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黒衣(仮投稿)
日時: 2008/05/15 06:31
名前: テン

浩さんに許可を頂きましたので、暫くの間黒衣を仮投稿という形でこちらに投稿させて頂きたいと思います。

あくまで仮であり、落ち着いたらいつかは今までどうりに投稿したいとは思っていますので。
これも携帯からの投稿なので、少々見づらいかもしれませんがよろしくお願いします。
一章を分割して送っていきます。


目次

>>1-27 恭也編 四十二章

>>54-91 恭也編 四十三章

>>122-156 恭也編 四十四章

>>197-227 恭也編 四十五章

>>228-255 恭也編 四十六章

>>256-268 恭也編 四十七章

>>269-288 恭也編 四十八章

>>289-317 恭也編 四十九章

>>318-330 恭也編 五十章

>>331-340 恭也編 五十一章

>>351-367 恭也編 五十二章

>>368-382 恭也編 五十三章

>>383-394 恭也編 五十四章

>>414-433 恭也編 五十五章

>>434-457 恭也編 五十六章

>>458 恭也編 五十七章

>>459-480 恭也編 五十八章

>>481-503 恭也編 五十九章

>>504-532 恭也編 六十章
>>565-587 恭也編 六十一章

>>28-53 大河編 三十章

>>92-121 大河編 三十一章

>>157-196 大河編 三十二章

>>395-413 大河編 三十三章

>>341-350 外伝
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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.204 )
日時: 2008/06/30 05:59
名前: テン


確かに恭也は強い。そして大河の言うとおり、この世界に来たことと、怪我が治ったりでさらに強くなっているだろう。しかし、大河と恭也の伸びを比べてしまえば、やはりそれも雲泥の差で大河の方が伸びている。それは完全な伸びしろの差と言っていいだろう。
恭也はこの世界に来たときから、その戦闘力という宝石は、ほぼ完全にまでに磨きぬかれていた。対して大河は、本当に原石のままでこの世界へと訪れ、それから磨き始めた。
すでに磨きぬかれてしまった宝石は、何とかもっと綺麗に見せようと改良してもやはり限界があり、時間もかかる。だが原石であるならば、形さえある程度変えることができるし、研磨も素早くできるだろう。あとは少しでも本当の宝石に近づくだけだ。完全になってしまった至高の宝石に追いつくために。
大河という原石はもちろんまだ完成したとは言えないが、それでも一歩ずつ完全な宝石に近づいている。恭也という至高の宝石が改良に長い時間を費やしている間に。
それはまだまだ歪で拙いかもしれないが、それでも至高の宝石と比べて、何十人という人間が見れば、一人は拙い宝石が良いという人間もいるだろう。

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.205 )
日時: 2008/06/30 06:02
名前: テン


それと同じで、何十回と戦えば、一度は勝ててもおかしくはない。
それだけ端から見れば二人の差は縮まっているのだ。

「そういえば、一対一で老師が負けたところは見たことがござらんな」

一対一、その状況では恭也はまだ誰にも負けていない。
もちろん恭也も完全な無敗なわけではない。三対三などの集団戦闘での模擬戦においては、恭也も何度か敗北している。いや、この場合恭也の敗北というよりも、そのチームの敗北か。
が、個人戦に特化すると恭也は無敗だ。

もっともこの三人は知らないことだが、今のリコが本気になれば恭也もおそらく闘技場では勝ち目がない。授業などで勝利しているのは、リコが本気になっていないだけだ。いや、本気になっていないというよりも、力をセーブしているというべきか。
これに恭也も不満に思っていることだろうが、彼女自身は恭也に本気で勝とうとするならば、ページをかなり消耗してしまうことがわかっているために本気を出さない。主を傷つけたくないというのもある……というか、そちらの理由が大半だろうが。

「まあ、なんかあいつ、最初の頃は俺たちを観察してて、あまり攻勢に出てなかった感じだったからな」


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.206 )
日時: 2008/06/30 06:04
名前: テン


「もう観察は終わったということでござるか。今はかなり積極的に動いているでござるし」
「確かに今は、ほとんど動きや戦い方を読まれている感じはありますね」
「俺たちじゃ観察したところで、あそこまで敵の動きは把握できねぇし、マネはできないけどな。恭也を観察したところでそれを実戦で想定するっていうには、俺たちとは経験が圧倒的に違いすぎて難しすぎる」

