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黒衣(仮投稿)
日時: 2008/05/15 06:31
名前: テン

浩さんに許可を頂きましたので、暫くの間黒衣を仮投稿という形でこちらに投稿させて頂きたいと思います。

あくまで仮であり、落ち着いたらいつかは今までどうりに投稿したいとは思っていますので。
これも携帯からの投稿なので、少々見づらいかもしれませんがよろしくお願いします。
一章を分割して送っていきます。


目次

>>1-27 恭也編 四十二章

>>54-91 恭也編 四十三章

>>122-156 恭也編 四十四章

>>197-227 恭也編 四十五章

>>228-255 恭也編 四十六章

>>256-268 恭也編 四十七章

>>269-288 恭也編 四十八章

>>289-317 恭也編 四十九章

>>318-330 恭也編 五十章

>>331-340 恭也編 五十一章

>>351-367 恭也編 五十二章

>>368-382 恭也編 五十三章

>>383-394 恭也編 五十四章

>>414-433 恭也編 五十五章

>>434-457 恭也編 五十六章

>>458 恭也編 五十七章

>>459-480 恭也編 五十八章

>>481-503 恭也編 五十九章

>>504-532 恭也編 六十章
>>565-587 恭也編 六十一章

>>28-53 大河編 三十章

>>92-121 大河編 三十一章

>>157-196 大河編 三十二章

>>395-413 大河編 三十三章

>>341-350 外伝
メンテ

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.43 )
日時: 2008/01/02 21:53
名前: テン





礼拝堂。
ステンドグラスから入る陽光により、その場所は本当に幻想的な空間だった。
そこに頭を垂れ、両手を組み、ただ祈りを捧げる僧侶の女性がいるからこそ、それはさらに深まる。

「ベリオさん」
「ベリオ殿」

その幻想的な雰囲気の中に、二人の少女が入り込んだ。
それに応え、女性……ベリオは立ち上がり、振り返る。
そこにいたのは未亜とカエデ。二人ともどこか複雑そうな表情を張り付けて立っている。だが、それは立ち上がったベリオも同じ。祈りを捧げていた時には見せていなかった複雑な表情を浮かべている。
そんなベリオに、未亜とカエデは近づいた。

「未亜さんたちは……」

ベリオが何かを問おうとしたが、それ以上は言葉にならなかった。
彼女たちの答えを聞いてもいいのかわからなかったのだ。

「私も諦めません」

未亜はいつのまにか複雑な表情を消し、ただ真剣に言葉を紡いだ。
それにベリオは、そして隣にいたカエデも驚いたような表情を浮かべた。

「お兄ちゃんも諦めてない。だから私も諦めない。恭也さんたちに理由を聞いて、それが力になれることなら、私は恭也さんの力になりたい」
「未亜さん……」


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.44 )
日時: 2008/01/02 21:55
名前: テン


「だって、そういうのを、逃げてるだけじゃダメだって、簡単に諦めちゃダメだって私に教えてくれたのは、恭也さんとなのはちゃんだから。だから私は、お兄ちゃんと一緒に、恭也さんたちにもう一度聞きます」

それは兄と同じ宣言。
それを聞いて、カエデは微笑み、ベリオも微笑みながらも、内心では複雑だった。
ベリオはカエデとは違い、未亜がこの世界に来た時から知っている。そして彼女の最初の頃の姿は、カエデは知り得ないことだ。
ベリオは未亜と知り合った頃の印象は、基本的に押しが弱く、大河の後ろに隠れているように感じた。
それは見た目のことではないし、人と接触するのを……それほど……苦手としているというわけでもない。むしろ未亜は人当たりがいい方だし、普段の大河とのやり取りを見ていると、生活面や兄のいい加減な態度を改めようとしていて、しっかりとした妹に見える。
だが自分から大きなことを決めることができなくて、その全てを大河に任せているようなところがあったように感じるのだ。 
彼女はその頃を思えば考えられないほど格段に成長していた。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.45 )
日時: 2008/01/02 21:58
名前: テン


確かに今回も最初に諦めないと言ったのは大河だ。それだけを見れば、今回も未亜はその兄の選択に乗ったと見えなくもないが、そこには確固たる彼女自身の意思があった。
大河に流されて決めたわけではないと、流されたわけではなく、自らの意思で決めたと顔と声でわかる。

(私は……成長しているのかしら)

このアヴァターに訪れて、ベリオはすでに二年以上が経っているが、彼女ほど成長している自信はなかった。
それでも、

(そんなことはないんじゃないかい?)

