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黒衣(仮投稿)
日時: 2008/05/15 06:31
名前: テン

浩さんに許可を頂きましたので、暫くの間黒衣を仮投稿という形でこちらに投稿させて頂きたいと思います。

あくまで仮であり、落ち着いたらいつかは今までどうりに投稿したいとは思っていますので。
これも携帯からの投稿なので、少々見づらいかもしれませんがよろしくお願いします。
一章を分割して送っていきます。


目次

>>1-27 恭也編 四十二章

>>54-91 恭也編 四十三章

>>122-156 恭也編 四十四章

>>197-227 恭也編 四十五章

>>228-255 恭也編 四十六章

>>256-268 恭也編 四十七章

>>269-288 恭也編 四十八章

>>289-317 恭也編 四十九章

>>318-330 恭也編 五十章

>>331-340 恭也編 五十一章

>>351-367 恭也編 五十二章

>>368-382 恭也編 五十三章

>>383-394 恭也編 五十四章

>>414-433 恭也編 五十五章

>>434-457 恭也編 五十六章

>>458 恭也編 五十七章

>>459-480 恭也編 五十八章

>>481-503 恭也編 五十九章

>>504-532 恭也編 六十章
>>565-587 恭也編 六十一章

>>28-53 大河編 三十章

>>92-121 大河編 三十一章

>>157-196 大河編 三十二章

>>395-413 大河編 三十三章

>>341-350 外伝
メンテ

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Re: 黒衣(仮投稿) ( No.284 )
日時: 2008/11/18 07:07
名前: テン




「本当に……今更ながら良くわかる。ボクたちはずっと恭也さんに守られて、頼ってきたんだね」

パフィオは、目の前にいる猪顔のモンスターが握る槍を体捌きだけでかわしながら呟いた。
ナイフによる恭也の援護がない。恭也の的確な指示がない。縦横無尽に駆ける姿と斬閃の煌めきがない。それだけでこんなにも戦いにくい。こんなにも心細い。
生徒たちは気付いていなかった。あの戦闘能力にだけ目がいっていて、彼がどれだけ細やかに援護と指示を出してくれていたのか。

「だからこそこんなところで終われない!」

決めたのだ。
死なないと。必ず勝つと。
あの傷ついた背中に誓った。

パフィオは魔法に関しては、やはりリリィに遠く及ばない。魔導士科主席であるフィルならばその制御力などはリリィと同格かもしくは越えるだろうが、パフィオは魔導士科の中でも、成績はそれこそ真ん中以下といったところだ。威力でも制御でも及ばない。
だが、彼女はリリィをも大きく上回るものを持っていた。
パフィオは放たれた槍を、身体を小さく回転させることでかわし、一気に懐へと潜り込む。

「ふっ!」

短い息吹とともに、踏み込みの力と腰の回転の力を込め、下から突き上げるようにして放たれる掌底。
空気すら押し潰しながら、パフィオの掌底は目の前にいたモンスターの胸部へと、打ち放たれたロケットの如く向かい……突き刺さるようにしてめり込んだ。
ベキベキという何かが折れる音とともに、数本骨を砕いた感触がパフィオの手に伝わる。さらにモンスターの胸は数p陥没していた。
確かな技術を以て放たれたそれだが、小柄な少女であるパフィオが放ったにしては、威力が異常であった。それもそのはず、彼女は自らに補助魔法をかけ、筋力を魔力によって一時的に増強していたのだ。制御力が低いため、他人にかけてもなかなか成功しないが、自分にならば問題ない。
これがパフィオが持つリリィをも上回るもの。リリィ以上の格闘センス。
恭也と会うまでは、ほとんど使わなかった戦闘方。
自分は魔法によって戦う魔導士だからと封印していたそれ。
しかし、今それを解放した。
パフィオは、恭也に一度の戦闘で見抜かれた。自分が格闘技術を持つということを。魔法を使うまでの牽制のためではない本格的な相手を倒すための技術を持つと、体つきと体捌きから一度の戦闘で恭也に見抜かれてしまったのだ。
リリィのように牽制ではなく本格的な武器となる技術。
パフィオ自身は隠しておきたかったそれ。彼女にとってそれは所詮幼い頃から家の都合で勝手に仕込まれたものでしかなかった。昔から魔導士に憧れていたパフィオにとっては、邪魔でしかない技術。
だから誰にも気付かれたくはなかった。
彼が何気なく言ったのかもしれない言葉。それでもそれはパフィオに響いた言葉。

『魔法を学びながらも、それだけ維持できるというのは凄いな。それがどんなものでも、それはお前のためになる、お前の宝になる。仲間を守る武器になる』

自分にとって疎ましかった技術が誰かのためになる。
疎ましくても、なぜか捨てることはできず、隠れて鍛え続けたそれ。魔法を学びながら維持するのは難しかったが、それでも技術を、練度を低下させることはなかった。もっとも本当に欲しかった魔法の才能はほとんどなかったが。
それでもその両方が今融合され、武器になり、自分のために、仲間のためになる。

『内緒にしてほしいが、魔導士科の生徒たちは肉弾戦をするには少々貧弱だからな、近づかれたらお前が守ってやってくれ』

恭也は冗談っぽく続けてそう言った。
前衛の真似事……実際には本当に前衛向きだが……ができるパフィオに、恭也は純粋に魔法を使うことしかできない魔法使いたちにモンスターが近づいたら、それの相手を彼女に任せたのだ。
そして、そのときが今だ。
パフィオは、後ろに縛った桃色の髪をなびかせながら、右足を軸にして足刀を放ち、それをモンスターの頭へと叩き込む。その勢いのまま横へと回転し、弾き飛ばされるモンスター。
モンスターの生命力は高い。それだけされてもまだ生きていた。
だが、パフィオの役目はすでに終わっている。
パフィオが攻撃をしている間に、背後にいた彼女と同じ科の魔導士と僧侶科の仲間が呪文を唱え終わり、魔法を発動させたのだ。
倒れたモンスターに追い打ちをかけるように、氷の槍と青白い光線が突き刺さる。
倒れたところへと無防備にそれを受けたモンスターは、もう立ち上がることはなかった。
魔導士たちに近づいてきたモンスターを相手に、同じく魔導士であるはずのパフィオが接近戦で時間を稼ぐ。
それが今のパフィオの役目。

「仲間のために……何より恭也さんの役に立てるなら、ボクの持ってるもの全部使ってやる」

たとえそれが自分にとって疎ましいものでも、恭也のために……そして、彼に追いつくのに、彼の隣に立つのに、それが最短の道であるならば迷いはしない。それすら力に変えてみせよう。
自分のせいで傷ついた恭也。
傷だらけの身体に、さらに深い傷を残した恭也。
もう自分たちの所為であんなことにはさせない。
そう誓い、パフィオは近づいてくる新たな敵へと向かっていった。


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.285 )
日時: 2008/11/18 07:09
名前: テン