もう恭也は一々相手の動きを観察したりはしていない。模擬戦が始まれば、すぐにでも攻勢に出る。それはつまり、救世主候補たちの特性などをすでに把握しているということでもあった。
最初の頃のように防御に徹しないため、そうそうピンチにも陥らないし、それまでの観察で完全に大河たちの能力を把握しているからこそ、彼らのほぼ全ての攻撃に対応してしまうようになってしまい、初期の頃よりもよっぽど戦いにくい存在になっていた。
もっとも、それは同時にそうまでしなければ、恭也とて早々に勝てない存在へと成長したことに他ならないが。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.207 )
日時: 2008/06/30 06:05
名前: テン


しかしこれもまた大河たちは知らないことだが、恭也はほとんど奥義を使っていない。使っているのは、何度か見せてしまった花菱ぐらいだ。あとは基礎技術などだけで対抗している。

「まあ、恭也の話じゃ、俺らが自分の能力を把握して、きちんとした戦い方を組み立てることができれば、どうやっても自分じゃ勝率は二割がいいところだとか言ってるけどな。今でも四割とか言う話しだけど」
「それは謙遜のしずきではござらんか?」
「実際に私たちは勝ててませんし、恭也さんはどこか自己評価が低いですから」

恭也は謙遜がすぎるところがあるし、自己評価が低いというのも全員が共通して思うことだ。恭也は自分に自信がもててないとでも言える発言が多い。とくに容姿に関してはまったく意識すらしていない。
そのため、自分たちを持ち上げるような発言は、あまり信用できないとカエデとベリオは苦笑する。
だが、大河は軽く首をふった。

「いや、恭也がそう言うからには、実際その通りなんだろうさ」
「え?」


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.208 )
日時: 2008/06/30 06:07
名前: テン


「確かに私生活関係やらあいつ自身のことでの言うことだったなら信用ならん。だけど、あいつの戦闘に関しての評価は絶対だ。俺にいつも敵と自分の能力差は見極めろって言うし、自分を過小評価も過大評価もせずに客観的に見ろとも言われてる。そんなこといつも気にかけてるやつだ。だからあいつは戦闘に関しては絶対に謙遜はしない。あいつ自身が思っている事実を言う。もっともそれも相手にもよるだろうけど。少なくとも俺たち相手に謙遜はしないだろさ」

もちろんその評価が間違ってるということもあるかもしれないが、大河に今まで教えてきたことで間違いはまるでない。そのため大河は、こと戦闘に関しての言葉であれば、恭也の言うことは全て真実だと思っている。
恭也は絶対に戦闘に関しては、全てを客観的に見る。自分のことも大河たちのことも。

「それならば、我々も勝ててはおかしくないでござるか」

大河の言葉を聞いて、カエデは顎に手を当てて呟く。彼女は逆に大河を強く信頼している。そのため大河が言うならば真実なのだろうと思っていた。
だが、ベリオは首を傾げる。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.209 )
日時: 2008/06/30 06:09
名前: テン


「でも、恭也さんの話を信じるなら、六割の確率で私たちが勝てるということですよね? それで一度も勝てないというのは」

その言葉に、それはもっともだカエデも頷く。
すると大河は苦笑して、恭也に聞いたことを思い出し、それを口にした。

「恭也に言わせると、戦いってのは確率だそうだ」
「確率……ですか?」
「ああ。勝つ確率と負ける確率。それで勝負は決まる。そしてその確率は、戦う前からだいたい決まっている、だそうだ」
「運のようにも聞こえるでござるな、それでは」
「こと戦闘に関して、恭也さんが言うセリフとは思えませんね」

恭也はどんな状況であろうと勝機を見出そうとするし、自分の実力を把握して、常に冷静に動く。その彼が運まかせなことを言うとはカエデ、ベリオ、共に思えない。
大河はその二人にそれは少し違うと言った。

「確率を上げるための鍛錬をし、知識と経験を手に入れるってあいつは言ってたぞ。もちろん他にもその確率を変動させるものがいくらでもあるだろうけど」
「確率を上げる……」
「例えば負ける確率が十パーセント、勝つ可能性が九十パーセントなら、だいたいが勝つだろ?」
「それはそうでござるが」
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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.210 )
日時: 2008/06/30 06:12
名前: テン