そんな声が聞こえた。
それはもう一人のベリオの声。
ああ、そういえばそうだ。
未亜が恭也となのはに出会って成長したというならば、きっと自分は……そしてカエデは、大河と出会たたことで成長した。したはずなのだ。
そして、その彼が諦めてはいない。

「そうね。恭也さんに聞きましょう」
「で、ござるな。もう一度戦うことになったとしても、今度こそ恭也殿たちの真意を」
「はい」

三人は笑い合い、ここに誓った。
もう一度恭也たちと戦うことになっても、聞くことを諦めないと。


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.46 )
日時: 2008/01/03 17:00
名前: テン




リリィは自室のベッドに倒れ込んで、部屋の天上を眺めていた。
彼女は今、ひどく冷静だった。
なぜだか理由はわからない。
だがそれでも冷静に物事が考えられるのだ。
それは、恭也のことでも。


『大河たちはどうした? 救世主候補たち全員に今回の任務はいったはずだぞ』

この言葉が鍵だ。
それはあの時、恭也が助けにきてくれた時に聞いた言葉。
なぜ恭也がそれを知っていた?
確かにリリィは……救世主クラスはあの任務を受けた。だが、それを知っている者は限られている。任務を受けた救世主クラスの者たち、教師であるダリアとダウニー、そして学園長のミュリエル。
救出が任務であるため、極秘とまで言わないが、他の者たちには漏らさないようにと言われていた。
もちろん救世主クラスの者たちは誰にも喋っていないし、それどころではなかった。
おそらく教師たちやミュリエルもそうだ。いや、そもそもこのうちの誰かが、他の誰かに喋っていたとしても、それは結局学園内の誰かでしかないだろう。
たとえ誰か他の生徒や教師がその話を聞いていたとしても、恭也はそれを聞き出す方法がない。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.47 )
日時: 2008/01/03 17:02
名前: テン


恭也ならば学園に侵入するぐらい簡単にやるだろうが、さすがにあの場の会話を聞かれていたということは恐らくないだろう。
この学校に恭也と直接繋がっている者がいるとも思えない。確かに恭也は有名であり、慕われていたが、恭也自身が友好的に接していたのは救世主クラスの者たちだ。繋がりとして求めるなら、むしろ救世主候補たち。その自分たちの手を振り払った以上は、この学園の中で恭也と繋がっている者などいない。いや、リリィにとってはいてほしくないというのが本当の所。それは恭也がその人物を頼ったということだから。
それはまあいい。
同時に口止めしているというのも考えられない。まさかその程度の情報のために、恭也が脅しなどをするとは思えないのだ。
そう、はっきりと救世主クラスがあの任務を受けたという情報は、それほど重要な情報ではない。少なくともリリィはそう思う。もちろん情報としてはだが。
恭也たちが破滅の一員で、最初から救世主候補を狙っていたなら、わざわざリリィをあそこで救出するわけもない。
そんな重要ではない情報も知っていたというのなら、それは誰から聞いたのか。
だがそのとき、リリィは唐突に閃いた。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.48 )
日時: 2008/01/03 17:03
名前: テン


「……もう一人いる……じゃない」

あの任務のことを知っていた人物はもう一人いる。
それは学園の者ではない。

「クレシーダ……王女」

そう、あの任務自体を持ってきた人物だ。
彼女が恭也に味方しているならば、色々なことが繋がってくる。
この世界で何の後ろ盾もない恭也たちがそれでも表に知られずに生活していける、そして活動できる理由。
それは王室という後ろ盾があるから、そのため隠れていることさえできる。
あの任務が救世主クラスに与えられたのを知っていたのもそう。

