分割して送っていきます。


目次

>>1-27 恭也編 四十二章

>>54-91 恭也編 四十三章

>>122-156 恭也編 四十四章

>>197-227 恭也編 四十五章

>>228-255 恭也編 四十六章

>>256-268 恭也編 四十七章

>>269-288 恭也編 四十八章

>>289-317 恭也編 四十九章

>>318-330 恭也編 五十章

>>331-340 恭也編 五十一章

>>351-367 恭也編 五十二章

>>368-382 恭也編 五十三章

>>383-394 恭也編 五十四章

>>414-433 恭也編 五十五章

>>434-457 恭也編 五十六章

>>458 恭也編 五十七章

>>459-480 恭也編 五十八章

>>481-503 恭也編 五十九章

>>504-532 恭也編 六十章
>>565-587 恭也編 六十一章

>>28-53 大河編 三十章

>>92-121 大河編 三十一章

>>157-196 大河編 三十二章

>>395-413 大河編 三十三章

>>341-350 外伝
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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.23 )
日時: 2007/12/21 20:51
名前: テン


それに答えたのも戦闘経験は同じ程度だが、戦闘技術、戦闘知識に関しては他の者たちよりも一つ二つ上にいるカエデだった。

「元々老師の身体能力は相当なものでござる。しかし速度であれば、拙者も召喚器がなくとも同じぐらいまでならいけるでござるよ。通常の老師の速度であればでござるが」
「通常?」
「おそらく老師の使っているあれは、人間の強度限界を無視して肉体の枷を意識的に取り払っていると思うでごさるよ。だからこそのあの加速、速度で動けるのでござろう。それによって攻撃の速度まで速くなっているでござる」

カエデがさらに説明すると、やはり救世主候補たちは今現在の状況を忘れて、先ほどのカエデのように感嘆の息を吐いた。
すでにその頃には、恭也はたった一人で魔物の群を片づけてしまっていた。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.24 )
日時: 2008/01/02 22:00
名前: テン



「ふむ」

恭也は神速を使って乱れた息を整えた後、倒したモンスターたちを少しだけ眺め、自らの膝に集中するが、やはり痛みはなかった。
何度か確認のために大河相手にも神速を使ったが、そのときも痛みはなかった。そして今回、一対一ではなく一対多の状況で、一対一の状況よりも膝を酷使するような動きをしたが、それでも膝に痛みはない。

(やはり六秒ほどか)

神速を使える時間。今の恭也はその六秒。
これは元々そうだった。実は膝が壊れていた時から、恭也は神速を六秒使うことができた。正確には使うことができるはずだった。
集中力によって感覚時間を引き延ばす神速は、その集中力こそが鍵であり、それによって維持されるのだが、恭也の場合その集中力を維持する限界は本来六秒だった。
だがかつてはそれを四秒しか使っていなかった。集中力や身体への負荷による限界ではなく、膝による限界だったのだ。つまり五秒使えば砕けかねない、というよりも膝からくる激痛により、集中力が乱れてしまうので、六秒維持するのが難しかった。

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.25 )
日時: 2007/12/27 07:16
名前: テン

連続で使えば同じことと思うかもしれないが、神速の場合途中に少しでもインターバルを入れるのと入れないのとではまったく違うのだ。
膝という爆弾が消滅した今、その維持時間は本来の形に戻った。
そしてやはり今は全力で神速の中で動けるので、かつてとはまったく違う戦闘方法を可能にしていた。

「……もう少しいけるか」

恭也は僅かに微笑を浮かべ、小太刀を鞘に戻すと仲間の元へと歩いていく。

「たくっ、ほんとにとんでもないよな、お前は」

その恭也に向かって、大河はどこか嬉しそうにそんな言葉を向けた。

「一対多は俺の流派……いや、俺の家系が得意とするところだ。それでモンスター程度に遅れをとるわけにはいかないさ」

そう苦笑して恭也は言い、それよりもと呟いて地面を指さす。

「回収してやらなくていいのか?」
「うえ〜ん、ダーリーン、繋げてくださいですの〜」

そこにはバラバラになったナナシのパーツが、それぞれ独自に動くという何とも奇妙……というよりも気持ち悪い光景が広がっていた。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.26 )
日時: 2007/12/27 07:18
名前: テン