確かに確率で言えば、その勝率でならばほぼ勝てると言っていいだろう。
しかし、やはりベリオは首を傾げたままだ。

「でも自分が負ける確率の方が高かったらどうするんですか? それに先ほど言ったように、私たちの勝率が本当に六割……六十パーセントだというなら、一度も恭也さんに勝てない理由はどうなるんです?」

恭也の言うことが正しいのなら、救世主候補と恭也の勝率はだいたい半々。むしろベリオたちの方が僅かに高い。
それでも今まで何度か戦って、誰も恭也に勝てないというのは、つまりその勝率が正しくないということだ。
だが、それに大河は苦笑してみせた。

「それが恭也がこんなことを言った肝なんだよ。運まかせなんかじゃない」
「肝?」
「そうだな、例えばさっきの逆で負ける確率が九十、勝つ確率が十だとしよう。数字だけ見ると一見勝てるとは思えないけど、それでも十パーセント勝てる可能性があるわけだ。つまり十回に一回は勝てる」
「それはそうでござるが、それこそ運ではござらんか?」

確率で論じるなら、その十パーセントを引き寄せるのはそれこそ運だ。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.211 )
日時: 2008/06/30 06:15
名前: テン


九十パーセントあれば勝てることが必然で、十パーセントで勝てたなら、それは運が良かったということになってしまう。
だが大河はまたも首を振った。

「恭也に言わせると違うらしい。運もあるが、その十パーセントを自分で引き寄せる、もしくは確率自体を変動させる。戦いならばそれが可能なんだそうだ」
「自分で……ですか」
「それは事前での確率にすぎない、ならば戦闘中に、自分の意思でその十パーセントを手繰り寄せろ。それがだめなら確率を変動させろ。相手の精神を揺さぶったり、場所の有利を使ってもう十パーセント相手から自分の方へ、もしくはイカサマをして百パーセントにしてもいい、どんな方法でもいいから相手のパーセンテージを奪えだとさ」

そんな大河の言葉に、ベリオは、はあ、と呆れるような、それでいて吐息ともため息ともとれる息を吐き出した。

「何かイカサマつきのギャンブルに聞こえますね」
「実際ギャンブルなんだろうよ、自分の命をベットする、な」
「配当はなんでござろうな」
「さあな。それこそそれぞれ違うんじゃないか?」

戦いによる勝利という景品はそれこそ人によって違うだろう。戦いになった理由でもきっと変わってしまう。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.212 )
日時: 2008/06/30 06:19
名前: テン


「まあ、とにかく事前の準備も大切であり、戦闘中もどんなに勝率が……それこそコンマ以下しかなくても諦めてはならないっていうありがたい恭也の教えだよ」

大河は右目を瞑りながら肩を竦め、無茶を言うお師匠さんだと、やれやれとばかりに息を吐くのだが、その開いた左目はどこか嬉しそうだった。
どんなに可能性が低くとも……それこそ万に一つだろうが可能性があるのならば諦めない。
確かにその言葉はどこかの熱血漫画に出てきそうな言葉で、聞きようによってはただの綺麗事だ。
だがそれは真理でもある。可能性が僅かにでもあるのなら、諦めなければそれを引き寄せることも可能なのだ。諦めた時点で、どんなことだろうと終わってしまう。
当真大河、彼は諦めるのが大嫌いな男である。それが真面目なことでも、無駄で実益のないことでも、バカみたいなことでも、ナンパでも。
何よりそれを実践している男がいるからこそ、それをより信じたくなる。

それから大河はさてとと呟いて立ち上がる。それに合わせてカエデとベリオも立ち上がった。

「とりあえず、汗流すべ、ついでに……」
「覗いてはダメですよ、大河君」


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.213 )
日時: 2008/06/30 06:20
名前: テン


大河が不適切なことを言う前に、ベリオは先手を打った。
それに大河は軽く舌打ち。
だがカエデが手を合わせて子犬のように大河へと擦り寄った。

「師匠師匠、今日こそ拙者が師匠の背中を流すでござる!」
「おお! さすが我が弟子、よくわかってるじゃないか!」
「カ、カエデさん! 何を言ってるんですか!?」

ベリオは二人を止めようとするものの、大河はカエデの肩を掴み、そのまま揚々と歩き出してしまう。
その姿を見て、ベリオは一度ため息を吐き、ユーフォニアを召喚してでも止める決意を固めたのだった。