「まさか……」

恭也がいるのは……王宮。

「だけど……」

もし仮に彼が王宮にいるとして、どうすればいい? さすがに救世主候補といえど、そう簡単に入れてもらえるような場所ではない。
いや、そもそも……

「私はどうしたいのよ」

恭也が王宮にいるとしても、自分自身の考えが決まっていないのに……

だが、そのときあのバカの言葉が頭に浮かんでしまった。

「諦めない……か」

諦めない。
あいつは諦めないと決めた。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.49 )
日時: 2008/01/03 17:05
名前: テン


では、自分は……

「私は……」

一度目を瞑り、自分がどうしたいのかを考えた。
同時に、どうしてこんなにも悩み、恭也に怒りを覚え、力になれないことに無力感を覚えるのか。

「わた……し……は……恭也が……」

本当に今のリリィは冷静で、自分の感情も簡単に見えてしまって……

「恭也……」

それがわかってしまったら、もうダメだった。

「私は……」

リリィはまたも呟き、だがすぐさまベッドの上から降りると、窓際にかけてあった外套を羽織った。

リリィが自分の往きたい道を……理解した時だった。
それはもしかしたら、色々なものを裏切る道かもしれない。
それでも、もうリリィは止まるは気はなく、諦めるつもりもなかった。



メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.50 )
日時: 2008/01/03 17:06
名前: テン




大河は学園の北に位置する森にいた。ここで恭也は鍛錬をしていたというが、学園の敷地の一部でありながら、この森は広大で彼がどこで鍛錬をしていたのかは正確にはわからない。
大河はその森の中を暫く歩き、一際大きい木の前に立つと、その幹を軽く拳で叩いた。

「クソッ……」

 最初はただ軽く叩く程度だった。

「クソッ!」

だがそれはじょじょに強く、本気の力になっていく。
何度も何度も木を殴りつける大河。
召喚器を持っていれば、幹に傷をつけ、陥没させるぐらいの力があるかもしれないが、それを持たない今は、傷つくのは大河の拳だけだ。

「何が……何が殺すだ!!」

あの時恭也は殺すと言った。

「なら、なんであんなこと言う必要があんだよ!?」

冷静になって、恭也の言葉を思い出してみれば、それは矛盾だらけだった。
殺すと言いながら、

「なんで俺は生きてるんだよ!」

あの時、四連の斬撃。
峰ではなく刃で斬っていたなら、大河もカエデも死んでいたのだ。


わかってる。
わかってるのだ。
最後の言葉。
最後の決別で理解していた。
あの時は静かに別れることができた。だけど、今はもう無理だ。


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.51 )
日時: 2008/01/03 17:08
名前: テン


だがその選択とて、

「お前は、これを選ばせたかったんだろう」

自分に仲間たちを引っ張っていけと。
仲間を守れと。
恭也はそれを大河に選ばせたかった。そして実際に大河は選んだ。恭也を止めるよりも、恭也の理由を聞くよりも、それを選んだ。
その選択に後悔はない。
だが、

「だけど俺はお前の望むとおりに動くつもりなんてないぜ」

まだだ。
まだ諦めてなどなやらない。

「俺たちの道は、まだ完全に別れたわけじゃない。絶対にそれを思い知らせてやるよ!」

そう誓いを込めて、大河はもう一度木を殴りつけた。



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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.52 )
日時: 2008/01/03 17:09
名前: テン




「マスター……」

レティアは何もない次元の狭間に浮いていた。その傷ついた身体を動かすこともできずに。
もうあれからそれなりの時間を回復に費やしたが、力を使わずに身体を癒すには時間が必要だった。

勝てない……ということはなかった。
あの不破恭也という存在を倒すことも、レティアには不可能ではなかった。

「できない……」

だが、それは同時に実行できない。
おそらくできたとしても、何とか相打ちに持っていくのが精一杯だ。
自分の全てを使って、その後一切の行動ができなくなるぐらいのページという力を使って何とか勝てるか、もしくは本当の相打ちとなるか、その程度の可能性。
だから、それはできない。まだレティアは死ぬわけにもいかない。『また』全ての力を失うわけにもいかない。