「バ、バラバラになっても動くんだ、あれ」
「な、なるほど、あれでモンスターを転ばせたんですね。大河くんたちの試合のときも」

その光景を見て、顔を引きつらせる未亜と多少青ざめた表情のベリオ。
そして大河たちはそのナナシのはパーツを回収していく。
その間にリコがスタスタと恭也に近づいた。

「恭也さん、いつのまに?」
「それなりに前からだ。リリィと一緒に突入のタイミングを窺っていた」
「すいません、手を煩わせてしまって」
「構わないさ。それよりも俺はなのはの所に行ってくるから、お前たちは先に馬車に戻っていてくれ。ここにいても危険なだけだから、それで少し離れた場所まで行け」
「なのはさん……ですか」

状況の移り変わりが激しかったため、そこでリコは初めてなのはがいないことに気付いたのか、辺りを見渡していた。

「ああ。途中で別れたんだが、まだ戻ってこないからな。さすがに遅い」
「私も行きましょうか?」
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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.27 )
日時: 2007/12/27 07:21
名前: テン


「いや、俺一人でいい」
「……そう、ですね。こういった場合、恭也さん……マスターだけの方が速く動けるでしょうし」

捕まったばかりか力になれないと思ったのか、少しばかり落ち込んだ感じを見せるリコの頭を恭也は軽く撫でる。

「気にするな。適材適所というものがあるし、今回のことは別にリコが悪かったわけじゃない」
「あ、はい」
「では、行ってくる。大河たちにも伝えておいてくれ」

リコが頷いたのを見て、恭也は駆けだした。
それに気付いた大河たちが何か声をかけてきたが、恭也はそれに答えることなく背を向けて離れていく。
恭也はただ真剣な表情で走り続ける。

「なのは……」

信じている。
信頼している。
だが、

「無事でいろ」

それでも彼女は恭也にとって、何よりも大切な守らなければならない者なのだ。


四十二章 終
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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.28 )
日時: 2007/12/27 07:27
名前: テン





それは少し時を遡る。
恭也たちが王宮に身を寄せ、すぐの時。
闇が初めて動いた時のこと。


そこは何もない広野。
だがそこは絶対的な処刑場。
そこで相対するのは紅の少女と闇の死神。

「くっ……」

紅の少女、レティアは顔から足まで……全身から血を流した身体でありながら、目の前の存在を睨んでいた。
そのレティアに向かって闇は左手を差し出す。だが、それは手を差し伸べるという優しさのためではない。

「さあ、ページを……赤の精と白の精の『記憶』を寄越せ」
「どうして……」
「……その問いは、何への問いだ?」

彼の淡々とした問い返しに、レティアは顔を痛み以外のものへと歪めて叫ぶ。

「全てへのよ! どうして! どうして気付いたの!? あいつは私の存在は気づいていても、マスターの存在にはまだ気付いていなかったはず! あなたみたいなのがいる以上、あいつはマスターの存在に気付いているんでしょう!?」

その絶望にも近い叫びを聞いても、彼は表情を変えない。だがやはり淡々とその問いに答えた。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.29 )
日時: 2007/12/27 07:29
名前: テン


「お前が記憶を構成するページを抜き出した時点で、すでにお前は『あれ』を押し返していた。なのに俺が知っている。そして俺は、あの時お前が現れる前の奴の行動が知識として刷り込まれている。これで答えになるのではないか?」
「っ!?」

