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黒衣(仮投稿)
日時: 2008/05/15 06:31
名前: テン

浩さんに許可を頂きましたので、暫くの間黒衣を仮投稿という形でこちらに投稿させて頂きたいと思います。

あくまで仮であり、落ち着いたらいつかは今までどうりに投稿したいとは思っていますので。
これも携帯からの投稿なので、少々見づらいかもしれませんがよろしくお願いします。
一章を分割して送っていきます。


目次

>>1-27 恭也編 四十二章

>>54-91 恭也編 四十三章

>>122-156 恭也編 四十四章

>>197-227 恭也編 四十五章

>>228-255 恭也編 四十六章

>>256-268 恭也編 四十七章

>>269-288 恭也編 四十八章

>>289-317 恭也編 四十九章

>>318-330 恭也編 五十章

>>331-340 恭也編 五十一章

>>351-367 恭也編 五十二章

>>368-382 恭也編 五十三章

>>383-394 恭也編 五十四章

>>414-433 恭也編 五十五章

>>434-457 恭也編 五十六章

>>458 恭也編 五十七章

>>459-480 恭也編 五十八章

>>481-503 恭也編 五十九章

>>504-532 恭也編 六十章
>>565-587 恭也編 六十一章

>>28-53 大河編 三十章

>>92-121 大河編 三十一章

>>157-196 大河編 三十二章

>>395-413 大河編 三十三章

>>341-350 外伝
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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.103 )
日時: 2008/02/13 18:11
名前: テン


「それは過大評価がすぎる。同時に相手にできたとしてもせいぜい十五、六人がいい所だ。無論、相手の強さにもよるが、クレアの言う設定でならそれが限界だ」

実際の所は十人を越えている時点で異常だ。
普通、武道、武術の達人と呼ばれる者たちとて、『素人』四人を同時に相手にしたら負けると言われる。相手が素手であったり動き方によっては達人ならば勝つだろうが、ある程度の武器があるか、戦術を組み立てることができれば、素人が四人もいれば達人を倒すことは十分に可能。

『完成した御神の剣士は、重火器で武装した百人にも勝利する』

確かに恭也たち御神の剣士たちはそう言われるが、これは閉鎖空間という条件付きに過ぎない。
そして百人に勝利するとは言っても、百人同時に戦うという意味ではないのだ。いくら閉鎖空間だったとしても、百人に重火器で一斉射撃でもされたら終わりだ。
閉鎖空間を利用し、息を潜め、敵を分断して、敵の精神を操り、神速を使い……そんないくつもの緻密で、大胆な動きをして初めて百人と戦うことができ、それができて完成した御神の剣士と言えるということだ。
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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.104 )
日時: 2008/02/13 18:13
名前: テン


同時に相手をするという意味でなら、恭也では十人が限界。これは一度の神速でまとめて倒せるのが十人ぐらいというのが正確な話なのだが。これが士郎レベルになれば、一度の神速でその倍以上は片づけるだろう。残りの数人はそれに驚いている間に斬れば何となくなるという話でしかない。
後のことを何も気にしなくていいというのなら、神速の連続使用でクレアに言った倍以上はいけるし、後に精神状態などを操れればもっといけるだろうが。
それでも倒しきれなければ、疲労と肉体の限界で残った者たちに殺されるのがオチだ。

「例えばクレアの言う状況だと、俺は囲まれているな?」
「うむ」
「その状態で、王国軍の者たちが剣で斬りかかってくるのではなく、弓で攻撃してきたとしよう。弓がなければ剣を投げてきたでもいい」

王国軍には弓兵隊も存在するが、基本装備は剣と弓の両方であるのでどちらもない、というこはない。

「け、剣を投げる?」
「ああ。俺は騎士団の者たちとは違って甲冑など着ないからな、一本でも突き刺されば終わりだ」

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.105 )
日時: 2008/02/13 18:17
名前: テン