セルは大剣を肩に担ぐようにして構え、先ほどからリザードマンが放つ剣撃をかわし続けていた。
基本的に大きな武器を持つセルの攻撃方は受け身だ。敵の隙をついて攻撃するか、敵の攻撃ごと叩き潰す。もしくは型に填らない動きで意表をつく。
下手に剣を振り回せば、その重さで逆に隙を作りかねないからだ。救世主候補である大河ならば、この重さの武器でも、それこそ片手で振り回しかねないが、それはセルには不可能なのだから。
だが敵の攻撃をかわし、時には体捌きと足技で敵を牽制するその技術、体術は、救世主候補たちのそれを大きく上回る。大河と一緒になって女の子を追い回したりなどと、普段の行動や言動からは信じられないが、彼は彼で傭兵科の中でもトップレベルの技術を所持しているのだ。
一対一ならば受け身でいくか、奇抜に戦う。だが今回は違う。

「セルビウム君!」

カラーのセルを呼ぶ声とともに、彼の目の前に障壁が展開される。それはリザードマンの剣撃を完全に防ぐと、バラバラになって消えていく。
攻撃を防がれ、その反動で踏鞴を踏むリザードマン。それは大きな隙だ。だが、まだセルは動かない。

「ヴォルテクス!」

さらにセルの背後より放たれる雷撃。
背後からくる仲間の魔法は、それが敵に放ったとわかっていても恐いものがある。だが、彼女が……フィルが放つそれは心の底から信用できる。なぜなら彼女の魔法の制御力は、救世主候補のリリィと同格か、それ以上であるのだから。
フィルが放った雷撃は、セルだけを避け、的確にリザードマンに突き刺さるようにして直撃した。
だが、それだけでは致命傷にはならない。
だからこそセルは、痛みで絶叫を上げ、だが痺れて動けない敵へと追撃に移る。
その膂力を使い、剣を一気に振り上げた。腕に血管が浮き出る。背筋が盛り上がる。全身の筋肉という筋肉を使い、その力を一気に解放する。
振り下ろされた大剣は風を叩き潰すようにして進む。
森という戦場、そしてその大きな武器。そのため太い木の枝が斜線に入るが、風とともにそれさえもまるで木の葉のように砕き、剣撃の進行の邪魔にはならない。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

裂帛の気合。
上段から振り下ろされるそれは、魔法によって動きを止められたリザードマンの頭部へと寸分違えず吸い込まれるようにして叩き込まれる。
その重さとセルの力、技量を以て放たれたために、堅い表皮を持つはずのリザードマンの身体を簡単に真っ二つに切り裂いた。
頭部から股間まで二つに裂かれたリザードマンは、左右に分かれて地に沈む。
セルはそれに目もくれず、辺りを見渡した。

「あと九匹……!」

瞬時に残りの敵の数を把握する。

「フィルさん! 魔導士たちに敵の分断させてくれ! 使う魔法は任せる! カラーさんは他の援護に回れ!」
「うん!」
「はい!」

セルの指示を聞いて、二人はそれぞれの仕事にかかる。
魔導士たちの援護で何体か分断してくれたりしていたため、前衛の者たちは基本的に二人、もしくは三人で一体を倒すことができる。恭也に言われた通り、複数で一体と戦えばどうにもでもなる。
今までも当然そうやって戦ってきたが、恭也の指示で動いていたため、または恭也が一人で同時に複数の敵を相手にしていたため、いつのまにか一体に対して複数で戦うという状況を作れていた。
だが、恭也の指示がなくなり、恭也が戦わないだけで、どれだけその状況を作り出すのが難しかったのかが、今更ながら理解できてくる。しかも恭也は複数の敵と同時に戦いながら状況を把握し、指示を出していたのだ。

「どれだけ俺たちが恭也に負担かけてきたのかよくわかった」

本当に今更ながら……今までの恭也の真似事をして、セルも本当の意味でそれに気付いた。しかし真似事とは言っても、彼と同じことなどまったくできてはいない。あくまで真似事でしかない。
自分たちが恭也の指示の本当の意味を理解して戦えていれば、もっとうまく戦えたかもしれない。ただ指示を聞くだけでなく、その真意を測りながら戦えたならばもっと……

「……みんなで絶対に生きて戻ってやる」

やっと理解できはじめてきたのだ。ここを生きて帰れれば、次はもっとうまくできるはずだ。これはセルだけでなく、ここにいる全員がそう思っている。
すでに教訓はできた。すでに目標はできた。すでに進むべき道は見えた。
ならばそれを活かすために一刻も早く学園へと戻り、そのための訓練をしたい。みんなそう思っている。
だから、

「こんなところで、ちんたらしてられるかよ!」

セルは再び敵へと向かっていく。
生き延びるために。
もっと強くなるために。
あの背に追いつくために。
セルは、親友である大河が恭也に師事する気持ちが本当に理解できた。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.286 )
日時: 2008/11/18 07:10
名前: テン




◇◇◇



「はあ、はあ、はあ」

セルは息切れを繰り返し、武器を握りながらも、足の力が抜けたかのようにその場へと座り込んだ。それは彼に限らず、傭兵科の生徒たち大半もだった。
彼らの周りには多くのモンスターの死体が転がっている。
だが座り込んだ彼らも一様に傷だらけだった。危ない場面だって多々あった。
だが、それでも全員が生き残ることができた。

「やった……」

息切れを繰り返しながらも、セルは一言呟いた。
生徒たちだけで、モンスターを倒しきった。だが、脱出を始めて最初の戦闘に勝利したときのような勝ち鬨は上がらない。
そんなことをしていられないほどの疲れがある。何より、どれだけ自分たちが恭也に助けられていたのかがよくわかってしまったから。

「セル」

ライラックは木々の合間から見える空を見上げながらセルへと声をかけた。
それにセルは気の抜けた返事をする。

「なんだあ?」
「学園に戻ったらもっと訓練しよう」
「そうだな」

今ならもっと効率よく訓練ができるような気がする。
ここにいる全員がそう思っていた。
足りない。
この程度では足りない。
この程度の勝利で喜んでいられない。

「ボク、もっと強くなる」
「私もですわ」

パフィオとアキレアはお互いの背にもたれかかりながら言い合う。
もう守られるだけではいられない。
時間はそれほどないのかもしれない。だが、そんなこと言っていられないのだ。

「それぞれの科を混ぜた合同の訓練、したいですね」
「帰ったら先生に頼んでみましょう。無理なら集まって自主訓練でも構いませんよ」
「恭也様にも手伝ってもらえるといいのですが……いえ、駄目ですね」
「ですね。それは駄目。アドバイスを聞くぐらいはいいかもしれないけど」

これ以上恭也の手を煩わせるわけにはいかないと、カラーとフィルは短く息を吐く。
すでに今回のことで自分たちに何が足りないのか、何となく見えているのだ。恭也にこれ以上の指導を求めて頼りきっては意味もなくなる。本当に煮詰まったとき、恭也にアドバイスを求めればいい。
生徒たちはそんな会話をそれぞれ交わしていた。
今の自分に満足ができない。つい数週間前までは考えもしなかったことばかりが思いつく。たった一日で、ここにいる生徒たちの目指すものが変わってしまっている。
だがそれは前日までとは違い、明確な目的となっていた。

