このスレッドはロックされています。記事の閲覧のみとなります。
トップページ > 記事閲覧
黒衣(仮投稿)
日時: 2008/05/15 06:31
名前: テン

浩さんに許可を頂きましたので、暫くの間黒衣を仮投稿という形でこちらに投稿させて頂きたいと思います。

あくまで仮であり、落ち着いたらいつかは今までどうりに投稿したいとは思っていますので。
これも携帯からの投稿なので、少々見づらいかもしれませんがよろしくお願いします。
一章を分割して送っていきます。


目次

>>1-27 恭也編 四十二章

>>54-91 恭也編 四十三章

>>122-156 恭也編 四十四章

>>197-227 恭也編 四十五章

>>228-255 恭也編 四十六章

>>256-268 恭也編 四十七章

>>269-288 恭也編 四十八章

>>289-317 恭也編 四十九章

>>318-330 恭也編 五十章

>>331-340 恭也編 五十一章

>>351-367 恭也編 五十二章

>>368-382 恭也編 五十三章

>>383-394 恭也編 五十四章

>>414-433 恭也編 五十五章

>>434-457 恭也編 五十六章

>>458 恭也編 五十七章

>>459-480 恭也編 五十八章

>>481-503 恭也編 五十九章

>>504-532 恭也編 六十章
>>565-587 恭也編 六十一章

>>28-53 大河編 三十章

>>92-121 大河編 三十一章

>>157-196 大河編 三十二章

>>395-413 大河編 三十三章

>>341-350 外伝
メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |

Re: 黒衣(仮投稿) ( No.83 )
日時: 2008/01/09 07:41
名前: テン


「おにー……ちゃん……」

首の後ろから聞こえる妹の寝言を聞き、恭也は苦笑する。

「ああ、兄はここにいるぞ」

本当にこの感情は何と言っていいのか……

「ずっと、お前の傍にいる」
「だい……すきだよ」
「ああ。俺も大好きだぞ」

恭也は再び苦笑のような微笑を見せ、なのはへと本当に優しい声音で告げた。
そして、ゆっくりとした歩調で、仲間たちが待つ村の外へと歩いていった。




四十三章 終
メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.84 )
日時: 2008/01/11 19:56
名前: テン




これは四十三章で省いた恭也の戦いです。
本編にはあまり関係ありませんし、ここでしか公開しません。
さらにほぼ戦闘一色なので読む価値は薄いですし、重要な話でもありません。
戦闘はとくに好きじゃない。下手な戦闘なんて読んでも仕方ない。という方はスルーして下さい。






「今は暴れさせてもらうぞ……!」

宣言して、恭也は二刀を抜刀し、紅い小太刀に黒い炎を纏わせた。



だが恭也はその炎を纏わせた紅き剣をすぐさま鞘に戻す。
そして、

「虚切!」

次の抜刀と共に、黒き閃光の刃が駆けた。
まるで今の恭也の心情を表しているかのように、それは冷たく、熱く、猛々しく、荒々しく、淡々と、酷薄に突き進む。
元々恭也は霊力の制御に長けていないが、それは今まで以上に安定していない。
だが決して消えず、突き進むたびにその刃をより強固にしていく。
その黒き暴虐の刃に切り刻まれた魔物たちの四肢が、内部が、頭部が宙に飛び、辺りに血の雨を降らした。
それは魔物の血。緑の血もあり、青き血もあれば、蒼き血もあり……様々な色が混じり合い、人の血が作り出す世界よりも凄惨な地獄絵図を書き上げた。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.85 )
日時: 2008/01/11 19:57
名前: テン


そして自らが作り出した地獄の直中へと、恭也は駆け込んでいく。
一瞬で神速へと入る。

きっと先ほどまでなのはもいたであろう世界。
なのはに苦痛を与えた原因の一つ。
その中で、恭也はさらなる暴虐の刃と化す。

舞う剣刃。

自身そのものを刃と化したかのように、それは無慈悲に魔物たちを切り裂き、虐殺していく。
魔物の頭が、腕が、足が、尾が、羽根が飛ぶ。
魔物たちは何が起こったかもわからずに、その嵐に晒されていた。