九十本の弓、もしくは剣を捌けるものではない。さらに十人もの魔法使いからの魔法。こんなものいくなんでも神速を使った所で全て回避するのは難しい。

「少数の敵を囲んでいて、安全に勝つという方法ならばこれが一番だ」

大人数側が無傷で勝利を得たいと思うならば、乱戦に持ち込まないことが重要。包囲しているのであれば、その方法が確実且つ安全に相手を倒せる方法だ。

「少なくとも、俺が隊長であったならそう指示する」

そんな説明をすると、クレアは難しい表情……というよりも、納得がいなかいという表情を浮かべた。

「なのはから聞いておるぞ。そなた、なのはのあの全方位攻撃をかわしているらしいではないか」
「……なのはのあれ、知っているのか?」
「うむ、目の前で見せてくれた」

いくら友人とは言え、王女相手にそんな物騒なものを見せるなと恭也は軽く頭を抱えた。
そんな恭也に、クレアは気付いてはいるもののお構いなしで続ける。

「あれがかわせるのならば、弓ぐらいかわせるのではないか? 未亜の矢とてかわしていたのだろう?」

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.106 )
日時: 2008/02/13 18:20
名前: テン


「未亜の矢は正面からしかこないし、中りそうなものだけを選んで捌くなりかわすなりすればいい。なのはのは……確かに個人で放てる攻撃としては最高のものだろう。かわすのも難しい」

恭也は息を吐き、あの時のことを思い出す。
囲んだ魔法陣から放たれる幾つもの疑似魔法。神速……それも二段掛けでなければかわせなかった。
たが、あれには様々な問題がある。

「もっともあれは一度見せてしまうと弱点だらけで同じ相手にはそう通じるものじゃないがな」
「そうなのか?」
「ああ、あれはあくまで罠でしかない。準備に時間がかかりすぎるし、初見では難しいかもしれないが、あれが来るかもしれないと注意深く見ていれば気付ける。かわすのが難しいのであれば、使わせなければいいだけの話だ」

ただし仲間と連携を組んで準備したり、初見の相手にはやはり最高の技である。

「話を戻すが、百人分の矢と剣の雨、なのはの疑似魔法の同時発動、どちらがかわすのが難しいかと言えば、前者だ」
「そうなのか? あれを見たが、攻撃力といいスピードといい、なのはの方が凄そうだが」

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.107 )
日時: 2008/02/13 18:22
名前: テン


「先ほども言ったが、剣だろうと矢だろうとまともに喰らえば終わりだ。なのはの疑似魔法の方が確かに攻撃力は段違いに上だが結果は同じ、当たれば終わりとういうのは変わらない。矢が首や頭に突き刺さろうが、疑似魔法で頭を吹き飛ばされようが同じこと、なのはの方が威力は大きいかもしれないが、それは結局ただの余剰分でしかない。もちろんこれは人間が相手であればだがな。モンスターは頭を斬り飛ばしても暫く動くものもいるらしい」

少女であるクレアに対して、少々血生臭い話であると理解しているが、今目の前にいるのは王女のクレアであると割り切り、淡々と恭也は説明する。

「それとなのはのあれはいくら速くとも全て真っ直ぐに目標へと突進するだけ、必ず目標とする点、もしくは線があり、それに向かって全てが一カ所に向かっていく。対して投げたものは放物線を描く。包囲して弓を放つ場合も真横には放たずに、上へと射る。これは軌道が読みづらくて直進してくるものよりもかわすのが難しい。一本二本なら問題はないが、全て違う放物線を描きながら全方位から来るこれをかわすのは難しい」

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.108 )
日時: 2008/02/13 18:28
名前: テン


一人の意志によって繰り出される多数の攻撃と、百人の意志によって繰り出される多数の攻撃はまるで違う。
なのはの場合は、あくまで彼女だけの意志で繰り出されたものであり、その思考を読み、攻撃目標とする位置を予測するのはさして難しくない。だが百人分の考え、攻撃目標を予測するのは不可能だ。

「だからこそそんな攻撃をされる前に逃げの一手を取る。その場では勝てなくとも、勝てる場所を用意する」
「なるほどな」

ようやく納得し、クレアは小さく頷く。しかしすぐにため息を吐いた。あまり有益ではない話だったからだ。
そもそも相手より数で劣るかもしれない状況をどうすればいいのか歪曲して聞いたわけだから、恭也の答えはあまり参考にはならない。破滅との戦いから逃げるわけにはいかないのだから。