そもそも彼と会ったのは偶然だった。
少しばかりの確認のために、レティアがあのアヴァターの広野に現れた時、彼はすでにあの場にいた。
レティアには偶然に見えた。だが、確固たる目的があった以上、もしかしたら待ち構えていたのかもしれない。
そして結局戦闘となり、ほとんど何もできずに全身を斬り刻まれた。


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.53 )
日時: 2008/01/03 17:12
名前: テン

彼が強すぎた。ただそれだけ。普通の状態で勝てる相手ではない。
そして、

「……あのとき、躊躇った」

レティアは躊躇ったのだ。
射抜を使った時、腹部を狙ったわけではなかった。もちろん紙吹雪が、逆に自分の邪魔になったが、それでも心臓を狙うことはできたはずだ。
だが、その容姿故に……彼女の主の可能性であるが故に、レティアは不破恭也を殺すことを躊躇ったのだ。その躊躇が心臓ではなく、腹部へと攻撃を向かわせた。
彼女の甘さだ。

「……はあ、いつかこれが絶対に後に尾を引くわね」

レティアは本当に深々とため息を吐き、悔しそうな表情をとった。
不破恭也の目的は何となくわかる。記憶を手に入れたかったのも、おそらくは赤の精か白の精を味方につけるためと、救世主誕生のために危険性を潰すため。

「ごめんなさい……マスター」

しばらくは、この傷を癒すために動けそうになかった。だから、主のために行動することができない。
報せることさえもできない。
それを思って、レティアは次元の狭間に漂いながら、主へと謝罪した。




大河編 三十章 終
メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.54 )
日時: 2008/01/03 17:13
名前: テン







炎の矢が、氷の矢が、光の矢が、雷の矢が、伸び、乱れ、爆ぜ……狂ったように辺りを蹂躙しながら舞う。
それを正面に晒された少女は、笑みを浮かべたままその手に握るダガーを掲げ、

「インフィニティ」

その名を呼ぶと同時に、その刀身が伸びたダガー……とも呼べないものを、やはりまるで狂ったように振るい、乱舞させた。
それは長大な銀線を作り出し、矢を叩き落とし、砕き、無へと帰す。

「っ……」

それを見せつけられ、なのはは下唇を僅かに噛んだ。
目の前の少女……エリカは余裕を見せていた。わざわざなのはに魔法陣を描く時間を与えている。そして、それは余裕の態度が示す通りに全て叩き潰されたのだ。
だがそれで諦めるほど、なのははまだ人生に達観してはいなかった。

(おにーちゃんの剣ほど速くない。おにーちゃんみたいに複雑な動きをしない。おにーちゃんみたいに……)

何より目の前の少女は、なのはの兄と比べると戦い方が稚拙だった。ただの力任せにすぎない。
だから、

(怖くない……)

なのはは覚えている。恭也と戦った時の、試合とは言え恭也に剣を向けられた時の怖さを。洗練された戦闘者の戦い方を。


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.55 )
日時: 2008/01/03 17:19
名前: テン


だからあの時のような怖さを感じさせない彼女は脅威ではなかった。
その経験があったからこそ、なのはは今までの実戦も潜り抜けてくることができたのだから。
何よりなのはが放っている疑似魔法とて、先ほどからスピード重視の小技だ。
まだ戦いは始まったばかりなのだ。





第四十三章 なのはの戦い 二





なのはは徹底した援護役、一対一では戦えないと彼女自身は思っている。そしてエリカも戦闘方法からして天敵と言っていもいい相手だ。
だがなのはは、決して一対一の戦い方ができないわけではない。
実際の所、なのはは救世主候補の中でも席次は中位……ほぼ真ん中に位置している。
席次を決める試合は一対一なのにも関わらず、である。さらに席次を決める試験とは関係のない授業としての模擬戦を見ても、なのははそれなりの戦績を修めていた。
席次には関係のないものではあるが、大河に勝利したこともある。
大河に勝てたのははっきりと相性の問題だった。彼は直線では速いが、敏捷性においてはなのはが上回る。その敏捷性で大河の攻撃をかわし、さらに隙をついて攻撃を続けての勝利だった。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.56 )
日時: 2008/01/03 17:20
名前: テン