それは先ほど同じく魔物の群を殲滅した時とはまるで違う。
あの時のような正確さなどない。技を選ばない。倒す相手など選ばない。戦う術など選ばない。何もかも捨てた。
今の恭也は御神の剣士ではなかった。不破の剣士でもなかった。
それは羅刹か修羅か、それとも新たな悪鬼か鬼神か。
もしかしたら高町恭也ですらないのかもしれない。

神速が解ける。
だが、それでも恭也は止まらない。

「覇ぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!」

まるで地獄の底から響いてくるかのような雄叫び。
普段の恭也ならば決して上げない強烈な叫びだった。
それはまさしく、宣言の通りに暴れ回るという意思表示。

「殺ぁっ!」

剣刃が閃く。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.86 )
日時: 2008/01/11 19:59
名前: テン


それは堅い鱗を持つ化け物を切り裂いた。堅いもの切り裂いた反動が腕にくる。

技を選ばない。身体にかかる負荷など知ったことではない。

「ウォォォォォォォォォォォォン!!」

同じく雄叫びを上げる人を模した狼に頬を切り裂かれ、血が飛び散る。

攻撃を一々かわさない。身体の傷など知ったことではない。

恭也は獣のように殺気を剥き出しにして駆け回る。

「牙ぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

魔物の爪が、牙が、剣が、吐き出す炎が恭也の身体を傷つける。
だが恭也は血を流すたびに、その瞳に殺意を溜めていく。
ただ獲物を屠る獣として……

虎切、虎乱、射抜、花菱、雷徹、薙旋……

普段救世主候補たちとの模擬戦でも使わないような奥義の大盤振る舞い。
それとて使う場所も、相手も選ばず、いつもの恭也からすれば考えられない使い方。
それを受けた魔物たちが切り裂かれ、八つ裂きにされ、貫かれ、微塵にされ、砕かれ、寸断され、身体の一部が、身体の内部が飛ぶ。

「うおぉぉぉぉおぉぉぉおおぉぉぉぉおぉぉぉ!!」

再びの神速。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.87 )
日時: 2008/01/11 20:00
名前: テン


今日三度目の神速。

その中で、恭也は近くにいた手近な魔物に小太刀を握ったままの拳を叩きつける。

人間の身体にはリミッターがつけられている。神速とはそれを解放する手段でもある。
だが、何も無意味にリミッターが存在するわけではない。
人間につけられたリミッターは、その身体を守るために存在する。筋肉を、内臓を、皮膚を……

リミッターが解除された状態で放たれた恭也の拳は、小太刀を握っていたこともあり、それはまるで砲丸の如き強烈な一撃であった。
それを撃ち当てられた魔物は、とくに堅い皮膚を持つわけでもなく、その顔は鈍い音を立て、原型がわからないほど崩れた。
しかし、それは恭也の拳も同じこと。
リミッターという身体の防御手段をなくして放たれたそれによって、指の皮膚は裂け、血が滴り、骨が軋む。
しかし、

(知ったことか!)

神速の中では聞こえない雄叫びを上げながら、同じく心の中で恭也は叫ぶ。

なのはは……なのははきっと辛かっただろう。
神速に適用していない身体で、それを使い、その身体が崩壊してしまいかねないほどの激痛を受け止めたはずだ。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.88 )
日時: 2008/01/11 20:01
名前: テン


怒りがあった。
神速を使ったなのはに。
神速を使わざるを得ない状況になっても自分を呼ばなかったなのはに。
そんな彼女に神速を使わせたなのはの敵に。
その戦いに間に合わなかった自分に。

悦びがあった。
意地を通すほど……成長したなのはに。
勝利したかはわからぬが、それでも一人で戦い抜いたなのはに。
そんな意地を通してでも戦わなければならないなのはの敵が現れたことに。
自分が間に合わなかったが故に、その状況が作られたことに。

哀しみがあった。
戦いや諍いが嫌いであるなのはが、それでも戦いを選んでしまったことに。
相手が人であっただろうに、それでも戦ってしまったなのはに。
そんななのはの敵が現れてしまったことに。
自分が間に合わなかったが故に、なのはが傷ついてしまったことに。