「恭也を師団長あたりにでもするか」

クレアは悩んだ後冗談めかして苦笑しながら言う。
だが、言った本人が顎に手を当てて真剣に考え始める。冗談で言ったのだが、かなり良い案なのではないかと思ったのだ。
恭也ほど実戦経験を持つものは騎士団を含め軍にはいないし、実力的に申し分ないのではないか。
そんな考えを読んだか、恭也はため息を吐く。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.109 )
日時: 2008/02/13 18:30
名前: テン


「言っておくが、俺では中隊長すら無理だぞ」
「なぜだ? お前ならばそのぐらいこなしそうだが?」

実際先ほども自分が隊長だったら、などと恭也は言っていた。

「小隊単位ぐらいなら何とかなるが、それ以上は経験がない。それに俺が考えられる戦術はせいぜい小隊規模ぐらいまでだ」
「むう、良い案だと思ったのだが」

もっともクレア自身難しい話ではあった。恭也はあくまでクレアの客人。それを一軍に組み込む所か、いきなり上に立たせる方法などそう簡単にはない。
それでもそれが有用であったならばクレアはどんなことをしてでも、それを実現させただろうが。

「前にそなたが言っていた通り騎士団に限らず軍の全てがどうも戦いや戦争に対する知識……いや経験が少なすぎる。私もな」

恭也と耕介に指摘されてから、クレアも独自に調べ上げたのだろう。そして、結局恭也と同じ考えへと至った。

「それは俺とて同じだ。戦争の経験などない」
「だが戦争は、であろう? 戦いの経験はそこらの者より豊富だ。我らはそれすら少ない」
「……ふむ」
「だからできればそなたに軍の総指揮を頼みたいぐらいだ」

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.110 )
日時: 2008/02/13 18:31
名前: テン


「何度も言うがそれは無理だ。俺もそんな経験は皆無だし、戦略知識は多少はあるつもりだが、それも知識だけで経験はない。それこそクレアたちとそう変わらない。それに十人単位ぐらいでならば指揮経験はあるが、百人、千単位はさすがにない。その十人単位ですら、この世界の者たちとは考え方や武器などが根本的に違うから無理だろう」

近代兵器を多様する恭也の世界と、原始武器と魔法を多様する世界。戦術と戦略の運用方法がまったく違うとは言わないまでも、かなり変わってくるのは間違いない。世界という知識の壁があるため、恭也が言うことを理解できるかもわからない。
それに恭也は指揮する者ではないのだ。

「そもそも俺の戦い方は団体行動には向かない」

恭也……というよりも、御神流は単体でこそその能力を遺憾なく発揮することができる。団体行動はあまりするべきではない。

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.111 )
日時: 2008/02/13 18:35
名前: テン


「まあ、もし戦争が始まったら……」
「始まったら?」
「俺があちら側の頭を暗殺する」
「…………」

恭也の淡々とした言葉に、クレアは息を呑んだ。
それは元より恭也が戦争に関与してできることだと、前々から聞いていたことではあったが、それでも現実としてそれをやることになるかもしれないと思うと、クレアは何も言えなくなってしまった。
それは恭也が単身で敵の中枢に乗り込むというこでもあるのだから。

「破滅に白の主や白の精がいるならば捕縛してくるさ」

レティアの話では、白はよく破滅に与するという。今回も白がそちら側に着く可能性は高い。
もっとも今回の場合、暗殺という手法もなかなか難しいのだが。

「クレア」
「何だ?」
「お前も気をつけろ」
「暗殺にか?」
「それだけでなく誘拐もな。自信でも自慢でもなく、俺はお前を容易く暗殺することも誘拐することもできる。ここは重要施設であるのに守りも薄いし、穴も多い。侵入は容易だ。お前を警護している者も……」

そう言って、恭也は部屋のドアへと視線を向ける。その外にはクレアを守る近衛騎士である女性が二人いる。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.112 )
日時: 2008/02/13 18:38
名前: テン


恭也がドアに視線を向けた瞬間、クレアは寒気を覚える。ゾクリと肩から背中に向かって冷気が駆け抜けたような気がした。

「やはり気付かないか」

そんな恭也の言葉を聞いて、この寒気の原因は恭也であるとクレアは本能的に理解する。

「……そなた何をした?」
「すまない、少し殺気を放ってみた」

正確にはクレアに向けてではなく、外の警備に向けて。だが、それらの人物は気づきもしていないようだ。
壁一枚隔てているとはいえ、今のを気付けないのであれば致命的だ。暗殺や誘拐を防ぐなどもっと難しい。