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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.214 )
日時: 2008/08/20 07:12
名前: テン




◇◇◇



とりあえず、ユーフォニアの一撃で大河は強制的に懺悔させられた。
まあそれでも三人とも汗を流したいのは事実。風呂に入るため寮へと戻ろうと、森から出てちょうど礼拝堂の前を通りすぎようとした時だった。

「む?」

突然カエデが声を上げる。そして、右手を敬礼でもするかのように額につけた。それは遠くを見るために自然に出てしまった行動だろう。

「老師と未亜殿が一瞬に歩いているでござるよ」
「あん?」

カエデが眺める方向へと視線を向ければ、確かに隣り合って歩く恭也と未亜の姿が見えた。
丁度お互いの腕と腕が触れ合うぎりぎりの距離で隣り合いながら歩く二人。その距離は、友人同士が隣り合って歩く距離ではなく、心を許した者にのみ許された距離と言えるだろう。
お互いのパーソナルスペースを、隣を歩くその人ならば狭められるという証。
未亜は恭也の隣を歩き、何かを話しているのか、たまに嬉しそうに笑っていた。対して恭也はいつも通り無愛想なものの、雰囲気はどこか柔らかい。

「未亜さん、嬉しそうですね」

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.215 )
日時: 2008/08/20 07:13
名前: テン


ベリオも未亜がどういう目で恭也を見ているのかは気付いていた。というよりも気付いていないのは、おそらく恭也本人ぐらいのものだろう。

「お兄さんとしては寂しいですか?」

そう言って、ベリオにしては珍しく、からかうようにして大河の顔を覗き込む。
すると大河は微笑んだ。それは彼が今まで見せたことのない本当に優しい笑みだった。いつもの不敵な笑みでも、豪快な笑いでもなく、彼が今まで見せたこともない優しく、どこか柔らかいとも言える微笑み。
その微笑みを見て……初めて見た大河の表情に、ベリオとカエデは思わずみほれた。

「まあ、少しだけな」

そんな二人には気付かず、大河はベリオの問いに答える。

「少しだけ寂しいけど……それよりもずっと嬉しいよ」

大河はそう言いながら、二人の姿を眺め続けた。
父と母を亡くし、今まで未亜の兄として、ずっと一人で彼女を守ってきた大河としては、当然寂しいと感じる。アヴァターに来る前までは、男で未亜とあの距離感で歩けたのは大河だけだった。そのため多少の嫉妬も浮かぶ。
それでもそれ以上に大河は嬉しかった。

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.216 )
日時: 2008/08/20 07:15
名前: テン


未亜が自分以外に心を許せる男ができたことが、大河は心の底から嬉しいと感じている。まあ、これが恭也以外の男だったら、認めないぐらい言うかも知れないが、恭也は大河も認めるほどの男であり、何より尊敬できる男だった。
そんな男に未亜が心を許したのも、嬉しいと思える理由でもあった。

「恭也になら未亜を任せられるからな。あいつならどんなことからでも未亜を守ってくれる」

彼はそれができるだけの力があり、器があり、度量がある。大河がいつか追いつきたいと思える男。
そんなことを考え、大河はすぐに苦笑した。

「まあ、恭也が未亜を選ぶかまだわからないけどな」

妹の幸せを願う大河としては、未亜を選んでもらいたいと心の底から思う。だが、こればかりは大河がどうこう言えるものではない。
恋愛や男と女の関係、その他の男と女の行為というのは本人たちの自由意志で行うもの、というのが大河の持論だ。まあ、それでも多少の手助けはしてやつもりではあるが。

「あいつ、国宝級に鈍いからなあ」

そんな大河の呆れたような呟きを聞き、ベリオとカエデもまた苦笑した。


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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.217 )
日時: 2008/08/20 07:17
名前: テン


「それにライバルが多いですしね」
「えっと、リリィ殿、リコ殿、知佳殿……ううむ、確かに強敵ばかりでござるよ。それに知佳殿の話ですと、元の世界にも何人もの人が老師を想っているとか」
「他の科にも恭也さんに憧れている人は多いですし」
「ってか、なのはの恭也を見る目もやばいと思うのは俺の気のせいか?」
「いえ、拙者もそう思っていたでござる」
「で、でも兄妹ですよ?」
「まあ、アヴァターでなら問題ないんじゃないか? あいつらが兄妹だって知ってるのはこの学園のやつらだけだし、最悪血が繋がってなかったんです、とでも言えばいいし」

と、三人がそんなことを言い合っている間に二人は礼拝堂の隣にある図書館へと入っていってしまった。
それを見て、大河は頭を手で押さえてやれやれとばかりに首をふり、さらに嘆息を漏らす。

「図書館デートって、お前らはガリ勉カップルか? 未亜ももっといいとこ誘えよ」

まあ、恭也はどうやってもデートだなどとは思わないだろう。未亜もデートとまで思っていないだろうが、きっと二人きりだというのを意識してソワソワしているに違いないと、大河は少しだけ同情する。

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.218 )
日時: 2008/08/20 07:17
名前: テン


そのうち恭也に未亜のことをプッシュしておいてやろうと誓った……まあ、恭也にはたぶん効かないだろうが。

「ま、邪魔するのもあれだし、俺たちは戻ろうぜ」
「ですね」
「でござるな」

さすがに二人に会いに行くというのは野暮であるというのは二人もわかっているため、大河に頷いて返した。
そして再び歩き出し、学園中央の広場まで来ると三人はまたも足を止めた。
その視線の先には、リリィとナナシがいる。
何やらナナシにリリィが詰め寄って何か怒鳴っているようだ。

「び、媚薬!? あ、あんたあれにそんなもの入れてたの!?」
「媚薬? 違うですの。飲むとグデグデのメロメロになっちゃう薬草を粉末にしたものですの〜」
「だからそれを媚薬って言うんじゃない! っていうか、そんなものが入ってるのを私に飲ませたわけ!?」
「ん〜、最初はダーリンに飲んでもらおうと思ってたんですの。でもリリィちゃんが喉が乾いてそうだったから」
「んなもん飲ませるな! 黙って大河に飲ませておきなさいよ! おかけでものすごく不本意な状況で私の初めてが終わっちゃったじゃない!」

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.219 )
日時: 2008/08/20 07:21
名前: テン

何やら大河にとって色々な意味で聞き捨てならない会話であった。
知らぬ所で危機におちていっていたような言葉と、大河のエロ本能を刺激させる言葉がいくつも聞こえたような気がした。

「おーい、ナナシ、リリィ、何話してんだ? 何か色んな意味で聞き捨てならん言葉が聞こえたような気がしたんだが」

大河がとりあえずそんなふうに話しかけたのだが、リリィは顔を赤くし、何でもないと騒ぐも、何かを考え込むと、すぐに大河に詰め寄る。
そして、その胸ぐらを突然掴んだ。

「ちょっとバカ大河! このノータリンゾンビの管理はアンタの管轄でしょ!? ちゃんと目を光らせてなさいよ!」
「いや、いつからそうなったんだ!? 勝手に俺に押しつけるな、イカサマジシャン!」
「こいつが生まれた時からよ! っていうか誰がイカサマよ!?」
「一体何十年前の話だ!? ってか、いつ生まれたのかも、死んだかもわかれねぇよ! さらに言うなら毎回毎回名前の頭にバカをつけるな!」

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.220 )
日時: 2008/08/20 07:21
名前: テン


少なくとも学園長の話では、ここ十年以来でナナシの容姿と合致する死亡者は学園内を含めて、近隣にはいないということである。
その人間、というかゾンビの管理を任されるいわれは大河にはない……はず。

「ってか、ナナシが何をやったてんだよ?」
「リリィ、落ち着いてナナシさんが何をしたのか話して」
「そうでござる、リリィ殿、ちゃんと話してもらわねば意味がわからぬでござる」

大河の後ろにいたベリオとカエデも続けて言うのだが、そんな三人を見て、リリィはうっと呟きつつ、顔を真っ赤にさせて大河の胸から手を離すが、髪を振り乱して叫ぶ。

「って、言えるわけないじゃない!」
「いや、それで俺にどうこう言うのは理不尽じゃないか!?」
「まあ、理不尽さで言えば、大河君も恭也さんもナナシさんも同じですが。なんて言うか存在自体が」
「ベリオ殿、意外に言うでござるな」