逆に同じく前衛であるカエデには敗北している。やはりこれも相性の問題が大きい。
今の相手であるエリカは、スピード以外のもので相性が最悪だった。
だが、相性だけであるならば覆せるものをなのはは所持していた。

それは独創的な戦闘法。型に填らない戦い方。なのはだけの戦い方。
疑似魔法という召喚器の特性と、自身の魔法の組み合わせ。動き方などなのはは独自の戦闘法を作り出している。
疑似魔法も、正統な魔法に白琴の魔力を込める方法も、それらを組み合わせた戦闘法は既存にはないものだ。だからこそ対処も難しい。
そして何より、その天性の策士たる動き。やはりそれも独創的であり、戦闘経験などの知識からくる自らの戦闘理論によって策を作り出す恭也とはまた違った考え方。
何より恐ろしいのは、なのははそれを深く考えることなく自然体で行うことにある。
それらが一対一の戦闘も可能にさせる。
もっとも天性のもので自然に動いていることであり、同時に自然に考えていることであるからこそ、なのは自身はその自らの才能に気付いていないし、気付いたとしてもそれを喜ぶことはないだろう。


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.57 )
日時: 2008/01/03 17:21
名前: テン



なのはが今すべきことは一つ。相手の謎……攻撃を受けても無傷でいられる理由を突き止めること。

(……まずは、私の攻撃を当てないと)

そう考えた時には、なのはの身体は自然に動いていた。策を考えることもなく、自然とやるべきことのために身体を動かしているのだ。
余裕を見せ、攻撃を仕掛けてこないエリカに向かわせる幾つもの魔法陣を描き、その合間で脳内に構成式を描き、呪文を詠唱する。
同時に魔法陣を解放し、放たれる複数の疑似魔法。
エリカはそれを今度は刀身を伸ばすことなく、直撃しそうなものだけ選ぶなどということはせず、向かってくるほとんどの矢を叩き落としていく。それでも捌ききれないものは、その左手に持つ盾で完全に防いでいた。
やはりそれは彼女の可憐な姿には似合わない、稚拙で無骨な技などない力業。
おそらくは彼女も同じなのだ。救世主クラスの大半の者たちと同じく、戦闘をする下地などなく、召喚器と自身の特性のみで戦っている。
だが、

(少しだけ羨ましいかな)

場違いなことだと、同時に兄を汚す考えだとわかりながらも、エリカのその姿がなのはには少し羨ましかった。
兄と同じく、近接戦で戦える彼女が羨ましいと。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.58 )
日時: 2008/01/03 17:23
名前: テン

自分はそれを求めるほど欲張りではないはずだ。だが、それでも思ってしまう。どうしても、思ってしまう。
もし、もし自分の白琴が形状通りの武器であったなら、ああして自分も戦っていたのかもしれない。それは兄の隣で。
敵として、召喚器使いと相対したからこそ、そんな考えが浮かんだ。

(ごめんね、おにーちゃん、白琴)

しかしそれもすぐに霧散する。
その考えは、兄の今までを汚すことであると同時に、白琴を非難しているようなものだ。
だから兄に、白琴……自らの相棒に謝罪した
それからすぐになのはは思考をうち切る。


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.59 )
日時: 2008/01/03 17:24
名前: テン


一歩も動かないエリカを中心に、辺りを縦横無尽に駆け、至る場所から疑似魔法と正規の魔法を繰り出していく。
エリカは笑ったままそれを叩き潰す。
それを見せつけられても、もうなのはが表情を変えることはなかった。
二線で描かれたの魔法陣では、どうやら簡単に防がれてしまうようだ。だが、別にそれは構わない。

なのはは駆けるのを止め、足を止めた。
足を止めたなのはに、エリカはやはり余裕の笑みを崩さずに問いかける。

「もう終わり?」
「うん、まあ、何となく今の攻撃じゃ通じないってわかったから。攻撃の速さ、防御の速さだとちょっと敵わないかな」
「へー、じゃあ負けを認めてここで死んでくれるのかしら?」
「それは無理。おにーちゃんを傷つけるのが目的で私を殺すって言うなら、私はどんなことがあっても抗うよ」