「一応俺がいる間はそのへんも注意しているが、戦争が始まればそうもいかん。クレア、お前も注意は怠らず、絶対に一人にはなるな。暗殺は正直一番恐いぞ。俺などより暗殺技能が高い者など幾らでもいる。俺たちがいる場所ならばまあいいが、他の場所ならば部屋まで護衛は入れろ」

恭也は暗殺技能を持つが、職業的暗殺者ではないし、そういう者たちは姿を見せるなどということはせず、日常の中で殺しにくる。だからこそ恐ろしく、恭也よりも腕の立つ者がいくらでもいる。

「……わかった」

恭也の忠告に、クレアは神妙に頷いた。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.113 )
日時: 2008/02/17 21:05
名前: テン


クレアはその後思案するように顎に手を当てて口を閉じていたのだが、しばらくして手を離す。

「で、救世主候補たちはどうするのだ?」
「とくに何も」

救世主候補たちのことを思い出しながらも、恭也は首を振った。

「良いのか?」
「また戦うことになったとしても、恐らくは何とかなる」
「勝てる、のか?」

本来は戦う必要などないし、戦えるのかとクレアは問いたい所だが、きっと恭也がこう言う以上は戦えるのだろうと、それについては問わなかった。
クレアの問いに恭也は肯定も否定もせず、少し冷めてしまったお茶を飲み干し、テーブルに湯飲みを置く。

「今回であちらの戦い方を耕介さんたちも理解したからな。あの三人ならば対応できるし、別に勝つ必要はない。逃げればいい。戦いになるかもまだわからない」
「対応というのであればそれは救世主候補たちも同じではないか? あやつらも耕介たちと戦ってその戦い方を見ただろう。そう簡単に逃亡を許すか?」
「そうだな。だが、それでも耕介さんたちはその上をいく」
「断言するか」

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.114 )
日時: 2008/02/17 21:07
名前: テン


「耕介さんと知佳さんは自らの武器を、能力を見つめてきた時間が救世主候補たちとは違う。相手に合わせる方法を理解している。それに対してあちらのほとんどは才能頼りの戦い方だからな。あとは俺があちらの戦闘方を教えれば対処できるだろう。注意すべきはリコぐらいだ」

恭也はかつて仲間であった彼らの戦い方を熟知している。対してあちらは恭也の戦い方所か、あの一度の戦いでは、耕介たちの能力すら把握できない。把握するほどの余裕もなかったであろうし、把握するほどの戦闘知識を持つ者がリコとカエデぐらいだ。カエデは恭也と戦っていたため、他の者たちの戦闘方を見ていないので今回は問題ない。

「才能、というのは恐いものではないか?」

その問いにも恭也は首を振る。

「才能というのはそれこそ戦いにはそう大きな要素にはなりえない。眠った才能ならばなおさらな」

才能というのは、その人物が生まれ持って与えられた素質。もしくは訓練によって得られた能力を言う。
だがどんなに素質があろうとも、その才能を開花させるには、やはり相応の時間が必要なのだ。

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.115 )
日時: 2008/02/17 21:10
名前: テン


例えばだ。恭也は御神流を習い始めて、約五年で徹を体得した。そして恭也よりも高い才能を持つ……と恭也は思っている……美由希は、徹を体得するのに八年の時を要した。
もちろん二人は御神流を習った環境が違う。だが逆に環境が違っただけで、それだけの誤差が出る。性別だってもちろん違うが、それとて同じこと。
どんなに御神流の才能がある者でも、この二人の十分の一の時間でそれを体得できる人間など絶対にいないだろうし、半分というのもありえない。
そもそも十代で御神の技のほとんどを一人で体得した恭也も異常であるし、二十代そこそこで皆伝した美由希も異常なのだ。この二人を越える者などおそらく御神の歴史でもそう多くなかったであろうし、これからも出てくることはそうないだろう。
十分の一の時間で御神流を体得できる人間……いや、化け物がいたとして、その人物と恭也が戦っても、恭也が負けるとは決して言えない。いや、むしろ恭也が勝つだろう。練度という差がまず覆せない。その上、その人物はいつか御神の技で自滅するのがオチと言った所だ。
武術の一流派というのは戦闘法、技術、さらにそこに身体の作り方まで入る。決して技だけを教えるものではない。