理不尽さで言うなら、きっと他の科の生徒たちは、救世主クラスたち全員が色々な意味でそうだと言うだろうが、全員がそれに気付いていない救世主クラスの者たち。
とりあえず混迷する大河たちに、ナナシが言葉をかける。

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.221 )
日時: 2008/08/20 07:22
名前: テン


「この前リリィちゃんにジュースを上げたんですの。でもナナシ、その中にお薬を入れていたのを忘れてしまったんですの」
「薬? どんな薬なんですか?」

どうもナナシは、生前の知識からかそう言った薬草学に通じている。それをボケで使うので、色々と危険なことがあるのだ。
大河は今でもあの学食戦争を忘れることはできない。
まあそれはいいとして、ベリオが聞き返すとリリィがナナシの言葉を止めようとするのだが、大河がゴーと命令して、カエデがそのリリィを羽交い締めにして止めてしまう。
そしてその間にナナシがあっけらかんと告げる。

「粉末にして飲んだらグデグデのメロメロになっちゃう薬草ですの〜」

その言葉で一瞬時が止まった。

「あ、あの、それって、その……」

その意味を理解して、ベリオは真っ赤にしながら視線を漂わせる。
するとリリィに視線がいく。彼女はカエデに羽交い締めにされながらもさらに顔を……それこそ纏う外套や印象的な髪よりも真っ赤にさせていた。

「そういえばさっき媚薬とか聞こえたような。それをリリィが飲んだのか? ってことはもしかして、自分で慰めた……とか?」

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.222 )
日時: 2008/08/20 07:24
名前: テン


どこかイヤらしい目つきをし、ニヒと笑いつつ大河はリリィを眺めた。その視線は顔から胸へといき、お腹を通り、そして最後は……

「人の身体をイヤらしくジロジロと見るな! この変態!」

羽交い締めにされていたリリィではあったが、下半身は問題なく動く。足を上げ、ハイキックを大河の顔面に叩き込んでいた。

「ぶばっ!」

蹴りをまともに受けた大河は、鼻血を流しながら吹き飛んだ。

「た、大河君!?」
「し、師匠!?」
「ダーリンが鳥さんに!」

鼻血をまき散らしながら吹き飛ぶその姿はなかなかグロいが、それでもベリオとカエデ、ナナシは吹き飛んだ大河に近づいた。
そもそもあの鼻血は何かを想像してなのか、それともリリィに蹴られたためなのか。
大河に駆け寄ったベリオは、こんなことに力を使うことをお許しくださいとか信仰する神に謝罪しつつも癒しの魔法をかけた。
すると興奮からか、それとも衝撃からかはわからないが破裂していた毛細血管が治り、鼻から出ていた血が止まった大河は勢いよく立ち上がってリリィに詰め寄った。

「足を出すな足を!」

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.223 )
日時: 2008/08/20 07:25
名前: テン

「あんたが変な目で見るからでしょうが! だいたい全然理不尽なことなんて私は言ってないわよ! 巻き込まれたのは私! 本当はあんたが飲むはずだったのよ、あれは!」
「なに?」
「あんたに飲ませるつもりだったみたいよ、あのゾンビ娘は」

それを聞いて、大河はヒクヒクと頬を引きつらせてナナシの方を向いた。

「ほ、ホントか?」
「はいですの〜。ホントは、ダーリンに飲んでもらって我慢ができなくなったところに、ナナシがという手筈だったんですの。でもリリィちゃん喉が乾いてそうだったから」
「た、助かった。お前がアンポンタンでホントに良かった」


いくら女の子大好きな大河でも、死体とそう言ったことをするというか、そんな趣味はないし、勘弁してほしい。
しかし媚薬を使われれば迷わなかったかもしれない。なんと言っても死体であっても、さらにノータリン娘でも、ナナシの容姿は大河から見てもかなりのものなのだ。それこそ死体でないとわかったなら、すぐにでも受け入れかねないぐらいに。

「そのぶん私が酷い目にあったわよ」

リリィはフンと鼻を鳴らし、大河とナナシを睨む。

「恭也の部屋に行くのがもっと早かったらどうなってたか」

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