彼の言葉に、レティアは目を見開いた。
その答えはつまり……。

「二千年前……私と同じ時には気付かれていた?」
「正確にはお前よりも前にだ。大人しくしていたならば気づきはしなかっただろう。だがあの時、片方……女の方と共に召喚器を呼んだ。これはとてつもない矛盾を引き起こした。これで奴は注目された。それで気付かないほど、『あれ』は馬鹿ではない」
「……あのとき同一存在が同時にいたために、世界を揺るがしていた。その時点で監視していたの?」
「そういうことだ。お前を作った『モノ』ならばその程度の矛盾は許容し、無視するだろう。『あれ』とて別にお前の主が召喚器を呼んだ程度では気付かない。しかし『あれ』は赤の理が選ばれた世界ならばともかく、赤と白が混在する中途半端な今の世界では矛盾に敏感の上に、白の理が混じるがために度が過ぎた矛盾は許容しない」


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.30 )
日時: 2007/12/27 07:31
名前: テン


彼の答えを聞き、レティアは愕然とした表情を張り付ける。だがすぐに、彼女は唇を噛み締めた。
そして、やはり彼を睨みつける。

「あなたの姿は皮肉のつもり?」
「『あれ』にそんな思考があると思うか?」
「私にしたら皮肉よ。その姿で現れられるのは」
「それは俺の知ったことではないな」

レティアにとって皮肉ととれる彼……高町恭也と同じ顔、姿を持つ者、不破恭也は無表情に返した。

「どこから引っ張られてきたの? ただの偽物とは思えない」
「いや、俺は虚偽の存在だ。興味がないので正確には知らん……が、この世界ではない可能性を他の世界より見つけ、それをこの世界の枝とし、俺という因子を抜き出したあとすぐに枯れさせた、というような知識は刷り込まれている」

やはり淡々とした答え。
だがレティアは、その抽象的な説明を正確に理解した。理解したからこそ再び目を見開き、痛みを無視して叫ぶ。

「あいつ、自分の管理外の『木』に……それも株分けされた『木』にまで手を出したの!? その上に、それを元にして架空の枝にするなんて! 原因なく、結果だけを生むような行為よりもよっぽど悪質よ!? それこそ赤の理すら越えた矛盾じゃない!」


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.31 )
日時: 2007/12/27 07:34
名前: テン


「俺には興味のないこと、と言った」

不破恭也は無感情に答え、左手は差し出したまま、剣を握っていた右手に力を込めた。

「質問に答えるのはここまでだ。『記憶』を大人しく寄越せ。少なくとも白の精のは必要だ」

レティアは唇を噛む。それと同時に、どこからともなく本のページを数十枚現れ、それを右手に掴んだ。

「間違いないようだな」

不破恭也はそれを見ながら、それでも感情を見せることなく呟いた。

その瞬間……不破恭也が意識をページにそらした瞬間、レティアが握っていた本のページが、まるで紙吹雪のように舞った。それはまるでレティアの身体を覆い隠すように。

「…………」

そして、それとほぼ同時にズブリと鈍い音が辺りに響いた。

「……射抜か」
「死者のページからの技能と知識、経験のダウンロード……技系の技能や経験は、身体が元のままだからあまり役にたたないけど、でも御神流だけは別よ。不破美影の射抜を元にし、私の射抜として放ったこれ、なかなか効くでしょ?」

いつのまにか、本当にいつのまかレティアが左手に握っていた小太刀。その刀身は不破恭也の腹部に突き刺さっている。

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.32 )
日時: 2007/12/27 07:36
名前: テン


紙吹雪を吹き飛ばし、まるで一陣の風になったかのような突き。レティアが放ったそれは、確かに射抜だった。
だが、不破恭也は剣が突き刺さった自らの腹部を冷めた目で見つめるのみ。

「なるほど、死者の技術や知識、経験を下ろせるわりには、今まで魔法系しか使わなかったのはそのためか」
「身体が私のままな以上、知識は役にたっても、技能と経験は役にたたないのよ。だから知識だけで使える魔法系を良く使うだけ。でも私はマスターを常に見てきた、その技を含めてね。だからこそ御神流を扱う死者を原型に、私の御神流へと再構築できる。もちろんそんなものマスターやあなたが放つそれには足下にも及ばないでしょうけど。でも、遠距離戦主体だと思っていた敵が近接戦をしかけてきたら、あなたでもそう簡単には反応できないでしょ?」