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.116 )
日時: 2008/02/17 21:11
名前: テン


身体を作らなければ、戦闘など不可能。才能以前に身体という問題も出てくるため、決して一朝一夕どころか、一年や二年の時間を使ったとしてもどうにかなるものではないし、才能だけでは体得できない。
戦闘の才能というのは、それだけ見ればまるで無意味なものなのだ。
その才能だけを頼っても歪な戦い方しかできないだろう。

「救世主候補たちは、その身体を作る時間こそ召喚器があるために必要としないが、技術などについても、それ相応の時間がなくては手に入らない。彼らには確かにそれぞれ才能があるのだろうが、結局のところ相応の時間をかけて開花させなければ、才能はあくまで眠った才能でしかない。そして、その才能を開花させる環境がなければまた無意味だ」
「環境ならば学園があるではないか」
「あまり良い環境ではない」
「王立の学園だというのに、言ってくれるな」
「すまないとは思うが、そこにいた一人として言わせてもらう。ダリア先生はその手のことは一切教えていなかったぞ」
「…………」

自分が忍び込ませている諜報員が、潜入先の仕事は投げやりという話を聞き、クレアは思わず頭を抱える。
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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.117 )
日時: 2008/02/17 21:25
名前: テン

「知識ならば教えていたが、技術系は皆無だったな。知識に関しても、ダリア先生に限らず、そう有益なものでもなかった。もちろん無益でもないし、俺の主観……それも個人戦に特化した場合だが」
「それはまた……この場合、私が謝ったの方が良いのか?」

一応、あの学園の出資者は王室である。恭也たちの世界で言えば、国立の学校のようなものだ。

「別に俺に謝っても仕方ないさ。それにクレアたちはあくまで出資者であって運営者じゃない。生徒たちにであっても謝る必要はないんじゃないか?」

恭也は苦笑し、とにかくと言って続ける。

「おそらく次に会うまで、戦闘能力にそれほど大きな変化はない。それこそあちらに何かしら変化がなければな。その変化を促すのは時間もそうだが、あいつらの場合はそれ以上に環境が必須だ。環境が変わらなければ、これ以上の成長もおそらくはない」

大河、未亜の技術、知識に関しては傭兵科たちにも劣る。
ベリオは回復系魔法の専門としては完成しているようだが、戦闘に関しては大河たちと変わらない

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.118 )
日時: 2008/02/17 21:27
名前: テン

リリィは魔導士としてすでにトップレベルであり、それこそ教師たちにも引けを取らない。だがトップレベルであるからここれ以上の成長の余地は小さくなる。それこそ彼女よりも上の者が教えるか、戦闘に関しての知識つけるかぐらいしか成長の方々がない。
カエデもリリィと似たようなもので、戦闘技術、戦闘知識がほぼ完成している。しかし忍者というスキルをさらに昇華させることができる知識、技術を持つ者が教師陣にいなかった。
リコは本当の意味で完成している。彼女はこれ以上絶対に戦闘能力という意味では成長することはないだろう。


それを聞いて、クレアは何となくわかった。
その環境になりえたのが、おそらく今ここで横になっている恭也であると。
恭也が技術的にしろ知識的にしろ救世主候補たちに成長を促すことができる『環境』であったのだ。それを失った以上、救世主候補たちは爆発的に成長することはできない。
それに恭也が気付いているのかは、クレアにもわからないが。
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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.119 )
日時: 2008/02/17 21:22
名前: テン


「あいつらに足りないのは、才能を開花させ成長を促す環境と時間。その二つを手に入れるのももう無理だろう。どちらか一つでもあったなら、まだ変わっただろうがな。もっとも多少はテコ入れはできたと思う」
「テコ入れ?」
「精神の方に」
「なるほど、荒療治だな。立ち上がれなければ戦えなくなっていた所だぞ?」
「結果的にそうなっていただけだ。大河に死なれては困る。それを守り、助けることができる未亜たちには精神的にも強くなってもらわんと」

救世主候補たち全員が精神的に脆さを持っていたのを恭也は知っている。今回のことは、それらを克服するためには丁度良かった。もちろん恭也はそこまで考えて戦ったわけではなく、結果的にそうなっていただけだが。