「よし、そろそろ戻ろう。血の臭いがある場所にいつまでもいるべきじゃない」

セルは立ち上がり、大剣を肩に担ぐと仲間たちを見渡して言った。
他の生徒たちは立ち上がることで肯定を示す。
負った怪我は痛いが、動けないほどではない。恭也が受けた傷と比べれば痛いなどとは言っていられない。疲れたなどとも言っていられない。
立ち上がった生徒たちは、それぞれ頷き合うと、ゆっくりとした足取りだが、恭也たちが待つ場所へと戻っていく。
そして、恭也たちの姿が草木の間から見えたとき、座っていた恭也がゆっくりと立ち上がったのが見えた。
そんな恭也に生徒たちは勝った、と告げるように笑顔を向ける。本当ならそんな当然のことで笑顔を浮かべるべきではないのかもしれない。だが恭也はそれを求めているような気がした。
そしてそれは確かに当たっていた。
恭也はゆっくりと戻ってきた生徒たちに近づき、

「良くやった」

結果を聞くことなく、ただ薄く笑って言った。
それが本当に生徒たちは嬉しかった。
涙腺の緩いフィルやカラーなどは少しだけ涙を溜めている。
似たようなことは今まで何度か言われた。だが今回はまるで意味が違う。
だからこそ……本当に嬉しかったのだ。


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.287 )
日時: 2008/11/18 07:11
名前: テン




◇◇◇



恭也はようやく見えた月明かりと街灯に浮かぶ町並みを眺め、息を吐いた。
それと同時に、

「帰ってこれた」
「やった……」
「生き残れた」

背後から様々な声が聞こえた。
恭也たちはあの森から脱出したのだ。
背後にはまだつい先ほどまで歩いていた森がある。そして朝出発したにも関わらず、すでに空は闇に染まっていた。
疲れからか、ほとんどの者たちがその場にへたり込んでしまったが、恭也は何も言わず好きにさせた。まだ安全とは言い難いが、それでも今は生き残ったことを喜ばせてやるべきだ。警戒は己がすればいいだけのこと。
何度もモンスターと遭遇したが、誰も脱落することなくここまでこれた。それでもそれぞれ傷だらけだ。だが、その痛みも気にならないほどに全員が喜んでいる。

「お疲れ」

振り返って短いそんな言葉を生き残れたことを喜ぶ生徒たちに告げ、恭也は笑う。
その言葉に、やはりそれぞれが嬉しそうな表情を浮かべる生徒たち。しかし全員理解している。彼がいなければ、自分たちは生き残れなかったと。
ここまで百匹以上ものモンスターと遭遇し、それを皆で倒してきたものの、恭也がいなければ簡単にやられていた。彼は見えないところであらゆる場所へと援護に入り、果ては一人で半数以上のモンスターを倒したのだ。
そのたびに恭也も怪我を負ったが、それでも恭也は痛みに顔を顰めることもなく戦い続けた。そんな姿と、そしてその大きすぎる背を眺め続けたいと願ったがために。そして何より、その広い背にできた傷のため。自分たちの不甲斐なさと決別するための決意を与えてくれたそれが、生徒たちを生き残らせた。
生徒たちは感謝の言葉をかけようとそれぞれが思ったが、きっと恭也は感謝されることではない、とでも言うのだろう。短くともここまで共に行動したことで生徒たち全員がわかっていた。
その中で、補助の手を借りてここまで帰ってこれたアスクが真剣な顔を口を開いた。

「破滅と本格的に戦いが始まれば、こんなこと毎回起こるんでしょうか?」

その言葉に、今まで笑っていた生徒たちも再び僅かに暗い表情を浮かべた。
破滅が動き出している。だが、まだ本格的とは言えない。もしそれが本格的に行動を起こしたなら、この程度のことではすまない状況になる。

「そうだな。千年前はまさに戦争だったらしいから、この程度ではないのかもしれない」

そして恭也はそれらを理解しながら、淡々と肯定した。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.288 )
日時: 2008/11/18 07:12
名前: テン


「だからお前たちにも頑張ってもらわないといけない」
「え?」
「戦争ならば一人でやるものではない。俺一人では戦いにすらなりはしない。もちろん救世主候補たちだけでもな。いずれみんなの力も借りることになると思う」

正確には恭也が彼らの力を借りるのではない。今回のように王国や学園から強制的に参加させられることになるだろう。
だが、恭也は力を借りると言った。

「俺ができることなど剣の届く範囲にいる敵を倒すことだけだからな。むしろそれしか能がない」
「恭也……」

苦笑しながら言う恭也に、セルは何とはなしに彼の名を呼んだ。
彼にそれしかできないのなら、自分たちはもっと何もできない、とその場いる全員が思った。

「だから皆の力も借りる。今回のことでお前たちは成長しただろう。それこそ学園で授業を受けているだけではできない成長をな」

そう言われても、生徒たちはそんなことわからない。
自分たちは死を恐れ、任務を失敗したのだから。
成長しなければならないとは思う。だが成長できたかはわからなかった。

「失敗や敗北は、成功や勝利以上のものをくれる。俺も何度も失敗し、敗北を重ねてここまできた。だからお前たちも成長している。次のときはもっとうまくいくだろう。今回感じた恐怖を忘れるな。今回得た勝利を忘れるな。そうすればお前たちはきっとこれからも生き残れる」

生徒たちの考えがわかり、恭也はそう言った。
それから調子に乗って柄でもないことを話しすぎたと、恭也は内心で再び苦笑し、生徒たちから視線を離して町に向かうために歩き出す。
それに驚きながらも、へたり込んでいた生徒たちは立ち上がり、恭也の後をついて歩いていく。
その間会話はなく、生徒たちはただ一心に先頭に立つ恭也の背を見つめていた。まだ半日ほどでしかないのに、それでももう何年もその背を眺めてきたかのような感覚だった。
そのコートの下には、未だあの火傷があるのだ。
じっと、憧れを抱くに十分な、広く、強い背をただ眺める。
今回のことで成長できたというのなら、この背中に少しでも追いつけたのだろうかと考えながら。

そんな視線を感じたからか、恭也は歩きは止めず、僅かに顔だけを振り返らせた。

「この先、頼りにさせてもらうぞ」

それだけの言葉を小さな声で残し、恭也は再び顔を戻してしまった。
だが、生徒たち全員が確かにその言葉を聞いた。
頼りにしていると。
あれだけの戦闘力を持つ彼が、生徒たちにそんな言葉を向けた。
恭也の周りには救世主候補という、彼と同等以上の存在たちがいるというのに、それでもそんな力のない自分たちにまで頼りにしていると言う。それに生徒たちが嬉しさを感じないわけがない。
同時に、恭也の期待に応えるためにはもっと強くならなければならないと、全員が再び決意した。
今は恭也の言葉に応えられない。
恭也に頼り切り、不甲斐なさを自覚し、まだ彼に並ぶことができない生徒たちは口に出して、それに応えるわけにはいかない。
だから生徒たちは口にして応えず、ただ恭也のの言葉に頷き返した。それが彼に見えないとわかってないがらも。
そしてその背を見ながら誓う。あの自分たちのためにできてしまった傷痕に。
フィルもセルも、アスクも、カラーも……他の生徒たちも。
この背に追いかけてみせると。
強くなってみせる。
そして、いつかきっと……



メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.289 )
日時: 2008/12/22 01:50
名前: テン





授業を終え、その後の鍛錬も終えた遅い時間。恭也は自室で自らの武器を広げていた。
床の上にあるのは、この間の任務で無理をしてまい手入れに出し、つい先日それが終わり再び戻ってきた八景と紅月、そして八景と共にこの世界に持ってきていた無銘の小太刀。補助武器である小刀、鋼糸、飛針、それぞれ極少数。

「随分と消耗してしまったな」

それらを眺め、恭也は僅かに顔を顰めて呟いた。
恭也がこの世界に持ってきていた武器と、そのあとレティアが持ってきてくれていた武器、それらがほとんど消耗してしまっていた。
小太刀の手入れは何とかなったものの、鋼糸や飛針は補充しようもなかったのだ。
一応このへんは少しばかりこの世界でのツテを頼ったものの、未だ解消されていない問題。
このまま似たような任務が続けば、全ての補助武器を消耗しきってしまうのも時間の問題だろう。それにこの前のように多くの敵と戦うならば、小太刀も三本では心許ない。

「どうしたものか」

恭也は腕を組み、考えていた。
この世界の武器で代用してもいいのだが、正直金銭の問題で無理がある。原始的な武器と侮るなかれ、それを本格的に手入れをするためにしろ、新たに武器を補給するにしろ、それなりに金がかかるのである。
学園から支給されている金銭だけでは、それほどの量は買えない。学園長に言えば必要経費として下ろしてもらえるかもしれないが。
召喚器を持つ救世主候補たちと違い、やはりこういった武器の消耗が激しいので、今後も同じことが起きるだろう。そのたびに学園長を頼るのは気が引ける。
何より、ミュリエルはまだ恭也を信頼していないし、恭也もまた同じだった。そんな彼女に頼み事は簡単にはできない。貸しを作るのは危険すぎる。

「やはり足りませんか?」

恭也にそう聞いたのは十六夜だった。
十六夜は恭也の背後にふわふわと浮いていた。先ほどからカチャカチャと武器を弄る恭也を感じて、目が見えなくとも聡い彼女は彼が何を悩んでいるのか気付いていたのだろう。

「ええ」

恭也が十六夜の言葉に小さな声で肯定したとき、部屋のドアがノックされた。
それに恭也は武器を戻し、十六夜には剣に戻ってもらおうとも思ったが、気配の質から訪問者が知り合いであるというのがわかり、恭也は武器はそのままに、そして十六夜にもそのままでいいと告げて、一応自分でドアを開けた。
メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.290 )
日時: 2008/12/22 01:51
名前: テン


「こんばんは、恭也君」

案の定、ドアの向こうにいたのは知り合い……知佳であった。彼女は何やら大きな……それこそ知佳の上半身よりも大きいドラムバッグを抱えている。
恭也はそのドラムバッグが気になったものの、こんばんはと返し、知佳を部屋に招き入れた。
知佳は部屋を見渡すと、十六夜に気付き、同じく挨拶をしたあと恭也へと向き直る。

「お義兄ちゃんは?」
「先ほど汗を流しに」
「あ、そっか」

すでに仕事を終えた耕介は、部屋に戻ってきてしばらくしたあと、当然の如く十六夜を部屋に置いて共同の風呂場へと向かった。
恭也は鍛錬が終わったあとに入っていたので、耕介は一人で行ったのだ。
知佳は恭也の返答に頷いてから、持っていた大きなドラムバッグをベッドの横に下ろすと、部屋に広げられた恭也の武器を眺めた。

「何してたの?」
「少し武器の確認を。このごろ消耗が激しくなってきたので、残りが少なくなってきてましたから」

それを聞いて知佳は納得したように頷くと、嬉しそうに笑った。

「じゃあ丁度よかったかな」
「丁度よい、ですか?」

知佳は十六夜の問いに頷いて返すと、持ってきたリュックを開けた。

「それは……」

その中身を見て、恭也は目を瞬かせる。
知佳が持ってきたドラムバッグの中には、ぎっしりと武器が詰め込まれていた。それも鋼糸、飛針などの御神流の標準装備が、である。その二種だけでなく、他様々な補助武器、さらに小刀や小太刀まで何本もいれられていた。
これだけ入っていれば、相当な重さだ。それを知佳が苦もなく背負ってこれたのは、おそらく能力を使ったからだろう。

「これは……」
「小刀とか小太刀はクレアちゃんが用意してくれたよ」

それを聞いて、恭也はなるほどと頷いた。
実はクレアが先ほど言ったこの世界でのツテ。知佳を通じて、武器に関しての相談をしていたのだ。
そして、事前に小刀とこの世界に来たときから持っていた無銘の小太刀を渡し、それと似た感じで作ってほしいと告げていた。その後見本として渡したそれらは返却されたものの、数を作るには時間がかかると言われていたのだ。
それが完成したということだろう。
これが知佳が与えた情報へのクレアの対価の一つだった。対価をもらうべきは知佳であるはずだが、知佳自身がそれでいいと言ってしまったので、恭也は好意に甘えることにしたのだ。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.291 )
日時: 2008/12/22 01:52
名前: テン


「飛針と鋼糸は?」

それらもクレアに作ってもらいたかったのだが、見本として渡すにしてもいかんせん残りの数が少なくなっていた。とくに鋼糸は摩擦係数や細さなどでいくつも種類がある。一本だけ渡しても意味がないし、今現在の武器が減ってしまう。そこでそれらを頼らなくてもいいぐらいに小太刀などの予備ができてから渡すことになっていたのだ。
それが見本を渡す前に到着し、恭也は困惑していた。それらを知っている十六夜も、恭也の後ろで首を傾げている。

「それはレティアちゃんが私たちの世界で手に入れてきてくれたみたい」
「レティア、来ていたんですか?」
「うん、さっき私のところに少しだけね。理由はよくわからないけど、あまり恭也君の前には出れないって言って、私に渡していってくれたの。それでもそれだけ渡してすぐに消えちゃったし」

それに恭也は頷いて、内心でレティアとクレアに感謝する。
正体や目的が未だよくわからないレティアではあったが、恭也は彼女を信用し、信頼しているし、何だかんだでやはり彼女は恭也のことをよくわかっていた。それは恭也の性格などだけではなく、彼の戦いからして、そろそろ武器がなくなるころだろうと当たりをつけ、わざわざこうして補充分……どころか、これからしばらくは困らないぐらいの分を送ってきてくれたのだ。彼女がそれらをどこで手に入れてきたのかは不明だが。

「ありがとうございます」
「私はここに持ってきただけだよ。それとこれ、クレアちゃんからの手紙」

そう言って、知佳は手紙を恭也へと手渡した。
破滅が動き出してきたことで、クレア自身は来られなかったのだろう。もしかしたらこの武器を学園に持ってきたのは彼女ではないのかもしれない。


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.292 )
日時: 2008/12/22 01:52
名前: テン

恭也は受け取った手紙をさっそく読む。
内容は今回送った小太刀などが合わなければ言ってくれという当たり障りのない内容。そして最後の方に謝罪と感謝があった。
それは前回の任務について。ほぼ強制的に派遣したにも関わらず、生徒たちの救援は無視するというやり方。それについての謝罪。そして、斥候という任務をこなしながらも、それら生徒たちを救ってくれた感謝。
その二つ。
だが、クレアは言い訳はまったくしていない。ただすまないという言葉と感謝するという言葉だけ。
つまり悪いのは自分だと言いたいのだろう。

(まったく……この様子だとクレアが悪いわけではないようだな)

あのときはクレアを怒鳴りつけたいぐらいの怒りを抱えていたが、言い訳の一つないこの謝罪を見てしまえば、そんな気持ちはなくなってしまう。それにもともと命令違反のような形になってしまったのは恭也の方だ。もっともそのへんの沙汰はまだ来てないのだが。
おそらくクレアはクレアでできることをしているのだ。それでもできないことがある。それだけだ。

(クレア……俺は俺のできることをしよう、お前がくれた剣でな。だからお前も頑張ってくれ)

心の中で、まだ幼いにも関わらず重大な責任を背負わされいる少女に向け、内心で応援の言葉を向けた。それが何の力にもならないことは理解しているが、それでもそう願う。
恭也は手紙を丁寧に折り畳み、それを机の上に置いた。
それを見届けてから、知佳は少し笑った。

「恭也君、これから時間あるかな?」

知佳の問いに、恭也は何かあるのだろうかと首を傾げるも、どうするかを悩む。
できれば今手に入れた武器の確認をしたいところだ。だが、知佳がこうして時間が欲しいということは重要な用件なのだろうと思い返し、頷いて返したのであった。






第四十九章






知佳に頷いた恭也は、剣に戻った十六夜を持ち、寮の廊下を歩いていた。
そして連れてこられたのは、知佳となのはの部屋ではなく、リコの部屋だった。事前に話をしてあったのか、リコは二人を確認すると、すんなりと中へと招き入れた。
メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.293 )
日時: 2008/12/22 01:53
名前: テン


何度か恭也もリコの部屋に入ったことはあったが、何とはなしに見渡してしまった。が、何もない。
いや、それも正確ではない。元より救世主候補たちの部屋は、豪華な内装になっている。調度品も高級なものだし、ベッドなど天蓋つきだ。何より他の科の生徒たちの部屋や、恭也たちが使っている屋根裏部屋と比べてしまえばとんでもなく広い。
そのため決して何もないわけではない。だが、生活臭がしない。なのはたちの部屋とて、それなりに元にあったもの以外の物品が置かれているものの、この部屋はそれこそ最初から変わっていないという感じだ。
リコらしいというべきか、それとももう少し改善すべきだと忠告するべきかとも恭也は悩むが、それらのことはあまり人に言えた義理ではないと気づき、その考えを追い出した。

「マスター、座ってください」

考え事をしていた恭也にリコは近寄り、柔らかい笑みを浮かべて言った。その笑みは恭也以外にはあまり見せないもの。
マスターと呼ぶリコを窘めようとも恭也は思ったが、ここにいるのはそれらのことを知る者たちだからいいかと思い直し、恭也はリコに進められた部屋の中央にあるテーブルにある椅子へと座った。
その対面にリコが座り、隣に知佳が座る。それらを確認してから恭也はテーブルの上に十六夜を置いた。そして、そこから剣霊である十六夜が出てきて、恭也の後ろ側に浮かぶ。
本当は耕介も待った方が良かったのかもしれないが、風呂に入っているのだから仕方がないと、とりあえずリコの部屋に行っているという書き置きだけ残してきた。なのはと久遠はすでに眠ってしまっているらしい。
今回こうして知佳がそれぞれ集めた理由は一つ。

「破滅が大きく動き出してきたみたいだからね。そろそろ情報を整理しておきたくて」

ということらしい。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.294 )
日時: 2008/12/22 01:54
名前: テン


確かにこのままいくと、こうして時間がとれることは少なくなっていくかもしれない。それならば、今のうちに整理しておいた方がいいだろうと恭也は頷いた。

「それで、早速リコちゃんに質問なんだけど」
「なんでしょうか」
「救世主のこと。救世主になるための正確な条件を聞きたいの」
「…………」

知佳の質問を聞いて、リコは僅かに身を引き、警戒した様子を見せる。
その反応を見て、知佳は慌てて手を大きく振った。

「ああっ、別に私が救世主になりたいとか言うわけじゃないからね? そもそも私には召喚器ないし、白の主なんてもっとありえないし、恭也君を救世主にしたいわけじゃないから」

むしろ恭也を救世主にさせないため、同時に白の主を救世主にさせないために聞いておきたいと告げると、リコは警戒を解いた。

「大前提として召喚器を持っていること」
「それだと救世主候補全員が前提条件をクリアしているということだな。まあ、元より言われていたことだが」

恭也の呟きにも似た言葉に、リコは頷くと続きを語る。

「その中からさらに候補が絞られます」
「それが白の主と赤の主、ですか」

十六夜は言いながら、赤の主となった恭也に見えない視線を投げかけた。

「ただし、これは毎回そうではありません」
「というと?」
「私とイムニティが同じ人を主に選ぶこともあります」
「その場合は、その人が救世主に決定ってことかな?」
「はい。まあ、今回はあまり関係ない話ですので、詳細は伏せますが、この場合は仮契約みたいなものです。私たちが同時に選んだからといって、いきなり救世主になるというわけではありません。その後色々な試練を終えたあとに、本当の救世主になれます」

リコは三人を見つめたまま、さらに続ける。

「今回のように私たちが違う主を選んだ場合……」
「相反する精霊か主のどちらかを殺すことで、救世主になる……ですか」

リコは十六夜の言葉に頷き、またも何かを悩むように少しだけ形の良い眉を崩すが、すぐに考えがまとまったのか、再び口を開く。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.295 )
日時: 2008/12/22 01:55
名前: テン


「これに関してはいくつか裏技があります」
「裏技?」
「ええ。相反する精霊と主を殺さずに救世主になる方法がいくらかあるのです。ただこれは準備に時間がかかったり、相反する理の主、精霊を支配するのと同じか、それ以上のリスクがあったり、時間がかかったりするものが大抵ですが。
そして、救世主になっても必要なものがあります……それが存在力です」
「存在力……ですか?」

字面から何となく言葉の意味は理解はできるが、それがどんなものなのかまでは理解できず、十六夜は首を傾げた。それは恭也と知佳も一緒のようで、二人も十六夜と同じように首を傾げている。

「救世主は、その本来の目的を遂行するために、大きな力が与えられます。しかし、人間本来の力では、その力は大きすぎるのです」
「力っていうのはよくわからないけど、それが大きすぎてパンクするってことかな」
「そうとってもらって構いません。存在力というのは、その大きな力に耐えられるよう自分自身を保つための力。救世主は試練によってその存在力を手に入れます」
「試練というのはよくわからんが、具体的にはどうやったら手に入るんだ?」

恭也の問いかけに、リコは伝えるべきか悩んでいるかのよう再び眉を寄せる。だが決心したのか、一度大きく息を吐き出した。

「救世主は本来、多くの存在を奪い、消し去ることで、その存在力を高めます。それだけのことをしても生き残る価値があった存在だ、ということになりますから……」

奪い、消し去る。それはつまりどれだけ殺してきたかということだ。
それがわかり、十六夜と知佳は目を見開いた。

「どれだけ殺したかということですか……」
「なんて無茶苦茶……」

二人は口々に言うが、恭也はとくに何も言わない。
不破であるからか、それが何となくわかるのだ。人を殺すたびに己の中の何かが変わっていくということが。
もちろんそれを全て肯定することはしないが、その善し悪しは別にして、殺し、奪うというのは確かに力だ。ある意味では壊れた力。壊れいく力。一度それを手に入れてしまえば、もう二度と捨てることはできない力。
もっともリコの言うそれは、とんでもない数のモノを殺して手に入れるというものであろうから、恭也も完全に理解できるものではないし、理解したくもないが。

「それは人に限らず、命あるものであれば構いません」

続くリコのその言葉を聞いても、知佳と十六夜は反応を返させない。
だが、恭也だけは違った。

「待て」
「なんですか、マスター?」
「人に限らない、それはモンスターでも構わないということか?」

恭也は目を鋭くさせての問いに、リコは僅かに気圧されながらも頷いて肯定した。

「つまり、破滅と戦うことでも、その存在力というのは手に入るということか。どの程度殺せばいいのかなどはわからんが」
「はい」

再び肯定したリコを見て、恭也は視線をとなりにいる知佳へと向ける。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.296 )
日時: 2008/12/22 01:56
名前: テン


「覚えてますか? 救世主が現れるから破滅が現れる、破滅が救世主を誕生させているようにも見えると、知佳さんが前に言っていたのを」

それに知佳はもちろん覚えていると頷き、手を顎に当て、やはりしばらく考えて口を開く。

「破滅は救世主が存在力を手に入れるために必要な試練……こう言ったら何だけど、生贄?」

破滅が現れるならば戦いは起こる。戦いが起これば、必ずそれを倒す必要が出てくる。望む望まずに関わらず、その戦いに出ることでその存在力というのが手に入ることになる。
そのためにどれだけのものを殺さなくてはならないのかはわからないが、少なくともすでに何体ものモンスターを殺している恭也は、ある程度はその存在力を手に入れてることになる。
だが、破滅たちが動き出さなければ、恭也がそんなことをすることはなく、存在力を手に入れることもなかった。もちろんすでに恭也はその手を汚し、人すら殺めているため、それでも所持しているだろうが。
それらを考えれるならば、破滅が救世主誕生のための生贄と見えても仕方がない構図だ。

それらを話し、恭也たち三人はリコへと視線を移す。
その視線の意味は理解しているだろうが、リコはそれに肯定も否定もしない。

「破滅については私からは何とも言えません。わからないことも多いので」

そのリコの言葉を聞いて、ならばこれ以上それに関しての質問は意味はないと止めた。
恭也は今までの話を聞いて……というよりもこの世界に来て、破滅のこと以外に今まで気になって根本の質問をリコに投げかけた。

「そもそもなぜ救世主は召喚器を持っていなくてはいけないんだ?」
「「「え?」」」

それは誰もが疑問に思わなかったものだが、恭也は何となく気になっていた。
召喚器を持っているということが、救世主の資質を持つ証明。それはわかる。
そして、リコは召喚器がどんなものであるかは知らないということだ。だが、ではなぜ書の精霊も詳しく知らないような物を持っている人間が、救世主の資質を持つということになるのか。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.297 )
日時: 2008/12/22 01:57
名前: テン


確かに召喚器を持つ者たちは高い能力がある。しかし、こう言っては何だが、召喚器を持たずとも、彼らよりも能力が高い者は確かに存在する。精神に関してでもそうだ。彼女らは心のどこかしらに弱さを持つ。だが、人の中には彼女たちよりも強靱な精神を持つ者はいくらでもいる。
それらを考えれば、人間全てが候補であってもいいはずだ。いや、今回は恭也や大河という存在が現れて崩れれてしまった前提だが、かつては女性であれば全て、と言い換えるべきかもしれない。

「リコは召喚器を持っていない者と契約したことはないのか?」
「いえ、ありません。というよりもできません」
「できない?」
「はい。そもそも召喚器がなくては契約自体ができないようになってます」

それらを聞いて、十六夜と知佳が反応する。

「すり込みのようなものなのでしょうか? ご両親からこういうことはしてはなりません、と言われたというような」
「もしくは召喚器が書の精霊との契約に何か影響するとか」
「いえ、十六夜さんのそれはしないだけですし、知佳さんの言うような召喚器が契約に何らかの影響を及ぼすというわけでもありません。召喚器はあくまで目印でしかありまんせから。そして、それがどういう意味での目印かは私もわかりません。
私の場合はできない、なんです。すり込みというよりも、禁止とされるプログラムを植え付けられているようなものです」
「ぷろぐらむ、ですか」

つまりそのプログラムが除去されでもしないかぎり、決して召喚器を持たない者と契約はできない、ということだろう。

「救世主の真の目的を言えないのもそれ?」
「はい。真の救世主にしか言えないようにプログラムされています。これは私がどれだけ言いたいと思っても言うことができません。肯定、否定ぐらいならばできますし、主自身がその答えに辿り着いたならば、その限りではありませんが」
「なるほど」

三人が納得したのを見て、リコはもう一つ付け加えた。

「すでに不可能なことですが、導きの書を読むことで、その答えを得ることはできます」
「あの白紙になってしまった?」
「ええ。すでに私が恭也さんを主とし、イムニティも主を決めてしまったので、その文字は消失してしまい、今回はもう読むことはできませんが、あれには救世主の目的が、全てとは言えませんが、ほとんど書かれていましたから」


メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.298 )
日時: 2008/12/22 01:58
名前: テン


すでにそれは見ることは不可能。恭也が手に入れた時にはすでに半分の文字はなくなってしまっていたし、今は完全に白紙になってしまっている。ということは、自分たちでその答えに行き着くしかない。幸い、リコは肯定と否定だけはできるのだから。
ただ今の情報だけでは、何を質問していいのかわからず、恭也たちは口を閉じた。
だがしばらくして、十六夜が何かに気付き、顔をリコの方へと向けた。

「リコ様は先ほど『ぷろぐらむ』を植え付けられているようもの、と仰いましたが、それは一体誰に植え付けられたものなのでしょう?」
「それは……私を作り出した存在です。正確には導きの書を精霊化させた存在」
「リコちゃんたちを作り出した存在……って」

つまりリコたちの親のようなものなのだろうが、その問いにリコは俯いてしまった。

「それは……言えません」
「言いたくない、じゃくて言えない?」
「いえ、これは私が言いたくないんです」
「え」
「言うわけにはいかないんです。とくにマスターには」

リコは、俯かせた顔を上げ、どこか心配そうに恭也の顔を見つめた。
その表情を見て、恭也は目を瞑り、そして腕を組む。リコを産み出した存在が何であるのか、それは恭也にもわからない。だが、一つだけはっきりしていることがあった。

「……レティアが言う、『あいつ』だからか?」
「はい」

つまりはそういうこと。
あの禁書庫の出来事でリコとレティアが出会った際、そのようなことを二人は言い合っていた。理解できない会話であったため、恭也も断片的にしか思い出せないが、確かにレティアがリコは『あいつ』が生み出した、というようなことを言っていた。
そして、レティアのこれまでの言動を思い出すに、彼女はその『あいつ』というのと敵対している、もしくは敵視している。恭也もその存在と戦うために呼び出したという節もあるし、そんなことも言っていた。

「マスターはまだ知るべきではないと思います。それに私自身、紅の精が何を考えているのかわからない部分もありますから」
「そうか」

恭也のリコの言葉に、少しばかり目を鋭くさせて真剣な表情を浮かべた。

「レティアの言いようだと、俺はリコを生み出した存在と戦うことになるかもしれないが、いいのか?」
「かまいません。私が従うのはマスターだけです。マスターが共に戦えと言うなら、それが何であろうと、誰であろうと、私はマスターに付き従い、戦います」
「ありがとう」
「当然のことです」

恭也が微笑んで感謝の言葉を告げると、リコは頬を染め、先ほどとは違った意味で顔を俯かせた。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.299 )
日時: 2008/12/22 01:59
名前: テン


それに十六夜はあらあらと呟き、知佳はムッとした表情を浮かべた。

「きょ、恭也君、私もどんなの敵でも恭也君の味方だからね」
「ええ、私もですわ、恭也様」
「え、あ、はあ、ありがとうございます」

勢い込んで言う知佳と、クスクスと笑いながら言う十六夜に若干押されながらも恭也は礼を言った。

「それじゃあ……」

リコの時よりも心がこもってない、とか思いながらも、年上の余裕を見せるために気にせず知佳は再び話を再開させようとしたとき、いきなり部屋のドアがノックされた。

「リコ殿〜、いるでござるかー?」

その声と口調は間違いなくカエデのものだった。
それを聞き、どうしようかとリコは恭也に視線を向けるが、恭也は出てくれと頷いて返した。
リコはそれを見て、黙って立ち上がるとドアを開けてカエデを中に通す。

「リコ殿、耕介殿にここに老師がいると……」

カエデがそこまで言ったところで、恭也と目があった。すると彼女はニパッと笑い、恭也へと近づいた。そして知佳と十六夜に目礼したあと口を開く。

「老師、学園長殿が呼んでいるでござるよ」
「……俺一人をか?」

しかもこんな時間に。
カエデは頷いて返し、学園長室にすぐに来てほしい伝えてくれと言われた、と告げた。
それを伝えられ、恭也たちは顔を見合わせる。
こんな時間に一人で来いとは。
カエデを通して連絡を入れた以上、恭也に何かしらをしかけるということはないだろう。少なくともカエデは、恭也がミュリエルに呼ばれたと知っている。その状態で恭也に何かあれば、一番最初に疑われるのはミュリエルだ。
ミュリエルと恭也たちは信用しあったが、それは所詮打算的な信用。裏切ることもありえる。
そう思われることはミュリエルが一番わかっているからこそ、間にカエデを通したのだろう。そしてカエデも、ミュリエルと恭也たちの打算的な関係を知っていてるが、同じ結論に達したからこそ、わざわざ伝えにきたというところか。

「急用、かな」
「どうでしょう」

とりあえずここは行っておくべきだ、という結論に恭也は達し、知佳を見ると、彼女は小さく頷いた。
そして、あとの話は知佳たちに任せておき、恭也はカエデを伴って部屋を出た。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.300 )
日時: 2008/12/22 02:00
名前: テン


カエデは部屋を出ると、就寝の挨拶をし、自分の部屋へと戻っていく。
恭也は一応、小太刀を意識しながら歩く。
もしミュリエルと戦闘になったら勝てるか? 
あちらは報告などで恭也の手の内をいくらか知っているだろうが、恭也はミュリエルが魔導士であるということと、召喚士であるということしか知らない。あちらの手の内は見えない。

「まあ、いきなり戦闘になることはないか」

恭也はそんなことを独り言ちるが、一切油断などはしていない。相手はこの学園で油断してはいけない人間の一人。いついかなるときでも戦えるように心構えをしておかなければならなかった。
いつも通りに、だがこちらの思考が悟られないように気をつけていけばいいのだが、ミュリエルと会話をするとどうしても疲れる。彼女との会話は裏の裏まで予想しなければならないからだ。
恭也はこれからのことを思って深く息を吐き出しながら寮の廊下を歩いていった。



◇◇◇



「マスターは凄いですね」

リコは、主である恭也が出ていったドアを眺めながら呟いた。
それが聞こえていた知佳と十六夜ではあったが、リコの言う恭也の凄いところというのはわからない。確かに知佳と十六夜も同意見ではあるものの、それぞれ恭也に感じるものは違うのだ。
リコは、その戦闘能力を言っているのかもしれないし、いつも動じない冷静な精神を言っているのかもしれないし、普段の行動を言っているのかもしれない。
いや、おそらくはその全てなのだろう。それがリコ個人としてなのか、それとも従者としてなのか、リコの言葉には羨望に近い尊敬、絶対の信頼、不滅の忠誠が込められているようにも感じる。
そんなリコに、知佳は少しばかり恭也に傾倒しすぎかな、と色々な意味で危機感を抱くが、それを言っても仕方がないと、考えていたこととは違う言葉を口にする。

「でも、結局恭也君は一番凄いものを使ってないんだけどね」

それでも思考と表情はリンクしていたらしく、知佳は苦笑していた。


「一番凄いもの?」
「人脈、だよ」
「人……脈?」

リコは知佳の言葉をオウム返しのように繰り返し、首を傾げた。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.301 )
日時: 2008/12/22 02:00
名前: テン