レティアは頬の傷口から流れてきた血を、真っ赤な舌で舐めながら妖艶に笑う。

「読みが外れたのは久しぶりだ。ページをばらまき、逃げると思っていたのだが」
「少しでも手傷を負わさないと、あなたは危険すぎる。マスターの障害になるなら、なんであろうと消すわ。たとえそのために私が危険になろうと」


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.33 )
日時: 2007/12/27 07:39
名前: テン


「大した忠誠心だ。だが……もう少し上を狙うべきだったな」

不破恭也は足を折り曲げ、その膝をレティアの腹部に叩き込んだ。

「がっ!」

苦痛の声と空気を吐き出したレティアへ、不破恭也はさらにその彼女の額に向かって肘を叩き込む。
そのとき、一瞬だけ不破恭也の目が細くなった。
だがすぐに表情を元に戻すと、不破恭也は小太刀を自らの腹に残したまま柄を離し、後ろへと倒れ込んだレティアに向かって、まるで虫を踏みつぶすかのように足を叩き下ろす。
レティアは横へと転がり、それをかわし、さらに転がった勢いを利用して立ち上がると同時に、そのまま不破恭也から距離をとった。

「頭を自分から差し出すことで徹を無にするとは、恐れ入る」

レティアは肘が来るとわかった瞬間、それが伸びきる前に自分から頭を差し出した。完全に肘へと勢いが乗る前に当たることでその威力を減らし、さらに完全に徹が込められることを防いだのだ。
それでも全ての威力を殺すことなどできず、レティアの額は割れて、新たな血が流れ始める。

「わた……しだって、伊達にマスターを……見続けてきた……わけじゃない。それに……知識は役立つって……言ったでしょ」


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.34 )
日時: 2007/12/27 07:41
名前: テン


額からも血を流して言うレティア。痛みのためか、それとも脳が揺れたためか、その声には力がなく、途切れ途切れとなっていた。
不破恭也はそれには何も答えず、自らの腹部に突き刺さったレティアの小太刀を引き抜いた。血が溢れ出るが、それでも彼は痛みの表情も見せずにいた。
レティアは、それを見ながら呪文を紡ぐ。
そして不破恭也は、自身の腹に刺さっていた小太刀を捨て、自らの小太刀を深く構えた。
それはまるで弓の弦に番えられた矢のように……。
その切っ先を向けられただけで、まるで身体を貫かれたかのような錯覚を覚えさせ、恐怖を与えさせる。

「これが本当の射抜だ」

不破恭也がこれから放つ技の名を紡ぐ。
そして自らの身体を矢とし、高速となって、その牙をレティアの頭部へと向かわせた。
それは先ほどレティアが放った射抜とは別物だ。その力も、速度も、正確さも、その全てがレティアの、その元となった不破美影の上をいく。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.35 )
日時: 2007/12/27 07:42
名前: テン



それがレティアの頭を刺し貫くと思われた瞬間、彼女の姿が残像を残して消えた。
小太刀の切っ先は空を切り、不破恭也はレティアがいた場所を通り抜けて止まる。

「次元の狭間に逃げたか。だが目的は果たした」

小太刀を鞘に戻し、彼は散らばった紙片を眺める。

「……しばらく動けんな」

それから血が溢れ出る自分の腹部を眺め、不破恭也は呟いた。





赤の主・大河編

第三十章 



メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.36 )
日時: 2007/12/29 17:00
名前: テン





コツコツと数人分の歩く靴音だけが廊下に響く。その数人の人物のほとんどは暗い表情で歩いていた。
それぞれが何かを考え、だが悪いことしか浮かばないかのような表情。
こんな表情を授業中もしていたからこそ、今日『も』救世主クラスの授業は、ダリアによって休みにされてしまったのだ。
そして、全員がそれを拒否することもなく、寮に帰ることになった。
その中で、先頭を歩いていたただ一人の男……大河はため息を吐いた。

「お前ら、いつまでそんな感じでいる気だよ?」
「お兄ちゃん」

大河の言葉に救世主候補たちが暗い表情で大河の顔を見る。

「受け止めろよ。恭也は……恭也たちは俺たちの前からいなくなった。理由はわからないし、なんでこんなことになったのかもわからない。けどあいつらは俺たちとは違う道を行った。これはもう突きつけられたんだよ」
「マスター……ですが……」

リコのいつも以上に低い声に、大河は自らの声を被せる。

「でもも何もねぇ。お前らが沈んでればあいつが帰ってくるのかよ? あいつが全部話してくれるのか?」
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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.37 )
日時: 2007/12/29 17:02
名前: テン


乱暴な言葉遣いではあるが、大河の顔に怒りや苛立ちというものは一切なかった。それはまるで聞き分けのない子供を諭す大人のようにも見える。
大河自身は本当にらしくないと思っている。だがそれでも彼はそれを止めない。

「もう、あいつは全部決めたんだよ」
「ですが師匠……」
「だから、でもも、ですがも、今更何を言ってるんだよ?」
「た、大河君、私たちは……」

なおも言い縋ろうとするカエデとベリオに、大河は深々とため息を吐いた。
そして頭を少し掻く。

「結局、お前たちはどうしたいんだ?」
「え?」

その大河の質問に、今まで黙っていたリリィを含め、全員が足を止めて大河を驚いたように見つめる。
その全員に倣うように大河は足を止めて振り返った。
授業中のため、シンと静まった廊下は広く感じさせる。その中央で大河は救世主候補たち一人一人を眺めた。

「何がしたんいんだよ、お前たちは?」
「そ、それは……」
「もう、あいつらは答えを出した。あいつらの目的なんか俺は知らない。だけどあいつらはその目的のためなら、きっと俺たちを倒すことだって覚悟してるぞ」

それは全員が理解している。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.38 )
日時: 2007/12/29 17:04
名前: テン


彼らには自分たちを倒してでも手に入れたいものがあるのだと、突きつけられたばかりなのだから。

「それでお前たちはどうしたいんだ? ちなみに、俺はもう決まってるぞ」
「それはなんでごさるか、師匠」
「口に出して言うことじゃないよ。だけど、そのためなら俺は恭也だって倒す」

大河の言葉を聞いた一同は、驚きで顔を歪め、何かを言おうとしたが、全員が何も言えず、口を噤んでしまった。

「言っておくけど、これは俺が決めたことだ。お前たちに強制なんてしない。それに俺だってまだ諦めてない」
「何を諦めてないって言うのよ」

始めて口を開いたリリィに対し、大河はニッと笑った。

「また恭也の横で戦うことをだよ」

恭也と共に戦ったのは一度だけ。こうなってしまった原因であろう、導きの書を禁書庫へと取りに行ったときだけ。
それでも、

「俺はまだ恭也と戦いたいって思ってる。敵としてなんかじゃない。仲間としてな」

だからと大河は続け、

「俺は理由を聞くことを、何のために恭也が戦っていのかを聞くのを、まだ諦めてない」

そう宣言した。



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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.39 )
日時: 2008/01/02 21:44
名前: テン



救世主候補の一員にして、赤の精であるリコ・リスは図書館に来ていた。
とくに理由があったわけではない。時間を持て余しているわけでもない。
リコには召喚陣の修復という最も重要な仕事がある。むしろこんな所にいる暇はないと言っていい。しかし、召喚陣の修復は遅々として進んでいない。

「何をしているんでしょうね、私は……」

リコは近くにあった椅子に座り、そして本棚を見つめ、自嘲気味に笑う。
本当に自分は何をしているのだろうと。何がしたいのかと。
生き延びる。そしてもう少し恭也や大河たちの傍にいたい。それが大河と契約した理由の一つ。
後悔するのなら、それは自分の選択でと決めた。
だが、

「後悔しないようにというのは、難しいですよ……がさん」

自らで呟きながら、リコはすぐに驚きの表情を浮かべた。

「私……今……」

今、確かに自分は名前を呟いた。だが、それは誰の名前だった?
誰を思い出しての言葉だった?
頭の中に浮かんだあの人は誰だ?

今までずっと思い出せなくて、ずっと思い出したいと思っていた人物。

「あれは……」

そう呟いた時だった。
一枚の本のページが、ユラユラと彼女の前に落ちてきた。



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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.40 )
日時: 2008/01/02 21:46
名前: テン


「え?」

リコは図書館の天井を見上げる。それは一枚ではなかった。何枚ものページが、ゆっくりと舞い落ちてきている。
同時に、

「振り向くな」

背後から人の気配を感じ、リコが振り向こうとした瞬間、その人物が制止してきた。
リコはその声に抗うことができず、振り向こうとした中途半端な状態で止まってしまう。だが、本能が振り向いてはいけないと告げてきていた。

「それはお前に返す」

それは男の低い声だった。
どこか恭也に似ていて、だが彼にしては冷たい声。だからこそリコは彼が誰なのかわからなかった。

「これは……」
「お前の記憶だ」
「私……の……?」
「二千年前のものだ」
「なっ!?」
「振り向くなと言った。目を抉られたいか?」

思わず振り返りそうになったリコに、酷く感情の乗らない声で、男は言った。
だが、おそらく彼はリコが振り返れば本当に目を抉るだろう。それがわかり、リコはその身体を止めた。
敵わない。この自分の後ろにいる存在には決して敵わない。戦ってはいけないと本能が叫ぶ。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.41 )
日時: 2008/01/02 21:49
名前: テン


「その記憶をどうするかはお前次第。その記憶を手に入れて……取り戻して、お前がどう思うか、どう行動するかは俺にはわからないが、これが俺の目的の一つである以上、遂行する。赤のお前が俺に協力するとは思えんが、それはお前の一部。消失したままでは救世主誕生にも支障が出かねん」
「あなた……は……」
「気にする必要はない……」

リコの質問に背後の男は相変わらず低い声で答え……そして、その気配が消えた。
忽然と、唐突に、消えたのだ。逆召喚などではない。呪文を唱えた様子もなく、いきなり消えた。
それがわかり、リコは振り返ったが、やはりそこには誰もいなかった。
そして残されたのは、数十枚にも及ぶ紙片。

「一体……」

何なのだと、後半は心の中で呟き、リコは残されたページに視線を移す。

「私の……ページ……」

それは確かにリコの一部であった。彼女を構成する一部分。それが触れただけでわかる。
それはリコの記憶部分だという。

「記憶……」

それがどんな意味かわからない。だが、知らなければならない。
そう考えたとき、ページが光の粒子となって消えていく。その光はリコに降り注ぎ、それさえも消えていく。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.42 )
日時: 2008/01/02 21:51
名前: テン


そして、

「あ、あ、あ……」

次々に浮かんでくる記憶という名の映像。
それは忘れていた記憶。
忘れてはいけない記憶。
何より忘れてはならなかった……人。


『オルタラ……』


不器用に薄く笑う青年。
何より暖かくて、色々なことを教えてくれた……人を好きになるということを教えてくれた人。



「……なん……で……」

訳がわからない。

「なんで……!?」

この記憶が正しいのかわからない。
取り戻したはずの記憶が、偽りのものだとしか思えない。
いや、そうでなければならない。
これは偽りの記憶でなければならないのだ。
真実であっていいわけがない。
これが真実の記憶であるならば、

「……あの人は……もう……」

すでに彼が死んだという当然のことを、今更突きつけられたということなのだから。



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