「あとはもっと実戦の経験を得て化ける可能性もあるが、一度や二度ではやはり爆発的に成長することはないだろうな。モンスターと戦った所で人間相手の経験にはそうならん」
「そうか」
「まあ、次に会ったときどうなるかはわからんが、戦ってでも俺たちは往く」
「ああ、そうだな」

恭也たちは手に入れたい未来がある。そのために彼らと戦わなければならないというのなら、迷ったりはしない。

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.120 )
日時: 2008/02/17 21:29
名前: テン






恭也は王宮の外に出ていた。
何のことはない、ただ外の空気が吸いたかったのだ。
ここ数日、身体が思うように動かなかったのと、知佳やなのはに止められていたため、まともに動いてもいなかった。
だがようやく身体も元に戻ってきたので、こうして外の空気を吸いに来た。どうにも部屋の中でじっとしているのは恭也の性に合わない。
城門から出る前に警備の者へと通行証を見せ、通過する。
そして外に出れば、すぐに城下町が広がっていた。この世界の王都であるため、やはり人通りも多く、賑わっており、これから破滅との戦争が起きると言われても信じられないような光景であった。
これがきっとクレアが守りたい風景なのだろうと恭也は思った。
恭也はクレアほど多くの人を守りたいと思っているわけでけはないが、それでもやはりこの風景を、生活をなくしていいものだとは思わなかった。

「さて、どうするか」

城門の前で恭也は一人呟く。
何か目的を作るか、それともただ散歩とするか。
とりあえずは歩こうと決めた時だった。

「恭也」
「っ」

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.121 )
日時: 2008/02/17 21:35
名前: テン


背後から呼びかけてくる弱々しい声を聞いて恭也は足を止め、さらに喉を詰まらせた。
これだけの人通りだ、そう簡単に気配で人の判別はできない。だがそれでも、なぜ彼女の気配に気付けなかった。彼女であるならば気付けて良かったはずだ。
背後にいるのが誰であるのか声と気配でわかるからこそ恭也は振り向けない。

「やっぱり王宮にいたのね。でもずっと中にいるはずがないし、張っていてよかったわ」

そんな言葉を聞きながら恭也は覚悟を決めて振り返る。
そこには城壁に背をつけて、ただ恭也を見つめている少女の姿。
燃えるような赤い髪が特徴的な少女。
彼女は城壁から離れ、纏う外套を翻し、ゆっくりと恭也へと近づいた。
そして二人はただ見つめ合う。
その二人の傍を幾人もの人が通り過ぎていく。
どれくらいの時間そうしていのか恭也にも彼女にもわからない。一瞬であったのか、それとも数十分もの間見つめ合っていたのか。
だがいつまでそうしているわけにはいかない。

「……場所を変えよう」
「……ええ」

恭也が聞いたこともないような声、見たこともないような殊勝な態度で彼女……リリィは頷いた。




三十一章 終
メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.122 )
日時: 2008/03/07 20:57
名前: テン






「ごめんなさい」

恭也の目の前には、項垂れたふうに肩を落としたなのはがいた。
恭也は自室の椅子に座り、なのはは屋根裏という狭い部屋をさらに狭くしているベッドの上に座っている。
同室の耕介は今頃仕事をしているし、どこに置いているのかは恭也も知らないが、十六夜も持っていっていた。
そのためこの部屋にいるのは兄妹二人のみ。

「なのは、別にな、俺を呼ばなかったことはいいんだ。別に今は怒っているわけでもない」

恭也は酷く落ち込んだなのはの姿を見て、軽く息を吐いて言った。
あの時、なのはが呼ばなかったことは恭也にとってはもうどうでもいいこと。なのはにだって理由があるだろう。いくら兄だと言っても彼女の全てを理解しているわけではない。
なのはにはなのはの考えがあるのだから。もちろん戦闘においてのなのはの考えはまだまだ甘いから、全てをわかってやるわけにはいかないが。

「しかし、理由は何なんだ? お前は別に意地を張るような子ではないだろう?」

いや、なのはにとて意地というものがあるというのは恭也もわかっている。とはいえ、無理なこと、無謀なことはしない。

メンテ

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