エリカの軽口に、なのはも内容の割り軽い口調で返す。
そのエリカに向かって、なのはは少しだけ笑った。

「知ってる?」
「何をかしら?」
「戦いに卑怯なんて言葉はないんだよ」
「何を言って……」

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.60 )
日時: 2008/01/03 17:25
名前: テン


なのはの言う意味がわからず、エリカは顔を顰めたが、自らの背後から響いてくる風を切る音を確かに聞いた。彼女はすぐに目を見開いてその視線をなのはから外し、背後を振り向く。
そこには風を切る音を響かせて、一直線にエリカへと向かっていく一陣の光。

「なっ!?」

その光の矢はエリカを完全に捉えていた。そして彼女は振り返ったばかりで、半身を開き中途半端な体勢。いかに取回しやすいダガーでも、この背後からの攻撃には反応できなかった。
そして、

「エターナル!」

エリカは初めて焦りの色を含ませて、その名を叫ぶ。
それと同時にキン、と響くような音が聞こえた。そしてエリカの目の前に、日の光を反射し、僅かに輝く透明なガラスのようなものが現れるのをなのはは確かに見た。
そのガラスの壁は迫ってきた光の矢を弾き、次の瞬間には割れるようにして消えていった。
エリカは息を吐こうとしたが、それをすぐさま止め、再びなのはへと向き直ると余裕の笑みを浮かべ直す。

「残念だったわね」

エリカの笑みに対し、なのはもやはり笑う。

「そんなことないよ」

その言葉は決して負け惜しみではない。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.61 )
日時: 2008/01/03 17:36
名前: テン


なのはは、元よりあれで決められるとは思っていなかった。もちろん決められていたならその方が良かったが、防がれたのならそれはそれで良かった。あのダガーと盾を『直接』使わずに防ぐ所が見られれば。

「まさか背後から攻撃が来るなんて」

あの攻撃は、なのはが走り回っていた際に隠していたもの。ただ一つだけを隠し、さらに動き回って、中心にいた彼女を少しずつ回転させ、隠した魔法陣が背後に回るようにしていったのだ。
仲間もいないため、巻き込まれる心配もないのでわざわざ視覚阻害の魔法を打ち消す必要もなく、そのまま疑似魔法を撃ち出した。もちろんなのはにも見えないが、その辺りは周りに点在する柱を使って目測を出していた。

「言ったでしょ? これは試合じゃないんだもん。戦いに卑怯なんて言葉はないよ。特にあなたは私を殺そうとしてるんだし」
「背後から攻撃なんてしそうには見えなかったけど、見かけに寄らないみたいね」
「戦うこと自体好きじゃないし、こういう戦い方も苦手で、私もしたくはないけど……でもしたくないなんて甘えてられない」
メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.62 )
日時: 2008/01/03 17:27
名前: テン


その甘えのしわ寄せが兄に回るかもしれない。だからそんなことなのはにはできないし、戦い方など選んでいられない。

なのはは視線をずらし、エリカが左手に持つ透明な盾へと向けた。

「今のがそっちの召喚器の能力、なの?」

あのガラスのような壁が、今まで直撃するはずの攻撃を防いできたのだろう。
炎を当てた時に気付けなかったのは、攻撃自体が大きすぎて壁を包み込んでしまったせいだ。今回は爆発するようなものではなかったので、それがはっきりと見えた。

「そうよ」
「簡単に答えちゃうんだ」

質問はしたが、まさかこうも簡単に肯定されるとも思っていなかった。もっとも、否定されたとしても、彼女が叫んだ名前を聞いたなのははそれを信じなかっただろうが。
もちろん内心では驚いている。あれが召喚器であることも半信半疑であったのだ。
盾型の召喚器など授業でも聞いたことがない。召喚器は謎が多いものであるが、インテリジェンス『ウェポン』と呼ばれているだけに、防具型の召喚器など異質もいい所だ。
召喚器を二つ持つというのもさらなる異質。

メンテ

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