寂しさがあった。
成長したが故に、戦いを選んでしまったなのはに。
自分を呼ばず、頼らず戦ったなのはに。
そんな彼女が戦わなければならないなのはの敵が現れたことに。
自分が間に合わなかったことに。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.89 )
日時: 2008/01/11 20:02
名前: テン


それら全てが恭也の本心。
故に荒れる。
故に恭也は痛みを欲し、殺戮の衝動に任せる。
故に痛みなど知ったこどてはなく、それどころかこの激情を溶かすには必要なもの。

舞う舞う舞う舞う舞う舞う舞う舞う。

剣刃が舞う。
魔物の血液が舞う。
剣刃が舞う。
魔物の頭部が舞う。
剣刃が舞う。
魔物の四肢が舞う。
剣刃が舞う。
魔物の内部が舞う。
剣刃が舞う。
魔物の一部が舞う。
剣刃が舞う。
恭也の血肉が舞う。
剣刃が舞う。
恭也の激情が……舞った。




いつのまにか戦いは……虐殺は終わっていた。

「はあ! はあ! はあ!」

神速の複数回使用と、全てを無視しての戦い方により、体力の限界であった恭也は息切れ、紅月を杖代わりにし、膝を着いて座っていた。
今まで忘れていた体中の傷も疼き出す。

「はあ……」

それは息切れとも、ため息とも取れる吐息であった。

「未熟……だな」

恭也は周りにいた骸の山を見渡し、そして自らの傷から痛みを感じながら呟いた。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.90 )
日時: 2008/01/11 20:04
名前: テン

だが同時に、

「よくやったものだ」

喉を鳴らして笑った。
冷静であったなら、一人でこれだけの魔物を斬り倒せただろうか。
可能、不可能で言えば可能だが、もっと致命的な状況に陥っていたかもしれない。
冷静であったなら、後のことなどを考えて、ここまで無理なことはしなかっただろう。だが逆にそれが窮地に陥らせたかもしれない。

「八景、紅月、すまん」

恭也は己の愛刀に謝罪する。
無理な使い方をしすぎた。正直刀身はガタガタだ。八景は多少刃こぼれしているし、召喚器並に頑丈であると言う紅月も目釘が欠けたのか緩んだのか、柄から刀身が取れかかっていた。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.91 )
日時: 2008/01/11 20:06
名前: テン

二つとも手入れに出さなければまずい状態だ。
刀匠がこの世界にもいて助かった。

「ふう……」

今度はただの息を整える吐息。
そして恭也は小太刀を何とか鞘に戻し、立ち上がってなのはの元に向かった。
あれほど激戦が行われていたというのに、なのはが目を覚ます様子はなかった。それだけ身体に負担がかかっているということなのだろう。
それでも今はその表情に苦悶の色はなく、恭也は安堵の息を吐き、自身の身体に負担がかからないように、そして自分の血がなのはを汚さないように注意して、彼女を背負った。

「帰ろう、なのは」

声を発した恭也に、先ほどまでの激情はもうなかった。



メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.92 )
日時: 2008/02/06 16:02
名前: テン







「そっか、大河君が何とかまとめてるんだ」

知佳は今まで目を通していた本をテーブルに置いてから言うと、同じく目の前で知佳以上のスピードで書物を読んでいたクレアは頷いて返す。

「うむ。ダリアからの報告からするとそのようだ」

未だ恭也は本調子ではなく、ベッドの上。その間二人は情報収集に戻り、こうして王宮にある大量の書物を読みあさっていた。
そんな中で、クレアがダリアに聞いていた今現在の救世主クラスの動向を報告したのだ。
二人の目の前に、耕介は紅茶と少しばかりの菓子類を置く。
ここにいる者たちが集まると、どうしても聞かれてはいけない会話が出ることがあるため、他の給仕たちを呼ぶ訳にはいかない。そのためこういった仕事を耕介は自ら率先してやるようになっていた。