この世界に恭也と繋がりがある者はそう多くない。リコは恭也たちがクレアと繋がっていることを知らないので、恭也と繋がりがあるとすれば、学園の生徒たちぐらいしか思い浮かばないのだろう。そういう意味では、恭也の人脈などたかが知れている。
そしてそれはある意味では正しい。
なぜなら

「私が言ってるのは、私たちの世界でのこと」

知佳が言っているのは元の世界であり、この世界のことではないのだ。

「たぶん恭也君がその気になれば、いろんな人たちが動くよ。その人数はそう多くはないけど、でも、その能力は中には組織すら超える人たちもいるし、組織自体を動かせるような人たちもいる。もちろん組織に関しては私たちの世界限定だけどね。
個人の能力、例えば単純な戦闘力で言えば、恭也君並の人が何人かいるし、私みたいな人も何人かいる」

その知佳の言葉にリコは目を見開く。そして確認するように十六夜を見ると、彼女も頷いてみせた。

「戦闘に限らず、能力が高い方も何人もいらっしゃいます。その方たちをこの世界にお連れすることができれば……」
「救世主候補並の戦力が一気に倍増ですか……」

恭也にはレティアという味方がいる。彼女に頼めば、それらの人物たちをこの世界に呼ぶのは難しくないし、リコも恭也に頼まれればやるだろう。
それを考えて、リコは今更ながら己も恭也の人脈のうちなのだと気付いた。

「そういうこと」

知佳はリコのそんな考えがわかっていた。知佳とてその人脈の一人であるし、彼女の職場にはもう数人、恭也が頼めばそれだけで力を貸す者たちがいる。そして知佳の実家だと胸を張って言えるさざなみ寮にとて、その人脈はあり、知佳の姉であり、耕介の妻である真雪とて、恭也が本気で頼めば動くことは吝かではないだろう。



メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.302 )
日時: 2008/12/22 02:01
名前: テン


「もっとも、それを恭也君が使うことはないけどね」

知佳は苦笑を浮かべたまま、寂しそうに言った。
その言葉の意味は、リコもすぐさま理解することができた。

「マスターが望まない」
「ええ。おそらく恭也様は、最初は私たちが残ることも納得はしてはいなかったでしょう。どちらかというと私たちの意志折れた、という感じだと思います」

どれだけの能力があろうと、恭也は余計な危険を大切な人たちに背負わせるのを嫌う。それをするぐらいならば、彼は喜んで自分一人でそれら全てを背負うだろう。
恭也の人脈は広く、深い。またそれらの人たちは恭也の力になりたいと思っている。だが、彼自身がそれをさせてくれないのだ。
だからこそ恭也の周りには人が集まる。彼が気付いていなくとも、その居心地のよさから抜け出せなくなる。
それは単なる人望があるだけではない。単なる人柄だけではない。恭也の全てが、その人脈を作り出し、彼を中心とした。しかし、それに恭也だけが気付いていない。それは己への過小評価故に、己への自信のなさ故に、それを知佳はよく知っていた。
それらのことと、恭也が力になってくれと心の底から言ってくれないことが、知佳も十六夜も寂しかった。それはおそらくリコも一緒だろう。
だが三人は、それをおくびにも表に出さない。
ただリコは苦笑した。

「それにしても……」
「なに?」
「マスターたちの世界が凄いと言うよりも、マスターが凄いのか、マスターの周りの方たちが凄いのか……」

そんな召喚士として重みのあるリコの言葉に、知佳と十六夜もまた苦笑を浮かべた。

「あはは、どれでもないと思うよ。恭也君にしたら、ね」
「ですね」

恭也は自分が凄いなどとは思っていないし、周りの人たちを家族として、友人として、大切な人たちとして扱っている。己を低く見る自分のことは当然として、周りの人たちのことも凄いとは思っても、それで特別視などしていない。
彼にとって、それは普通なのだ。
きっと今も、彼は意識せずともこのアヴァターという異世界で、その人脈を伸ばしているだろう。何となく知佳はそんなことを思った。



◇◇◇



恭也は少しばかり足を早め、寮から出た。するとその寮に向けて何人もの少年少女たちが、疲労が見て取れる重たい足取りで向かってくる。

「お前たち」

その彼らを見て、恭也は目を瞬かせた。

「あ、恭也さん」
「恭也様」
「おっす、恭也」
「こんばんはです」

三十名以上にもなる彼らのうち半分以上が、恭也の顔見知りだった。

メンテ
Re: 黒衣(仮投稿) ( No.303 )
日時: 2008/12/22 02:02
名前: テン


この前の任務で、恭也と共に森から脱出した生徒たちと、顔の知らない生徒たち。
それらがどこか疲労の残る表情を浮かべながらも、恭也を見とがめるとそれぞれ駆け寄ってくる。
もっとも駆け寄ってきたのは、この前の任務で共にした生徒たちだけで、恭也の知らない生徒たちは、彼をどこか尊敬の視線を見つめて、話したそうにしてはいるものの、少し離れた場所に立っていた。

「こんな時間に何をしてるんだ?」

恭也が目を瞬かせたまま問うと、セルは頬を掻く。

「いや、自主訓練」
「訓練?」

恭也が首を傾げると、フィルは苦笑いながら頷いた。

「はい。学園長や先生に頼んで、闘技場での夜間訓練の許可を頂いたので」
「もっともそのあとは森での訓練もしていたのですが」

これは先生たちには内緒ですよ、とカラーは厳格な僧侶らしからぬことを言う。
少し話を聞けば、彼らは戻ってきてから、授業が終わったあとも訓練を行っているらしい。それも合同の訓練等や、所属する科以外の生徒たちと意志の疎通をはかるために、色々と話し合ったりもしているらしい。
それらを聞いて、恭也はなるほどと内心で頷いた。やはりこの前の実戦で、それぞれ思うところがあったのだろう。実戦を経験すると、訓練だけでは見えてこなかったものが見えたり、より実戦を意識して訓練ができるようになる。
少しだけ恭也の知らない生徒たちに視線を向ける。彼らもセルたちの話を聞いて、セルたちのやり方を学んだ、というところかもしれない。
セルたちの失敗を嘲笑う者はいなさそうだ。すでにセルたちの部隊以外にも失敗した者たちはいたし、何人もの死人も出ている。むしろ明日は我が身かもしれないのだから、学ぶべきところは多いのだろう。
それよりも、なぜか名も知らない彼らにまで、熱っぽい視線を向けられていることが気になる。考えすぎたろうか。
そんな考えは面には出さず、恭也は再びセルたちへと視線を戻した。

「訓練は構わない。だが疲れが残らないようにしろよ。訓練の疲れのせいで戦闘ができないなどということになったら本末転倒だ」

昔似たようなことで、自身の身体を壊しただけに、それらを知らない生徒たちでも、恭也のその言葉には重みが感じられた。だからこそ、皆神妙に頷く。
寝る前にそれぞれ身体をマッサージしろとも恭也は告げた。

「まあ、何かあったらオレも手を貸そう」
「そのうち指揮に関してのアドバイスなんかもらえると助かります」


メンテ

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