「まあ、大河君は妙なカリスマ性があるみたいだからなあ」
「それは恭也もではないか?」

そのクレアの言葉を聞いて、知佳と耕介……そして耕介の横にフワフワと浮いていた十六夜は思わず苦笑した。

「カリスマって言っても間違いはないのかもしれないけど、でも私は恭也君のはカリスマとはまた違うと思うな」

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.93 )
日時: 2008/02/06 16:09
名前: テン

そんな三人の態度と、知佳の言葉にクレアはキョトンとした年相応の表情で小首を傾げる。
恭也の周りには多くの人が集まっているし、慕われている。それはカリスマと言って間違いないのではないかとクレアは思っているのだ。
そのクレアを見ながら、耕介は二人と同じテーブルに座る。

「そうだなぁ、大河君は所謂革命家や王様にでもなっていれば凄いことになりそうなカリスマ性かな」
「王はまたあれとして、革命家?」
「彼の行動はどんなことをするのか期待を持たせるし、それを見たいと思わせるんだ。そしてその力になりたいって思わせ、言動も半ば勢いだけだったとしても、信じてしまわせものがある。王様というのも、どちらかというと平和な国を治める王様じゃなくて、激動の国を治める王様に向いてるかもしれない」

耕介は言い終わると、その横にやはり浮いていた十六夜が、式服の袂で口元を隠しながら続けた。

「対して恭也様の周りにも多くの人が集まりますが、決して目立つことはしません。いえ、自ら目立とうとしません。それをまとめようともしないのです。ただ中心にいるだけ。というよりも、恭也様自身は中心にいることすら気付いていません」

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.94 )
日時: 2008/02/06 16:10
名前: テン


その十六夜の言葉に、知佳は一度頷いて耕介が出してくれた紅茶に口をつけてから言う。

「それはそうだよね、別に恭也君が集めたわけじゃないんだもん。ただみんな安心できるから、一緒にいると楽しいから、そして傍にいたいから、そんな感じでみんな恭也君の周りに集まるんだ。別に彼に何かを求めてるわけでも、何かをしてほしいって思うわけでもないし、何かを期待してるわけでもないの」
「だからきっとカリスマとはまた違う。恭也君が恭也君であるだけで、俺たちは恭也君に協力したいって思うんだ。そして恭也君自身はそれを望まない」

行動や言動、人柄だけに惹かれるわけじゃない。
ただ彼の傍にいるのがとても嬉しくて、楽しくて、安心できるだけで、その向かう先に何かを求めているわけではない。だからきっとカリスマとは違うのだと三人は語った。

「カリスマと言っても間違いはないのかもしれないけど、何となく違うんだ」
「……なるほど、私も何となくではあるがわかる」
「うん」

ここにいる全員が、恭也に何かを求めて集まったわけではない。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.95 )
日時: 2008/02/06 16:13
名前: テン


クレアはアヴァターを守るためという利害が一致してるからこその関係にも見えるかもしれないが、決してそれだけではない。アヴァターに関係ないことであろうとも、恭也のためならば協力することを惜しむことはないだろう。
恭也という存在は、彼らにとってそういうものではない。
あえて言うならば……

「というわけで、私たちの『居場所』を守るために頑張ろう」

知佳がそんなことを言うと、その場にいた全員が笑い合い、そして確かに頷いた。
全員が知佳の言う『居場所』に含まれる様々なものを理解したが故に。







第三十一章






「そうか……」
「恭也の望んだ通りであろう?」
「まあ、な」

恭也はベッドの上から上半身だけを起こして、そのベッドの隣にある椅子に座ったクレアへと曖昧な返事をする。

クレアはダリアから聞いた救世主候補たちの現状を恭也にも語った。
だが恭也はそれを聞いても驚くことはなく、ただ頷いて返しただけであった。
なぜなら恭也はこうなるようにあの時大河たちと戦ったのだから。そして、聡いクレアも正しくそれを理解している。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.96 )
日時: 2008/02/06 16:16
名前: テン


「形からすればお前たちの……いや、恭也の敗北だが、結果はお前の信念の一人勝ちかもしれぬな」

試合に負けて、勝負に勝ったという形。
望んだ通りの結果を恭也の守りたいという信念が手繰り寄せたと、クレアは僅かに苦笑して告げると、彼は逆に顔を顰めた。
そのあまり納得いかなそうな表情を見て、クレアは眉を寄せる。

「どうしたのだ?」

恭也はクレアの問いに答えず、ただ苦く笑うだけ。

「信念か」

確かにあの時は恭也は、大河たちへと自分たちの信念とお前たちの信念、どちらが上なのかと言った。
大河たちはわからないが、恭也たちは自分たちが往く道のために、それを貫くために彼らと戦った。ただその道を進むという信念と言っていいものだった。
恭也の、なのはの、知佳の、耕介の、十六夜の、久遠の……あの場にいなかったクレアの。
しかし今回のような結果になったのは、むしろ恭也の信念の結果だというのは、おそらくクレアの言うとおり。恭也の守りたいという信念がこの結果を手繰り寄せた。
恭也が望んだ通りの行動を大河が起こした。
だが、


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.97 )
日時: 2008/02/06 16:21
名前: テン


「信念、と言えば聞こえはいいのかもしれないが、他人にも影響を与えるのなら、言いかえればそれは我が儘の押しつけにすぎん。質の悪い宗教の勧誘と変わらない。むしろそれよりもよっぽど質が悪い」

恭也は守るという信念のもと敵を斬り捨てる。
自分の守りたい者を傷つけるというのなら、その傷つけようとする者の主張が正しいものであっても、恭也はそれを殺してでも止めるだろう。
そもそも恭也は不破であり、不破はまだ事も起こしていない者たちを、まだありえもしない罪で断罪し、斬首の刑とするのだ。
それもやはり信念の元にである。
恨み言を受けるのは覚悟の上だが、やはりそれに巻き込まれた者はたまったものではない。
今回の大河たちが良い例だ。
大河たちは理由も何もわかるぬままに戦わされ、そして大河は恭也の考えを無理矢理押し付けられたのだから。
そしてそれは今まで恭也に守られた者たちも同じこと。
守られる者も、自身を守るために恭也が傷つく姿を見て、平気でいられるわけがない。それは守られる者にも心理的な負担を押し付けているのだ。恭也の信念を押し付けられた結果故に。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.98 )
日時: 2008/02/06 16:23
名前: テン


これから恭也が……恭也たちが往こうとする道もまた、決して正しいだけの道ではない。その道を否定しようとする者があれば、それが正しいと思えても、恭也たちはそれを退ける。
相手の主張を、信念を無視する。
それはやはり言いかえれば押しつけで、自分勝手で、我が儘なものでしかない。
人の考えは無限にあり、どれも正しくて、どれも間違っている。
恭也たちが往こうとする道が、信念が決して正しいわけではないのだ。

恭也の言葉を聞き、クレアは苦笑する。

「それを自身で理解しているだけ恭也はマシだ。信念を貫き通す、芯を通す、などということを言う輩に限って、そんなことすら理解していない。そういう輩は信念が絶対に正しいわけではないのに、自らのそれが唯一無二の真実であると疑わない。正しく、気高く、綺麗で、強く見える信念でも、他者の言葉を受け付けないそれは、やはり自分勝手、我が儘という言葉を言いかえているだけかもしれんな。くくっ、信念というのは確かに質が悪い」

政治という世界に立っているため、その手の信念を持つ者に心当たりがあるのか、クレアは歳とは不相応な『大人』の笑みを浮かべた。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.99 )
日時: 2008/02/06 16:25
名前: テン


しかしそれもすぐに元へと戻り、真剣な表情を恭也へと向ける。

「だが、私にもある。譲れないものがな。それが信念というのならそうだし、自分勝手で我が儘なものだと言われても否定はしない」

このアヴァターを、何よりこのアヴァターに住む人々を守りたいと願う彼女の想いも、そのための行動も信念と言える。
その信念はきっと美しいものに、大きな信念を持たぬ者からすれば気高いものに見えるのかもしれない。
だが、それを拒む者も確かに存在し、邪魔だと思う者もやはり存在するだろう。重いと思う者もいるかもしれない。
そういう者たちからすれば、クレアのその信念は自分勝手で我が儘な代物にしか見えないことだろう。

「されど盲目的にそれを正しいとは思っていない」

だがクレアは決して、自分のその信念が絶対に正しいものとも、美しいものだとも思っていない。
なぜなら、いずれ切り捨てるものが出てくるとわかっているから。
アヴァターに住む民を守るために、いつかその民を切り捨てる時がくる。大を助けるために、小を見捨てるようになる。それが上に立つ者としての行動でもあった。
言ってしまえば今回の恭也たちの行動に近い。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.100 )
日時: 2008/02/06 16:29
名前: テン


恭也たちは今回、より多くの大切な人たちを守るために大河たちを切り捨てた。大切な者たちに優先順位をつけた。厳密には違うのかもしれないが、そう取ることもできるのだ。
切り捨てられた方は、その信念の犠牲になったにすぎない。

「今回の件の結果が俺の信念のためだと言うなら、それをやはり大河に、それにクレア……俺の勝手を、我が儘をお前たちへと押し付けたにすぎない」
「お前が怪我をしたのは、そうなのだろうな。大河たちへの押し付け、私たちにお前の心配させ、負担をかけさせ、様々押し付けた。だが……」

クレアはやはり大人の笑顔を浮かべ、

「謝るでないぞ」
「ああ」

許しを得るつもりは恭也もない。
なぜなら、

「それが信念を、我が儘を、自分勝手に押し付ける者の責任だろうからな。背負うべきもので、許されるものではない」

信念を押し通すなら、自分勝手に、我が儘に進むのならば、それを理解しているならば、謝るわけにはいかない。
謝ってしまえば、もう進むことはできなくなるから。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.101 )
日時: 2008/02/13 18:07
名前: テン


それから恭也は、ベッドの横に備え付けてあるテーブルの上に用意されていたお茶が注がれた湯飲みを取り、一口飲んでから再び横目でクレアを見る。

「で、何か進展はあったか?」

恭也もクレアと知佳が色々と調べていることを知っている。それで何かわかったことはあったかと聞いた。
だが、クレアは疲れたように深く息を吐く。

「破滅については正直に言えばわからん。破滅に操られた魔物百万だとか、破滅に魅入られた人間が五十万だとか、破滅と契約した獣人が十万だとか、書物によってバラバラなのだ」
「誇張もあるだろう」
「無論だ。だが、どれかでも真実であったなら?」

その問いに、恭也は答えることができなかった。
いや、答えなど一つしかない。

「正直、そんな軍勢と戦えば王国軍では勝機は薄い」
「そうだな」

どれか一つでも真実であったなら、それらの軍勢に勝つのは至難極まる。
魔物と獣人ではまず身体的なスペックが違いすぎるし、人間であればその数で破れる。
こちらは防衛しなければならない場所が多々あるのだから、一カ所に戦力を置けないのだ。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.102 )
日時: 2008/02/13 18:09
名前: テン


「恭也、もし同時に百人と戦わなければならなくなった時、恭也ならばどうする?」

クレアのそれは、おそらくその彼我戦力差を考えて質問しているのだろう。何か参考にはならないかと。

「場所や状況による」
「場所はわかるとして、状況とは?」
「どんな敵なのか、敵の配置、敵の武器の種類、その他にも色々とな。もちろん見えているだけの分でいい」

そう恭也が説明すると、クレアは腕を組んで考える仕草をとるが、すぐに決まったらしい。

「場所は何もない平野。敵は王国軍の一個中隊」

王国軍一中隊。これは一小隊十人からなる兵士たち合計九小隊と魔導士で固められた一小隊、それをまとめる隊長、副隊長などの騎士や他の人員を含め、合計百余名。

「武器は恭也が知る通り。敵は恭也の周りを囲み、完全に包囲している、だとどうだ?」

そんな状況や敵を聞かされ、恭也はさして悩むこともなく答えを出す。

「人員が薄い場所を狙い、その後そこから逃げる」
「逃げる、のか?」
「ああ」

本来ならば包囲される前に逃げるだろうが、とも恭也は続けた。

「むう、しかし恭也ならば百人を相手にしても何とかなりそうな気もするが」

メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |